FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第44話 悪意の戯れ

楽園の塔のある部分の玉座に不気味な男が座っている。

するとそこにハルトを罠にはめたカルバートが近づいた。

 

「ジェラール様。エルザの捕獲に成功したという知らせが入りました。しかし何故今更裏切り者を捕まえる必要が?この楽園の塔を使用するならエルザを使うより、魔力量が多いハルトを使ったほうがいいのでは?」

 

カルバートの質問にジェラールは不気味な笑みを浮かべる。

 

「フフフ...確かにな。だけどそれじゃあダメだ...『この世界は面白くない』」

 

「?」

 

「しかし楽園の塔が完成した今、これ以上生かしておくのは面倒なことになりかねないの確かだ。時は来た。俺の理想のために生け贄になれ。エルザ・スカーレット」

 

この男は今回の事件の首謀者であり、エルザと因縁の関係があるジェラールだ。

 

 

ルーシィは目の前で燃えているカードに閉じ込められたハルトを助けようともがくが、余計縄が巻きついてしまう。

 

「うぅ…!うぅあうっ!!ハ…ハルト!ひ…開…巨蟹宮の…扉…!」

 

まず縄を切ろうとキャンサーを呼び出そうとするがまったく反応しない?

 

(このロープ……魔力を吸って……!)

 

「ど…どうすれば……!!」

 

苦しそうにもがきながら燃えているカードを見ると、突然カードから光が漏れ、弾けた。

 

「キャッ!!」

 

光が収まるとそこにはハルトが立っていた。

 

「ハルト!!」

 

「ルーシィか……くそ、頭が……」

 

ハルトはフラフラと立ちくらみを起こし、膝をついて崩れてしまう。

 

「ハルト!縄を解いてくれない!?エルザが大変なの!!」

 

「お、おう……ちょっと待ってろ……」

 

ハルトは何とかルーシィの縄を解く。

 

「ありがとう……ってすごい熱じゃない!?どうしたの!?」

 

ルーシィがハルトの体に触れるとすごい熱を帯びていた。

 

「毒を打たれた……体が焼けそうだ……それより、ナツたちを探しに行くぞ」

 

「それよりって……あっ、ちょっと待って!」

 

ルーシィはハルトに肩を貸しながら、カジノを歩く。

そこら中にショウによって閉じ込められた人たちのカードが落ちている。

 

「ひどい…こんなにたくさん……」

 

バーのカウンター近くは特に荒らされていた。

そしてその近くには倒れているジュビアと重傷のグレイがいた。

 

「グレイ・・・!!そんな・・・!!しっかりして!!!」

 

ルーシィは慌てて駆け寄り、グレイの体をゆするがピクリともせず、氷のように冷たい。

 

「ルーシィ、グレイなら大丈夫だ。それは偽物だ」

 

「え・・・?って、キャアアアアア!!!?」

 

ハルトの言葉にルーシィが疑問を持つと、グレイの体がバラバラに砕けた。

すると奥で倒れていたジュビアから声が聞こえる。

 

「安心してください。グレイ様は無事です」

 

「ぶはー!!ゲホッ!ゴホッ!」

 

ジュビアが起き上がると、水の体からグレイが出てくる。

 

「な…中……」

 

「器用だな」

 

「あなたではなく私の中です」

 

「う…うん……」

 

ジュビアはどこか勝ち誇った顔でルーシィに詰め寄る。

 

「お前が簡単に負けるなんて珍しいな」

 

「突然の暗闇だったからな。身代わりを造って様子を見ようと思ったんだが……」

 

「敵にバレないようにジュビアがウォーターロックでグレイ様をお守りしたのです!」

 

「余計な事しやがって!逃がしちまったじゃねーか!」

 

「ガーン!」

 

グレイの言葉にジュビアはショックを受けるが、グレイは無視して周りを見る。

 

「それよりナツやエルザはいねぇのか?」

 

「ナツはわかんない。エルザは……」

 

「ナツならそこだ」

 

ハルトが指をさした瞬間その先で炎が立ち上がり、そこにはナツがいた。

 

「痛えーーーーっ!!!!」

 

「ナツ!!」

 

「ぶはァ!普通口の中に鉛玉なんかぶち込むかよ!!?下手すりゃ大怪我だぞ!!!」

 

「普通なら完全にアウトなんだけどな……」

 

ナツの言葉にハルトは顔色を悪くしながらもツッコむ。

 

「あの刺客野郎ぅ……ゼッテェ逃がさねえぞおぉぉぉぉっ!!!!」

 

ナツは怒りの表情で走りだし、海へと向かう。

 

「ナツを追うぞ!あいつの鼻なら居場所がわかるはずだ!!」

 

「おう!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

そのころエルザはショウたちに攫われ、楽園の塔についた。

エルザは楽園の塔を見ると震えが止まらなかった。

そしてショウに連れられ牢に入れられと、ショウは過去の牢での思い出を語り、エルザをさらに追い詰める。

エルザは過去に黒魔術教団に攫われ、楽園の塔の建設を無理矢理やらされていた。

ショウたちとはそこで知り合い、苦労を共にした。

そしてその中にはさっきから名前だけが出ている男、ジェラールもいた。

ショウはエルザに裏切られた恨みを言いながらも、この世界は間違っていると言って、ジェラールの元でゼレフを蘇らせ、間違った世界を破壊し、新しい世界を作ると狂信じみたことを宣言した。

エルザは耐えきれなくなり、隙をついてショウを気絶させ、拘束を解く。

 

「あの純粋だったショウをここまで歪ませたのか……」

 

ドレスからいつもの鎧姿になったエルザの目にはショウをここまで変えたジェラールに対する明らかな怒りが見える。

 

「ジェラール...貴様のせいか......!!」

 

 

「あははははっ!!!」

 

楽園の塔の玉座の間にフードを被った男、ジェラールの笑い声が響く。

 

「ククク...やはりただでは終わらないか...あちらも動きそうだな」

 

その頃、評議院の緊急会議が行われていた。

楽園の塔の発見により評議員が緊急で集められたが、事態は緊迫する一方だった。

楽園の塔は別名『Rシステム』と言われ、危険だ、軍を派遣しろと会議が熱くなってくると、沈黙を保っていたジークレインが言葉を発した。

 

「鳩どもが...」

 

「何!?」

 

「ジーク貴様!!」

 

「俺から言わせてみれば軍程度を派遣するなどハト派と言わばぜるを得ないと言ったんだ。あれは危険だ、危険すぎる。あんたらもわかっているんだろ!!楽園の塔を消すんなら方法は一つだろ!!!衛星魔法陣からのエーテリオン!!!!」

 

「な!?」

 

「超絶時空破壊魔法だと!!?」

 

「正気か!?」

 

「エーテリオンは我々の最終兵器じゃ!!Rシステムより危険な魔法なんなんじゃぞ!!!?」

 

ジークレインの言葉に多くの評議員が反対の声を上げるが、ヤジマとナミーシャは事態を見守る。

 

「しかし衛星魔法陣ならばこの地上全てののものを標的にできる。そしてあの大きな建造物を完全に消すにはエーテリオンしかない」

 

ジークレインの説得によく親身にしているウルティアはゆっくり手を挙げる。

 

「賛成...ですわ」

 

「ウルティア!?貴様もか!!」

 

「評議員は全員で9人。あと3人の賛成票があればエーテリオンは撃てる!!時間が無いんだぞ!!Rシステムは使わせちゃいけねえ!!!」

 

 

その頃ハルト達は楽園の塔に到着したはいいが警備が厳重すぎてろくに動けないでいた。

 

「見張りの数が多いな」

 

「気にする事ァねえ!!突破だ!!」

 

「ダーメ!!エルザとマタムネたちが捕まってる。下手なことしたらエルザたちが危険になるのよ!」

 

「しかも塔らしきものはずっと先だ。ここでバレたら分が悪くなるな……ゴホッ!ゴホッ!」

 

「ハルト大丈夫?」

 

「お、おう……」

 

ハルトの顔色はさっきより悪くなってきている。

すると海面からジュビアが出てきた。

 

「ジュビアは水中から塔の地下への抜け道を見つけました」

 

「マジか!!でかした!!」

 

「褒められました。あなたではなくジュビアが……です」

 

「はいはい……」

 

グレイに褒められてジュビアは得意気にルーシィに詰め寄りが、ルーシィは苦笑いするだけだ。

海から抜け道を抜けるとそこには既に警備兵が待ち構えていた。

 

「さっそくお出ましかよ……」

 

「関係ねえ!!いくぞ!!」

 

敵の数は多かったがハルトたちの敵ではなくすぐに全員を倒した。

すると上へと通じる扉が開く。

 

「扉が開いたぞ!」

 

「誘っているのかしら?」

 

「罠かもな……」

 

明らかに不自然な扉を見て、考えてしまうが、ハルトはそれを遮る。

 

「ここで考えても仕方がねえ。あっちがその気なら乗ってやろうじゃねえか。その上でエルザたちを救うぞ!」

 

 

「ジェラール様!何を考えておられるのです!?敵を招き入れるなど!」

 

黒髪の長髪の男がそう言うが、ジェラールは楽しそうにしている。

どうやらジェラールはハルトたちを招き入れたようだ。

 

「随分とお楽しみのようで」

 

後ろで控えていたカルバートもさすがに呆れたのか皮肉を言うがジェラールは意も返さず、笑みを浮かべる。

 

「言ったろ?これはゲームなんだ。あいつらはステージをクリアしたんだ。其れ相応の報酬を与えてやるのは当然だろう?はははっ……面白くなってきやがった」

 

「しかし儀式を早く進めなければ評議院に止められてしまいます」

 

「なんだ?まだそんなことを気にしていたのか?止められやしないさ……あんなカスどもにはな」

 

 

上につくとそこは綺麗に装飾された部屋で、誰もいなかった。

 

「四角ーーー!!!どこだーーーー!!!」

 

ナツはたどり着いた瞬間、大声で叫ぶ。

 

「もがっ」

 

「ちょっとナツ!!ここは敵の本拠地なのよ!そんな大声で叫んだら気づかれるじゃない!」

 

ルーシィがナツの口を抑え、焦ったように言う。

 

「下であれだけ暴れたんだ。今さらこそこそしたって意味なんてねーよ」

 

「それにこの扉、人の手で開けられたものじゃありませんよ。魔法の力で遠隔されたものですよ。ジュビアたち完全に気づかれてますよ」

 

「じゃあ、なんであたしたちを招き入れたのよ?」

 

「.....挑発だろうな」

 

「挑発って...」

 

グレイの言葉にルーシィは戸惑う表情になる。

エルザを攫うために襲撃をしてきたのに、こっちが襲撃してきたらわざわざ招き入れる敵の考えがわからない。

 

「で、お前のその恰好はなんだよ?」

 

グレイがルーシィのほうを向いてたずねる。

ルーシィはカジノで着ていたラフな服ではなく、綺麗なドレスを着ていた。

 

「あっ!やっぱり気づいた?服がビチョビチョで気持ち悪かったから、さっきキャンサーに持ってきてもらったの。ま、我ながら似合っているのはわかっているんだけどね~。それにしてもジュビアは水になれるからともかく、よくあんたたち濡れたままでいられるわね」

 

ルーシィのいつもの調子に乗った発言がありながらも質問する。

 

「ここに大きな火種があるじゃねーか」

 

「おう」

 

「あら便利ね!!?」

 

グレイが全身から炎を出しているナツのそばで服を乾かしながら説明すると、ルーシィはあることに気づいた。

 

「そういえばハルトはどうしたの?」

 

「ハルトさんならそこに」

 

ジュビアが指さす方向には。

 

「ぐおお....ナツやめろ....近づくなぁ....熱い...」

 

「なはははっ!!こんな弱ったハルト初めて見たぜ!今なら勝てるぞ!!」

 

炎を出してハルトに近づくナツの姿があった。

高熱を出しているハルトにとって苦しいことこの上なかった。

 

「ちょっと!!何やってんのよ!!ハルトが苦しんでいるじゃない!!!」

 

「ぐおっ!?」

 

ルーシィは怒りながらナツのマフラーを引っ張って止めた。

 

「遊んでいる場合じゃねーだろが。ほらハルト、氷だ」

 

「おお!グレイ助かるぜ....」

 

ハルトはグレイの手にある氷を手ごと掴み、額に押し付けた。

傍から見ると結構きわどい様子に見える。

 

「まさか....あれが噂にきくBL....!!」

 

「あんたも面倒くさいわね!!」

 

ジュビアが密かに興奮して、ルーシィがツッコむ。

敵の本拠地にいるのにもかかわらず、緊張感がなさすぎる。

すると流石に騒ぎすぎたのか、敵が大勢やってきた。

 

「やっぱりばれたか!」

 

「そりゃあんなに騒いでたらバレるに決まってるでしょ!!」

 

ハルトたちが身構えると敵がうしろからドンドン切り倒されていく。

そこに双剣を持ったエルザが現れた。

 

『エルザ!!』

 

「!! お前たち!なぜここに!!?」

 

「なぜもクソもねえよ!!妖精の尻尾が舐められた舐められたままでいられるかよ!!あの四角ヤローだけは許さねえ!!!」

 

エルザは驚きの表情のまま固まるがすぐに元の冷静な顔に戻す。

 

「帰れ。ここはお前たちが来る場所ではない」

 

エルザはどこか辛そうな顔だ。

 

「マタムネとハッピーも捕まっているの」

 

「なに?まさかミリーアーナが...」

 

「そいつはどこだ!!」

 

「さ、さあな....」

 

ナツはエルザに詰めよるとどこかに進んでいく。

 

「おし!わかった!!ハッピーたちが待っているってことだな!!!」

 

「あ!おい!!ナツ!!」

 

ナツはそのまま走っていってしまった。

 

「あたしたちも追いかけましょう!!」

 

「ダメだ。帰れ」

 

追いかけようとしたルーシィたちを剣で道を防ぐエルザ。

 

「これは私の問題だ。お前たちを巻き込みたくはない。ナツは必ずつれて帰る。だから帰れ」

 

背を向けて冷たく言い放つエルザにルーシィは少し悲しそうな表情になりながらもエルザに話しかける。

 

「ねえ、エルザ。この塔はなに?それにジェラールって誰なの?」

 

ルーシィが聞いてもエルザは返事をしないが、ルーシィは話しかける。

 

「あいつらエルザの昔の仲間って言ってたけど、私たちは今の仲間....どんな時も味方だよ」

 

その言葉にエルザは振り向くと片方の目から涙が流れていた。

 

「すまん。この戦い....勝とうが負けようが私は表の世界から姿を消すつもりだ」

 

「えっ!!?」

 

「どういうことだよ!それ!!」

 

エルザの突然の告白にルーシィ達は驚く。

 

「だから今のうちに全てを話しておこう。私の過去を...」

 

 




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