今回は少し短めです。
では第21話どうぞ!
家を手に入れた。
正確には有馬さんの所有物なのだが、家を手に入れた。
六人で住むには少し大きい家なのだが、最低でもこのくらい大きくなくては王女としての威厳が疑われてしまうとのことらしい。
これで俺達は冬、馬小屋で凍えながら寝ることはなくなった。
それに加えて、ベルディア討伐の報酬が三億エリス。これまた全て有馬さんのものなのだが
「俺はいい」
と言ってパーティー全員で分けることになった。
俺達のパーティーは六人、つまり一人当たり五千万エリス。しばらくは遊んで暮らせる。
つまるところクエストを請けなくてもいいということだ。
...なのだが、今俺達は掲示板の前にいる。
「貴将!クエストを請けましょう!」
全てはこのめぐみんの発言から始まった。
「おいめぐみん、なんでクエストなんてしなくちゃならないんだ?俺達は今家もあるし金もある。クエストを請ける理由が一つもないじゃないか」
「杖の威力が見たいのです!ベルディア討伐の報酬でさらに杖を強化したのです。是非モンスター討伐に行きましょう」
「えー、私はゴロゴロしてたいんですけどー」
アクアは高そうなお酒をちびちびと飲みながら言う。
「私もモンスター討伐に行きたいんだが」
ああ、コイツもか...
俺は最後の希望を託して有馬さんの方へ顔を向ける。
「...俺は構わない」
最後の希望が...
いや、まだだ、エトがいるじゃないか。
「エトはどうなんだ?」
「私はパスだね」
「どうしてですか?」
めぐみんが尋ねる。
「王女様から手紙がきてね、私の本を気に入ってくれたらしく、続編を待ってると言われてしまってね、執筆中なのだよ。だからパス」
「そうなのですか、残念です。完成したら読ませてくださいね。黒山羊の卵面白かったので」
「もちろんだともちゃんめぐ。おねーさんもこんなに若いファンがいてうれしーよ」
ちゃんめぐ、エトはめぐみんのことをそう呼んでいる。めぐみんは黒山羊の卵を気に入ったようだが、俺は少し苦手かもしれない。人が死ぬのは少し苦手だ。
「じゃあ今回は私とダクネスと貴将の三人で行きましょうか」
「ああ、そうだな」
「...わかった」
三人か...心配だ。
有馬さん天然なところあるからなあ、危険なクエストとか選びそうだ。
「わかった。俺もついてくから」
これに関しては仕方ないよな。
「アクアはどうすんだ?」
「なんか仲間はずれみたいじゃない!私もいくわよ」
「じゃあエト留守番頼めるか?」
「ああ、任せたまえ!」
「「「「いってきまーす」」」」
「...行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
「んで、何にするんだ?...ってロクなクエストがないな」
『牧場を襲う白狼の群れの討伐。報酬は百万エリス』
『冬眠から覚めてしまった一撃熊が畑に出没。討伐なら二百万、追い払うなら五十万』
狼の群れなんて無理だ。
大型犬より大きくて速いのが一度に大量に襲ってきたら、間違いなくやられる。
熊は論外。
有馬さんやダクネスならともかく、俺やめぐみんが攻撃を喰らったら、首を撫でられただけで即死だろう。
「...機動要塞デストロイヤー接近中につき、進路予測の為の偵察募集?...なんだよこれ。デストロイヤーってなんなんだよ」
「デストロイヤーはデストロイヤーだ。大きくて、高速機動する要塞だ」
「ワシャワシャ動いて全てを蹂躙する、子供達に妙に人気のあるヤツです」
なるほど。分からん。
すると有馬さんが
「...これなんかどうだ?雪精の討伐。危険ではなさそうだが」
どれどれ...
雪精を一匹討伐する毎に十万エリス。
悪くない。危険ではなさそうだしな。
「雪精はとても弱いモンスターです。雪深い雪原に多くいると言われ、剣で斬れば簡単に四散させることができます。ですが...」
めぐみんの言葉に、俺はその張り紙を剥がす。
「雪精の討伐?雪精は、特に人に危害を加えるモンスターって訳じゃないけども、一匹倒す毎に春が半日近くなるって言われてるモンスターよ。その仕事を請けるなら、私も準備してくるわね」
アクアはちょっと待っててと言い残すとどこかへいった。
めぐみんは雪精の討伐のクエストに文句はないようだ。
と、ダクネスが呟く。
「雪精か...」
日頃、何かと強いモンスターと戦いたがる、このドMクルセイダーが一番反対すると思ったのだが。
そんなダクネスは、なぜだかちょっと嬉しそうだ。
ダクネスに違和感を覚えながらも、俺達はアクアを待って、雪精討伐に出発した。
新キャラを出すと言ったな、あれは嘘だ。
はい、すいませんそのうち出します。
それではまた次回お会いしましょう!