GATE:Modern Warfare   作:ゼミル

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日曜にコロナワクチン(1回目)受けたら副反応でダウンして本編更新間に合いそうにないんで番外編でお茶を濁していくスタイル()


5周年記念:GATE 自衛隊彼の地にて――?

 

 

 ある神は言った。

 

 世界とは、宇宙開闢の瞬間を源泉とする川のようなものであると。

 

 時空の地へ至る混沌に向けて流れていく過程で山や谷の影響を受け、蛇行し、細くなり、狭くなり――時には別の(世界)と合流する程に近付く時もある。

 

 ある神は言った。最も近くなった時、ほんの少しだけ力を加えてやれば川と川、2つの世界が接する事になると。

 

 2つの世界が接した時に開いた合流部を神も人も『門』と呼称した。

 

 

 

 

 

 

 ところで。

 

 それぞれの世界を川に例えた場合、それらを視覚化しようとしたら、大抵の人は簡単で分かり易い平面的な河川図を思い浮かべるだろう。

 

 だが実際の川というものは平面状の変化だけでなく、高きから低きに向かって流れるように高低差というものがある。二次元では一見並行して流れるように見えても、三次元で見ると大きな高低差があって合流しようがない、そんな川も決して珍しくないのだ。

 

 他には地下水脈。もしくは人工的な下水道か。

 

 平面状では1本の川に見えて、その真下の奥深くに別の川が流れている場合もある訳で。左右に曲がりくねるだけでなく折れ線グラフよろしく高さが上下動する、そんな流れの川だってありえる訳で。

 

 

 

 

 そう、()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……というか。

 

 起きちゃったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 伊丹耀司 特地派遣部隊()()()()()・二等陸尉

 ()()()()()()()()/アルヌス駐屯地

 

 

 

 

 

 

 地球とを繋ぐ『門』が閉じて尚、4672名もの自衛隊員が未だ残存するアルヌス駐屯地は今、閉門騒動以降最大の緊迫した空気に包まれていた。

 

 

「あれって、()()だよなぁ?」

 

「ええ、()()だと思います」

 

 

 緊急呼集を受けて押っ取り刀で駆け付けた伊丹と富田は視線を合わせぬまま、そんなやりとりをした。

 

 駐屯地の中心部に位置する巨大なドーム――かつて銀座と特地を繋ぎ、中国とアメリカその他各国の工作員による破壊工作を受けて異世界間を繋ぐ役目を停止した『門』の残骸がある、その空間。

 

 水溜まりの水面のような、ガラス窓のようなものが垂直に空中で浮かんでいた。

 

 帝国が銀座へ通じる異世界への入り口を強引に固定すべく、水晶や建材を用いてアルヌスの丘に拵えた魔法装置を用いるその手前の状態……

 

 異世界と繋がった直後、云わば素の状態の『門』に間違いなかった。伊丹は日本でレレイが『門』を開く魔法の実験に立ち会っていたし、富田も閉門騒動の際に暴走した『門』が複数の異世界に同時接続された瞬間に出くわしていたから見覚えがあった。

 

 

「またあの時みたいな蟲の化け物がウジャウジャは勘弁して欲しいなぁ」

 

 

 伊丹を挟んで富田とは逆の位置に立つ栗林が嫌そうに愚痴った。伊丹も心から同意見である。

 

 チラリと同じく異常事態の対処に召集された専門家、すなわち現状で唯一異世界の『門』を繋げる魔法こと穿門法の使い手である魔導師の少女を伊丹は見やった。富田もそれに倣った。

 

 レレイは、プラチナブロンドの頭を横に振った。

 

 

「違う。あの『門』の出現に私は一切関わっていないし、心当たりも無い」

 

「だよなぁ。じゃあさレレイ、勝手に『門』が出現したと仮定した場合、その原因はどんなのが考えられそう?」

 

「またハーディが引っ掻き回そうとしてやらかしたんじゃないのぉ」

 

 

 異世界の入り口から以前の蟲獣や触手みたいな危険生物が出現しても即討伐できるよう、剥き身のハルバードを手に身構えながらロゥリィが口を挟む。

 

 

「ロゥリィが述べた内容の可能性も前例がある以上当然考慮すべき。もしくは何らかの干渉も受けず本当に偶然、別の世界と接触してしまい自然に『門』が開いてしまった場合も考えられる。あの程度の規模であれば自然に生じたものでもおかしくないと思われる」

 

 

 機甲部隊も通行可能な規模だったアルヌスの『門』とは比べ物にならない、人が1人潜り抜けられる程度のサイズだ。

 

 

「或いは、こういう理由も考えられる」

 

「それってなぁに?」

 

 

 小首を傾げてのテュカの問いに、レレイは少しの間考え込む素振りを見せてから重々しく口を開いた。

 

 少女の顔は、珍しく緊張で張りつめていて。

 

 周りの伊丹達もレレイが告げた別の推測を聞かされるや、揃って顔を固くさせざるを得ないだけの深刻さがその内容には存在していた。

 

 

 

 

「私やハーディのようなこちら(特地)の存在ではなく――()()()()()()()()()()穿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 マジか、と呻くので伊丹には精一杯だった。

 

 直後、水面に似た『門』の表面に波紋が生じたからだ。それは水底の魚が水面に飛び出そうという前兆を思わせた。

 

 閉門騒動で猛威を振るった大小様々な蟲獣に大いに苦しめられた記憶も生々しいだけに、『門』を包囲する自衛隊員達の緊張感も半端ではない。

 

 何時でも射撃出来るよう小銃の安全装置は解除済みだし、銃以外にも火炎放射器や対戦車兵器を構えた隊員のみならず、燃料不足で稼働制限が課せられた74式戦車までも砲口を『門』へ向けてスタンバっている辺り、部隊を集結させた司令部まで揃いも揃って本気の対応である。それだけ蟲獣の軍勢が凄まじく恐ろしい存在だったという証左とも言えた。

 

 

 

 

 とうとう向こう側(異世界)の生命体が、『門』を潜り抜けてその姿を現した。

 

 

 

 

 瞬間、集結した隊員達の間に広がったのは…………果てしない困惑だった。一部は目を見開き、口をポカーンと開けて銃口を下げてしまい、そのまま硬直すらしてしまった。

 

 まず現れたのは明らかに人間だった。これ自体はまあいい。

 

 問題は外見である。見慣れた緑の迷彩服は特地派遣部隊の隊員が着用しているのとまったく同じ陸自仕様の迷彩服。袖を捲ったり襟元を緩めたりと、折り目正しい自衛隊員というよりも戦地の真っ只中で活動中の陸軍や海兵隊員みたいな、海外の兵隊を思わせるスタイルで着こなしている。

 

 しかしその上に身に着けているのは一般隊員が作戦時に装備する戦闘装着セットには含まれない、明らかに別メーカーの防弾プレート入り戦闘ベストで、両手には限界までカスタマイズされたグレネードランチャー装着のM4カービン。

 

 背中にはM14EBR、おまけにホルスターの拳銃は詳細は不明だがおそらくグロックだ。どれも自衛隊の採用品ではない。それぞれの予備マガジンも持てるだけポーチに詰め込んで携行している。どこからどう見ても完全武装だ。

 

 

 

 

 そして何より、集結した隊員達を驚愕させたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、えー、いやぁどうもどうも……もしかしてここ、アルヌスの丘だったりします?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どっかのオタクでグータラで、そのくせ妙に特地の少女達からモテてる二等陸尉とそっくりな(でも彼らが知ってるそれよりも心なしかちょっとだけ精悍さをにじませた)顔を、その人物はしていたからである。

 

 ついでに声もそっくりだった。

 

 どう考えても伊丹耀司その人だった。

 

 

「え? え? もしかしてあれって、俺ぇ!?」

 

「はぁ? いや、えっ、いやいやいやいや何それ嘘でしょ隊長が2人ぃ!?」

 

「あらあらあらぁ?」

 

「お父さんがもう1人……?」

 

「これは…………理論的にはあり得るとはいえ、流石に予想外」

 

 

 栗林に何時もの3人娘も目を見開いて大なり小なり驚きを露わにする。当然もう1人の自分が突然現れた伊丹も困惑して、指先を『門』から出てきた同じ顔と自分の間を行ったり来たりさせるばかりだ。

 

 そこへ更なる爆弾が『門』が投入、というか出現。

 

 

「ちょっとぉ呼んでるんだから無事ならさっさと返事しなさいよぉ……あららぁ、もしかしてこれってぇ、もしかしちゃうぅ?」

 

「こ、今度はロゥリィがもう1人!?」

 

「テュカにレレイ、ヤオまで出てきた!!?」

 

 

 そう、別世界のロゥリィにテュカにレレイまで『門』から出現したのだ。悉く見慣れた人物が次々と増えただけに、取り囲んでいた隊員達も警戒を忘れてざわめいてしまっている。

 

 

 

 

 

 

「もしかして、あの『門』の向こう側って()()()じゃなくて……」

 

「同じ顔の同じ名前が住んでる、平行世界だったみたいだぁねぇ」

 

 

 

 

 

 

 2人の伊丹は鏡に映したような、全く同じ苦笑いを浮かべたのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GATE 自衛隊かの地にて、平行世界と遭遇せり

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姿見ないけどそっちの世界のクリボーも元気に暴れてんの?」

 

「いや、出産予定日が近くなったから今は診療施設に入院してるよ」

 

「え゛っ゛。そっちのアイツ男捕まえれたの!? お()き合い申し込んだ特戦群の連中からも逃げられたあの脳筋格闘バカが!?」

 

「隊長後で隊舎裏ですよ」

 

「酷い言われようだなオイ。そうかそっちのクリボーとは()()ならなかったのか……」

 

「え、何ですか気になるんですけどその意味深な台詞。向こうの私、一体どの男捕まえたんですか! もしかして別世界の私は富田ちゃんゲットに成功してたり!?」

 

「いやその、だな…………………………向こうのクリボーのお腹の子供の父親は俺です」

 

「「ファーwww」」

 

 

 

 

 

 

「ついでだから白状しちゃうとロゥリィとテュカとレレイとあとヤオもそういう仲だったりしますハイ。 あ、浮気とかじゃなくて女性陣公認だからな? 最初に志乃が妊娠したから彼女が本妻って事になったけど名目上の話だけで立場は皆平等だぞ」

 

「ファッ!? ウーン……(白目)」

 

「栗林がショックのあまり気絶した!」

 

「この節操なし!」

 

「ほっとけ! 仕方ないだろ皆裸で一斉に押し倒してきたんだぞ5人に勝てるわけないだろ!」

 

「「「その話、詳しく聞かせて(なさぁい)」」」(野獣の眼光)

 

「ヒェッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『事実は小説よりも奇なり』 ――バイロン

 

 

 

 

 




作成時間:深夜テンションで約3時間前後
…何でこういうノリの話だけスラスラ書けるんだろ(´・ω・`)

ちなみにこれまでの番外編と違って最後尾に回したのには理由があったりなかったりします。


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