この無敗の捜査官に祝福を!   作:ちょこ0720

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どうも皆さんちょこ0720です。
エトさんにこの世界でも本を書かせてみようかなと思ってます。
それでは第15話どうぞ!


この無敗の捜査官と湖の浄化を!

王都行きが確定してから数日の事。

 

「キミ達が普段どのようにクエストをこなしているかを見てみたい」

 

とエトが唐突に言ったので、俺達は掲示板の前にいる。

ベルディア討伐の報酬が近々入るが、有馬さんも

 

「お前達はもう少し訓練した方がいいだろう」

 

と言うのでアクアも嫌々来たのであった。

しかし、

 

「うーん、やっぱりまだあんまり出てねーな」

 

ベルディアが討伐されたのを知らないのか、モンスターはまだビビってしまって出てこないらしい。

と、エトが唐突に一枚の紙を剥がしてこちらに持ってきた。

 

「これなんかどうだい?」

 

『マンティコアとグリフォンが縄張り争いをしている場所があります。放っておくと大変危険なので、二匹まとめて討伐してください。報酬は五十万エリス』

 

「いや、流石に無理ですよ」

 

有馬さんといいエトといい何かこの人達は俺とは感覚が違うのだろうか。

 

「報酬五十万エリス...」

 

「危険なモンスター二匹...」

 

「いいですね。爆裂魔法で仕留めてあげましょう!」

 

...あれ?なに?俺がおかしいのか?

 

 

「ちょっと、これこれ!これ、見なさいよっ!!」

 

言われて、アクアが指差す依頼書を見る。

 

『湖の浄化。街の水源の一つの、湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーターが住みつき始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化ができればモンスターは生息地を他に移すため、モンスター討伐はしなくてもいい。※要浄化魔法を習得済みのプリースト。報酬は三十万エリス』

 

「...お前、水の浄化なんてできるのか?」

 

俺の質問にアクアは胸をはり

 

「バカね、私を誰だと思ってるの?と言うか、名前や外見のイメージで、私が何を司る女神かわかるでしょう?」

 

「...宴会?」

 

「違うわよこのヒキニート!水よ!この美しい水色の瞳とこの髪が見えないのっ!?」

 

なるほど。水の浄化だけで三十万か、確かに美味しいな。ベルディア討伐の報酬が出るとはいえ金はあって困らない。討伐をしなくてもいいってとこがポイント高い。

 

「じゃあそれ請けようぜ。でもさ、浄化だけなら俺達はいるのか?お前一人でもいい気がするんだが」

 

「えーっとね、多分、湖を浄化している時にモンスターが邪魔しに来るのよ。だから、浄化し終わるまでモンスターから守って欲しいんですけど」

 

なるほどな。

しかし、ブルータルアリゲーターって名前からして危険そうなんだが...。

有馬さんがいれば大丈夫だろうけど、今日はエトに見せるためだし極力俺達の手でなんとかしたい。

 

「ちなみに浄化ってどれくらいで終わるんだ?五分とかそこいらか?」

 

短時間で終わるに越したことはないからな。

アクアが小首を傾げながら言った。

 

「...半日ぐらい?」

 

「長えよ!」

 

数分ならめぐみんの爆裂魔法でなんとかなるだろうが、半日となるとかなりきつい。

...おっ、いい案が思いついたかも。

 

「なあ、浄化ってどうやるんだ?」

 

「...へ?水の浄化は、私が水に手を触れて浄化魔法でもかけ続けてやればいいんだけど...」

 

...多分いけるな。

 

「なあアクア。多分、安全に浄化できる手があるんだが、お前、やってみるか?」

 

 

 

 

 

 

「...ねえ...。本当にやるの?」

 

背後から不安そうなアクアの声。

俺の考えた作戦のどこに不安があるのだろうか。

 

「...私、今捕まって売られるモンスターの気分なんですけど...」

 

...希少なモンスターを閉じ込めておく、鋼鉄製のオリの中で、体育座りをしながら。

 

そう。俺の考えた作戦は、アクアをオリの中に入れて、そのまま湖の中に投入するのだ。

鋼鉄製のオリはモンスターでもなかなか壊せないように出来ているそうだ。

 

本人いわく、水の女神であるアクアは、水に浸かるどころか、湖の底に一日沈められても、呼吸にも困らず、不快に感じる事もないそうだ。

そして、浄化魔法を使わなくてもアクア自身が湖に浸かっていれば、それだけでも浄化効果があるらしい。

 

アクアを入れたオリを湖の浅瀬に沈めて、体育座りのアクアの足と尻の部分を浸からせた。

後はこのまま、俺達は離れた場所で待つだけだ。

アクアが膝を抱えながら呟く。

 

「...私、ダシを取られてる紅茶のティーバッグの気分なんですけど...」

 

 

 

「ふむふむ。カズマも考えたねえ。これなら安全にできるからね。次の本の題材にカズマみたいな人間を主人公にしてみようかね」

 

アクアを放置してから二時間近くが経ったとき、エトが呟いた。

 

「アハハ...俺か。照れるな。どんな主人公になるんだ?」

 

もしなんなら保存用、観賞用、布教用と三冊買うのもやぶさかじゃない。

 

「そうだね。クズみたいな主人公かな?公衆の面前でパンツを剥いだり、女性を粘液まみれにするみたいな?」

 

「おいこら、その話どこから聞いた。かなり尾ひれがついてるぞ」

 

...ほとんど事実なのだが。

 

「こう見えても作家だからね。耳は良いのだよ」

 

「そうですか」

 

「ところで」

 

と、めぐみんが言う。

 

「エトはどのような本を書いていたのですか?」

 

それは俺も気になるな。

 

「エト、できれば今度読ませてはくれないか?」

 

ダクネスも気になっていたようだ。

 

「ほうほう。そんなに私の作品に興味があるのか。ではこれを」

 

そう言うとエトは持ってきていたリュックの中から一冊の本を取り出した。

 

「これなんだがね、私の代表作の一つの黒山羊の卵なのだが、こっちに来てギルドの登録料が必要と言われてね、元々私の国で書いていた本を売らせてもらったのだが」

 

そう言うとアクア以外の俺、めぐみん、ダクネス、有馬さんに渡した。

 

本を読んでから数分後。

 

「カ、カズマー!なんか来た!ねえ、なんかいっぱい来たわ!」

 

ワニがアクアの入ってるオリの周りにやって来た。

 

浄化を始めてから四時間が経過。

 

最初は、水に浸かって女神の身体に備わった浄化能力だけを使っていたが、早く終わらせたいのか、今は一心不乱に浄化魔法を唱えまくってる。

 

「『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!」

 

アクアが入ってるオリを大量のワニ達が囲み、オリをガジガジと齧っている。

 

「カズマ、助けに行かなくていいのかい?」

 

エトがアクアを心配してそう言った。

仕方ない。

 

「アクアー!ギブアップなら、そう言えよー!そしたら鎖引っ張ってオリごと引きずって逃げてやるからー!」

 

と、言ったがアクアは頑なにクエストのリタイアを拒んでいた。

 

「イ、イヤよ!ここで諦めたら今までの時間が無駄になるし、何より報酬が貰えないじゃないの!『ピュリフィケーション』!『ピュリフィケーション』!...わ、わああああーっ!メキッていった!今オリから、鳴っちゃいけない音が鳴った!!」

 

その光景を見て、ダクネスが呟く。

 

「...あのオリの中、ちょっとだけ楽しそうだな...」

 

「...行くなよ?」

 

浄化を始めてから七時間が経過。

 

湖には、ボロボロになったオリがぽつんと取り残されていた。

 

「...おいアクア、無事か?ブルータルアリゲーター達は、もう全部、どっか行ったぞ」

 

俺達はオリへ近づき、オリの中のアクアを窺った。

 

「...ぐす...ひっく...えっく...」

 

泣くくらいならリタイアすればいいのに...。

 

「少年。粘液まみれにするだけには飽き足らず、女性を泣かせるとは、流石にここまでくると書く気が失せるね」

 

...え?何?俺が悪いの?

 

「はあ...浄化が終わったなら帰るぞ。あと報酬は全部お前のものでいいからな」

 

俺の言葉にアクアの肩がピクリと動く。

しかし、オリから出てくる気配はない。

 

「...まま連れてって...」

 

...?

 

「なんだって?」

 

「...オリの外の世界は怖いから、このまま街まで連れてって」

 

どうやら、今回のクエストでアクアにトラウマができたようだ。




第15話どうでしたか?
次回はミツルギですね。このパーティーメンバーなら負ける気はしないですよね。ちなみにベルディア戦の時ミツルギはクエストに行ってたので、有馬さんやエトのことは知りません。

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