今回は質問も多数寄せられていたスキルについてです。多少無理はあるかもしれないですけど第8話どうぞ!
「なあ。聞きたいんだがスキルの習得ってどうやるんだ?」
カエル討伐の翌日の事。
俺達はギルドの酒場で、遅めの昼食をとっていた。
俺の目の前では、金がなく、有馬さんに連れてきてもらうまではろくな食べ物を食べられなかったらしいめぐみんが、一心不乱に定食を喰らい、アクアは手近な定員を捕まえておかわりを注文している。
とても年頃の女の子とは思えない旺盛な食欲に、有馬さんも思わず苦笑いをしていた。
...一応女二人に煩悩がなさそうな男一人と思春期真っ只中の童貞一人でほぼハーレム状態なのに、色気の欠片も無えな。
めぐみんが、口元にソースをつけたまま顔を上げると。
「スキルの習得ですか?そんなもの、カードに出ている、現在習得可能なスキルってとこから...ああ、カズマの職業は冒険者でしたね。初期職業と言われている冒険者は、誰かにスキルを教えてもらうのです。すると、カードに習得可能スキルという項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得完了なのです」
「めぐみん。ソースついてるぞ」
有馬さんが拭き取ってあげている。なんかこう見ると恋人とかじゃなくて、兄妹に見えるな...
「あ、貴将。ありがとうございます」
カエル狩り以降、めぐみんは有馬さんのことを貴将と呼んで、兄のように慕っていた。
「めぐみん、お前に教えてもらえば、俺でも爆裂魔法を使えるようになるってことか?」
「その通りです!」
「うおっ!」
俺の何気ない一言に、意外な食いつきをみせるめぐみん。かなり前に出たから有馬さんが驚いていた。それを見ためぐみんが一生懸命謝っていた。そして、軽く咳払いをすると。
「ゴホン、その通りですよカズマ!まあ、習得に必要なポイントはバカみたいに食いますが、冒険者は、アークウィザード以外で唯一爆裂魔法が使える職業です。爆裂魔法を覚えたいならいくらでも教えてあげましょう。というか、それ以外に覚える価値のあるスキルなんてありますか?いいえ、ありませんとも!さあ、私と一緒に爆裂道を歩もうじゃないですか!」
顔が近い!
「めぐみん、落ち着け」
「すいません、貴将」
助かりました有馬さん。すごくドキドキした。
「スキルポイント今は3ポイントしかないんだが、これで習得できるものなのか?」
その質問にアクアが答える。
「冒険者が爆裂魔法を習得しようと思うなら、スキルポイント10や20じゃきかないわよ。十年くらいかけてレベル上げを続けて一切ポイントを使わずに貯めれば、もしかしたら習得できるかもね」
「待てるかそんなもん」
俺の就いている職業、冒険者は、全スキルを習得可能って所が唯一の利点なのだから、せっかくなら多彩なスキルを覚えておきたい。
「なあアクア。お前なら便利なスキルをたくさん持ってるんじゃないか?何か、お手軽なスキルを教えてくれよ。習得にあまりポイントを使わないで、それでいてお得な感じの」
俺の言葉に、アクアは水の入ったコップを握り、しばらく考え込む。
「...しょうがないわねー。言っとくけど、私のスキルは半端ないわよ?本来なら、誰にでもホイホイと教えるようなスキルじゃないんだからね?」
やたら勿体をつけるアクアだが、教えてもらう立場なのでここはじっと我慢だ。
俺はアクアがスキルを使うところを観察する。
「じゃあ、まずはこのコップを見ててね。この水の入ったコップを自分の頭の上に落ちないように載せる。ほら、やってみて?」
ちょっと人目が気になるが、俺はアクアに続いて同じように自分の頭にコップを載せた。すると、アクアはどこから取り出したのか、一粒の何かの種をテーブルに置く。
「さあ、この種を指で弾いてコップに一発で入れるのよ。すると、あら不思議!このコップの水を吸い上げた種はにょきにょきと...」
「誰が宴会芸スキル教えろっつったこの駄女神!」
「ええ!?」
なぜかショックを受けたらしいアクアは、しょぼんとしながらテーブルの上で種を指で弾いて転がし始める。
この時有馬さんが、真似をしていたのはここだけの話。
「ところで有馬さんはどんなスキルを持っているんですか?」
「それは私も気になります」
俺達が尋ねると有馬さんはカードを取り出した。
「こんなものだ」
『クインケ操縦の心得』
『クインケ修復の心得』
『クインケ複製の心得』
『無敗の捜査官』
『特等捜査官』
『死神』
「なんか、すごいスキルだな...」
「すごいです!すごいですよ!この死神ってスキル私も覚えられませんかね?」
めぐみんが爆裂魔法を語る時と同じくらい興奮して喋っていた。
「『クインケ操縦の心得』ってなんですか?」
俺は気になっていたことを聞いた。
「クインケを扱うためのスキルだろう」
「クインケってなんですか?」
めぐみんが聞いた。
「これだ」
有馬さんは足元にあったアタッシュケースをテーブルに載せた。
「この箱ですか?」
「ああ。ここじゃ危険だから一旦外に出ようか」
「ここならいいか」
冒険者ギルドの裏手の広場。俺とめぐみんと有馬さんはへこんでるアクアをおいて、ここへ来ていた。
「貴将!早速見せてください!」
めぐみんが急かす。確かに俺も早く見たい。
ガチャッっとアタッシュケースから音がなると、そこからは有馬さんがいつも愛用してる剣。ナルカミが出てきた。
「すごいです!すごいですよ!」
めぐみん。すごい興奮してるな。
「これを扱うには特別なこと...生体認証を解除する必要が、あるんだ。そのためのスキルだろう」
「じゃあ次は『クインケ複製の心得』っていうスキルを見せてください!」
めぐみんはまだ興奮しているようだ。
「分かった」
前にやろうとした時は確か、イメージしたクインケが出てきたな...でも数分でなくなってしまったが。
「...フクロウ」
有馬さんがそう呟くと有馬さんの手の中に光が集まって形になっていく。しばらくすると、剣の形になった。
「すげぇ、新しい武器が作れるのかよ...」
しかし、フクロウと呼ばれた武器は五分ほどで消えてしまった。
「後は身体能力強化のスキルだ。けどカズマじゃスキルポイントが多すぎて覚えられないと思う」
「そうですか...」
「あっはっは!キミ達面白いね!ねえ、キミがダクネスが入りたがってるパーティーの人?有用なスキルが欲しいんだろ?盗賊スキルなんてどうかな?」
その声は、ギルドへの入口付近から聞こえた。
見れば二人組の女性がいた。
俺達に声をかけたのは革の鎧を着た、身軽な格好をした女の子。頬に小さな刀傷があり、ちょっとスレた感じだがサバサバとした明るい雰囲気の銀髪の美少女だ。
その隣には、ガチガチのフルプレートメイルを着込んだ金髪ロングの美女。そう、先日、パーティーに入りたいと言ってきたあの女騎士だった。
「えっと、盗賊スキルどんなのがあるんでしょう?」
俺が質問すると、その盗賊の少女は。
「立ち話もなんだし、ギルドに入ろうよ!ちなみに盗賊スキルは使えるよー。罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗。持ってるだけでお得なスキルが盛り沢山だよ。キミ初期の冒険者なんだろ?盗賊のスキルは習得にかかるポイントも少ないしお得だよ?どうだい?今なら、クリムゾンビア一杯でいいよ?」
「よし、お願いします!すいませーん、こっちの人に冷えたクリムゾンビアを一つ!」
第8話どうでしたか?
有馬さんのスキルの『クインケ複製の心得』はチートすぎるなと思って少し弱体化させました。
このスキルで複製できるクインケは本編に出てきたクインケのみとなっております。
ではまた次回お会いしましょう!