士達は、目の前で起こったことが信じられないでいた。当たり前である。先ほどまで死んでいたはずのほのかが目覚めて、何事もなかったかのようになぎさとキスをしているのだ。それだけではない。口からあふれ出ていた大量の血も、内出血もまるですべてが幻だったかのようにきれいさっぱり無くなっており、あらぬ方向に曲がっていて痛々しかった手足はほのかにとって元通りとなっている。
「一体、どんな魔法を使った……」
「理由なんてどうでもいいメポ」
「そうミポ……ほのかが、ほのかが生き返えってくれた……それだけでいいミポ」
「ごめんね心配かけて……でも、もう大丈夫だから」
ほのかは、唇をなぎさから離してそう言った。その時の笑顔は、まるで女神のような微笑みであった。何かを振り切った、そんな自信に満ち足りた表情だ。一体、あの光の中で二人に何があったのか、それは彼女達にしか分からない事である。
『おのれ、プリキュア』
「ッ!」
そんな彼女たちの目の前に、黒い煙のようなものが現れる。見ているだけで悪寒が背筋を通り抜け、身体全体を拘縮させてしまうほどだ。次第に、煙は一つの形を作り出す。
『毎度の如く癪に障る方々です』
「ジョーカー……」
『まさか、美墨なぎさの身体から私を追い出すだけでなく、心に巣くった闇まで取り除くなど、想像もしていませんでしたよ』
「え?」
このジョーカーの言葉に驚いたのはなぎさ本人である。先ほどまで操られていたため、ジョーカーが身体の中に入っていたということを知らないのだから当然だろう。ほのかは立ち上がりながら、そのついては後で教えると言ってその場は切り抜ける。今はそんな事よりもジョーカーの方が一大事なのだ。
『まぁよいでしょう、いくらでも代わりはいまッ!?』
「え?」
ジョーカーが何かを口走りそうになったその時、突然ワゴン車がジョーカーの身体を突き抜けて、ジョーカーの怨念が形となった煙は拡散した。そして、ジョーカーを轢いたワゴン車は、士達の目の前に停車すると、運転席から一人の女性と、二体の妖精が降りてきた。
「皆さん、遅くなってすみません」
「渋滞していたポポ」
「皆無事ルル?」
「ひかり、ポルン、それにルルン……」
「……」
「はい、九条ひかりさんもプリキュアです」
ほのかが何か呆れるように彼女たちの名前を呼んだ。それと同時に、士はロゼッタの方に目線を移すと、何も言っていないというのに、返す刀で彼女もまた、プリキュアであるということを教えてくれた。
「それで、敵は今どこに」
「え、えぇっと……」
「今お前が轢いた奴がそれだ」
「え?」
ひかりは、士のその言葉を受けて後ろ先ほど自分が通った跡を見る。すると、そこには拡散された煙のようなものが集まっている様子が見て取れた。まさかという表情でひかりは言う。
「えぇっと……あの煙みたいなのがそうなんですか?」
「えぇ、あれはみゆきさん達が昔倒したジョーカーの怨念なんだそうよ」
「はぁ……」
「まぁ、さっきまでと違って何かに憑りついているわけじゃないらしいからな」
『その通り』
士があっけにとられているひかりに説明をした瞬間、煙はまたジョーカーの形となって復活した。
『私は今やただの怨念、魂が漂っている状態に過ぎませんすなわち、いくら攻撃を加えても無駄です』
「はぁッ!!!」
「えッ……」
そう言ったジョーカーの頭上からタンカが一つ飛んできて、ジョーカーを突き抜けて地面に突き刺さった。
「なるほど、攻撃を受け付けないというのは確かなようですね」
それは、先ほど六花に頼まれてタンカを取りに大学の構内に戻っていたキュアエースによるものだった。やっていることは、少々外道じみているとはいえ、戦略的に見ても不意打ちは効果的なのであるがしかし、怨霊であるジョーカーには結局のところ無駄に終わってしまった。
『……とはいえ、私自身もこの状態では攻撃できないので、今のところは逃げさせていただきます……あなた達にはこれの相手をしていてもらいましょう!』
ジョーカーが一度指を鳴らすと、その瞬間五体のザケンナー、掃除機ザケンナー、体育用具ザケンナー、ピアノザケンナー、オーブンザケンナー、ライン引きザケンナーが出現し、それと同時にジョーカーの姿は消えてしまった。
「とんでもなく迷惑な置き土産ね」
「全くだ……だが、これだけの人数がいるんだ、簡単に倒せるだろう」
相手は五体、こちらは変身ができない士自身を除いても十三人、数で言っても質で言っても勝っている。だが、そんな彼らを制する者がいた。
「ちょっと待った」
美墨なぎさだ。なぎさは、ほのかと共に彼らの目の前に出ると振り返って言った。
「ここは、私とほのかに任せてもらえない?」
「なに?」
「えぇ、変身するのも久しいから……勘を取り戻さないといけない物ね」
そして二人、それとメップルとミップルは行く。ザケンナーの闇が渦巻く、普通の人間が見ても死地に向かうかのようだった。だが、それでも不思議である。何の不安も、何の恐れもない。二人だけであるというのに、多勢に無勢となるというのに、それでも彼女たちが行くのを士達は止めなかった。想像できないからだ、なぎさが、ほのかが負ける姿という物を。当然だ。当然?何故だ。ほのかが変身して戦う姿というのは見ていないというのに、な
ぎさにしても、戦っていたのはジョーカーに操られていた時の事、しかもそのジョーカーからの呪縛は先ほど解けたばかり、本調子であるという保証はない。であるというのに、一切の不安はなかった。
「怖い?」
「全然、なぎさが一緒だから、全然怖くないわ」
何故だろうか。その理由など分かり切っている。
「メップル達も忘れるなでメポ!」
「はいはい……忘れているわけないでしょ」
そう、ふたりはプリキュア。その礎を築いたと言ってもいい最初のチーム。
「選ばれし勇者メップル!」
「メポ!」
「希望の姫君ミップル!」
「はいミポ!」
「そしてほのか」
「なぎさ」
「行くわよ!」
「行きましょう!」
それ以外に何の説明が必要か。
「ザケンナー!!!!」
五体のザケンナーの内の一体が、ふたりに向けて腕を振り下ろす。しかし、彼女たちは避けようとしない。それどころか、二人は互いの手を固く握る。そして、ザケンナーの腕が二人を押しつぶそうとする瞬間、地面から虹色の光が天高くに届くほどの道を作る。それは、まるで間欠泉が噴き出したかのようにどこまでも高く伸び、そしてあたりに光りをまき散らしている。そして、二つの金色の光が舞い上がり、近くにある大学の屋上で拡散すると、衣装の変わった二人の姿が現れる。黒い服を着た女性、白い服を纏った女性。まさしく、光から産まれし光の者、そう形容するべき女性たちがそこにはいた。そして二人は名乗りを上げる。
「光の使者、キュアブラック!」
「光の使者、キュアホワイト!」
「「ふたりはプリキュア!」」
「闇の力の僕達よ」
「とっととお家に、帰りなさい!!」
それだけで士は確信した。
「ザケンナー!!!」
勝利の二文字を。
「フッ!」
「ハァ!!」
ふたりは、ピアノザケンナーが口から発するピアノ線による攻撃を跳んで避ける。ピアノ線はそのまま大学の壁へと突き刺さり、逆にそれによってピアノザケンナーの行動が制限されてしまった。そのままピアノザケンナーの上にふたりは着地し、なぎさは左側に、ほのかは回転しながら右側へと跳び他のザケンナーを分散させた。これで表面上は二対一とニ対一、その内ピアノザケンナーがほのか側へと合流したため、三対一の様相である。
「ザケンナー!!」
ブラックと対峙する体育用具ザケンナーは、その身体を分離させてブラックへと襲い掛かる。一つの跳び箱を形成していた木の箱が次々とブラックを襲う。
「ハァ!!フッ!!ハッ!!」
しかし、それら全てがブラックによる重い一撃によって叩き落されていく。手刀、パンチ、かかと落とし、飛ぶことはできないがしかし、跳ぶことはできるブラックによって、一度跳んだだけの少しの間だけに撃破されていった。しかし、跳んでいる間は、空中移動できないこの状態を隙と見たのか、掃除機ザケンナーは電気コードを伸ばし、コードがブラックの身体を縛り上げた。だが、ブラックは動ずることはなかった。
「ッ!ハァァァァァアアア!!!」
「ザケッ……!」
「ハァッ!!」
ブラックは絡めとられたよう腕を開いていく、その内どんどんと彼女を縛っていたコードは緩みを見せていき、ブラックが気合を入れたが最後、簡単にほどけてまるで巨大なフラフープのような形になってしまった。ブラックは、コードを掴むとプールから上がる時のようにコードの上に立ち、あろうことかそのまま綱渡りの綱を渡るように掃除機ザケンナーへと向かう。当然走ってのことだ。
「ザケンナー!?」
「ハァァァ!!!」
スラックラインという物を存じているだろうか。綱渡りのように見えるが、歩いているのがロープなどでなく、平べったい、言葉通りラインの上を歩いたり跳んだりするスポーツの事だ。
「テイヤァァァァ!!!」
なぎさは、まさしくソレで演技をするように跳びあがると、ザケンナーのボディに重い蹴りを入れる。その様子は、まるでライダーキックそのものではないか。しかし、普通のライダーキックの何倍もの力がありそうであると、士は思った。
「ザケンナー!!」
「ハァァァァァ!!!」
一方キュアホワイト。こちらもこちらで非常識な戦いをしていた。オーブンザケンナーは、口から青い火炎を吐き、ホワイトは臆することなく扇風機の羽のように回転しながらその炎に突っ込んでいく。一般的に、青い炎は赤い炎やオレンジ色の炎よりも熱く一千度から千五百度もの熱さがあると言われている。しかしその中をほのかは突っ込んでいったのだ。そして、次に彼女の身体が現れた瞬間、ホワイトの足はザケンナーへとめり込んでいた。
「ハァァァァァァ!!!!」
ホワイトはそのまま竜巻を起こさんばかりに横回転し、攻撃に苦しみ身もだえるザケンナーの顔面に勢いよく蹴りを入れ、校舎の壁まで吹き飛ばした。続いて、もう一体いるライン引きザケンナーがその腕に付けているホースでホワイトを叩きつけようとする。しかしホワイトはその攻撃を回転することによって受け流してホースを掴むと、ハンマー投げを行うかのようにザケンナーを振り回す。
「ヤァァァァァ!!!!!」
「「ザケンナー!!?」」
そしてライン引きザケンナーがピアノザケンナーへとぶつかり、ホワイトがホースから手を放し瞬間共に校舎の壁へと吹き飛んでいった。
確か、元々彼女たちは今戦っているザケンナーと戦っていた。つまり、以前にも倒したことのあるザケンナーなのである。仮面ライダーが再生怪人軍団と戦っているようなものだ。だからそれほど危機感を感じないというのだろうか。いや、おそらくそれもあるだろうが、一番は経験なのだろう。ふたりの戦い方を見ていると、まさに熟練の戦士という言葉がぴったりというほど落ち着いており、様々な特殊な技を持つザケンナー相手に少ない手数で対処していることが分かる。それは、二年という間戦っていたことの経験がものを言っているというしかない。それからもう一つ。
「ザ、ザケンナー!!」
壁にめり込んだライン引きザケンナーはしょうこにもなく立ち上がると、サッカーボールを弾丸のように発射、それらは掃除機ザケンナーと戦っているブラックへと向かっていく。
「ブラック!」
「ッ!フッ!!!ハァァァァ!!!」
ホワイトの声を受け、ブラックはすぐに振り向くと、ボレーシュートを撃つように次々とサッカーボールを蹴りつけ、そしてそれらは五体のザケンナーすべてに向かっていった。それは、ブラックの正確なボールテクニックが物を言っていたということもあるが、それと同時にホワイトによる尽力もあった。
「ッ!ヤアアァァァ!!!」
ホワイトが、ザケンナーの方へと向かわずに明後日の方向に跳んでいくサッカーボールに回転をかけて、その軌道を変化させているのだ。これが、彼女たちが強い要因なのだろう。十年間経っても定期的に友情を確かめ合っていたことからくる息の合ったコンビネーション、それらが合わさったことによって生まれた戦士の力なのだ。ブラックは、飛んでくるサッカーボールを蹴りこむ。それが多少目標とずれていたとしても、ホワイトが修正してくれると信じている。無論作戦を指示したわけでも、指示されたわけでもない。ただ示し合わせたかのように彼女たちは行動している。
「すごいな……」
「あぁ、いい連携だ……」
思わず、士と海東は感嘆の声を上げる。それを聞いたありすは、微笑みを見せて言った。
「えぇ、私も驚いています。……あの二人、あの頃よりも洗練された動きになっています」
「うん、やっぱり凄いあの二人」
「それになんだか……」
「楽しそうポポ……」
そう言われて見ると、なんだか二人とも嬉しそうだ。戦闘狂という言葉が一瞬だけ士の頭に浮かんだが、すぐにそれはかき消された。これは、そんな邪見なことなのではない。ただ、彼女たちは嬉しいのだ。また一緒に戦うことができるということを、さきほどまでもう笑い合うことができないと思っていたというのに、楽しかったその時が戻ってきたということに。人は笑顔があったら生きていける生き物だ。でも、一人で楽しんでいても、その気持ちは薄くなっていく。一人で笑うには、人間の心というのは広すぎるのだ。だから、すぐに人の顔から笑みは無くなり、次に笑顔になれることを探してしまう。その間に、当然笑顔はない。だから、果てしなく長くつまらない時間を過ごすことになってしまう。それは、心の大きさに合う感情に出会うことができないからだ。でも、ふたりだったらどうだ。ふたりだったら、一緒に笑い合い、そこからどんどんと話が広まっていき、続けざまに笑顔を生むことができて、そして心が埋まっていく。だから、楽しい時間というのは短く感じてしまうのだ。でも、本当はそれが普通なのだ。笑顔は、自分のための者でもある。しかし、それはほんの一握りの事、笑顔という物は本当に笑顔を向けてもらいたい人のためにある物。他人も笑顔にしたい。だから人は笑顔になることができる。きっと、それは本当の笑顔である。そう信じている。自分の笑顔が、笑顔を忘れたものに、笑顔を知らない物に、その素敵な感情を知らない物にも分け与えることができる物だと信じている。だから、彼女たちは笑うのだ。皆を笑顔にするために。この世に笑顔の花を咲かせるために。
「ハァァァァァ!!!」
「ヤァァァァァ!!!」
その時、決着の時が来た。二人は五体のザケンナーすべてを同じ場所に集めるように攻撃を入れ、そして計画通りに五体全てのザケンナーがサッカーグラウンドの中央へと集まった。そして、ブラックが掃除機ザケンナーのコードを引っ張り、ザケンナー達の周囲を一回転して、コードを巻きつけて身動きが取れないようにする。ここまでからめとられてしまえばもう自力で動くことはできない。だが、攻撃をすることはできるため、オーブンザケンナーによる炎攻撃が、二人を襲った。しかし、そんなもの避けることなど容易いことだった。二人は示し合わせたように一緒に空高くへと跳んだ。そして、二人はそれぞれの手を取って握りしめる。それは、まるで彼女たちの友情の証のようにも感じられる。これが、彼女たちの必殺技、その前段階なのである。
「ブラック!サンダー!!」
「ホワイト!サンダー!!」
そう、握っていない方の手を頭上に掲げて言った瞬間に、ブラックに黒色の雷が、ホワイトに白色の雷が落ちる。そして、ふたりの身体を金色の光が包み込むと、次の瞬間にはそれは虹色の光へと変わっていた。まるで、それは希望の光を身に纏っているかのように見える。
「プリキュアの、美しき魂が!!」
「邪悪な心を!打ち砕く!!」
そして彼女たちはかたく繋がっている手を握り直す。今度は恋人つなぎのように指を絡めて。二人は感じる。相手の心が、ホワイトの心が、ブラックの心が、手に取るように分かる。それは、昔よりもはるかに鋭く、そして戦災に耳元で囁いているように、互いの心を結び付けているのだ。
「「プリキュア!マーブルスクリュー!!!」」
そう叫んだその時、黒白それぞれの雷が、手から放電される。だが、それだけで終わらない。ふたりはその雷を握りつぶすように拳を作ると、一度後ろに引く。そして……。
「「マックスゥゥゥゥ!!!!!」」
黒と白の光の渦が、上空からザケンナー目掛けて恐るべき力で向かう。それは大きく、そして全てを洗い流してしまう様に力強い光を纏っており、ザケンナーすべてを包み込んだ。それはまるでロケットの噴射のようにふたりの身体を空中はるか高くに持っていくほどの勢いを持って、そして爆撃を行ったかのような衝撃が周囲を襲った。あまりの光に士達は腕を目の前に持っていき、目を守った。そして、光が弱まったところで彼らがみた爆撃地にあったのは、大きなクレーター、そして……。
「ゴメンナー」「ゴメンナー」「ゴメンナー」「ゴメンナー」「ゴメンナー」「ゴメンナー」「ゴメンナー」「ゴメンナー」
五体のザケンナー分のゴメンナーの姿だけであった。どうやら勝った、いや圧勝だったようだ。ふと、ふたりの姿が見えないことが気になった士は、周りを見てみる。しかし、すぐ近くに彼女たちがいる様子はない。いや、確かふたりは上空から必殺技を仕掛けて、そのまま上空に押し上げられていたはずだ。と、言うことは……。案の定、彼女たちは小さな点となってそこに浮かんでいた。
「えっと……この技ってこんなに威力あったっけ?」
「えぇ、私も驚いたわ」
危うく雲を突き抜けてしまうのではないかというほどに高くまで舞い上がったふたりは、自分達の繰り出した技の強さに思わず苦笑いを浮かべた。一応、これだけ上空から落ちたとしても、プリキュアである自分達だったら難なく着地することができる。だから全然心配などしていない。むしろ、ようやく二人っきりで話ができる空間に来ることができたと思っている。とはいえ、話題及びやることは地上にいた時とあまり差異はないのだが。
「ねぇ、ホワイト……」
「なに?ブラック……あっ」
ブラックは、ホワイトの身体を抱き寄せると、ゆっくりとその唇を重ねた。もちろん、ホワイトは何ら抵抗しなかった。一度目のキスは、悲しい鉄の味しかしなかった。二度目のキスは、レモンパイと、それから一度目のキスをした時になぎさの口に着いたほのかの血の味がした。そして、三度目のキスの味は……。いや、これはその程度のものではない。ふたりは確かめあっていたのだ、自分が本当に相手のことが好きなのであると。
後は自由落下で地上に戻るまでの時間を利用して、ふたりはいろいろなことを話し合っていたそうだ。しかし、それを聞いた人間はいなかった。
(メポ、ふたりとも自分達の世界に入ってて話に入りづらいメポ)
(しょうがないミポ)
『人間は』いなかった。
一方そのころまた別の空に、肉体を失った怨霊の姿があった。
『全く、想定外の事ばかり起こしてくれます。とはいえ、想定外すらも想定内ではありましたけどね……』
ジョーカーは、一人にやつきながらそう言った。プリキュアが自分たちの想像以上の事をやってのけるというのはとうに分かり切っていたこと。そのため、こんな時のために予備に選んでいた肉体があったのだ。美墨なぎさのように心身ともにストレスによって心が荒んだ少女。姉に絶望し、姉の親友に絶望したとある少女。
『見ぃつけたぁ……』
「え?」
物語は、想定外の連続によって発生している。彼女もまたその一つである。
当初予定していた展開が、この初代組の後にやるには展開として薄味であると気づいたため没にして、また別にストーリーを展開させることにしました。薄味ってか、今までの展開全てが濃すぎるんだよな……。
それと、原作だとなぎさが好意を抱いていた先輩がいましたが……まぁ、なぎさの現在の状況を鑑みると……そう言うことです。というか、実はこっちも色々考えていはいた。しかし、プリキュアの一名の仕事をプロサッカー選手に設定してしまったため『あれ?付き合うならこっちじゃね?』ってなって、修羅場案件になりそうになったので『描写は』しません。