side本田
「未央さん、俺と付き合ってくれっ!!」
そういって頭を下げるのは隣のクラスの男子だ、確かサッカー部だった………気がする。
「ありがとう……でも、ゴメンね」
「そっか………ごめんな、アイドルって分かって告白して、でも気持ち伝えたくて………ありがとうちゃんと答えてくれて」
「うん、でもこれからも友達でいてほしいよ」
「………ありがとう、未央さん、それじゃあ」
そういって彼は去っていった後に思わず、大きくため息吐いてしまう。
「いやーモテる女はつらいねー………はぁ、無理にテンション上げるのやめよ」
事務所に行くまでにはいつもテンションに戻さなきゃ。
元気が一番の本田未央ですからねっ!!
いつもの電車に乗ってる間にふと今回の告白は何回目だったかを数える。
中学の時が28回で、高校入学してから13回、アイドルになってから42回だっけ?
わぉ、もうちょいで100いきそうだ………あぁ、駄目だ何回やっても告白を断るのは疲れる。
相手の期待に応えられないのもそうだし、相手の気持ちを否定するのも私には気が重い。
………あぁ、駄目だ駄目だ、このまま憂鬱な気分でレッスンやったらトレーナーに怒られちゃう。
集中、集中っ!!
事務所に行ってとりあえず挨拶をしに行く、多分今日はマネージャーとちひろさんの日だ。
「グットモーニングっ!!ちひろさん、マネージャー」
「はい、おはようございます、未央ちゃん」
「………おはようございます、未央さん」
すぐに返事が返ってきたのはちひろさんでマネージャーはこっちを見て肩を竦めてから挨拶をしてくる。
「おー、マネージャーこの未央ちゃんの挨拶を軽く流そうとしたな」
「首締めないで、あと胸当たるんでさっさと離れてください」
「知ってるマネージャー?こういうのは『当ててんのよ』って奴だよ」
「はいはい、そうやって色んな男子が勘違いする行為辞めましょうねー」
マネージャーの発言驚いて、軽めに締めてた首を思わず力を入れてしまった。
「うっ!?」っと軽くマネージャーが呻いて、あわてて外す。
「………そういうマネージャーは全く動じてないのは、私の魅力不足って言いたいのかなー?」
とりあえず怒った風にして流すと「はいはい悪うござんました」とヒラヒラとする。
………少しだけ変な間が出来ると、ちひろさんがスッとマネージャーにエナドリを渡してくる。
「………今日はそんな忙しくないんでゆっくりしていいですよー」
「………すいません、それじゃあ少し休憩します。
未央さん暇でしょ?ちょっと付き合ってくださいよ」
「おおぅ、タダでアイドルを軽く連れ回すなんてマネージャーも偉くなったねっ!!」
「へいへい、好きな飲み物でもなんでも買いますよ」
「よし来た、それじゃコーラでも」
「この後レッスンあるんで炭酸は無しですよ」
「うぇー、ケチんぼ」
「ケチで結構、ダンス中にゲップ出すアイドルなんて見栄え悪すぎでしょ?」
「………たしかにその絵面はやばいね」
他愛の会話をしつつ屋上に着く。
空は少しだけ赤みがかって、夏から秋に変わるようなそんな空。
もう少しすれば肌寒い風も出てくるのかなとか思いつつ、彼と一緒にベンチに座る。
「はぁー、疲れた」
「おっさんぽいよ、マネージャー」
「デスクワークは勉強とか運動とか違う疲れなんですよ………うんで、今日はどうしたんですか」
こちらの顔を見ずにエナドリを開けつつ、軽い感じで、主語のない問いをしてくる。
思わず私は「ん、何が?」と首をかしげる。………こんな風になんでもないようにしても伝わっちゃうのかもしれないけど、これは私なりの強がりだ。
「んー、未央さんってすっごい前向きな人間なんですよ、仕事もそうだしプライベートもそう。
ニュージェネもポジティブパッションでもその強みが前面にてでる」
彼は少しエナドリを飲んで、軽く唸ってからこちらを見ずに言葉を吐く。
「んで、学力優秀、運動神経抜群、コミュ力抜群の本田未央さんが元気がない………そりゃ心配になりますって」
「いやいや、突然心配されてるけどね、私は元気ですけどっ!?」
突然自分の心境を当てられたら、普通誰だって否定する。
だって、それは自分がまるで分かりやすい奴だったり、心配かけて欲しいから普段の行動から逸脱した 事をしてるみたいで恥ずかしい。
だから否定する。
「………未央さんは仕事で悩んだりしますけど、暗い顔はもうしないし、頭がいいから勉強で暗い顔もしない、家族との関係も良好ですし、家族絡みでもない………つまり家族以外の人間関係………コミュ力抜群の未央さんでも……いやコミュ力抜群だからある、事故のようなもの」
そこまで言えばもう答えは出てるもんじゃん………思わずため息が大きく出てしまう。
「………そんなに顔に出てた?」
「うーん、ちひろさんとかプロデューサー辺りは気付きますけど、アイドルだと、凛さん、藍子さん辺りぐらいは気付きそうですね」
「そっかぁー気づいちゃうかー」
足をプラプラとして、空を見上げる。
あー、なんか嫌だなー。
「弱音を吐きたくないんならそれでもいいですよ………ただ弱音吐いても別に本田さんを笑ったりしませんから」
「………なんていうか、本当に心の中見えてるんじゃないかってくらいマネージャーって察しがいいよね」
私は弱音を吐きたくない、誰かに縋ったりとかしたくない。
みんなには元気な未央ちゃんを見て欲しいのだ。
「ねぇ?マネージャー膝枕して」
「はいどうぞ」
普段だったら、一つくらい嫌味を言うのだが今回は優しい声色で許可が下りる。
私はそのまま彼の太ももに頭を乗せる。
………むぅ、なんか思ったより硬いかも。
あっ、でも頭撫でてくれるのはナイスだよ。
「いいマネージャー?これは普段のスキンシップだから」
「そうですね、むしろ普段の方がスキンシップ激しいんですけどね」
「何さぁー、全然動揺してない癖にー」
「そんなことないんですよ、未央さんスタイルいいからコッチはいつもドギマギしてるんですよ?」
「うっそだぁー、全然顔に出てないもん」
「そりゃ出しませんよ、調子に乗るから」
「もうちょっと可愛げある反応してよっ、そしたら私も楽しいのに」
「そういうことやるから男子に告白されるんですよ」
「私的には普通なんだけどなー」
そう、私にとってはスキンシップは割と当たり前。
お父さんとお母さんがものすごくラブラブでスキンシップが激しかったのも影響してるかも。
「未央さんの嬉しいとか楽しいっていう表現が、スキンシップなのは俺も分かってます、けど世間一般の男子には好きっていう表現だと思っちゃうんですよ」
「あー、だからかー」
「そっ、だからなんですよ」
みんなずっと勘違いしてたのか。
だとしたら申し訳ないことしちゃったなー。
「あーー、みんなマネージャーみたいに理解しててくれればいいのに」
「こっちも理解してますけど大変ですよ」
「何がー?」
「はぁ、単純接触効果って知ってますか?人は接触することによって、その人を好意的になってしまうってことですよ」
「へー、じゃあマネージャーも私を好きにならないように気をつけてるんだ」
思わずニヤニヤと彼の顔を見ながら言うとあっけらかんに「そーですよ、だから気をつけてください」と言う。
私は「そうかそうか」と言いながら彼のお腹に手を回す。
「あの未央さん話聞いてました?」
「つまりわたしがいっぱいスキンシップすればマネージャーは落ちるってことだね………それは見てみたい」
「何馬鹿なこと言ってるんですか」
普段だったら手を使って離すようにするが今日はない。
だから私もどんどん彼に近づいて言ってしまう。
「これ確か対面座位って奴だよね」
「急に体位の話をしないでくださいよ」
「あはは……ねぇ、マネージャー、私マネージャーのこと好きだよ」
「………自分も未央さんのこと好きですよ」
お互いの顔が普段より全然近い。
彼の息遣いも、彼の鼓動も、彼の気持ちもしっかり伝わってしまう。
だからしっかりと呼吸を合わせて言おう。
「「もちろん友達として」」
ちゃんと伝わる、それだけですっごく嬉しい。
「はい未央さん、あんまりぎゅーってしないで違う意味で好きになっちゃうからやめてー」
「やだよー、だってマネージャーのこと好きだからー」
「女子ねー、女子にはしていいですから、男子にやったら100パー勘違いされますから」
「そしたら振ってやるからいいもん」
「あっ、コイツ今完全に開き直ったっ!!」
でも、これからはスキンシップでの感情表現は抑えていこうかな。
「ほら、もう元気でたでしょっ!?はーなーれーてー!!」
………でも1人くらい男の子にスキンシップしてもいいよね?
はい、○ね主人公ですね。
未央ちゃんは割と動かしやすいアイドルでした。
ただ途中書いてて思ったのは、「そんなに弱い子じゃない」って感じでしたね。
だからアニデレの未央にすっごく違和感感じたんですよね。
今回は結局弱さを吐かないようにというか、その辺のプライドがある未央ちゃんというもの書いて見ました。
ただ思ったんですけど、「これ絶対どっちか告れば、異性として意識する奴やなコレ」とか思いました←自分の作品に感想を書く作者
とまぁここまで読んでくださり本当にありがとうございますっ!!
感想、評価等お待ちしておりますっ!!