……やべぇ、あの設定忘れてた。どおりでマナのとんでも設定付け加えのところで違和感を感じたわけだ。基本、私がディケイドの二次創作を書くうえで一個決めていることがあるのですが、災いしてしまった感じに……。今更ながらこれプリキュアっていうよりもはやオリジナル小説だなと思わなくもない。
※修正しました
修正部分:よく考えたら、変身するのに条件のいる人を変身させていたため、そのあたりの記述を消去しました。
ーLUCKYSPOON SONORAMENTE 02:16 P.M.ー
また、雨が降り始めた。しつこく、粘っこく、すでにがらんどうになってしまった彼女の心をさらに蝕み腐らせるかのように、雨は降り続けていた。
響の口から発せられたその証言により、その場は灯りのついていないトンネルの奥深くに迷い込んでしまったかのように暗く冷たくなってしまった。そして、彼女の事を祝福した自分たちを恥じてしまう。まさか、彼女のお腹の子にそんな経緯があったなど、知らなかったのだからしょうがない話なのであるが。しかし、全てを知ってしまった全員は、もう誰も声を出すことなどできなくなってしまった。たった一人、彼女の親友を除いてである。
「でも……なんで響は、離れようとしたの?」
「……」
「私は、全然構わない。響に子供がいたって……」
「奏は構わなくても……周りが……」
「え?」
奏の発言はしかし、響によって否定された。響は言う。
「父親のいない子供……最初は、シングルマザーってことでやって行けるかもしれないけど、もしかしたら誰かが気がついちゃうかもしれない……この子が、強姦犯の子供って……」
そんな可能性一もないはず。だが、知っているだろうか、疑心暗鬼は人をも変え、殺してしまう可能性があるということを。この町の住人は響の子の父親なんて関係なく、彼女の、そして彼女の子供の事を愛してくれるだろう。無論奏も、奏の両親も。だが響にとっては何故か、自分の友達までも蔑みの視線を投げているような感覚が、そう感じてしまう自分も嫌になって自分自身恐ろしくなってしまうのだ。
「中絶しようとは考えなかったのか?」
そう言葉を投げかけたのは士だった。ここに、六花がいたとすれば、さらにその先も聞いただろう。正確には何周目であるかと。先ほど響は三か月前に妊娠したと言ったが、正確に言うと現在十一週目だ。現在日本の法律『母体保護法』によると、中絶手術ができる時期は、『妊娠二十二週未満まで』と決定づけられている。また、妊娠十二週未満での『初期中絶』は、母体からしてみても負担が少ない。その期間を過ぎたら二十二週まで『中期中絶』となる。これらの期間を過ぎてからの中絶手術は、倫理的な問題、母体のリスクを考慮して、いかなる理由でも認められていないそうだ。そして、これが強姦された女性が子供を産むことになる最も多い理由の遠因となっている。襲われ、妊娠した女性は、中絶を選択する女性もいるにはいる。しかし、中には出産をする人がいるのだ。何故か。それは、様々な理由だろうが、自分は大きく分けて二つの理由があると思っている。
まず一つ目、女性が、誰にも妊娠の事を打ち明けることができずに、この中絶手術ができる期間を過ぎてしまった。社会的なことを考えたのか、羞恥心が勝ってしまったのか、多分どちらかの理由に置いて襲われたという事実を誰にも相談することはできず妊娠し、その後も何とか周りの人間からも隠して過ごして、そして二十二週を経過してしまったケース。だぼだぼなワンピースなどを来て、大きくなってくるお腹を隠すことも可能である。
そしてもう一つ、私はこちらのほうが多いのではないかと考えている。それは、母性が湧いてしまったということ。いや、母性がわかざるを得なかったということ。そして、それは……。
「だって……。この子は、私の子供だから……」
響にも当てはまることだった。
「父親がどうとか、経緯とか、そんなの関係ない。この子は、今私のお腹の中で生きている命。それは、間違いのないこと……だから……だから……」
「響……」
「この子は、生きようとしているの。今ここで、必死に育って、産まれるために成長しようとしている……。父親がいないのはこの子にとって辛いことなのかもしれない……でも、それでもこの子を産んで、育てて、この子にも未来をあげたいの……そのために、どんなに重い罪だったとしても……背負うから」
彼女は、屈したのではない。選んだのだ。というのは、建前に聞こえてしまうのかもしれない。戯言に聞こえるかもしれない。綺麗事にすらならないのかもしれない。それでも、彼女は母性に屈したのではない。男に屈したのではない。ただ一つ、屈しようとしたものがあったのは事実。それは……。
「ごめんね、奏……気持ち悪いよね。父親もろくにわからない子供を産もうとしているなんて、嫌われて当然だよね……」
社会的地位、というのだろうか。彼女は思う。本当は奏にとって格好いい自分のまま、あの頃の自分のままで離れたかった。あの頃の北条響のイメージを持ったまま、別れて、彼女がちゃんとした恋愛をして、子供を産んで、家庭を持ってこの店ももっと大きくして、子供の成長をたくさんの人達と一緒に見守って、年老いて、昔の奏にとって一番格好良かった自分のイメージのまま死んでいってもらいたかった。
自分には、そんな生き方はもうできない。自分は一人、いや子供と二人きりで生きる。そして、子供もいづれは自身の父親がいない事の理由を聞く。そこで自分は、多分子供に嫌われて、大人になったら家を出ていくだろう。そしたら、自分は一人寂しく老後を迎えて、誰にも看取られずに、誰にも知られずにひっそりと寂しく死んでいく。それが、自分の罪滅ぼし……。
「昔のまんまだよ響!」
「ッ!」
だがしかし、無論それに否と唱える物、唱えたいものがいるのは確かだ。
「昔と同じ……わがままで、優しくて、これって決めたら最後まで突き通そうとする……全然、変わらないよ……」
「奏……」
彼女は、笑って言った。その笑顔は、まるで……あの日の月のように。
「気持ち悪いなんて、思わないわ。命は大事だからってだけだったらひっぱたいていたかもしれないけど……でもね、響……あなたの事をひどく言う人がどれだけいても、私は……あなたを守るから」
「……」
「私の事、信じられない?」
「ううん、信じないわけない……でも……」
響は思う。彼女の事を信じないわけじゃないのだ。当然だ。彼女は親友なのだから、信じて当然だ。しかし一つだけ、一つだけ気がかりなことがあった。
「もしも……もしもだよ、私やこの子の事がばれちゃったら……もしかしたら、この店にも……」
「大丈夫よ響考えすぎよ。それに、ここまで貴方の事を待ち続けた奏なら……ね」
と言ったのはエレンだ。
「待ち続けたって……看板の事?」
「それもあるわ響……この店、他にもなにか気がつかない?」
「他にも……?」
奏に言われた響は周りを見渡す。しかし、見たところ変わったところはない。窓の外の加音町はいつも通りの景色だし、机や椅子にも変わったところはない。商品の入っている陳列棚もいつもの通りのカップケーキが並んでいる。何も変わったところは……。変わったところは……。いや、変わっていない……。
「まさか……」
響は、スクっと立ち上がると、即座に陳列棚の前まで来て、上から下に、新聞紙を読むように目線を動かす。これも、これも、これも、これも、これも、これも……。
「これも、これも、これも……これも……全部、変わってない……」
そういえば、どうして自分たち以外の客がいないのだろうか。店は、別にcloseに鳴っているわけじゃない。それなのに、まるでここが休日であるかのようにその店には自分たち以外の客はいない、来店していない。
「まさか……」
響は愕然とした表情で膝待づき、そして突然号泣した。そう、士と海東には見えた。
「なんだ?」
「彼女は……一体?」
さしもの二人もこの状況に困惑する。それに答えたのは、先ほど電話のために席を離れていたアリスであった。
「このお店のカップケーキは一号店、つまり奏さんのご両親のやっているお店のソレと全く同じなのです」
「同じ?」
「はい……奏さんのオリジナルのカップケーキは、ほとんど置いていないのです」
「何故だ?」
「それは……私が言わなくとも奏さんが……」
その言葉通り、奏は響の下に寄って、そしてまるで肩車のように腕を回して言う。
「私の作ったケーキ、それを最初に食べてくれるのは……正直に感想を言ってくれるのは、いつも響だった。どれだけ他の皆がおいしいって言っても、響はこんなの奏が作るケーキじゃないってはっきり言ってくれた」
「だからなの?……私が、奏が新しく作るケーキを食べなかったから……新しいケーキを並べられないで……」
「うん、同じケーキだったら一号店のケーキのほうがおいしいに決まっている。だって、作った本人たちだもん。だから……でもね、これは私の自己満足……」
「奏……」
「私もね……、響とたくさん言い争いして、その後考えていたとびっきりおいしいケーキを作って、それで響と仲直りしようと思ってたの……それで、この五年間の苦しみとか、辛さとか全部、消えるような気がするから……」
「奏……ゴメン……」
「泣かないの響、お母さんになるんでしょ。だったら今ここで、私に謝って、泣いちゃダメ……響のためにも、この子のためにも……」
奏は、響の腹部を撫でながらそう言った。響の中で、何かが振り切れたような、スッキリしたような気がした。ここしばらく謝罪しかしてこなかった響は、久々にその言葉を発しようとしている。そっと、奏の手を取って言う。
「ありがとう……奏……」
二人の間に、それ以上の言葉は必要なかった。これ以上の心理面の探り合いは必要なかった。何故なら彼女たちはいま、ここで、心で会話しているのだから。
「よかった……って言っていいんだよね?」
「多分な……あいつの経験した悲劇が消えることはない。だが、その代わりあいつはかけがえのないものを手にし……そして、また取り戻した」
「かけがえのない物?」
「あぁ……」
「私にも分かる。それは……」
士とマナは、二人一緒に外を見る。そこには日差しが差し込んでいた。どうやら、雨が上がったらしい。やっぱり空は晴れている。青い空が、見えている。そら見ろ、止まない雨はないじゃないか。じめじめした気持ちだって吹き飛んだじゃないか。空から見える光の階段は、二人を導くようにこちらに差し込んでいる。それを見て、二人は奇跡的に同じことを思っていた。
「明日の……」
「希望だよ」
『明日の希望』、ありきたりの言葉なのかもしれない。しかし、ソレを罪だと思い込んでいた彼女にとって、その言葉は勇気づけてくれる最上級の想いなのだろう。
それから数分後、響は落ち着きを取り戻した。
「それにしても三か月か……確かめぐみが二か月で、マナ達が一ヶ月だから……」
「うん、順調に行って……問題なく産まれたら五人、同級生になるね」
と話をしたのは相楽夫妻である。現在十二月、順調に育って九ヶ月ぐらいで子供が産まれるとしても、五人の子供は全員同級生となる計算だ。無論、その間に流産するという最悪の可能性もあるので、簡単に言うことはできないが。
「でも、やっぱり心配だな。この子が大きくなって、お父さんはどこ?って言われるの……」
「うん、その時は私達も一緒に考えるから」
「そうそう、私達は同じ悩みを持っているんだから」
「同じ悩み?」
響はレジーナのその言葉に聞き返した。別に隠していたわけじゃないし、響にとっては同じ悩みを持っている人がいるということを教えれば、精神衛生上いいのかもしれない。そう思ったありすは笑顔で言う。
「実は、めぐみさんの子供は、誠司君との間の子供ですが、私やマナちゃん、レジーナさんの子供は父親がいないのです」
「え……?」
「それって、どういうこと?」
ありすは、スイートプリキュアのメンバーにPC細胞について説明した。流石に、そんなものが自分たちの身体に入っているなどということには、驚きを隠せない様子であるしなにより、受精卵まで生み出してしまうというその特性にも驚いていた。
「そうなんだ……」
「マナちゃんはきっと、アイちゃんを育ててた時のように子供を育てたかったんだと思います。……本当は、このPC細胞での妊娠はマナちゃんだけの予定で……マナちゃんは、それこそ響さんのように世間体から身を引く覚悟までしてました。でも、そんな悲壮な決意までして子供を産んでもらいたくなかった。だから、私やレジーナさんも……私たちは別に男性には興味はなかったですし、同じ状況にある人が多いほうが、何かがあった時に頼りになるとも思って計画を実行したんです」
「そうなんだ……」
「PC細胞か……私も店が落ち着いたら響の……」
「落ち着いたらって、お客さんいないじゃん」
「もう、誰のせいだと思ってるの?」
「ごめん、明日からは、奏の作るケーキいっぱい食べるから」
「だめよ、ケーキはしばらく禁止」
「え~なんで!」
「あのね、妊娠している時に糖質が多いの食べると血糖値が上がって『妊娠糖尿病』っていうのになるのよ」
妊娠糖尿病は、妊娠の影響で発症する糖代謝異常の一種で、妊娠前から糖尿病と診断されていたわけではなく、妊娠夕に初めて見つかったもので、糖尿病に至らない物を刺すなお、全ての妊婦の内、妊娠糖尿病と診断される割合は、十%弱と言われており、流産や・早産の可能性もあり、また胎児に対しても発育不全や胎児機能不全といった物、また新生児低血糖にまで派生する恐れがあるのだ。因みに、響が知らないのは若干問題がある気がするが、奏は専門学校で習ったから知っているとしておく。
とりあえず、子供の事を思って言ってくれたのだから、響も納得はするがしかし、ボソっと小声でちょっと冗談で、本当に冗談でホンネを言ってみる。
「……ケチ」
「ケチってなによ!私は子供の事を心配して言ってるんでしょ!母親の自覚ないんじゃないの!」
「そこまで言う!?私は、少しぐらいだったらいいんじゃないのって言ってるの!」
「少しぐらいって、響は昔っからそう言って、ケーキワンホール簡単に食べてたじゃない!」
「昔の話じゃない!私だって自制できる……かも」
「かもってなによ!妊婦でも食べれるように糖質制限したケーキを考えるから、それまで我慢しなさい!大体響はいつもいつも……」
二人の喧嘩、その様子を見て、特にエレンとハミィははにかんだ。あの時のような光景、中学生の時のような二人が帰ってきたということ、その様相にを懐かしく思い、そして見守っていた。これからもたくさんの辛い経験をしていくことであろうが、しかし彼女達なら乗り越えることができる。そう思えてならなかった。
ふと、マナは周りを見た。いつの間にか、士&海東とありすの姿が見えない。少し視点を変えてみると、彼らは入口のすぐそばで、三人そろって窓の方を向いて話し込んでいるようだった。マナも聞き耳を立てに三人の側による。
「……それで、話とは?」
「……ウィーンの監視カメラの映像を見せなかったのは、あそこに子供のめぐみたちがいたからか?」
「はい、流石に……R-18という物です」
ウィーンの監視カメラとは、四葉本社で見たあれであろうか。確かに、ウィーンの映像だけモザイクがかかっていたが、それが警察が見たという監視カメラだったのか。ということは、響を襲ったのはあの男だったのだろう。なるほど、確かに幼い彼女たちが、実際の光景でなくても、響が攫われる様子が映っていたとすれば、多少なりともトラウマになって今後の人生に影響を与えかねない。……男性恐怖症とか。
「それで士、彼女をここまで連れてきて聞きたいことはそれだけかい?」
「いや、本題はここからだ。ありす、現場の様子をちゃんと見たお前に聞く」
「はい」
そして、士は外を親指で指して言う。いや、これはどちらかと言うと……。
「現場に窓はどれくらいあった?」
「はい?」
「いいから、どれくらいあったんだ」
「えっと……それなりに、大きい窓もありました。ショーウインドウもあったりして、十分に中の様子も見れる……」
「大体わかった。つまり、窓ガラスはたくさんあったということだな」
「なるほど、つまり士は……」
海東が士の言葉の真意を聞こうとしたその時、ありすの電話が鳴る。
「あっ、すみません。席を外します」
ありすはそう断ると、先ほどのように店の外に出て携帯を取った。それを見たマナは、入れ替わるように士の隣に立って言う。
「士さん……窓ガラスが何かあるの?」
「あぁ……響」
「ストレスを溜めないことだって赤ちゃんにとって……え?」
喧嘩中の響は、士のその言葉に振り返り、と同時に他の面々も士の方を見た。これを当事者に言うべきか、少しだけ迷った。だが、これを聞いた後にどうするか考えるのは彼女自身だ。別に丸投げしようとは思っていない。だが、このまま奴との戦いに入って、その中で真実を知った場合の精神的な動揺の可能性や、もしかすると奴がその情報を精神的揺さぶりのための最終兵器として使うかもしれない。ならば、ここで教えておいた方がいいだろう。
「ウィーンでお前を襲った男は……十中八九『遠藤止』だ」
「遠藤……」
「止ッ!?」
「って誰?」
響と奏とエレン、そしてハミィの三人へ簡単に説明した。
「遠藤止……そいつが、響を……」
「許せないニャ!」
当然だが、エレンとハミィは激昂する。しかし、意外なことに当事者であった響の心はそれほど動かされることはなかった。彼女自身何故なのかは分からなかった。むしろ、なにやらうれしくも思って……。
「響ッ!」
「え?」
少しにやけている表情をみて、奏はまずいと思った。もしかすると彼女は、自分の子供の父親が判明したことにうれしく思ってしまったのかもしれない。子供に向けている愛情をまた別の異性に向けられるという事実に喜んでしまっていたのかもしれない。それも、無意識に。奏は、このままだと響が戻ってこれない気がしてならなかった。
「ダメよ響、嬉しそうにしたら。分かってる?遠藤止って人は、貴方から何もかも奪おうとしたのよ。ピアノも、人生も、友達も、響自身もッ!」
「ッ!」
「だから、響は怒らないといけないの!うれしく思ったらだめ。憎しみだけを向けろとも言わないわ。でも、ここで子供の父親が分かったってことに喜んだら、貴方はきっと戻ってこれなくなる!お願い響ッ、怒って……怒りなさい、北条響!!」
「……」
響は、その言葉を受けて胸に手を当てて考えてみる。自分はどうして、にやけてしまったのだろう。喜んでしまったのだろう。怒らないとならないのに、どうして……。自分はあの男によって何を失った。いや、逆に何を得たのか考えてみよう。そうすれば喜んだ理由が考えつくかも。第一に思い出したのは、やはり子供の事。あの男によって、自分は子供を持つことができたということに喜んでしまったのだろうか。いや、どうして喜ぶことができたか。先ほどまではあんなに将来に悲観的だったというのに。そうだ、奏だ、エレンだ、ハミィだ、皆だ。皆が、自分の事を、子供の事を受け入れてくれた。だから喜ぶことができたのだ。そうだ、遠藤止という男のおかげで喜ぶことができたんではない、自分は友達皆のおかげで、子供ができたということに喜ぶことができたのだ。それから多分もう一つ、父親の名前を教えられないという罪悪感が昇華されようとした。そのことの感謝が心のどこかにあったのかもしれない。でも、感謝してどうする。確かに、この子の父親はソイツかもしれない。しかし、それを認めてはいけないのだ。母性を、そんなやつに向けてはならないのだ。一つ、また一つと自分が喜んでしまった理由を紐解いていく響、そして残り、フツフツと湧いてきたのはただ一つ……。
「……ありがとう、皆。私どうかしてた……」
「響……」
「確かにそいつはこの子の父親かもしれない、でも……それを認めたら私は、屈したことになっちゃう……それだけは絶対に、私が許さないッ!」
正しき怒り。故に彼女もまた、立ち上がった。
「ここで決めなきゃ女が廃る……行こう、皆!」
「その意気よ響」
「うんっ……」
こうして、彼女もまた戦うことを決心した。とはいえ、響はプリキュアメンバーの妊婦の中では一番妊娠月数が長い。PC細胞の効果があるものの、戦闘の許可が出るかは、看護師であるはるかや医学生の六花、それからもう一人研修医として四葉本社の隣にある病院にいる彼女、または一般の医師などの許可が必要であろうとマナは考えていた。
「それからもう一つ」
と、士が言った。この期に及んでまだ何かがあるというのだろうか。そこにいる者たちは、かたずをのんでそれを聞こうとした。
「ウィーンでの大量失踪事件……あれの犯人も分かった」
「え?」
「響やありすの情報から察するにあれは……」
「皆さん!少しよろしいですか!」
その時だ、ありすが息せき切って店に入ってきた。どうしたと聞いたのは誰だったか、ありすは息を整えると言った。
「迎えに行かせたセバスチャンからの連絡です。先ほど、城南大学のほのかさんたちが襲われました!」
「えっ!?」
「遠藤か!?」
「いえ、現れたのはザケンナーやウザイナーと言った私たちがよく知る敵……それと……」
「それと?」
その次に出た名前。その場にいた者たちは思いもよらない名前に驚愕するしかなかった。
「キュアブラック……美墨なぎささんです」
「え?」
世界は、混沌とした時を刻むばかりであった。
本当は、二万文字くらい使って彼女の心情を表現しないといけないのだろうが、前回のアレ以上にやりすぎるのは読者にとっても苦痛だと思い、この辺りで踏みとどまりました。
……つい最近、ある遊園地のヒーローショーの映像を見て、元々なかった自信が地下にもぐってしまいました。あぁ言うのがかけるところまでを、目標にした方がいいのだろうか。
余談:この前のアニサマ、キラキラプリキュアアラモードのグループが経歴的な意味で一・二を争うほど豪華だったんじゃないかと思うのは自分だけだろうか(宝塚OG、初音ミク(正規選出じゃないらしいが紅白歌手も一名)etcetc)。