仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

148 / 265
プリキュアの世界chapter52 捕まえた

「撃て!撃つんだ!!」

「もう弾が……」

「あ゛あ゛ぁ、足が!俺の足がっ!!」

「ッ!……ゴメン、父さん帰れそうにッ!」

 

 その時、一つの爆風がその場にいた警官たちの命を奪って言った。爆風の中から現れたのは、青色を基調としたロボットのような男。仮面ライダーG3-Xである。さらにその奥から仮面ライダークロノスが現れる。

 

「ククク……同じ警察官に殺されるなんて、良いジョークだとは思わないか?」

 

 そう言いながらさらに遠藤止は歩を進める。ジョーカーからプリキュアたちは全員四葉ビルの本社に匿われているという情報を聞き、遠藤止はゆっくりとこの場所までやってきた。その間に、自衛隊や警察官たちによる妨害があった物の、それらをすべて抹殺しながらしかし、牛歩のように足止めを喰らいようやく目と鼻の先まで見えてきた。

 彼の心の中に、殺した警察官たちへの懺悔など当然あるわけがない。あるのは、自分を邪魔してくれたイライラと、その無駄に散っていった命に対する蔑みのみ。自分自身が一番力を持っており、他の人間などは自分がよりこの世界のヒエラルキーの頂点にいるべきであると考えている人間にとって彼らの命など、踏み台も同然に見ていたのだ。まさに、マリアナ海溝よりも深く黒い心と、マカロニの穴ほどに狭い心を併せ持った、悪の中の悪魔である。意気揚々と四葉本社に乗り込もうとした遠藤止であるが、その前に現れた者たちがいた。

 

「ん?」

 

 顔は見えない。いや、目や鼻のないライダーと言った方がいいだろう。三体はいるのが見受けられる。彼はその仮面ライダーを知っていた。

 

「フン、ライオトルーパー……ディエンドか」

 

 遠藤は、ライオトルーパーを三体一組で出す仮面ライダーは仮面ライダーディエンドしかいないと確信していた。それはすなわち、この先に自分が探していた者たちがいるという意味でもあった。クロノスは、さらに畳みかけるように士や海東の使っているようなオーロラを用いて五色の戦士を呼び寄せた。

 

「いけ、G3-X……そしてデカレンジャー」

 

 特捜戦隊デカレンジャー。現在も地球を狙う惑星間宇宙犯罪者アリエナイザーと戦い、地球の平和を守り続けているスーパー戦隊であり、彼らもまた警察官であった。それを遠藤止が田しか瞬間、三体のライオトルーパーが走り出し、G3-X、デカレンジャーと対峙する。しかし、ライオトルーパーの劣勢は明らかだった。元々、ライオトルーパーはいわばその世界の仮面ライダーであるファイズの量産型として生み出された仮面ライダーであった。そのため、どちらかと言えば性能ではなく生産性が重視された仮面ライダーであるが故に、一体一体の性能で戦うのではなく、集団で戦い数の優位をいたして戦い敵を圧倒するという事が戦闘パターンであった。

 しかし、それはすなわち、個別に対処されれば圧倒的に不利であるという事だ。そうこうしている間に、ライオトルーパー三体はほぼ同時に何のダメージも与えられずに倒されてしまった。

 

「フン、この程度で俺を止められると……ッ!」

 

 その時だった。突然一つのオーロラが遠藤止の真後ろに現れたのだ。それにひるんでいる隙に、突如現れた青色の腕によって、左手に手錠をかけられる。そのあまりにも突然のことに遠藤止は時間停止能力を使用する隙も無かった。

 

「これで君は時間停止能力を自由に使うことができなくなった」

 

 その言葉と共にオーロラは移動し、そして右腕に手錠のもう一方をはめたディエンドが現れた。だが、その言葉に対して遠藤止はあざけ笑う様に言う。

 

「ハッ、この程度のもので、俺を捕らえたと思うな!」

 

 その言葉と同時に、右手にガシャコンソードを取り出して両方の輪を繋いでいる鎖目掛けて振り下ろした。普通の手錠であれば、まるでバターを切るかのように簡単に引きちぎることのできるはずだった。しかし、剣が鎖を両断することはなかった。

 

「なっ、馬鹿な!」

「甘いね、これは四葉財閥製の手錠だ。ちょっとやそっとの事じゃ壊れやしない」

 

 それは、午前中からずっと士と海東大樹の二人を繋いでいた鎖だった。ディエンドライバーからはなられる銃弾や、幾多の衝撃にも耐えきった頑丈な手錠が、その程度の攻撃で壊れるわけがない。

 

「クッ!」

 

 それを見た遠藤止は、時間停止能力を使用しようとベルトのボタンを押そうとする。だが、そうは問屋が、というよりもディエンドが許さなかった。ディエンドは左手がベルトに到達する前に右手を大きく振り上げた。

 

「君がこのベルトを操作して時間を停止させているのは分かっている。それに……」

「グッ!」

「右手一本じゃ両方のボタンを押せないことも!」

 

 ディエンドは、さらに遠藤止の右手を蹴り飛ばす。クロノスの仮面をかぶっているからその表情は見えないものの、その腹からひねり出されたような声から察するに相当聞いたのだろう。それを見て、仮説だった物がついに確信に変わった。

 

「やっぱりそうだ。君の右手は、彼に撃ち抜かれたことによって大きく広げる事や、細かい動作をすることはできなくなっている!」

「ちぃ!」

 

 それは、子供のめぐみが攫われ、彼女のソウルジェムが壊されそうになった時の熊本による狙撃。それにより、遠藤止の右手は撃ち抜かれていた。その時の痛みは、普通の人間であれば確実に激痛であったはず。それから一日もたっていないため、まだ痛みが続いていたとしても何ら不思議はない。そんなケガをした手でベルトのボタン操作などできない。そう海東は踏んでいたのだ。

 まさに図星だった。確かに右手で剣を持つことぐらいはできる。しかし、広げる事や細かい動作まではできなくなった。だから、戦闘中でもポーズは両手で行わざる負えなかった。だが、彼にはまだ策が二つ残されている。

 

「G3-X!デカレンジャー!やれ!!」

 

 その遠藤止の声に、六人は振り向き、自身の持つ武器を構えた。しかし。

 

「その手は桑名の!!」

「焼き蛤ってね!!」

 

 その声と同時に隕石のような衝撃が地面を陥没させた。デカレンジャー、そしてG3-Xはその陥没に巻き込まれるように落ちていく。彼らに空中を浮く能力などない。そのため、身動きが取れなくなった。それは、時間にしてわずか数秒だけの事だ。しかし、その数秒であったとしても彼らを倒すには十分な時間であった。地面を陥没させたキュアサニー、キュアマーチの後ろからピンク色の光を纏った一人の女性が現れる。キュアドリームだ。

 

「プリキュア!!シューティングスター!!」

 

 時間にして、僅か0.5秒だったか。一瞬のうちに光は通り過ぎていった。キュアドリームの必殺技であるプリキュアシューティングスターは、その名前の通り、自身の身体を彗星のようにして体当たりする技である。その攻撃を喰らった六人の偽物たちは陥没した地面へと落ちていった。そして次の瞬間、いくつかの爆発と共にその身体がカードと小さな人形へと変化した。

 

「なにこれ?」

「これって、海東や士の使っているカード……」

「それと、レンジャーキー……か。なるほど、偽物のカードとレンジャーキーで僕たちの偽物を作り出していたってことか」

「くっ……」

 

 遠藤止の前に、プリキュアが、そして五人の人工コミューンで変身した人工のプリキュアが立っていた。ただし、変身アイテムが消失してしまったために変身不能となった過去のめぐみやはるか、それから相方のいない大人のみらいはその場にはいなかった。

 包囲され、時間停止能力も使えなくなった今、彼にできることはないに等しかろう。そして、ディエンドがディエンドライバーの銃口をクロノスのベルトに当てる。

 

「これで君もジ・エンドだ」

「……」

 

 これで引き金を引けば、確実にクロノスのベルトは破壊される。もはや、遠藤止に逃げ場はない。

 

「……フッ」

「ん……?」

「素晴らしいよ上出来だ。まさかここまで俺の事を追い詰めるなんてな……だが」

 

 その時だ。一般人を避難させたがゆえに静かになったビル街に一つの足音が聞こえた。遠藤止の向こう側に何者かの姿が見える。制服を着ているところから見て、学生のようだ。だが、どうしてこんな時間に学生が、いや封鎖したはずのこの道にどうして学生がいるのだ。

 

「え、嘘……」

「そんな、どうして……?」

 

 その少女の顔を見て、驚きを隠せないでいたプリキュアがいた。キュアブルームと、キュアイーグレットの二人である。

 少女はさらに歩を進め、遠藤止の斜め後ろに来ると止まった。ここまで来ると海東にもその少女に何か異変が起こっていることに気がつく。いや、この感じはどこかで見たことがある。しかもごく最近だ。そう、あれは確かあの大学で……

 

「みのり!」

 

 その時、ブルームが叫んだ。そう、少女の正体は日向みのり。キュアブルームの、日向咲の妹である。無論一般人だ。PC計画の一部にも入っていなかった。そんな少女がなぜこんなところにいるのか、いや答えは分かり切っていた。

 ディエンドは、その数舜の間に答えを導き出した。彼女の表情から見て、自分の意思でこの場所に来たわけじゃないという事は何となくわかった。となれば、何者かに操られているという事だ。そして、彼女からあふれ出ているどす黒い塊。間違いない、彼女は取り付かれている。それも、自分も一度会ったことのある者にだ。おそらく、彼女に取り付いている怨霊は……。

 

「ウフフフフやはり手出しはできませんよね、なんせ相手は可愛い妹なのですから」

「ジョーカー……ッ!」

 

 大学でのあの一戦から逃亡していたジョーカーである。まさか、今度は日向咲の妹に取り付いてくるとは思ってもみなかった。だが、これで彼女たちが不利になったのは目に見えて明らかだ。

 日向みのりに取り付かれたという事は、つまり彼女を人質に取られたという事と同意義なのだから。それに加えて、日向みのりはプリキュアではなかったため、昼間になぎさに使ったように体内のPC細胞を活性化させるなどという裏技も使えない。有利が一辺、大ピンチに陥ってしまった。

 

「形勢逆転……だな!」

「ッ!」

 

 遠藤止が手を上にあげた瞬間、複数のオーロラが出現する。その中から、ゴーカイガレオンバスターを構えるゴーカイジャー、烈火大斬刀の大筒モードを構えるシンケンジャー、オーレバズーカを構えるオーレンジャー、ドリルスナイパーカスタム、マルチアタックライフルを構えるメガレンジャーといったスーパー戦隊。ライドブッカーガンモードを構える仮面ライダーディケイド、ディエンドライバーを構える仮面ライダーディエンド、トレーラー砲を構える仮面ライダードライブタイプフォーミュラー、パーフェクトゼクターを構える仮面ライダーカブトハイパーフォームといった仮面ライダーが現れた。彼らは、その銃口をプリキュアに向けている。

 

「やれ」

 

 その瞬間、全ての銃口から複数の光線がプリキュア全員に浴びせられる。

 

「きゃぁ!!!」

「クッ!!!」

 

 激しい爆音、爆風があたりを伝わり、爆炎、そして煙が舞い上がった。その衝撃に当たりのビルの窓ガラスは震え、その中のいくつかは衝撃に耐えることができずヒビができ、ゆっくりとそのヒビが広がり窓ガラスが割れてしまった。

 しだいに、煙が晴れてさらに広がったクレーターの中に彼女達の姿が確認できた。どうやら、全員生きている様子だが、しかし無事というわけではない。流石に偽物とはいえ、スーパー戦隊と仮面ライダーの必殺武器を複数立て続けにあたっただけはあって、傷だらけで、全員変身が解除、もしくは変身を保てなくなっている様子だ。

 

「みんな、大丈夫?」

「えぇ、なんとか……」

「響……」

「大丈夫、ありすが守ってくれた、と言ってもダメージはあるけど……」

 

 あの攻撃の寸前、咄嗟にありすがロゼッタウォールを展開させて響、マナ、めぐみを守ったのだ。PC細胞があるとはいえ、流石にこの攻撃はまずいと判断したのだろう。だが、その攻撃の余波である爆炎などは流石のありすであったとしても防ぐことはできず、少なからずのダメージを負って倒れてしまっていた。

 人質に加えてこれだけのダメージを負ってしまい、もはや彼女たちになすすべはなくなってしまっていた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。