仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 突然、発作的に書きたくなりました。かなり短いです。完全にただの自己満足になってしまいました。すみませんがお付き合いください。


プリキュアの世界extrachapter 子供のエピローグと大人のプロローグ

 窓の外には、自分の目線よりもはるか下に見えるビルの群体。その光は一つ一つがまるで宝石のように見えて、綺麗な物だった。彼女にとってみれば、それはめったに見ない光景で、いつもの天真爛漫な彼女であったならば、大喜びしていたことだろう。

 けど、今日は違う。今の彼女の心は、そう言った自分自身の性格をも度返しにしてしまうほどにドキドキしていて、それどころではないのだ。

 今彼女がいるのはとあるホテルの一室。ベッドがあって、机があって、小さなテレビがあって、本当にただのホテルの一室。それ以外には何もない。

 一瞬、テレビのリモコンを持って、付けようとした。でも、持つところまではいったが、それ以上は行かなかった。

 机の上で充電中であるスマートフォンを取ってみる。でも、画面を見る間もなくまた何事もなかったかのように机の上にソレを戻した。

 今、自分以外の仲間たちは何をしていることだろうか。もちろん、プリキュアのという意味合いもあるし、もうひとつの意味合いもある。

 自分は、自分たちは明日決戦に向かう。それは、もう何年も前から決まっていたこと。それは分かっているけど、こんなに早く来るなんて一年前までは想像もしていなかった。

 自分は、明日人生の岐路に立つ。大人としての第一歩を踏み出すか、踏み外すか。この四年間。いや、自分のこれまでの人生22年間は、全て明日のためにあったんじゃないか。そう思ってしまうほどの出来事が明日待っている。

 子供の心のままでいることも大切だとは、それはもちろん思う。でも、もうそんなことも言っていられない。明日の自分の頑張り次第で、どれほどにも変わってしまうたった一人の女の子の運命。

 ドジは踏めない。間違ってはならない。少しのミスが命取りになって人生のどん底に叩き落されてしまう。ある意味では、人生で一番の大ピンチであると言える。そう、それはあのプリキュアとして戦っていた時以来の大ピンチで、あの時戦ったすべての敵よりも強い強敵。私は、どうなってしまうのだろうか。

 こうやって、ベッドの上でただ座っているだけで、次から次へと考えが浮かんできてしまって、頭が冴えてしまう。壁にかかっている時計を見ると、もう9時30分だ。いつもだったら、テレビを見ていたり、勉強をしている時間。でも、今日はもうそれもお休み。早く寝て、明日に備えなければならない。

 みんなももう寝たのだろうか。ホテルに泊まる組と、そうでない組があるというのを彼女は知っていたが、果たして、今起きている人間がどれくらいいるのだろうか。緊張して寝れずにいるのか、それとももうあたふたしても仕方ないと思って寝に入っているのか。彼女は多分前者だった。

 思い出されるのは、少し前にあった最後の模試の成績。必修が43点で、一般状況は悪くなかった。このことから、多分安全圏だという事は思う。でも、それでも。もしも過去問にあった問題が出なかったら。自分が覚えきれていない場所からの出題があったらどうしよう。

 ここだけの話、実は自分が必修問題で覚えきったのは多分7割から8割といったところ、いやそれ以下かもしれない。それ以外はあやふやで、出たらどうしたらいいのかと思う問題が多い。

 分からない問題は、勘かそれまで解いてきた問題の傾向から答えてはいるが、それでもケアレスミスという物が出てしまったら一巻の終わり。仮に必修が上手くいっても、一般状況でミスを犯してしまったら……。

 寝よう。これ以上考えても無意味だ。何も進展しない。何も始まらない。布団の中にもぐった女性は、考えるのを止めようとした。でも、それでもやっぱり……。

 不安がぬぐえることはなかった。

 

 

 

 朝6時になって、彼女は覚醒した。けど、眠れた気がしない。頭がボーッ、として何も浮かばない。それに、ストレスからか胃や肺が痛み始めてきた。こんな調子で、今日は大丈夫なのだろうかと、やっぱり不安になる。

 それからの行動は単純だった。着替えて、バイキング式の朝ご飯を食べて、それからお昼ご飯のお弁当をホテルの売店で買って……。その時見た仲間たちの顔つきは、かなり重苦しい物。やっぱり、皆もちゃんと寝ることができなかったのだろうか。

 この後しばらくしたら、自分たちは対策委員が借りてくれたバスに乗ってある大学まで行く。時間厳守で、絶対に遅れてはならない。

 早々にホテルの自分の部屋に戻った彼女は、すぐにチェックアウトしてそのバスの停まる場所にまで大きな荷物を持って立った。

 さすがに速すぎると自分でも思う。でも、失敗しちゃだめだという気持ちが先走りすぎてこうなってしまったかと思う。

 他の仲間たちを待つ間、彼女はスマホの電源を付け、その中身を確認した。そして、彼女は後悔した。やっぱり、昨日のうちに見ておくべきだったと。

 

『はるかへ、自分の事を信じて、落ち着いて、しっかり頑張ってきて。はるかなら絶対に合格するわ。 みなみ』

『はるはるへ、お正月特番で勉学の神様、菅原道真だっけ?が祀っている神社に行ってきたの。そこの絵馬にはるはるが合格しますようにって書いてきたから!頑張れはるはる! きらら』

『はるかちゃん、頑張って。こんな事しか言えないけど、私の知っているはるかちゃんだったら、絶対合格するよ。だから、頑張れ!はるかちゃん! ゆい』

「みなみさん、きららちゃん、ゆいちゃん……」

 

 なんとも心強いエールであろうか。もしも昨日のうちに見ていたら、自信を持って眠れていただろうに惜しいことをした。彼女はそう感じていた。

 けど、メールはこれだけじゃなかった。

 

『はるか!ファイト!ネガティブだってぶっ飛ばしちゃえ!辛かったら、一度笑って!笑う門には福来るっていうし! なぎさ』

『はるか、私もあなたの事を想って今日一日を過ごすから。いつまでも見守っているよ!はるか! 咲』

『はるかちゃん!問題が解けなくも泣いちゃダメ!私たちは夢見るために生まれたんだから、絶対に羽ばたくことができる!ファイト!! のぞみ』

『どんなにミスっても大丈夫!諦めないで、バッチリ幸せゲットだよ! ラブ』

『青いバラの写真も一緒に送りました。花言葉は、夢が叶うです。高嶺の花があったとしても、取りたいと願って手を伸ばして向かって行けば、いつかは手に入ります。負けないでください!はるか! つぼみ』

『この世界はつながっている。音楽で、みんなの心で。今もどこかで頑張っているはずの響だってきっと応援してくれているわ。頑張って! 奏』

『この世界を笑顔であふれさせるために、私も頑張る。私は信じている。はるかが広げる笑顔の輪を。だから、みんなにハッピーエンドを! みゆき』

『本当の気持ちを忘れないで、諦めなかったら絶対に奇跡を起こせる!頑張れはるか! マナ』

『前に向かって!明日に向かって!はるか!ファイト!! めぐみ』

『キュアップ・ラパパ!めぐみが一番の力を出せますように!ピンチも笑って切り抜けて!頑張れ!! みらい』

『みんな応援しています先輩!絶対に夢を叶えてください! 現プリキュア代表いちか』

 

 40通以上のメールが届いていた。

 そうだ。大丈夫。私にはこんなに応援してくれる人たちがいる。自分が一人前の大人として社会に羽ばたいていくことを期待してくれる人たちがいる。先輩後輩問わずして、皆が私の事を応援してくれる。

 嬉しかった。心強かった。暖かかった。大丈夫。今まで頑張ってきたんだ。あともう少し。今日を乗り切ればすべてが終わる。すべてが変わる。すべてが始まる。

 なに笑ってるの?そう彼女は聞かれた。いつのまにか、学友の面々がそろっていた。どうやら、もう出発の時間だそうだ。

 なにも。そう答えた彼女の顔はしかし、今年一番の笑顔だったそうだ。

 そして彼女は乗った。戦場に向かうバスに。でも、そこにはもう重苦しい彼女はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は看護師国家試験。子供のはるかのエピローグ、そして大人のはるかのプロローグの鐘が鳴り響いた。

 最後に、彼女はバスの中で呟いた。もちろん笑顔で、いつものように言った。

 

「行ってきます」




 と、言うわけです。活動報告にも何か書いているはずなので、そちらもご覧ください。
 では、看護師国家試験に臨むはるかそれとついででいいですから……










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