FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第52話 楽園の塔の真実

ERAではエーテリオンを発射し、楽園の塔がどうなったかを急いで確認していた。

 

「まだ映らないのか!?」

 

「魔力磁気の嵐がひどくてすぐには……」

 

「建造物の反応はあるか!?」

 

「まだ確認が取れません!」

 

評議院のメンバーが急いで動き回るなか、評議員の1人オーグが顔を手で覆い、エーテリオンの発射を後悔した。

 

「あの塔にいったいどれだけの人間がいたことか……!」

 

「今更じゃよオーグ……」

 

「ミケロ」

 

同じく評議員の1人であるミケロが声をかける。

 

「ゼレフの復活を阻止したのだ。その為の犠牲ならやむをえんよ」

 

「………」

 

ミケロの言葉にオーグは理解はできたが納得できなかった。

しかし、自分もエーテリオン投下に賛成したのだ、今は見守るしかない。

 

「磁気嵐がやんできました!!」

 

「映像出ます!」

 

魔法の大型モニターに映像が映る。

煙で全く見えないがその煙がどんどん晴れていき、姿を現したのは……

 

「あ、あれは……!」

 

 

その頃、ボートで楽園の塔から脱出していたルーシィたちはエーテリオン投下を間近で見ていた。

そんな中ルーシィは……

 

「お願い!離して!!」

 

「やめろルーシィ!今行っても多量の魔粒子に体を汚染されるだけだ!!」

 

「落ち着いてルーシィ!!」

 

ルーシィは目の前でエーテリオン投下を見て、中にいるであろうハルトを探しに行こうとし、グレイとジッビアが必死に止めていた。

 

「だって……ハルトが……!」

 

ルーシィはその場にへたり込み涙を流す。

それを辛そうに見るグレイたちだが、そんな中ハッピーが声を上げた。

 

「見て!何かあるよ!」

 

エーテリオン投下の煙が晴れるとそこには巨体な結晶が楽園の塔とほぼ同じ形でそびえ立っていた。

 

「な、なに…あれ?」

 

ルーシィは涙が止まり、戸惑う声を出した。

 

「Rシステムだ」

 

「なに!?」

 

「あれが……」

 

ショウの言葉に息を飲むルーシィたち。

 

「アレが俺たちが造っていた楽園の塔の本当の姿だぜ」

 

「作動している」

 

「作動って……ゼレフが甦るの!?」

 

「わからない。俺たちだって作動しているのは初めて見たんだ」

 

ルーシィの問いかけにショウはそう答えるしかなかった。

 

「大丈夫よね。ハルト………」

 

映像が晴れ、楽園の塔が消えたと思ったらそこには巨大な魔結晶の塔が立っており評議院は困惑していた。

 

「なんだあの塔は!?」

 

「凄まじい魔力反応です!」

 

「まさかエーテリオンの魔力を吸い取ったのか……?」

 

評議院のメンバーは慌ただしく、事実確認をするが何が起こっているかわからない。

すると評議員の1人が声をあげた。

 

「もう一度エーテリオンを放てば、あの塔も消えるのではないか!?」

 

「もう一度!?正気か!あの塔にはエーテリオンとほぼ同等の魔力があるんだぞ!そこに魔力を与えれば次こそどうなるかわからないぞ!!」

 

そんな言い争いをしているのをよそにヤジマは悔しそうにしていた。

 

「やられた……やられたっ!!!くそぉっ!!!」

 

「ヤジマさん!どういうことですか!?」

 

ヤジマはジークレインの罠にはまったことに気づき、悔しそうにしジークレインを探す。

 

「ジークレインっ!!!どこにいるっ!!!!」

 

するとERAの建物にヒビが入り崩れていく。

 

「何だ!これは!?」

 

「崩れるぞー!!」

 

「逃げろ!!」

 

全員が慌てて逃げる中、ヤジマはその中央で魔法陣を展開しているウルティアが目に入った。

 

「ウルティア!?」

 

「全てはジーク様……いえ……ジェラール様のため。あの方の理想(やめ)は今ここに、叶えられるでしょう」

 

「どういうことだ!ウルティア!」

 

「ヤジマさん!早く逃げましょう!!」

 

ヤジマはウルティアに近づこうとするがナミーシャに引っ張られ、ウルティアは落ちてくる瓦礫の山に消えていった。

 

 

その頃塔にいたハルトたちはエーテリオンの光に包まれ、死んだと思ったが目が覚めると寝転がっていた。

 

「何が起こったんだ?俺は……生きているのか?」

 

ハルトは起き上がり、周りを見ると塔の外壁や装飾は剥がれ落ち、綺麗に輝く魔水晶が姿を現した。

 

「いったいどうなってるんだ?」

 

「んー!んー!んー!」

 

「あ、ナツ」

 

ナツも近くにいており、瓦礫の山に頭が突っ込み抜けなくなっていた。

 

「大丈夫かー?よいしょっと!」

 

「ぶはっ!あー助かった。また抜けなくなると思ったぜ。ハルト何だよこれ?」

 

ナツは魔水晶を指差し、ハルトに尋ねるがハルトは難しい顔をする。

 

「わかんねぇ……だけど、まずいことになってるのは確かだな。先を急ぐぞ!ナツ!」

 

「おう!」

 

 

そしてエルザもエーテリオンの投下で死を覚悟したが、目を開けると辺り一面が水晶に囲まれており、戸惑う。

 

「な、なんだこれは……いったい何が起こった?」

 

エルザが周りを見ていると抱きしめていたジェラールが立ち上がった。

 

「くく………アハハハハハっ!!!!ついに……ついにこの時が来た!!」

 

ジェラールは腕を広げ、ひどく喜んだ。

 

「お、お前…」

 

「くくく、驚いたかエルザ。これが楽園の塔の真の姿、巨大な魔水晶なのだ。そして評議院のエーテリオンにより、27億イデアの魔力を吸収することに成功した!!! ここにRシステムが完成したのだぁ!!!!」

 

「だ…騙したのか」

 

騙された怒りにエルザは震えるがそこに声がかけられる。

 

「可愛かったぞ。エルザ」

 

「えっ!」

 

エルザがその声のもとを振り返るとそこにはERAにいるはずのジークレインが立っていた。

 

「ジークレイン!?」

 

「ジェラールは本来の力を出せなかったんだよ。本気でやばかったから騙すしかなかった」

 

ジークレインがそう言いながら、ジェラールの隣に立つ。

 

「な、なぜ貴様がここに!?」

 

「初めて会った時の事を思い出すよエルザ。マカロフと共に始末書を提出しに来た時か、ジェラールと間違えてオレに襲いかかってきた」

 

「………」

 

「双子と聞いて、やっと納得してくれたよな。しかし、お前は敵意を剥き出しにしていたな」

 

「当たり前だ!貴様は兄でありながらジェラールのことを黙っていた!それどころか貴様は私を監視していた!!」

 

ジークレインはエルザの問いに答えず、そう言い、エルザも言い返すがジークレインは不敵な笑みを浮かべるだけだった。

 

「そうだな……そこはオレのミスだった。あの時は『ジェラールを必ず見つけ出して殺す』とか言っておくべきだった。しかし…せっかく評議院に入れたのに、お前に出会ってしまったのが一番の計算ミスだな」

 

「とっさの言い訳ほど苦しいものはないよな?」

 

「そうか……やはり貴様ら結託していたんだな」

 

ジェラールとジークレインの物言いに確信を得たエルザは2人にそう言ったが2人はさらに笑みを深まるだけだ。

 

「結託?」

 

「いいや違うな。俺たちは元から」

 

「「1人だ」」

 

その瞬間、ジークレインは霞のようにジェラールに重なり、1人になった。

 

「そんな……まさか思念体!?」

 

「そうだ、ジークは俺が作り出した思念体だ。評議院に忍び込ませてエーテリオンを打つためにな。さて……仮初めの自由は楽しかったか、エルザ?全てはゼレフを甦らすための布石だったんだよ」

 

「貴様はいったいどれだけのものを欺いて生きて来たんだァ!!!」

 

エルザは怒りに打ち震え、ジェラールに飛びかかるが、ジェラールは手をエルザに向け、放ち吹き飛ばす。

 

「うぐっ!」

 

「フフ……力が戻って来たぞ」

 

「ジェラールゥゥッ!!」

 

エルザは刀を構え、さらに攻撃するがジェラールは圧倒的な魔力を放ち、近づけさせない。

 

「どうした?さっきまでの勢いはどこに行った?」

 

「ハアアアァァァァッ!!!」

 

エルザが剣を振るうが、斑鳩との激闘、さらにジェラールとの戦いで体力が尽きかけていたエルザの剣をジェラールは容易に避ける。

 

「今頃、評議院は完全に機能を停止している。ウルティアには感謝しなければな。あいつはよくやってくれた。楽園にて、すべての人々が一つになれるのなら死をも怖れぬと……まったく、バカな女であることに感謝せねばな」

 

「貴様はいったいどれだけの人を利用すれば気がすむんだ!!」

 

エルザがジェラールにそう叫んだ瞬間、エルザの体が動かなくなる。

 

「な…何だこれは!!?」

 

エルザの体に蛇の模様が身体中に現れエルザを縛る。

 

「拘束の蛇(スネークバイト)、さっき抱き合ったときにつけておいた」

 

「ぅ……ぁ……か、体が動かん!!」

 

「Rシステム作動の為の魔力は手に入った。あとは生け贄があれば、ゼレフが復活する。もうお前と遊んでる場合じゃないんだよエルザ。この27億イデアの魔力を蓄積した魔水晶ラクリマにお前の体を融合する。そしてお前の体は分解され、ゼレフの体へと再構築されるのだ」

 

「う……ぐ……」

 

ジェラールは動けないエルザの体を魔水晶の近くまで運び、その中に押し込むと、エルザの体が魔水晶に吸い込まれていく。

 

「お前のことは愛していたよ。エルザ」

 

「ああああああああああっ!!!!」

 

ジェラールはエルザに皮肉気にそう告げ、エルザは悔しさのあまり叫ぶ。

 

「偉大なるゼレフよ!!!今ここに!!!この女の肉体を捧げる!!!」

 

ジェラールが腕を広げ、そう高らかに叫ぶと魔水晶から魔力が溢れ出す。

 

「ジェラール……ジェラァーーールウゥゥーーーー!!!!」

 

エルザは悔しく左目から涙を流し叫ぶが、ジェラールは歓喜の笑い声をあげるだけだ。

そして完全に飲み込まそうになった時……

 

「よっと」

 

いつの間にか近くに来ていたハルトがエルザをあっさりと魔水晶から

エルザを引っ張り出した。

 

「ハ…ハルト?」

 

「ギリギリ間に合ったな。よかったぜ」

 

「おーい!ハルト!いたのか?」

 

するとそこにナツも現れる。

 

「エルザは妖精の尻尾の魔導士だ。お前に渡すかよ」

 

ジェラールを睨みながらそう言うハルト。

 

「ハルト……ナツ……」

 

「さ、帰ろうぜ。早く仕事に行かねえと家賃が払えねえぞ。ルーシィが」

 

「それは大変だな。早く帰ろう、エルザ」

 

まるでジェラールがいないかのように、いつも通りの軽口を言い合うナツとハルト。

 

「す、すまん……体が…動かないんだ」

 

「……ほ〜う?」

 

その瞬間ナツは悪い笑みを浮かべてエルザの側にしゃがみ、くすぐり始めた。

 

「なっ…!こら…やめ……!!」

 

「普段からひどい目にあってるからな!!これでもくらえ!!」

 

「おい、ナツ」

 

苦しそうに堪えるエルザを見たハルトはナツの肩に手を置いた。

 

「俺も後でやらせろ」

 

「おっしゃっ!!」

 

「なっ、ハルト!?お前まで……!!」

 

「お前らが暴れた後の後処理誰がしてると思ってんだ!常日頃の恨みだバカ!」してジェラールを睨む。

やya

相当鬱憤が溜まっていたのかナツより悪い顔になっている。

 

「随分と楽しそうだな」

 

そこに不敵な笑みを浮かべるジェラールが声をかける。

それにハルトとナツは静かに睨む。

 

「頼む。ハルト、ナツ逃げてくれ……」

 

その時、エルザは目から涙を流し悲しそうにハルトとナツに言う。

 

「………ナツ。エルザを連れてここから離れろ」

 

「ハルトはどうすんだ?」

 

ハルトは拳を握り魔力を滾らせる。

 

「俺はこいつを倒す」

 


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