FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
修行2日目、カミナが朝広間に向かうとそこにはルーシィが先に来ており、準備運動をしていた。
「あ、おはようございます!カミナさん!!」
カミナは昨日のどこか張り詰めた顔ではないルーシィに気づいた。
「吹っ切れたか?」
「はい!」
ルーシィは満面の笑みで答えた。
「そうか、なら昨日と同じこの岩を運べ」
カミナは岩を出して、そう指示して座って様子を見る。
「よしっ!(タウロスの魔力を自分のものに!)」
ルーシィは気合いを入れて岩を引っ張るがやはりピクリともしないが、カミナにはルーシィの変化に気づいた。
(魔力の巡り方と消費が良くなっているな。これもハルトのおかげか……)
ルーシィは昨日より調子が良く、僅かだが力が上がっているのも伺えた。
しかし、そう上手くいくものでもなく、夕暮れ近くなってもまだ動かなかった。
「ハァ……ハァ……なんで?なんでタウロスの力が……」
「今日はここまでだ」
「そんな!まだ体力はあります!」
「俺がこの後予定が入っているからだ。1人でやりたかったらやっていろ」
カミナ公園の出口に向かって歩き出す。
「一つアドバイスだ。俺は星霊魔法を使わないから上手くアドバイスできないが俺の式神は一度倒した魔物を自分に使役させている。星霊魔法はどうなんだ?」
それを言い残してカミナは去った。
ルーシィはいまいちカミナの言ったことがわからず考えた。
○
夜になり、街灯と月の光だけがルーシィを照らしていた。
ルーシィは懸命に魔力を巡らして岩を引っ張るがやはりピクリとも動かない。
「ん〜!!きゃっ!!」
ルーシィが引っ張るが手が滑り、後ろに倒れる。
もう体力が限界で起き上がらず、夜空を見上げる。
「ハァ……なんで上手くいかないんだろ?」
ルーシィが夜空を見ながらそう呟く。
するとそこに人影が入ってきた。
「よっ!おつかれ!!」
「お疲れでごじゃる!」
「きゃあっ!!」
「いたぁっ!?」
突然ハルトとマタムネの顔が現れ、驚いたルーシィは起き上がり、ハルトとぶつかりそうになるがハルトは持ち前の反射神経でかわすが肩に乗っていたマタムネは滑り落ちてルーシィとおでこをぶつけた。
「おい、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫」
「頭が…頭が割れるでごじゃる……!」
ルーシィは頭を少し押さえて平気なようだが、マタムネの頭から煙が上がって、涙目だ。
ルーシィは石頭なのかもしれない。
「どうしたの?」
「差し入れだ」
ハルトはバケットを見せて、笑って見せた。
カップにお茶入れてルーシィに渡す。
「ありがとう。………ふぅ〜美味しい!」
「そうか、そりゃよかった」
「お茶もサンドイッチもハルトが作ってきたでごじゃる」
「そ、そう……(相変わらず女子力がアタシより高い……)」
ルーシィはそれを聞いて微妙な表情をして、今度から実力だけではなく、女子力も上げようと心に決めた。
「で、どうなんだ?調子は?」
「うん、カミナさん鍛えてくれるって言ってくれたけどアドバイスも一回か二回しかしてくれなくて、ただ見てるだけなのよね」
ルーシィが少し不満そうにそう言って、ハルトは岩に近づき触れる。
「これは……!」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
ハルトが岩に触れると岩にはいくつかの魔法がかけられており、どれもルーシィが鍛えられるように幾多もの魔法がかけられていた。
ハルトはカミナはいつも素直に言わないから誤解される奴だとわかっていたから何か仕掛けがあると思い、それが当たった。
「そのアドバイスって何でごじゃったか?」
「えーっと確か、俺は式神をくっぶく?させて使役してるって、それで星霊魔法はどうなんだって言ってだけど……」
「訳がわからないでごじゃる」
ルーシィは思いつめた表情でそう言うと、ハルトが口を開く。
「なぁ、ルーシィ。もしかして星霊の魔力を自分のものにしようとしてんじゃねぇか?」
「え?」
「自分のものにしようとするじゃなくて、借りてみたらどうなんだ?」
その一言にルーシィの頭にはカミナのある言葉が思い起こされた。
『魔法は理解するものだ』
「理解……借りる……そっか!そうだったんだ!!アタシ何勘違いしてたんだろう!」
ルーシィは突然立ち上がり、岩の前に立ち、タウロスの鍵を両手で握り締める。
「お願い、タウロス。力を貸して……!」
ルーシィがそう言うと、鍵が僅かに輝き、薄くルーシィの体が黄金の光に包まれた。
ルーシィは岩を掴み、持ち上げる。
すると岩は軽々と持ち上がった。
「おぉっ!!」
「や、やった!やったわ!ハルト!!」
しかし、気を抜いたルーシィの体から光は消えてしまった。
「へ?」
「ルーシィ!」
光が消えた途端、ルーシィの体から漲っていた力が抜けてしまう。
落ちてくる岩に呆然としてしまうルーシィをハルトが抱えて避けた。
「大丈夫か?」
「ハルト!アタシやったわ!!星霊魔法の応用ができたのよ!!」
「お、おう。そうだな」
ルーシィは潰されそうになった恐怖心など感じず、新しい魔法が使えたことの興奮が勝っていた。
「よーし!じゃあこのまま、この続きを……あっ……」
ルーシィがハルトから起き上がり、修行の続きやろうとしたが足から力が抜けて崩れてしまう。
「あ、あれ……?」
「ルーシィ、今日はもう限界だ。家に帰って休もう」
「う、うん……」
ハルトはルーシィを背負って自宅に向かった。
「アタシやったよ……ハルトぉ……強くなれたよぉ……」
ルーシィはハルトの背中で寝てしまい、寝言を呟く。
「良くやったな、ルーシィ。でもこれからだぞ。頑張れよ」
ハルトは優し笑みを浮かべてそう呟く。
「ねぇねぇ、ハルト」
「どうしたマタムネ?」
「ルーシィの胸の感触はどうでごじゃる?」
「………なんか色々と台無しだよ」
○
そして修行最終日、ルーシィはタウロスの力を借りて岩を目的の場所まで運ぶことができた。
「できたな」
「は、はい!」
「だが、まだ不安定だ。次の段階に移るぞ」
「え、でもこの状態まだ不安定で……」
「だからそれを安定させるための修行だ」
カミナはコップと水筒を取り出し、コップの中に水を注いで地面に置く。
「アクエリアスの鍵を持て」
ルーシィはアクエリアスの鍵を取り出す。
「タウロスと同じように魔力を借りてこの水を全て水筒に戻せ」
「あの……これってなんの意味があるんですか?」
「お前はきっかけを掴んだんだ。なら今度はそれを扱えるようにしないといけない」
カミナはタウロスの鍵を指差す。
「タウロスはパワーが王道十二門の中で一番強いがパワーってのは単純だ。どこぞのバカ2人みたいにな」
○
「「ハックシュッン!!」」
「どうしたでごじゃる?」
「風邪?」
ハルトとナツが同時にくしゃみをしてマタムネとハッピーは不思議そうにしている。
「ハッピー、それはないでごじゃる。馬鹿は風邪引かないでごじゃる!」
「「おい」」
「あ」
その後ギルドから一匹の猫の悲鳴が響いた。
○
「魔法を持続させるには簡単な魔法を使い続けるより、難しい魔法の作業をやったほうが手っ取り早い」
「普通は逆なような気がするけど……」
「何か言ったか?」
「い、いえ!何も!」
ルーシィの小言が僅かに聞こえたのか、カミナはルーシィをジロリと睨む。
「とにかく操作系の魔法を繰り返しやることだけでも大きな修行だ。少しだけでもいい毎日続けていろ」
「はい!修行をつけてくれてありがとうございました!!」
こうしてルーシィは新たな魔法を身につけた。