FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

96 / 141
第94話 復活の亡霊

連合軍にそれぞれ闇ギルドが差し向けられ、あっちこっちで戦闘が行われた。

 

「だはーーっ」

 

「ぶはーーっ」

 

「ハァ…ハァ…」

 

ナツ、グレイ、レインはそれぞれ疲れが出ていたがなんとか一つのギルドを倒した。

 

「こいつら案外強かったな」

 

「雑魚じゃなかったってことか」

 

「当たり前じゃない!!!相手はギルド一つよ!!!何考えてんのよアンタたち!!!」

 

「むちゃくちゃだー」

 

そんなナツたちに、物陰に隠れていたシャルルが怒鳴り、ミントがその光景を驚きの目で見ていた。

 

「やっぱりすごいな……妖精の尻尾の皆さんは……」

 

レインが荒い息を整えながらそう言うのは、殆どの敵をナツとグレイが倒してしまったからだ。

レインは神器を持っているが、やはりその実力はまだまだ低い。

 

「さーって六魔の居場所をはいてもらおうか!!」

 

「おい、顔が怖えぞ」

 

ナツが悪党の顔で聞きだすと西の廃村に古い儀式場があり、そこにいると教えられ、そこに向かうと崖下に洞窟が見えた。

 

「あそこか?」

 

「ここか!!?ハッピー!!!ウェンディー!!!」

 

「ちょっと!!敵がいるかもしれないのよ!!」

 

崖の上から大声を出すナツをシャルルがそう叱る。

すると空気を切り裂く音と共に何かがナツたちの横を通り抜け、背後にレーサーが現れ、ナツたちを蹴り飛ばした。

 

「ぐはぁ!」

 

「ぐあぁ!」

 

「きゃあっ!」

 

「うわぁあ!」

 

「にゃーっ!」

 

ナツの声に気づいたブレインがレーサーに指示を出し、ナツたちを抹殺するために来たのだ。

 

「またアイツだ!!」

 

「ここは任せろ!!お前らは早く下に行け!!!」

 

「おし!!!」

 

「行かせるかよ」

 

そう言って木の上からまたもや持ち前のスピードで邪魔しようとするレーサーだが、それより先にグレイが地面に氷を張り、レーサーを滑らせた。

 

「いてっ!?」

 

「今だ!!シャルル飛んでくれって……あれ!?」

 

「ミント!!起きてー!!」

 

シャルルとミントはレーサーに蹴られて気絶してしまった。

 

「何やってんだ!!早く行け!!」

 

「飛び降りろってか!!」

 

「仕方ねーなあ!!」

 

グレイは地面までの即席のスライダーを作り、ナツたちの道をつくった。

 

「おお!ありがとうな!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「待て!!くっ!!」

 

レーサーがまた走りだそうとするがグレイが今度は壁を作り、通さない。

 

「貴様……二度も俺の走りを邪魔したな」

 

「道を塞いだだけだろうが」

 

スライダーで降りていったシャルルを抱えたナツとミントを抱えたレインは洞窟に入る。

 

「ハッピー!!!」

 

「ウェンディー!!!どこぉ!!!」

 

『ナァーーーツーー…』

 

「奥からだわ!!行くわよ!!!」

 

奥に進むとそこには涙を流すウェンディとハッピーがいた。

 

「ハッピー!!」

 

「ナツゥ!!!」

 

「ウェンディ!!大丈夫!!?」

 

ハッピーがナツに抱きつき、レインたちがウェンディに駆け寄る。

 

「うう……ごめんなさい……ごめんなさい…私……」

 

ウェンディはか細い声で何度も謝り続ける。

すると奥から足音が聞こえ、そちらに目を向けると信じられないものを目にした。

 

「な、なんで……」

 

「そんな……」

 

4人の目の前にいるのはウェンディの魔法により復活したジェラールだった。

 

「なんでお前が……!!!」

 

「ジェラール?ジェラールなんだよね!?」

 

ナツは怒りを露わにし、レインは戸惑いながらも嬉しそうだった。

 

「ごめん…なさ……うえっ…うえっ……この人は私たちの…恩人…な…の」

 

「ウェンディ!!あんた、治癒の魔法使ったの!!?何やってんのよ!!! その力を無闇使ったら……」

 

「シャルルー!怒っちゃダメだよー!!」

 

泣いているウェンディにそう叫ぶシャルルを、ミントが止める。

するとウェンディが力尽きたように気絶してしまった。

 

「ウェンディ!!しっかりしない!!」

 

「気絶しただけだよー」

 

ナツは驚きの表情でジェラールを見る。

 

「な…なんでお前がこんな所に…」

 

以前の楽園の塔で、ジェラールがエルザにしようとした事を覚えていたナツは、怒りの表情で彼を睨んだ。

 

「ジェラァァァァァアアル!!!!」

 

「ナ、ナツさん!!待って!!!」

 

ナツはジェラールに殴りかかり、レインが慌てて止めるがナツは御構い無しに突っ込む。

しかしジェラールはナツの拳が届く前に手を向け、衝撃波を放ち、ナツを吹き飛ばした。

 

「ぐああああああっ!!!」

 

「ナツ!!」

 

ナツは吹き飛ばされその上に瓦礫が落ち、身動きが取れなくなった。

 

「相変わらずすさまじい魔力だな、ジェラール」

 

それを見たブレインはジェラールに感心の声をかけるが、

 

「! なにっ!!? ぐぉああああっ!!!」

 

なんと…そんなブレインの足元をジェラールは魔法で大穴を空け、その中へと落としてしまった。

 

「ジェ、ジェラール…僕だよ……レインだよ!」

 

レインはジェラールの目の前に立ち、そう強く言うがジェラールは少しレインをジッと見て、横を通り過ぎ、洞窟の外に出て行ってしまった。

 

「うっ…痛たっ…」

 

ジェラールがその場からいなくなったと同時に、瓦礫の中からナツが出てくる。

 

「ジェラール!!どこだ!!!」

 

「もう……外に行っちゃいました……」

 

レインがジェラールの態度にショックを受け、力なくそう答え、ナツが悔しそうにする。

 

「あんにゃろォーー!!!」

 

「あいつが何者か知らないけどね。今はウェンディを連れて帰ることが優先でしょ!」

 

それでもナツはジェラールが出て行ったほうを睨む。

 

「エルザを助けたいんでしょ!!!」

 

シャルルの言葉にナツは悔しそうにしながらも、そのことはわかっている。

 

「わかってんよ!!行くぞハッピー!!!」

 

「あいさ!!!」

 

「レインもいつまで落ち込んでのよ!!!しっかりしなさい!!!」

 

「う…うん」

 

「じゃあ、行こうかー!」

 

ナツたちはそれぞれ抱えてもらいながら洞窟を出た。

そのころ穴に落ちたブレインは自分の計算ミスを後悔していた。

 

「計算外だ…いや…拘束具を外した私のミスか……しかし…以前の奴は私にここまでの敵対心は持っていなかったハズ…眠っている状態で、ニルヴァーナの話を聞いていたとでも言うのか?」

 

そこまで言うと、ブレインはある事に思い至った。

 

「ジェラールめ!!!まさかニルヴァーナを独占する気か!!!! させぬ!!!!あれは我々のもの!!!!誰にも渡すものか!!!!」

 

怒りの表情を浮かべてそう叫ぶブレイン。

 

「コブラ!!!聞こえるかっ!!!!ジェラールが逃げた!!!!奴を追え!!!!奴の行く先に…ニルヴァーナがある!!!!」

 

ブレインが怒りを込めてそう外に向かって叫ぶ。

 

 

「OK、聴こえたよ。ついでにジェラールの足音もな」

 

 

ブレインの叫びは、耳が異常にいいコブラの耳にしっかりと聞こえ、彼はジェラールの追跡を開始したのであった。

 

 

グレイはレーサーと戦っているが、やはりレーサーの姿が消えるほどのスピードは恐ろしいもので、グレイは苦戦を強いられていた。

 

「ちくしょう……やっぱ速えな」

 

そう言って木の上に立つレーサーを睨みつけるグレイ。

レーサーはサングラス越しに殺意ある目でグレイを見下ろす。

 

「オレのコードネームは〝レーサー〟誰よりも速く、何よりも速く、ただ走る」

 

すると上空を飛ぶあるものに気づいた。

 

「ん?あれは?」

 

「!!」

 

つられてグレイもそれを見ると、それはウェンディを救出し、エルザのところに戻ろうとしているナツたちだった。

 

「助け出したか!!!」

 

「バカな!!中にはブレインがいたハズだろ!?どうやって!!?」

 

「ナツがそのブレインって奴を倒したからじゃねえか?」

 

「くそっ!!行かせるか!!!」

 

レーサーは飛び上がり、ナツたちに近づく。

 

「おい!!!危ねえぞ!!!!」

 

グレイの声に気づいたナツだが、すでにレーサーは間近に迫っており、蹴り落とされてしまう。

 

「ぐはっ!!」

 

「うわあ!!」

 

「わっ!」

 

「きゃあ!!」

 

「にゃーっ!」

 

ナツ達は落とされた。

 

「ウェンディ!!」

 

落ちてくるウェンディをレインが受け止めた。

 

「いたたたっ……」

 

「おい!大丈夫か!!」

 

「あ、はい!!」

 

「ハッピー!!シャルル!!ミント!!」

 

ナツが3人を呼ぶが仲良く気絶していた。

 

「くそー!!レインはウェンディを頼む!!!俺がハッピー達を運ぶ!!とりあえずエルザのところに向かうぞ!!!」

 

「はい!!」

 

「行かせねえって言ってんだろ!!!」

 

レーサーが追いかけてくるが、そこにグレイが立ちはだかる。

 

「アイスメイク……『城壁(ランパード)』!!!!」

 

「ぐほっ!!」

 

グレイは巨大な氷の壁を作り上げ、レーサーはその壁に勢い余って衝突した。

 

「グレイ!!」

 

「行けナツ……ここは俺がやる」

 

「だけどお前、今ので魔力使い過ぎちまったろうが!!」

 

「いいから行きやがれ……ここは死んでも通さねえ!!!早く行け!!!エルザの所に!!!!」

 

グレイのその言葉を聞いたナツは背を向けて走り出した。

 

「うおおお~~~っ!!! 必ずエルザを助けるからな!!!!」

 

「当たり前だ」

 

グレイは再びレーサーと対峙する。

 

「貴様、二度ならず三度までも…….」

 

「何度だって止めてやんよ。氷は命の時だって止められる。二度と追いつけねえ。妖精の尻尾でも眺めてな」

 

 

そのころハルト達は、

 

「ふう……こんなもんか」

 

「大したことないでごじゃるな!」

 

ハルトが額の汗を拭い、マタムネが胸を張って威張る。

その周りにはボロボロの闇ギルドのメンバーが倒れていた。

 

「なんだよ。こいつ……強すぎる」

 

「ヒィ〜…」

 

「これが覇王か……」

 

「あれーせっしゃはー?」

 

倒された敵がハルトの強さに恐れて次々と口からそんな言葉が出るがマタムネのことは一切出ていないので、マタムネは拗ねたように聞くが敵は一切答えない。

 

「おい、六魔将軍はどこにいる?」

 

「うぅ……誰が言うか……」

 

「………」

 

ハルトは一瞬顔の表情が抜けると、

 

「早く言えよ」

 

「いでででっ!!言います!!言いますから!!!」

 

また変な縛り方をし、木の上から吊るし上げてどんどんキツく締めていく。

どんどんキツイ海老反りになって行き、周りの同じ闇ギルドの連中はそれを顔を青くして見ていた。

 

「西の廃村にいるって言ってましたァ!!背骨がァ!!」

 

「よしっ、西の廃村に行くぞ」

 

「ぎょい」

 

「ちょっとぉ!?俺はぁ!!?」

 

「あ?放置に決まってんだろうが」

 

(((((鬼だ!!!)))))

 

全員の心の中で思ったことは一緒だった。

 

「よし、行くぞ」

 

今度こそハルトが足を進めようとするが、また足を止める。

 

「どうしたでごじゃる?早く出発するでごじゃる」

 

「いや……待ってくれ。いるんだろ!!隠れてないで出てこい!!!」

 

ハルトが大声で周りに響くように言うとハルトの背後の木の間から人が現れた。

 

「フフッ、やっぱりバレてたゾ」

 

「エンジェル」

 

現れたのは六魔将軍の1人、エンジェル。

エンジェルはどこか蠱惑的な笑みを浮かべてハルトを見ていた。

 

「ねえ、ハルト。私と一緒に来ない?」

 

「はあ?何言ってんだ。んなわけねえだろ!!」

 

「まあ、断られると思ったけど」

 

エンジェルは断られても嫌な顔をせず、いつもどおり妖しい笑みを浮かべる。

するとエンジェルは後ろを振り向いて森の中に入って行った。

 

「待て!!」

 

「追うでごじゃる!!」

 

エンジェルを追って行くと川にたどり着き、エンジェルは川を横断していた。

 

「ハルト!あそこでごじゃる!!」

 

「逃すかよ!!」

 

ハルトは川に飛び込み、エンジェルを捕まえる。

 

「やーん♡」

 

「捕まえたぞ」

 

エンジェルは焦るわけでもなく、むしろ楽しそうだ。

 

「結構強引だゾ♪」

 

「ふざけるな。何のつもりだ」

 

ハルトは真剣な目でエンジェルを見る。

 

「お前、本物だろ。何でジェミニを使わない?あいつを使えば逃げることなんて簡単だろうが」

 

ハルトが捕まえているエンジェルは思念体でもジェミニでもない本物のエンジェルだった。

ハルトにはわざとエンジェルが捕まるはずがないと考えていた。

するとエンジェルは笑みを浮かべたままハルトの目を見つめる。

 

「私自体が囮ってこともあるゾ」

 

「何だと?っ!?」

 

するとハルトとエンジェルが立っていたところが浮上し、簡単なイカダが2人の足元に現れた。

 

「ぐふっ……」

 

するとハルトの顔が青くなり、崩れるようにイカダの上に倒れた。

 

「フフッ、やっぱりハルトも弱いと思ったゾ」

 

「て…テメェ……」

 

エンジェルは倒れたハルトの頬を突きながら、嬉しそうに話す。

 

「コブラも滅竜魔導士だから、同じ滅竜魔導士なら乗り物に弱いと思ったけど正解だったゾ」

 

「うぅ……」

 

コブラが滅竜魔導士なのはハルトにとって初耳だが、ハルトはそれに反応する余裕はない。

 

「マ…マタ…ムネ……逃げ……ぐふっ……」

 

「あぁ、あの猫まだいたんだ。もう帰っていいゾ。これから楽しいことがあるから♡」

 

エンジェルがマタムネがそういいながら、倒れているハルトの体をゆっくりと撫でていく。

するとマタムネの全身がプルプルと震えだし、

 

「もう我慢の限界でごじゃるうぅぅぅっ!!!!!」

 

「はあ!?」

 

マタムネの何かが爆発した。

 




ミント

レインの相棒猫。
魔法はマタムネたちと同じ『翼(エーラ)』
基本的におっとりしているが、細かいことに気配りができる。
間延びした話し方が特徴。
毛色はミント色
好きなのはミントアイスと面白いこと

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。