神崎蘭子のマネージャーは通訳?   作:スレ主

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オール飛鳥


20話

side飛鳥

 

ボクはそこそこ洞察力があると自負している。

さらに厨二病のせいか………いや、厨二病のおかげで自分を限りなく客観視できるようになった。

 

自然と周りを見渡すことで普段気にかけないようなことにも気づくこともある。

 

「今日は随分と疲労が溜まっているね」

 

ユニットの写真撮影前。

メイクも終えて、二人きりになった瞬間に蘭子がほんの少しため息をしたのをボクは見逃さなかった。

彼女はほんの少し驚いた顔をして。

 

「………ちょっぴり」

 

と、少し苦笑いをする。

どことなく、彼が普段見せる表情と似ているのは、蘭子がそれだけ彼に影響されているだろう。

 

「昨日は体育祭だったんだろ?」

「うん、でも大丈夫っ!!」

 

ぎゅっと握り拳を作る姿にはあざといよりも可愛らしいという感情の方が先に出てしまう。

世間は彼女をクールと表現することが多いみたいだが、ボクはそうは思えない。

 

ドアから少しテンポの遅いノックがする。

蘭子は驚きながらコッチを見るのでボクは頷く。

 

「冥府の門は開かれるっ!!」

「………それさ、俺じゃなかったら絶対分からないよね?」

 

ドアから出てきたのは予想通りマネージャー。

彼はジトッと彼女をみるが、彼女はドヤ顔のままだ。

 

「クックッ、我が盟友との契約の効果だな!!」

 

まるで予知したかのような振る舞いだが。

 

「まぁ、タネを明かすとキミのノックのクセを教えたからね」

「あ、飛鳥ちゃんっ!!」

「………また今度別のクセを教えてあげるから」

「本人を目の前にしていい会話じゃないな………うんじゃ、そろそろ時間だから」

「そうかい」

 

上着を脱ぐと視線を感じる。

 

「あんまりジロジロ見られるこちらも恥ずかしいんだが?」

 

と言っても彼からは邪の視線を感じない。

 

「ん、衣装チェックだからな、サイズは確認したけど、キツイ箇所とかある?」

 

邪の視線は感じないが、冷めた感情は僅かに感じられる。

………無理もない、普通男が女の身体を見て何も感じない訳がない。

 

ボクだって邪の視線で見られたら、少なくともいい気分はしない。

しかし彼はそれを完全消し去っている。

 

「問題ないっ!!」

「あぁ、ボクも大丈夫だよ」

「それじゃ、撮影行くぞ」

 

『自制する』

簡単のようで難しい行為を彼はずっと続けているのだろう。

 

「まぁ、それが彼の宿命か」

「ほら飛鳥、勝手に自己完結しないでさっさと行くぞ」

「………よく見てるよホント」

 

 

 

 

 

「あら?」

「おはようございます、佐久間さん」

「おはようまゆ」

「煩わしい太陽っ!!」

 

前から来たのはボクと同期のまゆだ。

しかしまゆはこっちを目を合わさずにじっとマネージャーを見る。

 

………この目は何回か見たことある。

麗華さんが風邪を引いているのに出勤した時、北原プロデューサーが腰を痛めてるのに誰にも言わずに黙々と仕事をしていた時もこんな目をしていた気がする。

 

つまりだ。

 

「マネージャーさん?まゆに何か隠し事してません?」

「いや特に何も?」

 

彼は変わらずにポーカーフェイスを続けている。

………が、諦めた方がいい。

 

「右の靴下、左の靴下よりほんの少し厚みが違いますよ?恐らく腫れてるんじゃないですか?」

「マネージャー諦めた方がいい、彼女の目は誤魔化せないよ」

 

彼は目を逸らして

 

「………ちょっと捻挫しただけだよ」

「昨日の体育祭ですね………腫れの感じだと、1度ですね」

「1度?」

 

蘭子が1度という数字に首を捻る。

 

「捻挫にも程度があってね、1度は2〜3日で治るけど、2度は2〜3週間は走れない、3度になるとギプスが必要になるよ」

「ほぼ飛鳥ちゃんの説明で合ってます、………マネージャーさんこれ他のプロデューサーさんやちひろさんに言いましたか?」

「………言ってないです」

「ちひろさんに報告させていただきますね」

「はい」

 

何処か有無を言わせない圧力がまゆにはあった。

 

「一応、応急処置してるから大丈夫だと思うんだけどなぁ」

 

愚痴るように言うマネージャーは仕事の時と違って年相応に感じた。

ふと隣の蘭子を見ると少し顔を強張らせる。

 

「わ、我が盟友よ…その怪我はいつしたのだ?」

 

一瞬彼は考える仕草をしてボクを見るマネージャー。

………なるほどね。

 

「体育祭が終わった後に気付いたからな、よく覚えてねぇや」

「そ、そうか」

 

一瞬まゆが何か言おうとした所をボクが止める。

 

「嘘も方便だよ、まゆ」

「………嘘は好きじゃないです、ですけど今日は聞かなかったことにします」

 

そう言い彼女は「私はこのまま事務所に帰りますのでちひろさんに言っておきますからね」と言いそのまま行ってしまった。

 

彼女が見えなくなると珍しく大きなため息を吐くマネージャー。

 

「彼女は346プロの保健係みたいでね、誰かが怪我をした時や病気をした時に真っ先に対応するのさ」

「なるほどねぇ………っと、思ったよか時間がないな、二人は先に行っててくれ」

「あぁ、分かった。………蘭子急ごうか」

「う、うん」

 

 

 

 

 

事務所に帰ってレッスンの予定だったが、マネージャーが蘭子が体育祭の疲れがあるという理由で今日は軽い通しで終わった。

 

とはいえ、ボクは余裕があるのでレッスン室で練習を続けている。

 

一通りダンスの通しを終えて休憩しようと思ったらドアが開く。

 

「おや?蘭子の迎えはもう終わったのかい?」

「無理矢理帰らせたからちょっと不機嫌になってたけどな………一応今日は休みなんだから飛鳥も休んでいいんだぞ?」

「家に帰ってもやることがなくてね」

「そっ、ほれドリンク」

 

スポーツ飲料を受け取り、少し息を整える。

 

「悪かったな、佐久間さんの口止めして貰って」

 

こっちを見ずにそっぽ見ながら彼は謝る。

 

「なにボクだってタダでやった訳じゃない………貸し一つだ」

 

そう言うと彼は少し嫌そうな顔をする。

 

「………なるべく早めに清算したいんだけど」

「そうだな………ならその怪我が終わったらボクとデートでもして貰おうか」

「そんなんでいいのか?」

「つまらない反応をするな」

「俺が照れて「ばっ!?んなこと出来るかっ!!」とか言うと思った?」

「そういう可愛い反応する人間ではないって分かるがここまで薄い反応だとな」

「乙女心を分かってないって奴だな」

「………ボクが乙女って見えるなら眼科にでも行った方がいい」

「そうか?赤羽根さんが一回くっそキュートな衣装を着させてめっちゃ可愛い反応してたぜっ!!って自慢気に話してたからさ」

 

ボクは思わず空のペットボトルを彼に投げてしまったが悪くないはずだ。

くっ、さりげなくキャッチするな。

 

「み、見たのか?」

「あー、自慢気に話してたからな、もちろん写真もあったし」

 

ガッと詰め寄って彼の襟を掴む。

 

「忘れろっ!!今すぐ忘れろっ!!」

「いやぁ〜そいつは厳しいなぁ〜」

 

ぐわんぐわん襟を掴んで振り回すが彼は笑って誤魔化す。

 

「くぅぅ、だからあの衣装はボクには似合わなかったんだっ!!」

「そうか、照れてる飛鳥も中々可愛げがあってよかったぞ?」

 

そう言われて、思わず顔を下に向く。

くっそ、顔が赤くて見せられないじゃないかっ!!

 

「それとだな飛鳥さん」

「なんだよ」

「そろそろ離して貰えないとヤバイというかなんというか」

 

少しむっとしてしまったボクはジロッと彼を見る。

珍しく彼も顔を赤くしてドア付近を指差す。

 

ドアの方を見るとレッスンルームに入ろうとしている、ちひろさんとまゆがニヤニヤしながらこっちを見ている。

 

客観的に自分を見て見ると両手は彼の襟を掴んで、ボク自身も彼に縋るように立ってる。

………まるで親しい男女の関係のような行為を見られている。

 

思わず反射的に突き飛ばすように彼から離れるが、ふと彼が足を怪我をしているのを思い出す。

 

「もういるなら声かけてくださいよ」

「二人が仲睦まじく見えたのでつい」

 

彼はなんともないように振る舞うが今のはちょっとやり過ぎた。

 

「そんじゃ飛鳥も風邪引かないうちに汗流してこいよ」

 

しかし彼は何事もなかったように振る舞う。

 

ボクはキミのそういう所が…………




なんとか飛鳥の誕生日に間に合わせる作者の鏡っ!!

あ、それと飛鳥の限定SS当たりました………単発で(ドヤァ

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