この素晴らしい世界でイチャイチャを!   作:部屋長

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初めてのお泊まりは彼と彼女の関係を少しずつ深めていく。

 

 特に問題もなくジャイアントトードを倒した俺とゆんゆんは、クエストの報酬を受け取ってから銭湯に行き、そしてまたギルドに戻ってきた。

 多分というか確実に、ここまですんなりと物事が進んでいったのはゆんゆんのおかげだ。感謝しかない。

 

 仮に彼女とこれからもパーティーを組んでいくのなら俺の成長も必須だ。ということで、ゆんゆんより早く銭湯から戻った俺はスキルを習得しておくことにした。

 ジャイアントトード4匹を討伐して上がったレベルが4。得たスキルポイントが3だ。駆け出しほどレベルが上がるらしい。

 

 初期職業の冒険者の最大の利点は、人にそのスキルを教えてもらえば何でも覚えられるということだ。備えあれば憂いなしともいうので、俺は溢れ出るコミュ力を活かしてギルド内にいた冒険者全員からできるだけ色々なスキルを教えてもらった。

 

 うん、完全にアホです。カードにある習得可能スキルって項目がえらいことになってる。

 初級魔法やら片手剣スキル、大剣スキルにその他もろもろ。

 

 基本的に1ポイントで覚えられるものを多めに教えてもらった。なのですぐに実戦で使えそうな《短剣》スキルと《初級魔法》スキルを習得することにした。

 短剣はゆんゆんから貰った物を活かせやすくなるはずだし初級魔法はもちろん魔法だし。初級だとしても魔法なら戦闘にも使えるだろ。

 ……うん、覚えた。覚えたんだがあんまし実感はないな。身体にもっと影響があると思ったらそうでもないし。

 

 スキルを習得し、ギルド内を教えてもらった人達にもう一度ぺこぺことお礼しながらうろついていると、ちょうど銭湯からゆんゆんが戻ってきた。

 

「あ、タクミさん」

「おう、おかえり。飯にするか?」

「は、はいっ!」

 

 嬉しそうに頷くゆんゆん。だが、風呂から出たばかりだから少しだけ上気した頬が妙に艶めかしくて、視線のやり場に困ってしまう。

 俺には何が旨いかは分からないからメニューは全てゆんゆんに任せて注文をする。しばらくして来た定食を食べることにする。

 

「もしかしてこれってカエル?」

「そうですね。ちょっと硬いですけど意外と美味しいんですよ」

 

 そう言い、ゆんゆんははむはむとそれを食べる。そう、はむはむと食べているのだ。

 

「はむっ……はむっ……」

 

 うん、その食べ方超可愛いです。ただ食ってる物がカエルだと何か複雑です。

 

「あ、そうそう。ゆんゆんが戻ってくる前に俺スキル覚えたんだわ」

「わっ、初めてのスキルですね! ちなみに何を覚えたんですか?」

「短剣スキルと初級魔法」

「ん、んー……そ、そうですか」

 

 ゆんゆんの表情は少し複雑だ。何かまずかっただろうか。

 

「もしかして駄目な感じか?」

「い、いえ、短剣スキルは全然良いんですけど、初級魔法を覚える人はけっこう珍しくて……」

「え、これ戦闘に使えない感じ?」

「……はい」

 

 おうふ……マジですか。まぁ短剣スキルは良いらしいしあと1ポイントは余ってるしな。今度からはゆんゆんに聞いてから覚えることにしよう。

 

「ああ、そうだ。聞き忘れてたんだけどゆんゆんはこの後どうするんだ?」

「えっひょ、わひゃひはやひょをかひへ……」

「や、とりあえず飲み込めよ。ほんとに何言ってるか分からないから」

「んっく……ご、ごめんなさい」

 

 頬を朱に染めて照れながらうつむくゆんゆん。可愛いです。

 

「……それでどうすんだ?」

「えっと、私は借りれたら宿で宿泊しようと思ってます」

「もうけっこう遅い時間だと思うんだけど大丈夫なのか?」

「は、はい。多分大丈夫です」

 

 んー……ゆんゆんをここに呼び戻した原因は俺なんだしな。しかしこれは聞いてもいい事なのか……。

 ……うん、まぁ、一応な。断られたら断られたでそれでいいし。

 

「もし良かったら俺の家来るか?」

「へ?」

「あー、えっと、宿で泊まって金使うくらいなら俺の家で泊まったほうが経済的にもいいんじゃねって話」

 

 女子相手にこういう事は慣れてないので恥ずかしくてついまくし立ててしまう。正直かなり情けないがここまで迷惑をかけたんだからなるべく彼女の役に立ちたい。

 

「そ、それってお泊まりってことですか……?」

「ん、そういうこと。男一人の家だし不安なら全然断ってもいいんだぞ」

 

 まぁ昼間のゆんゆんの魔法見ちゃった時点で勝ち目ないのなんて分かってるけど。もちろん襲う気も全くないです。

 

「お泊まり……パーティーメンバーとお泊まり……」

 

 小さな声でぽしょぽしょと何かを呟くゆんゆん。正面にいるのに聞こえないくらい小さな声だ。

 

「やっぱ嫌か?」

「い、いえ! し、したいです!」

「お、おう。じゃあ食い終わったら行くか」

「はいっ!」

 

 嬉しそうな表情で飯を食べるのを再開するゆんゆん。ううむ、こんなに純粋な子が今までパーティーも組んだことないってどういうことなんだ……?

 まぁ、うん、とりあえず俺はゆんゆんに変なことしないように心がけないとな……。

 

××××××

 

 飯を食べ終えてからゆんゆんと歩いて屋敷まで戻る。道中はそこそこ距離はあるがゆんゆんが楽しそうに話し続けるので全然苦にはならなかった。

 

「やっぱり大きいですねこのお家。というかこれってもう屋敷なんじゃ……」

「うん、完全に屋敷だろうなこれ。家賃半端ないらしいし……」

「いくらなんですか?」

「え、えっとな……」

 

 周りに人がいなくてもあんまり金の事情を普通に喋るのはあれなので、ゆんゆんの耳元辺りに口を添えてごにょごにょと伝える。くすぐったかったのかゆんゆんの身体が少しだけぶるりと震えた。いや、多分この震えは家賃の高さだろうけど……。

 

「た、高いですね……」

「だからこれから毎日頑張るしかないんだわ……。とりあえず入るか」

「は、はい」

 

 ゆんゆんより先に歩いて玄関のドアを開け、屋敷の中へ案内する。一階の広間に行くとゆんゆんが驚いたような声を上げる。

 

「わぁ……っ!」

 

 見ると、ゆんゆんは年相応の女の子のように目をきらきらと輝かせていた。表情がころころと変わるのが彼女の魅力とも言えるのだうろか。

 

「す、すごいです!」

「な。俺もすごいと思う。寝室とかも行ってみるか? 俺一人しか住んでないけど一応綺麗にはしてるから」

「は、はいっ!」

 

 後ろをとてとてと付いてくるゆんゆんと一緒に二階の寝室へ行く。一応何かあった時のために俺の隣の部屋だ。

 

「ここがゆんゆんの寝室ってことで好きに使っていいから。俺はリビングにいるから何かあったら来てくれ」

「あ、ありがとうございます」

「礼は俺が言いたいくらいだから気にしなくていいよ。んじゃまた後でな」

 

 ぱたんと寝室のドアを閉めてそそくさと一階の広間に戻りソファーに倒れ込む。

 

 じょ、女子を家に連れ込んでしまった……!

 

 いや、決してやましいことをする気はないんだけどやっぱり緊張してしまう。それに、会って一日も経ってないけどあの子といると楽しいと思えてしまうからなおさらヤバい。

 まぁ今日はどうせ明日からのことを決めるだけ決めて寝ておしまいだけどな。むしろ他のイベントは起こってしまうと精神的によろしくない。

 そんなことをぐだぐだと考えていると、二階からゆんゆんが戻ってくる。

 

「た、タクミさん」

「どうした?」

「え、えっと、その……」

 

 唇をもにょもにょと動かして何か言いたそうな視線を向けてくる。やっぱりまだ俺と話すのは慣れないんだろうな。しかも人の家ならなおさらだ。

 

「パーティーメンバーなんだし遠慮しなくてもいいんだぞ」

「……せ、せっかくのお泊まりですし、その、……お、お話したいです」

「お、おう。全然いいぞ。とりあえずこっち来ないか?」

 

 こくこくと恥ずかしそうに頷いて、俺の隣に座ってくるゆんゆん。人一人分くらいの感覚がお互いにとってちょうど良いくらいだ。まぁさっきのが可愛いすぎてめっちゃドキドキしちゃってますけど。

 

「んじゃ、何話す?」

「え、えっと、な、何も考えてないです……」

「……じゃあお互いのこと話すか? あんまし素性知らないのもあれだと思うし」

「そ、そうですね」

「んー、名前は紹介したからそれは置いといて。年は16、……あとは話すことないな」

 

 日本のこと言ってもしょうがないだろうし。

 

「あ、意外と歳近かったんですね。私は13歳です」

「……今なんて?」

「13歳です」

 

 ……ちょ、ちょっと待って。これは非常にマズいのではないでしょうか。

 え、じゅ、13歳……? 日本基準だと中学一年生を家に連れ込んじゃったってこと……?

 それも変なスイッチで急に呼び出して……。や、ヤバい、捕まる……!(錯乱)

 

「ど、どうしたんですか? 顔真っ青ですよ?」

「あ……いや、何でもない。えーっと、その、ゆんゆんは一人で冒険者やってるんだよな?」

「そうですよ?」

「親は何か言わなかったのか?」

「えっと、立派なアークウィザードになるんだぞって」

 

 ……そうだった。ここは異世界なんだったっけ。

 

「この世界って何歳から大人なんだ?」

「もちろん15歳ですよ? この世界ってタクミさんは独特なことを言いますね」

「あ、あー……遠くから来てそこら辺はちょっと無知だから気にしないでくれ。と、とりあえず助かった……」

「はい?」

 

 いや、別に助かってないよなこれ。つーことは俺はもうこの世界だと大人ってことなのか。

 これからはちゃんと自己責任を持って生きようと思います……。

 

「んー、あとはそのことについては話すことはないな。それじゃ明日からについて決めるか?」

「は、はいっ」

「えーっと、ゆんゆんは明日からも俺とパーティー組んでくれるってことでいいんだよな?」

「え、えっと、本当にいいんですか? 私と一緒にいてもつまらなくないですか……?」

 

 ゆんゆんは不安げに表情を少し暗くさせて聞いてくる。膝の上できゅっと力いっぱい握られた両手がより彼女の不安さを伝えてくる。

 ……俺から言えるのは一言だけだな。

 

「俺はゆんゆんと一緒にいて楽しかったぞ」

 

 言うと、ゆんゆんは頬を真っ赤にして嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。

 

「う、嬉しいです……! 私もタクミさんとお話するの楽しかったです!」

「ならよかった。じゃあパーティーはこれからお互いに何もない限りずっと組むってことでいいか?」

「は、はいっ! よろしくお願いします!」

 

 ぱぁっと表情を明るくさせてぺこぺこと頭を下げるゆんゆん。可愛らしく胸の前で小さくガッツポーズをした。

 

「おう、こちらこそよろしく。それならここをパーティーの拠点にするか」

「え、い、いいんですか?」

「こんな広いとこに一人でいても暇なだけだしな。ゆんゆんが住んでくれたら俺としても嬉しいんだけど」

「そ、それならもちろん住みます! 私もタクミさんともっとお話したいですし」

「おう、よかった」

 

 おお、パーティー組んだ時よりもテンション高めだな。明るい表情してる方が可愛いし良いことだな。

 

「んじゃ方針も決まったことだし……あとはどうする? もう明日に備えて寝るか?」

「え、えっと、その……」

「だから遠慮しなくてもいいんだからな? むしろ何かあるならどんどん言ってくれ」

「じゃ、じゃあ眠くなるまで私と一緒に、その、あ、遊びませんか……?」

 

 頬を朱に染めながら潤んだ瞳で上目遣いで聞いてくるゆんゆん。恥ずかしいのか照れたようにえへへと年相応の女の子らしい可愛い笑顔を浮かべた。

 えっと、うん、それは反則だと思います……。

 




ここまでの過程である程度のやることは終わりました。次回からはやっとのんびりゆっくりなイチャイチャが始まる予定です。

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!ゆんゆんが可愛く書けてたと思ってくれたら嬉しいです。感想や評価等々待ってます!

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