今日はちゃんと投稿できてよかった。
では第23話どうぞ!
白一色の鎧兜。
それは味気無い色ながらも、戦国鎧特有の華やかさは、僅かにも損なわれてはいなかった。
キメ細やかな意匠が凝らされた陣羽織。
白い冷気を発する刀は、わざわざ近くに寄らなくても、恐るべき切れ味を秘めている事が一目で分かる。
強烈な存在感と殺気を放ちながら、冬将軍が八双の構えを取った。
そして日の下に白刃を煌めかせ、一番近くにいたダクネスに斬りかかった。
「くっ!?」
ダクネスが、大剣で受けようとするが、キンッと澄んだ音を立て真っ二つに叩き折られた。
「ああっ!?わ、私の剣が...!?」
俺達の中では最も防御に特化しているダクネスですら一瞬で無力化されてしまった。
アクアが、冬将軍と、それと、戦うダクネスから距離を取り...、
「冬将軍。国から高額賞金をかけられている特別指定モンスターの一種よ。冬将軍は冬の精霊...。精霊は元々は決まった実体を持たないわ。出会った人達の無意識に思い描く思念を受け、その姿へと実体化するの。火の精霊は、全てを焼き尽くす炎の貪欲さから、凶暴そうな火トカゲに。水の精霊といえば、清らかで格好良く知的で美しい水の女神を連想して、美しい乙女の姿に。... でも、冬の精霊の場合はちょっと特殊でね?危険なモンスターが蔓延る冬は、街の人間どころか、冒険者達ですら出歩かないから、冬の精霊に出会う事自体が稀だったのよ。...そう、日本から来たチート持ち連中以外はね」
...つまりは、日本から来たどっかのアホが、冬といえば冬将軍みたいなノリで連想して生まれたのだろう。
俺は剣を折られたダクネスの隣に立ち、目の前の冬将軍に油断なく剣を構えた。
冬将軍は鞘に収めた刀のツバの部分に、左手を添えた。
視線の先では、冬将軍の左手の親指が刀のツバをそっと押し、白刃を僅かに覗かせていた。
俗に言う居合いの構え。
次の瞬間、キィィィィィンという金属音のようなものが目の前で聞こえた。
俺とダクネスの目の前には、冬将軍の刀を黒い武器から展開された盾のようなもので受け止める有馬さん。
ダクネスも驚いているところを見ると、俺だけではなく、ダクネスも反応できていなかったようだ。
つまり、有馬さんが助けてくれなかったら二人ともここで死んでいたわけだ。
「やるな...」
ピシッと有馬さんが冬将軍の攻撃を防いでいた盾から音がする。
「IXAの防御壁を損傷させるとは思わなかった」
冬将軍は何かを感じ取ったのか、有馬さんから距離を取る。
魔王軍の幹部であるベルディアにすら苦戦しなかった有馬さんにやるななんて言わせる相手だ。
有馬さんがいなかったらと考えるとゾッとする。
有馬さんは持っていたIXAを投げ捨てると今度は持っていたもう一つのアタッシュケースのスイッチを押した。
中から愛用しているナルカミを取り出した。
ガキンと音を立てると有馬さんのナルカミの形が少し変わった。
「今まで変形する神器なんてあったかしら?」
アクアが不意に呟いた。
「...相変わらずすごいな」
ダクネスの言う通りだと思う。
冬将軍と一進一退の攻防。気を抜いたら直ぐに切り捨てられるだろう。
俺達であれば、相手の攻撃を防ぐことも難しいだろう。
三分もしないうちに勝負は動いた。
有馬さんが冬将軍の頭めがけてナルカミを振るった。もちろん冬将軍はそれを刀で受け止める。
「...ユキムラ」
有馬さんが呟くと空いていたもう片方の手に新しく武器が生成された。
それを横になぎ払うと冬将軍の胴体が真っ二つに切断された。
冬将軍は最初は斬られた上半身をばたつかせていたが、次第に弱くなり、そして、止まった。
今回はとても短くなりました。
すいません。
これで冬将軍との戦闘はおわりですね。
ではまた次回お会いしましょう!