FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
ハルト達はカルバートが用意した馬車に乗って、カルバートが指定した場所まで移動していた。
「ぐおおぉぉぉぉ…………!」
「また酔ったのかよ?いい加減歩いて行けよ」
「たぶん聞こえてないね」
「学ばないでごじゃる」
「ハルトぉ〜浮かせてくれぇ……うぷっ!」
「だから無理だって」
相変わらずのナツの乗り物酔いにハルト達は呆れるが、エルザは馬車の小窓から外を眺めて、会話に参加していなかった。
「エルザ、大丈夫?」
「うん?ああ、大丈夫だ」
ルーシィが心配して話しかけるが、エルザはどこか上の空だ。
エルザはギルドでのカルバートとの話をずっと思い返していた。
○
「お前たちには償って貰わないといけないんだよ」
カルバートがそう言った瞬間、エルザはテーブルを殴りつけ、その部分にヒビが入った。
「……償えだと?ふざけるな!!あの塔の設計したのはお前なんだろう!!償うのはあの塔を設計し、作らせたお前だろう!!!」
「設計したのは俺だが、作らせたのはジェラールだ。履き違えんなよ」
カルバートは2本目のタバコを取り出し、火を付けた。
「で、受けるのか?受けないのか?」
「受けるわけがないだろう!!お前は評議会に指名手配されていたはずだ!!ギルドの規律にも反する!!!」
エルザはそう言うが、明らかに感情が入っているのがわかる。
そしてカルバートは昔ある事件を起こし、評議会から指名手配されていた。
「俺は今は指名手配されていない。評議会が指名手配にしたのは15年前だ。もうとっくに時効だよ。それに今は評議会は機能していない」
評議会はジェラールの事件により、破壊されてしまい機能していなかった。
「お前たちにとっても悪くない話だろう。40億Jなんて大金中々手に入らないしな」
「私たちを見くびるな!金で全ての仕事を受けるわけがない!!」
「そう言うわけだ。帰ってくれ」
ハルトがそう言い、ハルトたちは立ち上がってテーブルから離れる。
カルバートはそれを見て、仕方ないと言った風にため息を吐いた。
「ハァ……じゃあこう言えば、仕事をしてくれるか?」
「なんだよ?」
カルバートは煙を吐き、口を開く。
「あと一週間でフィオーレ王国は滅ぶぞ」
○
ハルトたちはその言葉が本当かどうかわからなかったが、万が一のためにもカルバートの依頼を受けるようにマカロフから言われ、受けることになりカルバートが指定した場所に行くことになった。
「着いたみたいだぜ」
グレイがそう言い、見た先にはカルバートが立っており、そこに降りた。
「実はもう1人別に雇ったんだが、どうやら遅れてるみたいだな」
「もう1人?別のギルドにも依頼したのか?」
「いや、フリーの魔導士に頼んだがもう時間がない。仕方ない。今から依頼の内容を伝えるぞ」
「こんな森の中に何かあるのかよ」
「今からそれを言うって言ってんだろうが。黙ってろ、露出狂」
「なんだと!?」
カルバートは突っかかってくるグレイに辛辣に返すが、事実グレイはもう脱いでる。
「グレイ殿……」
「服また脱いでるよ」
「げっ!?」
「依頼はこの森の奥にいるある男を捕まえて欲しい。多少手荒になっても構わない」
「一体誰なんだ?」
「それはお前たちには関係ない。ただそいつを捕まえて欲しい。それだけだ」
「一般人なんじゃないの?その人って?」
ルーシィがそう聞くとカルバートは一瞬複雑そうな顔をしたが、すぐ戻した。
「いや、一般人じゃない。それどころか人じゃない」
「人じゃない?」
「なんだそりゃ?」
ハルトたちはわけがわからなかった。
「アーウェングスとドラグニルならわかるはずだ」
カルバートひそう言い、自分が指した方向と逆のほうに向かった。
「お前はどこに行くんだ」
エルザがカルバートにそう聞く。
エルザはまだカルバートを信用したわけではなく、ハルトたちも完全に信用したわけでないがエルザは特に疑っていた。
ハルトからジェラール操られていたと考え、その犯人は誰かを探していた。
そしてその矢先に来たのがカルバートだった。
疑っても仕方なかった。
「俺は俺でやることがある。後はお前たちに任す」
そう言ってカルバートはどこかに消えていった。
「仕方ねえ。取り敢えず行くぞ」
ハルトをはじめとして森の中に進んで行った。
「それにしても本当なのかな?あと一週間でフィオーレが滅んじゃうなんて」
「デマじゃねーのか?アイツは楽園の塔で敵だったんだ。今度は味方ってわけじゃねーだろ」
「そうだけど……」
「だから今回の仕事は俺たちが受けたんだ。じーさんはカルバートの言葉が本当かどうかを確かめるように頼んだんだ。もしもの時は仕事をいつでもやめていいって言ってたしな」
ハルトがそう言い、みんなは黙って進むとハッピーがナツにこえをかけた。
「ナツ、珍しいね。そんなに黙ってるなんて。あのカルバートって人が来たときもずっと黙ってたし」
ハッピーはナツの様子がおかしいことを気にしていた。
ナツはカルバートが来てから大人しくなっていたのだ。
いつもなら噛み付く勢いなのにも関わらず、黙ったままだった。
「なんかアイツの匂いが苦手なんだよな」
「匂い?」
「おう。人の匂いと油くさい匂いが混ざって変な気分なんだ」
「人と油?」
「オメー、そりゃアイツの体の一部が機械だからじゃねーのか?」
「いや、それだけじゃねえんだよなー」
ナツが不思議そうに頭をかしげた瞬間、ハルトとナツの動きが止まった。
「どうした。ハルト?」
「ナツ、感じたか?」
「おう」
エルザが立ち止まったハルトに聞くと、ハルトはナツに確認を取るかのように聞いた。
「ナツが言った人と油の匂いを感じた。しかも今回は油の匂いが強い」
「え?それってどういうことでごじゃる?」
「わからん。言うならば機械の匂いなんだが、こんなのは初めてなんだ……取り敢えず進もう」
ハルトたちが進むとそこには開けた場所に小さな小屋があった。
「小屋?こんな森の奥に?」
「ハルト、ナツ。人の気配はあるのか?」
「…………」
「………うーん」
「どうしたんだよ?」
「いや……」
「わかんねえ……」
エルザの言葉にハルトとナツは難しそうな顔をして答えれない。
「わからないってどういうこと?」
「こいつ……人なのか?」
「初めての匂いなんだよ。人がどうかすらわかんねえ」
「あっ!誰か出て来たでごじゃる!」
ハルトとナツがそう答えた瞬間、小屋から誰かが出て来た。
灰色の髪をボウズヘアーで整えたガタイが良い男だった。
「あれ、人だよ?」
「おいおい。2人とも鼻の調子が悪いんじゃねえのか?」
「じゃあ、あの人がカルバートが言ってた人なのかな?匂いに特徴があるみたいなこと言ってたし」
「取り敢えず話を聞きに行くぞ。話をすれば大人しく着いて来てくれるかもしれない」
「お、おい!エルザ!いきなりだな」
「早くカルバートの依頼をこなして、アイツの目的を明確にするためだ」
エルザが進んで話をしに行くために茂みから出た。
男は薪割りをしており、エルザたちが近づくとその手を止めてエルザたちに振り向いた。
「何か用ですか?」
「突然すいません。私たちは妖精の尻尾の魔導士です。いきなりですが私たちと一緒に来てくれませんか?ある男が貴方に会いたいそうです」
「そうですか……」
男はエルザたちに背を向けた瞬間、素早く振り向き手に持っていた斧をふり投げた。
「キャッ!!」
「危ない!!」
エルザは素早く剣を換装し、その斧を叩き落とした。
「何をする!!」
「お前たち、カルバートの仕事を受けたんだろう?なら、着いて行くのも連れて行かれるのも断る」
「おい。ちょっと待てって俺たちは別に無理やり連れて行こうなんざ思ってねえよ」
グレイがそう言うが男は鋭い目つきでハルトたちを見据える。
「それでもお前たちはカルバートの依頼を受けた。それだけで……」
男は姿勢を低くし、戦う姿勢になった。
「俺の敵も同然だ」