事務所を後にした黎たちは自宅への帰路についていた。そんな中桜香は疑問に思っていたことを黎に尋ねた。
「あの…黎…聴きたいことがあるのですが…いいですか?」
「桜香が聞きたいのは入社の件だろ?」
「はい…また前のようにならないか心配で……」
「…………」
黎は桜香の懸念に答えられなかった……。
かつて黎と桜香はある民警会社に所属していた。があることによりその会社は潰れ所属していた民警ペアや役員たちはある一組のペア以外が全員死亡という大惨事があった。その一組のペアと言うのが黎と桜香である。
その事件の詳細はすべて闇の中だ。その事件の詳細はまた今度にしよう……
黎は一瞬あの出来事がフラッシュバックしたが頭を小さく降りその記憶を振り払う。そして桜香の方に顔を向け小さく微笑みながら頭に手を置き口を開く。
「確かにまたアノ事件の様にならないとは限らない……でも…何時までも立ち止まってはいられないからな…」
「……そうですね…何時までも立ち止まってはなにもできませんよね…ただこれだけは約束してください…もう無理はしないことそして溜め込まないこと」
「………わかった」
黎は桜香の言葉を素直に受け入れた。
いつの間にか立ち止まっていた黎たちは再び歩みを始める。そのあとの二人は他愛のない話や装備の話などをしながら自宅へと帰っていった。
その頃、蓮太郎と木更は……
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「黎さんたち帰っちゃったね」
「そうだな……」
「里見くん、延珠ちゃんと会ってから変わったわね」
「唐突にどうしたんだよ?」
「いえね…ちょっと振り返ってみてそう思ったのよ…よく笑うようになったし、料理もするようになった。昔の里見くんからは、ちょっと考えられない」
蓮太郎は恥ずかしそうに顔を逸らす。
「そんなことねぇよ」
「里見くん、君のいまの目的ってなんなの?」
「え?」
「延珠ちゃんの両親を探すこと?里見くん、子供の頃よく『お父さんとお母さんは必ず生きてるから探し出すんだ』って言ってたわよね?でも最近は聞かなくなった…いまでもそう思ってるの?」
木更は別段怒るでもなく、こちらを見据えていた。だが蓮太郎はそれに堪えきれなくなって頭を降った。
「かんけーねーだろ」
なるべく平静を装って言ったつもりだったが、吐き捨てるような険悪な響きを残した。
「……もういいんだ、俺の両親が死亡したのは、間違いねぇんだからな」
チクショウやっちまったと思い、蓮太郎は頭を抱えながら夜道をとぼとぼと歩いていた。
その足で蓮太郎が向かったのは勾田公立大学付属病院だった。
受付はすでに顔パスであり正面玄関から北側に向かって進み室戸菫の部屋へと歩を進めた。
部屋につき室戸菫からの意見と洗礼を受け、蓮太郎は自宅へと帰っていった。
自宅へと帰った後も蓮太郎の精神が休まることはなかったのは全くの余談である。
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翌日の昼頃、黎たちが昼食をとっていると携帯が震え出した。画面をみると天童木更の名が写し出される。何かと思い通話を押す。
「どうかしましたか社長?」
「昨日のことで防衛省までついてきてほしいの」
「なんで防衛省何だ?」
「分からないわ、とにかく来い、としか言われてないの…里見くんにも連絡したけど貴方にも来てほしいの」
「…少しキナ臭いが了解、桜香も連れて車で向かう」
「え…車あるの?」
「あぁ…何なら迎え行こうか?」
「お願いします…私は今勾田高校で里見くんを確保した所だから勾田高校まで来てくれるかしら?」
「了解…十分で向かう」
そう言って電話を切り桜香に向き直ると、今の会話を聞いていたのかそそくさと食べ終え準備をしていた。黎も残っていた昼食を急いで掻き込み、シンクに持っていき水につけて準備を整え車の鍵を持ち自宅を出た。
自宅を出た黎たちは勾田高校に車を走らせ木更たちを見つけると何やら言い争っていたがついたことに気がつくと此方に近づいてきた。黎は車から降り二人に声をかけた。
「悪い…待たせたか?」
「いえ、待ってないですよ。それよりは黎さん…その車は?」
「あぁ…俺の愛車の一つで『レクサスLX570』だよ。この他にランボルギーニや自衛隊の使ってる軽装甲車なんかもあるな」
「「……………」」
木更と蓮太郎は今の黎の発言に驚愕し、固まってしまった。それもそのはず今やランボルギーニなどの高級車は見る影がなくそのほとんどがガストレアとこ交戦で会社から破壊されも最早生産されてすらないからだ。
「そんなことより早く乗ってくれ防衛省に向かうのだろ?」
「ハッ‼……そ、そうだったわね…早くいきましょう」
「そうだな」
二人は黎の声で気を取り直し車へと乗り込む。その時に黎は木更が乗る方のドアを開けて頭がぶつからないようにドアの縁に手を当てていた。その動作はまるで流れるようにさも当然のように行っていた。木更が乗り込むと静かにドアを閉め運転席に回り、乗り込み静かに車を発進させた。