戦場では明日菜たちがラミアがだしたロボットたちと対峙していた。
「っく!ちょっと、ビーム以外も強いじゃない!」
「データ採取。学園祭時より46.92%出力が上がっています」
「そんなにでござるか」
「楓姉っ!左!」
「!」
鳴滝史香の言葉に反応できた楓だったが、回避できない距離であると悟り防御姿勢をとる。しかしその攻撃は彼女には来なかった。
「おやりなさい!影たちよ!」
それは高音の出した使い魔『黒衣の夜想曲』による攻撃であった。又それに続くように
「メイプル・ネイプル・アラモード」
「ラプ・チャプ・ラ・チャップ・ラグプウル」
これは魔法使いたちがそれぞれ独自に持っている始動キーだ。愛衣と萌はそれに続いて今度は呪文を唱え始める。
「目醒め現れよ燃え出づる火蜥蜴、火を以ってして敵を覆わん。『紫炎の捕え手』!」
まず佐倉愛衣が魔法を使い円筒状の火柱が舞い上がる。これでグールの何体かを捕縛し、
「魔法の射手 収束二十二矢!」
そしてその上から萌の『魔法の射手』がグールに襲い掛かる。炎柱が消えるとそこには何もいなくなっていた。
「あなたたちは!」
「加勢しに来ましたわ!」
「いいのか?上にはもうヘリが来てるぞ」
千雨の指摘通りすでに報道のヘリが上を飛んでいた。昨日の今日のことなので、テレビ側が取材をしていたのでここまで早く来ていたのだ。だが覚悟を決めた彼女たちにはそんなもの気にすることはなかった。
「そんなこと関係ありませんわ!」
その言葉と同じくして様々な場所から少年少女が飛び出してきた。彼らほかの魔法生徒も全員高音たちと同じように戦いに来たのだ。
「私達が魔法を使うのは人々を守るためです。今使わないでいつ使えと言うのですか!」
「高音さん…」
そして戦いに来たのは魔法生徒だけでなかった。
「『男魂』!!」
「!」
「この技って確か…」
その技は高音の後ろから放たれた攻撃であった。その方向を見ると
「通りすがりの格闘家参上!」
「えっと…確か豪徳寺さん!」
そこには麻帆良祭の格闘技大会に出場していた豪徳寺をはじめとした一般生徒たちの姿があった。
「何が何だかわからねぇが助太刀するぜ!」
彼らだけでない、この街のほぼすべてのクラブやサークルに所属する生徒たち、いや全生徒がここに集結していた。何がどうなっているのかわからない生徒もいたであろうが、それでも何かしたいという気持ちで彼ら生徒はここに来ていたのだ。
「なんだよ…」
「え?」
その声は敵集団の先頭に立っていたラミアからであった。
「なんでお前らはこいつらを恐れねぇ!こいつらはわけのわからない力を使うんだぞ!お前達には関係ないことなんだぞ!どうして戦おうとする!」
ラミアの言うこいつらとは明日菜たちや魔法生徒のことであった。確かにもし自分の周りに下手をすれば人を殺せるほどの力を持つ者がいるとするなら普通は恐れ慄く筈であろう。そう普通は…
「へっ!だからどうした!」
「なに!?」
「俺たちの学園になんかしようっていうだけで戦う理由になるだろうが!」
「第一訳のわからん奴ならお前の方がよっぽどだ」
「いいか!ここは麻帆良学園!ここは…」
「「「「俺たちの街だ!!」」」」
そうこの街は麻帆良学園、ギネスブックに記載されているものより高い木があっても。車よりも速く走る人が目撃されても。明らかにロボットである少女が普通に学校に通っていても。普通という言葉に堂々と喧嘩を売っている、そんな街である。たとえそれが結界の力によるものであっても彼らはこの街の住人になって何年もこの街にいる。たとえそれが異常だとしてもこれが彼らにとっての日常なのだ。それを守るのに他に理由なんているのだろうか。この街は大人たちの所有物ではない。この街は生徒の、学生の、いや勉強したいと言う人たち、成長したいと願うすべての人たちの物である。そんな彼らにラミアは苛立つ。
「気に入らねぇ…」
「!」
ラミアの怒気が強まるとともにその体内から魔力が放出されていく。
「気に入らねぇな!!!」
世界樹防衛戦はまだ始まったばかりである。
「学校は勉強したい人たちの~」は相棒で杉下右京が発したセリフを基にしました。