FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
対峙するハルトとジェラール。
しかし、ハルトは顔が怒りに染まり今にもジェラールを殺しそうな雰囲気を醸し出し、ジェラールはそれを感じているのか冷汗を流し後ずさりしてしまう。
ハルトが一歩踏み出そうとした瞬間、ジェラールは声を上げる。
「動くな!まだエルザの体には魔法が残っている。俺の命令1つでエルザを殺すことだって可能だ」
「うぅぅっ………!」
エルザの首にスネークバイトの模様が移り、ギリギリと音をたてながら絞める。
それを見たハルトはピタッと足を止める。
「は…ハルト……私に気にせずジェラールを……私は結局かつての仲間どころか今の仲間すら危険に晒してしまうなんて……私は仲間失格だ……」
エルザは苦しそうにしながら自傷気な笑みを浮かべながら、また涙を流す。
ハルトは一瞬だけエルザに目を向けるだけで答えない。
その瞬間、ジェラールから魔力が膨れ上がり、激しい風が生まれる。
さらにはジェラールの頭上に宇宙を凝縮したかのような闇が膨れ上がる。
「影が光源と逆に伸びている!!?この魔法は!!」
「気持ち悪い魔力だな……」
ありえない現象を起こす魔法にエルザは戦慄し、ハルトは顔をしかめる。
「念のためだアーウェングス。お前は防御をするな。した瞬間エルザを殺す」
「なっ!?その魔法を防御無しでくらってしまえば死んでしまう!!私のことはどうでもいい!!だから逃げろ!!!」
エルザは叫ぶが、ハルトは笑みを浮かべる。
「エルザ。お前、自分は仲間失格とか言ってたな。そんなことねえよ。昔言ったろうが『俺たちは家族だ』って。だから危険に晒したとか、そんなこと言うなよ」
ハルトは歯を見せてエルザを安心させるような笑顔を見せる。
「俺を信じろ」
「無限の闇に落ちろォォオ!!!!覇王ォォォォ!!!!」
「ハルトォォォォォッ!!!!!」
「天体魔法!!暗黒の楽園(アルテアリス)!!!!」
闇の球体が放たれ、ハルトに一直線に向かいぶつかり、激しい衝撃と爆発音が響く。
アルテアリスはラクリマを大きくえぐった。
そして魔法が終わるとそこには服がほぼ全て破れ、血だらけになったハルトが立っていた。
「ありえん……。物質を塵にする魔法だぞ。原型が保つなんて「ゲホッ……!」っ!!」
立ったままのハルトは口から溢れた血を腕で拭う。
「終わりか……?次はこっちの番だ、なっ!!」
ハルトはジェラールに一気に近づき、腹に重い拳をぶつける。
「ガハッ!」
「オラァッ!!」
そのままラクリマの壁に殴り飛ばす。
「覇竜の咆哮!!」
「ぐああっ!!!」
続けて攻撃を出し続けるハルト。
ジェラールは防ぐこともできない。
そんな時にエルザに近づく人影があった。
「エルザ!」
「ナツ!シモン!」
「こんなとこで何したんだよ!ほら早くみんなで家に帰ろうぜ」
「す、すまない……」
ナツにそう言われエルザは申し訳なさそうな顔をするが、ナツは気にしていないように笑う。
「そこは『ごめん』じゃなくて『ありがとう』だろ!仲間なんだからよ!!」
「……ああ、そうだな」
それを聞いたエルザははるとが今まで言われたこともあり泣いてしまった。
しかし、今度は悲しみの涙ではなく仲間にここまで想ってもらえたことへの喜びの涙だ。
「おうっ!?なんで泣いたんだ?泣かれると俺がハルトに怒られちまう!!?」
「そんなことを言っている場合か!?早くエルザを解放してここから離れるぞ!!」
ナツとシモンが騒いでいるのに気づいたジェラールは焦りだす。
「奴らなんでここに!!?……仕方ない。ここはエルザを使って……がっ!?」
「何やってんだ!!早くここから離れろ!!!」
ハルトがジェラールの顔を掴み投げて、何かさせる前に阻止し、ナツ達に向かって叫ぶがナツがいくらエルザを引っ張っても抜ける気配が
ない。
「ダメだ!さっきと違って固え!」
「なら壊せ!お前の得意なことだろ!!」
「邪魔するな!!覇王ォォ!!!」
「邪魔はテメエだろうが!!」
ジェラールとハルトが激しくぶつかり合うのを他所にナツはニヤッと笑う。
「そうだよな。ぶっ壊しても誰も文句なんて言わねえもんな!!!」
ナツはそう言った瞬間、体から炎を出し暴れ回り周りのラクリマを壊していく。
「やめろ!!それ以上壊したらせっかくの魔力が……!」
ジェラールがナツのほうを向いた瞬間、隙ができハルトに上空に打ち上げられらる。
「があっ……!」
「お前の呪縛も終わりだ」
ハルトは打ち上げられたジェラールより高く跳び上がる。
「お、俺は……ゼレフを蘇らせて楽園に………!」
「楽園ってのはみんなが笑っていられるところだろうが!誰かを悲しませてできるような場所じゃねえんだよ!!」
ハルトの右拳に全身全霊の魔力が集められる。
「いい加減それに気づけ!!ジェラール!!!」
右手に作られた竜牙弾を握り締め、ジェラールに向かって放つ。
「竜戟弾!!!!!」
竜戟弾はジェラールと塔を巻き込み、塔の頂点を粉々に破壊し、塔自体に大きな亀裂をいれた。
ジェラールは大きなクレーターを作ってその中心で気絶した。
○
ナツが暴れまくり、さらに亀裂が入ったラクリマはエルザを解放したがエルザはまだうまく身体が動かせなかった。
「シモン……」
「どうした?」
「頼みがあるんだ。私をジェラールのそばまで肩を貸してくれないか?」
「エルザ……」
「頼む」
シモンはエルザに肩を貸し、歩いていく。
ハルトとナツはそれを見ても何も言わない。
「ジェラール……」
エルザはシモンに肩を貸してもらいながら、気絶したジェラールに近づく。
「結局私はお前を救えなかった……自分すら救えていなかった私がお前を救うなんておかしな考えだったのだろうな………それでもあの時、私を助けてくれたお前を見捨てることなんてできなかった!!」
エルザの心の中では辛かった奴隷時代に何度も助けてくれたジェラールの姿が思い起こされる。
その時のことを思うと自分ができたことは何もなかったと考えてしまう。
「だが、お前は私の大切な者たちを傷つけすぎた。それは許すことができない。しかしこれだけは言わせてくれ………『ありがとう』」
その言葉は今のジェラールには届かない言葉かもしれないがエルザは過去の自分と決別してこれからの仲間たちと歩んでいくために必要なことだと考えた。
そのときエルザは身体は傷だらけだが、表情はとても晴れやかだった。
○
ジェラールとの戦いが終わり、帰ろうとした瞬間大きな揺れがハルトたちを襲った。
「な、なんだ!?」
「まさか………!」
そしてそれは外で待機していたルーシィたちも気づいた。
「お、おい!なんだよあれ!!?」
ショウの言葉で塔の激しい戦闘音を聞いていた全員が楽園の塔に見て、目を見開く。
楽園の塔のいたる部分が大きく膨れたり、湾曲したりと歪な形をしだした。
「何が起こってるの……?」
ルーシィが呆然とした表情で呟くと次の瞬間、膨れ上がったところから破裂したように魔力が飛び出る。
「魔力が暴走してるのか!?」
「そもそもあんな巨大な魔力を一箇所に留めておくことが無茶だったんだ」
全員が楽園の塔の現状に戦慄してしまう。
「行き場をなくした魔力の渦が……弾けて大爆発を起こす……」
ジュビアが震えながらそう呟くとみんなが慌て出す。
「ちょ……こんな所にいたらオレたちまで……!」
「中にいる姉さんたちは!!?」
「誰が助かるとか助かるとか助からねえとか以前の話だ……オレたちを含めて……全滅だ」
そして中にいるハルトたちは一刻も早く脱出しようとしていた。
「早くここから出よーぜ!!」
「ああ!行くぞ……っ!!?」
ハルトもナツたちに続いて出ようとするが足が何かに取られ動けなくなり、足元を見ると足がラクリマに取り込まれていた。
「こんな時に……!」
「何やってんだよ!……ハルトどうしたんだよ!?それ!!?」
「それは……!」
ナツたちもハルトの現状に驚いた。
「何かわかんねえけど、足が動かねえんだよ!」
「まさか……ラクリマがハルトを取り込もうとしているのか!?」
ハルトが足を動かしてもうんともすんとも言わない。
「ナツ周りのラクリマを壊してくれ!!」
「よっしゃっ!!離れてろ!!危ねえぞ!!」
ナツは拳に火を灯してハルトの足元を殴るが硬いものがぶつかる音が響いた。
「イッテェーー!!!?」
ナツの拳は赤く腫れて、ラクリマは少し傷がついただけだがすぐに直ってしまった。
「是が非でもアーウェングスを取り込もうしているみたいだな……!!」
「くそっ!ハルト!!」
エルザはシモンの肩から離れ、ハルトを引っ張る。
ナツたちもそれに続いてハルトを引っ張るがビクともしない。
そうしていたらいよいよ爆発が目前で揺れと魔力の漏れがより激しくなってきた。
「……もういい。お前らは先にここから脱出しろ」
ハルトの言葉にエルザたちは驚く。
「何をバカなこと言っているんだ!!みんなで帰るんだ!!!」
「オレはまだハルトに勝ってないんだ!帰ったら勝負するぞ!!」
「エルザを、オレたちを救ってくれた礼がまだできていない。それができるまでは死なせないぞ」
その言葉にハルトは笑って返す。
「こんなとこで死ぬ気なんてあるか、俺一人で大丈夫だからお前らは先に出てろ」
ハルトが安心させるように言うがラクリマはどんどんハルトを飲み込んでいく。
「ぐっ……」
「くそっ!何か方法はないのか!!?」
エルザがそう叫ぶが何も手段がなく、ただ引っ張るしかない。
そして同時に塔の爆発が近づいてくる。
エルザたちは懸命に引っ張るが、ハルトは崩壊が進む塔を見て冷汗を流す。
「おい!いい加減にしろ!!もう出れなくなるぞ!!!」
「仲間を見捨てるくらいなら死んだほうがマシだ!!!」
ハルトは苦い顔をして決断し、エルザたちの腕を掴む。
「俺も一緒だ……だから!!」
ハルトはエルザたちを空いている穴に投げ飛ばした。
「ハルト!?」
「大切な人が死ぬのを見るのはもう嫌なんだ」
ハルトはどこか悲しそうな顔をしてそう言った。
「ハルトオォォォォォッ!!!!」
エルザは手を伸ばし叫ぶが、その手は届かなかった。
○
外にいたルーシィたちは最後までエルザたちを待つことにしたが、いつまで経っても来ないハルトたちに不安でいたがそのとき上から叫び声が聞こえてきた。
上を見るとエルザたちが降ってきた。
「エルザ!?」
「水流滑走(ウォータースライダー)!!!」
ジュビアはとっさに水を操作しエルザたちを受け止める。
「エルザ!無事でよかった!!」
「ナツも無事だったか……」
みんながエルザたちの無事を喜ぶなかで、マタムネはハルトがいないことに気づいた。
「ハルトはどこにいるでごじゃる?」
そしてそれは全員気づいた。
「エルザ……ハルトはどうしたの……」
ルーシィは恐る恐るエルザに聞くがエルザは申し訳なさそうに俯くだけだ。
「すまない……」
「そんな……」
ルーシィはその場に座り込んで絶望してしまった。
「せっしゃが迎えにいくでごじゃる!!
マタムネは翼を出して飛び立とうとするが止められる。
「やめておけ!!今行っても無駄だ!!!」
「それでも!せっしゃはハルトなパートナーでごじゃる!!」
みんなが必死にマタムネを止めていると、とうとうラクリマが爆発したが、その爆発は全体に広がるものではなく、空へと伸びていった。
「暴発したーー!!!」
「きゃあああああ!!!!」
「い…いや!!違うぞ!!!エーテリオンが空へ、空中に流れてる!!!」
やがて楽園の塔はその姿を丸ごと消した。
「ハルトはどうなったの……?」
荒波の音が響くなかでルーシィの言葉が全員の耳に届いた。