ーぴかりが丘河川敷 00:57 p.m.ー
「それじゃ、大学生の時に?」
「うん、リコやはーちゃん、魔法界のみんなと再会したの」
過去の朝日奈みらいは、未来の朝日奈みらいから自分たちが最終決戦の後一度離ればなれになり、みらいが大学生の時に魔法界と、この世界が繋がってまた再会したのだと聞かされる。因みにみらいは現在外務省で働いて、近々ブルースカイ王国の大使館に職員として就くことが内定されているそうで、義理の妹も連れて行こうとしているそうだ。また、リコは魔法学校の教職員に、ことははよくわからないが、はるか遠くから世界を見守る役目をやっているらしい。
「私が魔法学校の……」
「おめでとうリコ」
「この私が先生になれるかなんてまだ分からないんだから、その言葉はまだ言わないで」
「うん」
リコは、別段未来の自分の事ではあるが、まるで他人事のようにそう話した。たしかに未来のリコは自分の未来かもしれないが、平行世界の自分である可能性だって考えている。それに、未来のみらいが今の自分たちのような経験をしていないと言っているから、どちらかと言うとやはり平行世界なのだろう。だからと言って、うれしいのは変わりない。みらいに出会って、ナシマホウ界に行って自分は大きく変わることはできた。かつてはどんな魔法を使っても失敗ばかり。プライドが高すぎて自分は失敗を自覚している物のそれを、特に最初に出会った頃のみらいに対してはあたかも失敗していないように装っていたりした。座学は学年トップレベルだが、魔法の実技は学年ワーストレベルで、一時期は魔法学校からの退学も進められたこともあったが、そんな自分が未来では先生をやっているというのだから驚きである。……ってあれ?ね、ちょっと。
ー現在 ハルケギニアー
ルイズが、話を途中で止めさせたのは、あることに気がついたからだ。
「ねぇ、なんかこのリコって子に親近感が湧くんだけれど」
「あぁ、確かにルイズそっくりだな」
プライドが高く、座学がトップレベルなのに魔法がからっきし。そして、リコは伝説の魔法使い、ルイズは伝説の虚無の魔法をと、どちらも伝説が付くような存在をその手にした。おまけに、リコはみらいに、ルイズはサイトに出会わなければ学校退学の危機に陥っていたというところも似ているし、優しい姉がいるというところまで似ている。何となくだが、ルイズはこのリコという少女と仲良くできそうな気がしてならなかった。
ー余談終わりー
一方過去のはーちゃんはと言うと。
「初めましてモフ。モフルンモフ!」
「モフ!こちらこそ初めましてモフ!モフルンモフ!」
「はー、モフルンは変わらないのね」
「モフ!」
モフルンズと会話をしていた。モフルンはぬいぐるみであるために、成長という物から一番遠い位置にいる妖精であり、どちらかと言うと縫い目がほつれて直した箇所が多いほうが未来のモフルンというしかないのだが、みらいが大事に大事にしていた未来のモフルンは、それほど損傷していないため、遠くから見ればどちらかは分からない。と、ここでみらいの未来、いや未来のみらい…‥‥大人みらいが子供みらいたちに聞いた。
「ねぇ、あなたたちは私たちと同じようにデウスマストを倒したのよね」
「うん……それで、私たちも離ればなれになったはずなんだけど……」
「えぇ、気がついたら空の上にいたのよ……」
その日、二つの世界が融合しかけていた。みらいたち魔法使いプリキュアの面々はそれを食い止めるために戦い、そして最後の敵、デウスマストを倒したところまではよかった。しかし、強い力で融合しかけていた世界を引き離した反動で、二つの世界の道は閉じられ、三人はそれぞれ離ればなれになる。そう聞かされていたし、覚悟も決めていたはずだった。だが、いざ戦いが終わってみると、気づいたら空の上。そりゃびっくりするわけである。しかも、もう一つ彼女たちは驚くべきことがあった。それが……。
「それにしたって、どうして魔法の杖まで消えちゃったのかしら……」
「うん……」
それは、リコとみらいがつい先ほどまで持っていたはずの魔法の杖の事。魔法の杖は、魔法界に住んでいる者全員が持っているもので、子供が生まれる際に世界から贈られる贈り物と呼ばれているものだ。なお、みらいの場合初めて魔法界を訪れた際に老木から与えられたものだ。そうして、彼女たちは約一年に渡って様々な魔法を使ってきた。しかし、そんな魔法の杖が、突如この世界にやってきた途端に消失してしまったのだ。こんな事、無論初めての出来事だ。因みに、ことはの魔法の杖もまた同じく消失してしまったらしいし、一体どうなっているのだろうか。さらに、ことはが驚いたような声を出した。みらいとリコは、どうしたのかことはに聞いた。
「はーちゃん、どうしたの?」
「これ……」
そう言ってことはが取り出したのは彼女が変身するときに使用する道具であるリンクルスマホンである。いわゆる手帳の形をしているソレは、通常は桃色となっている。のだが……。
「え?」
「なに、これ……」
「こんな事って……」
はーちゃんの持っているソレは、色を失ってしまったかのように灰色に染まっており、まるで石のようになっていた。そして、ことはがそれに触れた瞬間、それは砂となり代わって、風によって空にばらまかれてしまった。
「そんな……リンクルスマホンが砂になっちゃった……」
「どういうこと?」
「分からない。大学生の時にはーちゃんに再会した時もちゃんと持っていたのに……どうして?」
みらいが大学生の時にことはやリコと再会し、そしてプリキュアになった時も、ことははちゃんとリンクルスマホンを持っていた。過去からタイムスリップした反動だろうか。よくわからないが、まさか……。
「みらい、リコ、あなたたち変身してみて」
「え?」
「わ、分かったわ……えっと、あれ?」
大人のみらいから言われたことを実践しようと、リコがモフルンをいつものように持ち上げようとしたその時だった。あることに気がつく。
「「モフ?」」
「ど、どっち?」
モフルンが二人、どちらが過去のモフルンで、どちらが未来のモフルンだろうか。いや、もしかするとどちらでも変身することができるかもしれないが、しかしここは確実性を高めるために過去のモフルンの方がいいだろう。だが、どっちだ。
「何言ってんのリコ。こっちのモフルンが、私のモフルンだよ」
「「正解モフ!」」
と言って、みらいが一方のモフルンを抱えると、二人のモフルンは肯定した。実際の所、一年近くモフルンと一緒にいるが、違いがあまりよくわからない。どうして彼女はそれが分かるのだろうか。それは、おいおい考えていくということで。
「それじゃ、始めましょう」
「えぇ」
そして、二人はいつものように手を繋いで言う。みらいが右手を、リコが左手を上げて言う。
「「キュアップ・ラパパ!!」」
それは、大人のみらいが過去の自分たちを助けるために使った魔法の呪文だ。これは、魔法界で使われる魔法の呪文でもありながら、彼女たちがプリキュアに変身するためにもつかわれる。続いて、彼女たちは言う。
「「ダイ……ア?」」
しかしおかしい。いつもだったら宝石の名前、リンクルストーンの名前を唱えた瞬間にはそれに対応するリンクルストーンが出現するはずだ。それなのに、出ることはない。それどころかいつもなら服も呪文を唱えたときには光に包まれて準備ができていたはずだ。それなのに、変身することができない。まるで、変身する能力を失ってしまったように。
「嘘……」
「プリキュアに、変身できない……」
これは、初めての事例だ。こんな事今までにないこと。一体、自分たちに何が起こっているというのだろう。そして、リコはさらにもう一ついつもと違うことについて気がついた。それは、みらいの手である。いつもと感触が違う。何が違うというのだろうか。リコは、手を離してみらいの手を見る。すると、すぐにわかった。リコはみらいに聞く。
「ねぇ、みらい……この指輪は?」
「え?」
未来は自身の手のひらを見る。そしてそこでようやく気がつく。左手の中指に、見知らぬ指輪がはまっていたのだ。
「なんだろうこれ?」
こんなもの、自分ははめた覚えはない。いつの間にはまっていたというのだろうか。そして、それに見とれていたみらいの耳にその言葉が入ってくる。
「あっ、私の指にもついてるわ」
「はー、私にも……でも、綺麗……」
どうやら、リコとことはの指にも指輪がはめられているらしい。みらいとリコは変身能力を、ことはは変身アイテムを失った代わりに、指輪が与えられた。この指輪は、一体どういう意味があるというのだろう。今の彼女達にはよくわからなかった。
「この指輪……何なんだろう?」
と悩むのは過去のめぐみも同じだった。彼女もまたいつの間にかその手に指輪がはまっており、変身アイテムのプリチェンミラーも消失してしまった。だが、それはさておきである。
「まさかあの誠司が不倫ね……」
「それも私となんて、自分でも信じられない」
未来のめぐみとひめから、誠司がゆうこと不倫しているなどということを聞いて過去の四人はそれぞれに驚いていた。めぐみと誠司が結婚するだろうなとは何となく思っていたが不倫に関しては驚愕である。未来のめぐみは言う。
「ごめん。ゆうこ、私あなたの事を……」
「めぐみちゃん、ゆうゆうって呼んで今みたいに」
「ゆうこ……」
「それに、謝るのは私じゃなくて、未来の私でしょ?」
「……うん、そうだね。ゆう……」
その先の言葉は出なかった。何となく、出ることはなかったのだ。確かに、過去のゆうこの言う通り、謝るべきなのは未来のゆうこ、そして話し合うべきなのは未来のゆうこのはず。それなのに、彼女は話し合うどころか一方的に罵って、そして危なく殺しかけた。今の自分が、彼女に会いに行くことなんてできるだろうか。
「大丈夫だよ。めぐみ」
「え?」
そう未来のめぐみに声を賭けたのは過去のめぐみである。
「未来のゆうゆうは、きっと何も変わっていない。今までだってそうなんでしょ?」
「……うん、昔と同じ……それは、私も分かっている」
「だったら、話そうよ。話さないと、何もわからないって、相手を誤解したままなんて悲しいだけだって、私たちはあの戦いで学んだじゃん」
「めぐみ……うん」
めぐみが、ゆうこと話し合うことを決意した。一方で、非常に悲しんでいる者が一人、いや一体いた。
「もう、そんな泣かなくていいじゃん」
「これが悲しくないわけありませんわ!十年たってもひめは姫の自覚も持たずにこんな……おいたわしや」
「まぁまぁ、私は別に気にしてないから」
「ひめが気にしていなくても!私が気にするのです!!」
十年たっても一切変わらなかったひめ。それどころか、大事な公務をすっぽかしてしまうなど、リボンは自分と、未来の自分の不甲斐なさに悲しむばかりであった。
「それにしても大人の私か……」
「なに?」
「ううん、想像がつきそうにないなって」
「そうそう。私もそうだったな……」
ひめズ。たそがれる。河川敷から見下ろす大きな川。二人は思う。この景色はあまり変わっていないと。川のせせらぎ、鳥の鳴き声、近くを通る車の音。その何もかもが十年前とほとんど変わらない。変わったのは、自分の身長のみ。大人になると子供の頃の純粋な気持ちを忘れるなんてよく言われるけれど、あれは嘘だ。自分は覚えている。あの頃の自分も、あの頃の友達も、あの頃の純粋な心も。
「変わらないっていいよね」
「うん」
そう、ひめがつぶやいた瞬間だった。あたりに声が響く。
「そう!変わらないことほど尊い物はない!」
ひめたちはもちろん、士達もその声の主を探す。その間にも声は言う。
「だが、お前たちは変わってしまった!もう、あの頃の君たちは死んでしまったのだ!!」
あの頃の自分達?昔の自分たちを知っているというのだろうか。傲慢、緩慢、そう言った言葉が似合いそうな声の主。彼女たちはついにその姿を河川敷の堤防の上に見つけた。
「誰?」
「初めまして、嫁」
「はぁ?」
「いや、正確には元嫁といった方がいいだろう」
男は、何やら勝手に話を進める。
「全く、原作から十年もたった後の世界に飛ばされたときにはあのクソジジィを殴り飛ばしたいと思ったが、過去からタイムスリップしてくれるなんてまさに奇跡!まさに主人公補正!!」
「何言ってんの?てか、だからあんたは誰?」
「おうおうおう、失敬。もう、興味の欠片もないとはいえ、君達にも教えておこう」
「むっ、なんかいちいちしゃくに触る言い方だこと」
「私は、この物語の主人公。ウィリアムズ・ワールズ・エンド!」
瞬間、あたりを冷たい風が吹き晒した。物語の主人公という時点で変なことを言っているが、なんだ、ウィリアムズ・ワールズ・エンドって。どう見ても日本人であろうに。あれか、今や絶滅危惧種に指定されている中二病というやつですか。大人のめぐみは言う。
「それで、その遠藤さんが何の用事でしょうか?」
「遠藤じゃない!私は、ウィリアムズ・ワールズ……」
「御託はいい。結局はなんの用事で来た遠藤」
「……ディケイド」
「ん?」
士は、遠藤から発せられた声が聞こえた。小声で、聞き取れない者も多いかもしれないがしかし、士は普通の人間とは違って耳はいい方なので、それを聞くのは容易にできた。
「俺の事を知っているのか?」
「あぁ、もちろん。仮面ライダー史に残る最大の駄作」
「駄作?どういう意味だ?」
「そんなこと、お前が知っていいものではない」
そして、遠藤はポケットから何やらゲーム機らしきものを取り出した。いや、もしかすると……。士があることを危惧し始めたあたりから、遠藤はそれを腰に取り付ける。瞬間、やはりベルトがまかれていく。予想通り、あれはライダーベルトだったのか。だが、あんな形の物見たことない。一体あのライダーは何だというのだろう。
「君に見せてあげよう。最強の仮面ライダーの力を……今こそ、審判の時……」
そして遠藤は、なにかおもちゃのようなものを取り出し、ボタンを押す。すると、おどろおどろしい音声が流れだす。
≪仮面ライダークロニクル!≫
そして、遠藤の手を離れたソレは、ベルトのスペースへと突き刺さる。
≪ガシャット!≫
「変……身」
そして、遠藤がベルトの左側のボタンを押す。
≪バグルアップ!≫
≪天を掴めライダー!刻めクロニクル!今こそ時は極まれり!!≫
瞬間、その電子音と共に頭の上にブレイドが変身するときのようなものが現れ、後ろには大きな時計が。時計は、真ん中から半分に割れて、そこに書かれていたローマ字の数字がベルトの周りに収まるように縮小されて集合する。そして、最後に頭の上に現れた画面が上から下に通り過ぎた瞬間、緑を主体とした仮面ライダーが現れた。
「仮面ライダー?」
「だが、あんな仮面ライダー見たことは……」
「お前たちが知らないのも無理はない。私は最新、そして最強の仮面ライダー、クロノス」
「クロノス?」
仮面ライダークロノス。そんな仮面ライダー知らない。自分の知らない別の世界で生まれた仮面ライダーだろうか。世界は無数にある。彼が知らない世界で生まれた仮面ライダーだって当然いるはず、いやいなければおかしい。ともかく、あの男が最強の仮面ライダーと評する仮面ライダー、一体どのような力を持っているのだろうか。
「最強の仮面ライダーか。いいね、そのベルト……僕がいただこう」
「フッ……」
≪ポーズ≫
「ぐあぁ!」
「がぁ!」
海東がディエンドライバーを取り出した瞬間電子音が響き、士と海東が傷だらけで地にひれ伏す。そして、ディエンドライバーはクロノスが持っている。これが、先ほどの間に起こった出来事だ。
「え?」
「今、何が……」
周りの人間には何が起こったのか分からなかった。気がついたら、士と海東が倒れていたとしか認識することができなかった。一体、どうしたというのだろうか。マナとレジーナが二人に駆け寄った。
「士さん!海東さん!」
「ちょっと、大丈夫なの!?」
「くっ……」
士は何とか立ち上がる。口の中を切ったのだろうか。出血が口から確認できる。
「おい、海東……あいつ……」
「あぁ、信じたくはない。けど……」
「このまま殺すのも面白い。そう思わないかい?」
そう言ってクロノスはディエンドライバーの銃口を士と海東に向けた。それをみて、プリキュアたちは行動に映る。
「シャルル!」
「ラケル!」
「シャル!」
「ケル!」
変身できないはるかと、単独で変身することのできないみらい以外の人間は、プリキュアへと変身しようとする。しかし……。
「残念。遅すぎる」
≪ポーズ≫
「え?」
「ラケル?……ラケル!」
目の前に、本当にすぐそばまで来ていたシャルル、そしてラケルはしかし、気がついたらいなくなっていた。
「あれ?私のプリチェンミラーが……」
「あっ、私のも!」
「モフルン?モフルンまで……」
大人のめぐみも含めたハピネスチャージプリキュアのプリチェンミラー、そして二人のモフルンも消え失せてしまった。クロノスの姿と共に。
「やっぱりか……」
「やっぱりって?」
士は、マナの問いに答える。
「おそらく、あいつは時を止めることができる」
「え、それじゃシャルルたちは……」
「あぁ、奴に連れ去られたと考えるのが普通だろう」
「そんな……」
変身アイテムを奪われた。それだけならまだいい。マナや六花、みらいたちにとってはパートナーである妖精を奪われたのだ。悔しさも倍だろう。そして、もう一人……。
「あれ……ねぇ、めぐみは?」
「え?私ならここに……」
「違うわよ。私たちの方のめぐみよ!」
いおなの言葉に、周囲の人間も見渡す。だが、そこに愛乃めぐみの姿は見当たらなかった。
「まさか……」
突然現れた遠藤が変身する仮面ライダークロノス。奪われた変身アイテム。そして、親友と愛乃めぐみの誘拐。この展開の速さは、ちょっとやそっとで予想できるものではなかった。
これが私の思うーーーです。
なんとなくゼロの使い魔と魔法使いプリキュアのクロス小説が書きたくなってきた。
あとついでに何話か前の未来に対する超裏設定の続き。四葉財閥は孤児院も経営してて、みらいはそこにいる熊のぬいぐるみを持った女の子と仲良しだった。伯父さんに引き取られる予定だったけれど、身辺調査の結果その子を養う財力はないと判断されてそのまま孤児院にいた。のだが、友達といる時にも、母がいない寂しさという物をその子の顔に見たみらいが養子縁組を結ぼうとする。しかし、みらいの母の今日子に、まだその子を養うほどお金に余裕がないことを理由に猛反対され断念した。のだが、それからすぐに母が普通養子縁組を結び、朝日奈家で一緒に暮らしているのだ。噂によると、彼女の持っている熊のぬいぐるみもモフルンのように話し始めたとか……。これを本編に組み込むと流石に怒られるのでその少女が現れることはたぶんないと思います。