この無敗の捜査官に祝福を!   作:ちょこ0720

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スランプ...

では第二十七話どうぞ!


この無敗の捜査官とサキュバスを!

子供の頃、父親が旨そうに飲んでいたビールを欲しがり、一口飲んで吐き出したのは良い思い出だ。

酒なんて飲まないと幼心に誓ったものだが、俺は今、こうして異世界で、昼間から飲酒なんてしてしまってる。

いけない事をしている様な気持ちになってくるが、異世界では法も違えば常識も違う。

この世界では、未成年は飲んではいけないなんて法は無く、何か問題を起こしても、徹底した自己責任が課せられるからだ。

酒を美味いとは思わないのだが、それでも我慢して飲んでる内に、何だかフワフワしてきた。

これが気持ち良くて、人は酒を飲むのだろうか。

ギルドの酒場で昼間から早々と男三人で酒盛りをしていると、キースが愚痴っぽく言ってきた。

 

「はーあ、全く。この時季はやる事無くって腐っちまうよな。おっと、カズマもいける口じゃないか。ほら、ドンドンいこう!」

 

俺にグイグイと酒を注ぎ、キースはうひゃひゃひゃと笑い出す。

キースは笑い上戸なところがある様だ。

 

「はあー...。冬になると、人肌恋しいくなるよなあ...。正直カズマのパーティーが羨ましいぜ」

 

確かに俺のパーティーは容姿はいいだろうが、中身は点でダメなのだ。

 

冬ではやる事が無いからか、ギルド内の酒場の中には俺達以外にも、結構な人数が昼間から酒を飲んでだべっている。

冒険者連中は、元引き篭りの俺に負けず劣らず、結構ダメ人間が多いのかも知れない。

俺はそんな事を考えつつ、ちょっと気になってた事を二人に聞いた。

 

「なあ。そういや二人は、あそこで一体何やってたんだ?」

 

そう、あの時二人は、あの路地裏にある一軒の店に、入るかどうしようかと悩んでいた様に見えた。

あそこの店は何だったのかが少し気になる。

俺の言葉に、二人は顔を見合わせ、頷くと...。

キースが握っていたジョッキを置き、真剣な顔をした。

 

「カズマ。俺は、お前なら信用できる。今から言う事は、この街の男性冒険者達にとっては共通の秘密であり、絶対に漏らしちゃいけない話だ。カズマの仲間の女達に、絶対に漏らさないって約束できるか?」

 

その重々しい雰囲気に、俺は若干押されながらも頷いた。

それを見たキースもこくりと頷き。

そして、喧騒の中、周りには聞こえない様なとても静かな声で、ダストが言った。

 

「カズマ。この街には、サキュバス達がこっそり経営してる、良い夢を見させてくれる店があるって知ってるか?」

 

「詳しく」

 

俺はダストに即答していた。

 

ほんのり顔の赤いダストが、ジョッキを置いて教えてくれる。

 

「この街にはサキュバス達が住んでるんだ。って言うのも、連中は人間の持つムラムラする欲望の感情、つまり男の精気を吸って生きる悪魔だ。となると当然、彼女達には人間の男って存在が必要不可欠になってくる」

 

ふむふむ。

俺は酒場の中で熱心にダストの言葉に耳を傾けていた。

 

「で、だ。当然彼女達は俺達から精気を吸う訳だが...。ここの男性冒険者達とこの街に住むサキュバス達は、共存共栄の関係を築いている。...ほれ、俺達は基本馬小屋暮らしだろ?つーとだ。その、色々と溜まって来るじゃないか。でも、周りには他の冒険者が寝てるって訳だ。ムラムラ来たってナニする事もできないだろ?」

 

「そ、そうですね」

 

やましい事なんて何一つ無いが、俺の頬を一筋の汗が流れる。

もう一度言うが、やましい事は何も無い。

 

「かといって、その辺に寝てる女冒険者達にイタズラでもしてみろ。そんなもん即座に他の女冒険者に気づかれて袋叩きにされるか、もしくはイタズラしようとした相手が隠し持ってたダガーで、逆にアレを切り落とされそうになってもおかしくねえ」

 

言って、ダストが青い顔でブルリと身震いした。

キースがそれを見て、

 

「お前、まだリーンにちょっかい掛けた時のトラウマ、治ってなかったのか」

 

「う、うるせえ!...で、そこでこのサキュバス達だ。こいつらが、俺達が寝てる間に凄いのを見せてくれる訳だ。俺達はスッキリできて、彼女達は生きていける。彼女達も、俺達が干からびたり冒険に支障をきたさない程度に手加減してくれる。精気を吸いすぎて冒険者がヤバイ事になった例は無い。...どうだ、誰も困らない話だろ?」

 

ダストの言葉に俺はコクコクと何度も頷いた。

素晴らしい。素晴らしすぎる!

サキュバス達もむやみに人を襲う理由が無くなり、馬小屋でモンモンとする冒険者達もいなくなる。

きっと性犯罪の抑制にだって繋がるだろう。

そう言えば、この街は凄く治安が良い。

俺の想像していた冒険者像ってのは、荒くれ者が多く、ガサツで喧嘩っ早くて酒が好き。

ずっとそんなイメージだったが、この街では暴力事件も少なく、犯罪の話も特に聞かない。

誰もが常に賢者タイムでいられれば、争いなんて起こらない。

素晴らしい!世の中って物はちゃんと上手い事成り立ってるものなのだ!

そんな軽い感動を覚えていた俺の様子を見て、キースが言った。

 

「実はその店の事を教えて貰ったのって、俺達も最近なんだ。で、今日初めて、俺達もそこの店に行こうって事になってな。そこでカズマに出くわしたって訳だ」

 

ダストがクイッと酒を呷った。

そして、俺に言ってくる。

 

「と、言う訳だ。...どうだ?なんなら一緒に」

 

「ぜひ行きます」

 

俺は即答した。ある女冒険者に聞かれてるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

「フフ...。面白い事になってるんだねぇ。ついていってみるかな」




最後の女冒険者は想像つきますかね?
ではまた次回お会いしましょう!

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