申し訳ないです・・・。
ユーリを足止めするため、暴走する彼女と戦い瀕死の重傷を負った一夏。
彼を担いで全速力でアースラに向かう箒。
その道中で必死に覚えたての回復魔法を一夏にかけていた。
「おい!死ぬな一夏!目を覚ませ!」
「・・・」
「クッ・・・!アースラ!聞こえるか!こちら箒!シャマルさんを呼んでくれ!」
『こちらアースラ。箒さん、どうされました?』
「一夏が・・・一夏が!」
『落ち着いてください箒さん。一夏さんが・・・?どうしました?』
「一夏が死にそうなんだ!早く!シャマルさんを!」
『!?わ、分かりました!直ぐに呼び出します!箒さんも急いで!』
「分かった!一夏、死ぬなよ!頼むからまだ保ってくれよ!」
アースラでは連絡を受けたシャマル達、医療スタッフが箒が戻って来るのを待っていた。
箒の慌て様にただ事では無いと判断したリンディの指示で最悪の事態に備えて最善の準備を進めている。
そして箒が飛び込んできたのを見て彼女は駆け寄った。
「箒ちゃん!一夏君は!?」
「シャマル先生・・・!一夏が・・・一夏がぁ!」
「っ!?こ、これは・・・!?至急オペの準備!急いで!」
箒は一夏から流れ出た血で赤く染まってしまっている。
それ程までに一夏の負傷が酷かったのだ。
左腕は肘から先が無く、腹部には大きな穴。
全身に火傷と裂傷を負っていてコレで死んでいないのが奇跡である。
既に虫の息の一夏を救う為にシャマルは動く。
「輸血パックを用意して!出来るだけ沢山!箒ちゃん、彼の血液型は!?」
「ええっと・・・確か・・・」
その頃一夏は暗闇の中で目を覚ました。
そこはまるで闇そのもののような嫌な感じだった。
身体を動かしたくても動かない。
何かに押さえつけられてるみたいに。
その内一夏は再び眠りについた。
「一夏は無事かっ!?」
「兄さんは!?」
「千冬さん!ラウラ!」
「病室ではお静かに!・・・何とか一命は取り留めました。後は彼が目覚めるのを待つだけです」
「そうか・・・良かった・・・!」
「しかし、危ない所でした。箒さんが応急処置をし続けてくれていなければ一夏くんの命は無かったでしょう」
「箒、ありがとう。私はまた家族を失う所だった」
「いえ、気にしないでください千冬さん」
その時、病室のドアが開きリンディとクロノが入ってきた。
2人ともどうやらお見舞いに来たようだった。
「お邪魔するわ。・・・彼はまだ目覚めないのね・・・」
「かなりの重症と聞いたが・・・」
「リンディさん、クロノ。ああ、まだ目覚めんよ」
「こんな状況で申し訳無いんだが・・・何があったのか教えてほしい」
「実は・・・」
箒はわかる範囲で何があったのか話した。
一夏がディアーチェを逃す為にユーリ、U-Dと1人で戦った事。
自分がディアーチェを安全な場所まで連れて行き戻ると一夏が腹部から血を流し左腕が吹き飛びU-Dに無造作に掴まれていた事。
その状態の一夏をここまで何とか連れ帰った事など全て話した。
「・・・という訳です」
「・・・まさか、そんな事が・・・」
「無茶をするなといつも言っているだろうが馬鹿者・・・」
「それで、U-Dは?」
「分かりません。あの時は逃げるのに必死で・・・」
「箒よ。ディアーチェはどうしたのだ?」
「分からん。恐らく何処かに姿を隠してレヴィ達の復活を待つつもりだろう」
「とにかく、今は彼の目覚めを待つしか無いだろう・・・ん?通信?すまない席を外す」
「・・・そういえば一夏の持っていた白夜の書は何処だ?」
「そういえば無いな・・・」
「まさか・・・!?何処かに落としたのか!?」
「確認する暇も無かったから・・・どうしよう・・・」
箒の心配を他所に通信を繋ぐため一時退席するクロノ。
しかし彼はすぐに戻ってきた。
最悪の知らせとともに。
「大変だ!最悪の事態が起きている!」
その頃、ディアーチェはなんとか逃げ出し海岸近くの洞窟に潜んでいた。
怪我はほとんど無いが目の前でシュテルとレヴィがやられたのを見た精神的ショックの方が大きいようだ。
悔しいような悲しいような、そんな表情をしていた。
U-Dにやられたシュテルとレヴィの仇をどうしてくれようかと考えていたディアーチェだが目の前に何かが流れてきたのに気づいた。
「なんだ・・・?何かが・・・!こ、これは・・・」
流れてきたのは一夏が使っていた白夜の書であった。
あの戦いから偶然この場所に流れ着いた様だ。
ディアーチェはそれを拾い中をパラパラと見る。
一通り見たディアーチェは闇の書や紫天の書以上の魔法の数々に驚愕し一夏の強さに改めて納得した。
そして彼女はある決意を固め白夜の書を抱えて動き出す。
次回、マテリアルズ・ストラトス
「絶望から希望へのカウントダウン」後編
繋いでくれた手で今度は君の手を掴む。
お兄様しながらちまちまとまた書こうと思います。