FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第55話 HOME

空は厚く黒い雲に覆われた空、その下は今にも爆発が起こしそうな火山が連なり、その間を真っ赤な溶岩が大量に流れている。

そんな場所を白い光の塊が空中を漂っていた。

やがてその光はある場所に止まった。

すると岩の切れ目から地の底から響くような声が聞こえてくる。

 

「何の用だ……グランディーネ」

 

『久しぶりね』

 

岩から聞こえてくる声はどこか怒りを含んでいるようにも聞こえてくるが、光から楽しそうな声が聞こえる。

 

「ここへ来る事……干渉する事は禁じたハズだ。今すぐ立ち去れグランディーネ」

 

『………王の気配を感じたものだからね。本当、無茶ばかりするわね。私たちの王は……元々そういう気質なのかもね?』

 

グランディーネと名乗る光はどこかおかしそうに笑いながらそう話す。

 

『今回は完全に覚醒しなかったわね。4年前同様、覚醒の扉に掠っただけみたい……このまま行くと“聖戦”が始まるのも遅くないわね』

 

岩の隙間から赤い目がギロリと光を睨む。

 

「………何が言いたい」

 

『このままだとあの子も巻き込まれるかもしれないわね。非常な運命に』

 

「出ていけ」

 

さらに言葉には怒りが込められ、岩から熱が溢れ出る。

 

『いずれウェンディも王と会う事になると思うけど、私は心配なのよ。“前と同じように巻き込まれないか”ってね』

 

「出ていけ!!!!人間に干渉するな!!!!!」

 

やがて熱は炎に代わり岩からその巨体を現した。

 

「このイグニールを怒らせたいのかぁ!!!!!!」

 

爆発音かのような怒号は周りの岩を破壊し、現れたの炎のような紅蓮の鱗を持ちその身体からは炎を溢れ出す竜、そしてナツの親でもあるイグニールだ。

 

『そうね……今、私たちが心配しても何一つできる事はないものね。

後は彼らの力を信じるしかないものね………奴らは………いいわ……もうよしましょう。竜王祭で会える日は楽しみにしてるわ。イグニール』

 

 

アカネビーチに高級ホテルのある部屋で包帯だらけの男が寝ていた。

 

「ふがっ……?」

 

間抜けな声を出して起きたのは包帯だらけでベッドに寝ていたハルトだった。

ハルトの声に気づいたルーシィたちが一斉にハルトに詰め寄る。

 

「「「「「「ハルト!!!」」」」」」

 

「お、おう……お前ら、元気そうだな」

 

「元気そうじゃないよ!!!心配したんだからね……」

 

ルーシィが涙を目尻に溜めながら怒鳴るのを見て、ハルトはバツが悪そうな顔をしてしまう。

 

「あーごめん、な」

 

ハルトは包帯で動きづらそうな腕を無理に動かしてルーシィの頭をゆっくり撫でる。

 

「………うん、許す」

 

ルーシィはハルトに撫でられ、顔を少し赤らめながら許し、もっと撫でて欲しいのか頭を押し付ける。

その場だけピンク色の空気ができかけたがそこに邪魔が入った。

 

「ハルトー!!!」

 

「ギャアッーー!!!!!」

 

突然上からマタムネがハルトの腹に目掛けて落ちてきたのだ。

傷が塞がっていないのに軽いとは言え、その衝撃は致命傷だ。

現にハルトは白目をむいて、口から泡を出している。

 

「キャー!!ハルト!!しっかりして!!!」

 

「おい、マタムネ。邪魔すんなよ。せっかくいいところだったのによ」

 

「嫌でごじゃる。心配したでごじゃるから構ってくれないと嫌でごじゃる」

 

「素直だな」

 

ルーシィはハルトが泡を出したことに心配し、ルーシィとハルトをからかってやろう静観していたグレイは邪魔をしたマタムネに文句を言うがマタムネはハルトに文句を言いたいようだ。

 

「ハルト……もう無茶はやめて欲しいでごじゃる。エミリアみたいにいなくなるのは嫌でごじゃる………」

 

「すまん……」

 

マタムネの悲しそうな顔に申し訳なさそうにに謝るしかなかった。

 

「ハルト、無事でよかった。よくあの魔力の渦から抜け出したな」

 

ハルトまではいかないが包帯だらけのエルザが安心した表情でハルトに話しかける。

 

「…………ああ、まあな」

 

ややあって返すハルトにエルザは少し違和感を感じたが気のせいだと思った。

 

「ハルト、起きてよかった。3日も起きなかったものだから心配したぞ」

 

「ははっ、俺がそう簡単にくたばる訳ねえだろ」

 

ハルトが立ち上がろうとするが力が入らずベッドから起き上がれない。

 

「仕方ないでごじゃるなぁ」

 

マタムネはハルトを抱えて、わずかに浮かすように飛ぶがその光景は間抜けぽっく見える。

 

「ブフッ!ダセーな!ハルト!!」

 

ナツが爆笑しながらハルトを指差すが、ハルト動こうとしてもピクピクとわずかにしか動かない。

 

「このやろう……!」

 

「ハルトあまり無理するな。お前は茶化すな!」

 

「痛っ!?」

 

ハルトはナツに殴りかかりたいが体が動かずプルプルと震えることしかできず、そんなハルトに代わりエルザがナツに拳骨を与えた。

それを見たみんなは笑い、そこにはいつも通りの彼らの日常があった。

 

 

その後エルザはシモンたちと話し合い、事情を知らないウォーリーとミリアーナに説明をした。

 

「ごめんなさい、エルちゃん」

 

「あ…あのよ……すまなかったゼ。エルザ」

 

「私の方こそ…8年も何もできなかった。本当にすまない」

 

「姉さんはジェラールに脅されてたんだ。オレたちを守る為に近づけなかったんじゃないか」

 

ショウはエルザが自分を責めるように言うのを庇うがエルザは悲しい顔をする。

 

「今となってはそんな言い訳も虚しいな……」

 

その言葉は救えなかったジェラールに向けられるとふとシモンは思った。

 

「過去は未来に変えて歩き出すんだ。今日から俺たちは本当の自由になったんだからな」

 

「自由か……」

 

「私たちはこれからどうすればいいんだろうね……」

 

シモンの言葉にショウたちはどうすればいいかわからないみたいだ。

そこにエルザの提案が出た。

 

「行く宛がないなら妖精の尻尾に来ればいい。お前たちなら大歓迎だ」

 

「!!」

 

「妖精の尻尾!?」

 

「みゃあ!?私たちが!!?」

 

「いいのか?」

 

その言葉にシモンたちは驚く。

 

「お前たちの求めていた自由とは違うかもしれんが十分に自由なギルドだ。きっと楽しいぞ」

 

その言葉にウォーリーとミリアーナは喜ぶがシモンとショウは複雑そうな顔をする。

そしてナツたちに紹介しようとホテルに戻ろうとした時に後ろから声がかけられた。

 

「エルザ」

 

「? ハルト!もう外に出てもいいのか?」

 

「いや、ちょっとキツイけどどうしてもお前に言っておかないといけないことがあるんだ」

 

海辺には人は誰もおらず、さざ波の音しか響いてない。

 

「それで話とはなんだ?」

 

「………俺が何で楽園の塔から脱出できたのか、言っておこうって思ってな」

 

「どう言うことだ?」

 

「俺が脱出できたのは……ジェラールのおかげなんだ」

 

「!!」

 

ハルトの口から衝撃の事実が語られた。

 

 

爆発寸前の楽園の塔はハルトを逃さまいとラクリマが液状化し、腕や足にからんでくる。

 

「くそっ!全然剥がれねぇ!!」

 

ラクリマは徐々にハルトの身体を飲み込んでいく。

そしてとうとうラクリマが首に差し掛かろうとした瞬間、首に手が添えられた。

 

「なっ!?テメェは……!?ジェラール!!!」

 

手を添えたのはボロボロのジェラールだった。

 

(くそっ!こんな時に……!!)

 

ハルトは身動きができず、まさに絶体絶命のピンチだ。

 

「魔力を抑えるんだ。そうすればラクリマの進行も治るはずだ」

 

「は?何言って……」

 

「いいから早く!」

 

ハルトはジェラールに言われた通りに魔力を抑えると体にはってきていたラクリマはピタッと止まった。

 

「よし、そのまま抑え続けてるんだ。俺が魔力を解放して楽園の塔を惹きつける」

 

「なんでそんなことを……」

 

「なんで……か、自由にしてくれた恩人に恩返しをしたいんだ」

 

ハルトがジェラールの顔を見るとその表情はさっきまでの邪悪なものではなく、どこかスッキリした表情だった。

 

「お前……」

 

「君に倒された後、意識がはっきりしたんだ。エルザの言葉もちゃんと届いた……だからその恩返しだ!」

 

ジェラールは自身の魔力を解放するとラクリマはハルトからジェラールに移り変わる。

 

「おい!お前はどうするんだ!!」

 

「俺は……許されないことをした。ここで罪を償う」

 

やがてラクリマは一つの大きな結晶となってジェラールを包み込んだ。

 

「ジェラール!お前はそれでいいのか!?エルザはどうなる!!」

 

「エルザは俺が生きていては前に進めない」

 

ハルトの言葉にジェラールはハッキリと答え、自分の意思を曲げないことを伝えた。

 

「そんな……」

 

「君は優しいな……俺になんか罪悪感なんか抱かないでくれ。君にならわかるだろう。大切な人を危険な目に合わせた時の自分を許さない気持ちを……」

 

ハルトはそれを聞いて頭の中に炎の中で血まみれの少女を抱きしめて座り尽くす自分を思い出した。

 

「エルザに伝えてくれないか……俺を救ってくれてありがとう、と……」

 

「ジェラァァァァルゥゥゥッ!!!!!」

 

そして塔は光に包まれた。

 

 

ハルトはジェラールに言われた自分の過去のことは除き、エルザに伝えた。

 

「これが俺が脱出できた理由だ」

 

「……そうか」

 

エルザは夕日が落ちる水平線を眺めて黙ったままだ。

 

「………これだけは伝えておかないと思ってさ。先に戻ってるよ」

 

ハルトはエルザを残しホテルに戻っていった。

エルザは1人、膝を抱え顔を埋めた。

 

「ジェラール………」

 

その頬には涙が流れたが、慰めるのは緋色に輝く夕日だけだった。

 

 

みんなで食事を終えた後、シモンたちは妖精の尻尾には入らず暫くは旅をするとエルザ達に伝えた。

まだ自分たちでやりたいことを探したいらしい。

提案したエルザも快く了承した。

シモン達はボートに乗って旅立った。

エルザたちはそれを華々しく見送り、また会おうと約束をした。

そしてハルトたちは、

 

「それじゃあ、家に帰ろう」

 

『おう/うん!!!』

 

エルザの言葉にハルトたちは返事をし、家族が待つギルドに帰った。

 


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