FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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またオリキャラが出ます。


第43話 楽園の塔

ホテル地下のカジノでハルトたちは各々に楽しんでいた。

 

「ハルト。久しぶりに勝負をしないか?」

 

エルザが挑発的な笑みを浮かべながら誘う。

 

「おっ、いいぞ。何にする?」

 

「あたしも混ぜて」

 

ルーシィを加えてハルトはエルザとゲームをするが……

 

「フフフ、圧勝だな」

 

「あ、あはは……」

 

「………」

 

勝ち誇るエルザの隣で山積みのチップを持つルーシィが顔引きつらせながら、落ち込むハルトに目を向ける。

 

「なんであんなに勝てないんだ……?15戦連続とかありえねぇだろ……なんらかの悪意を感じる……」

 

「負けは素直に認めるものだぞ。ハルト」

 

「ぐっ……!」

 

エルザはダメ出しをハルトに言うと、ハルトはさらに落ち込む。

 

「さてもうひと勝負してくるか。ハルトはどうする?」

 

「俺は酒飲んで頭冷やしてくるわ」

 

「あっ…じゃあ、あたしも……」

 

「ルーシィは一緒に来てくれ。チップが多すぎて持ち運べないからな」

 

「え〜…」

 

ハルトと素敵な夜を過ごせると思ったルーシィは涙を流しながらエルザに引っ張られていき、ハルトは引きつった笑顔になりながら見送った。

ハルトがカジノに設けられているバーカウンターに座るとすぐに青年のバーテンダーが接客をしてくる。

 

「いらっしゃいませ。なにかお飲みになりますか?」

 

「うーん、そうだな…」

 

ハルトが迷っていると隣の席に男が座ってくる。

 

「あなた、もしかして妖精の尻尾の方ですか?」

 

「ええ、そうですけど……あなたは?」

 

「私、以前に妖精の尻尾に依頼をさせてもらった者なんですよ。腕の紋章が目に入ってつい……あっ、申し遅れました。私、『カルバート・マキナ』と申します」

 

男はくすんだ灰色の髪を持ち、背が高く、線が細い男だ。

 

「初めまして、ハルト・アーウェングスって言います」

 

「宜しければ、ごちそうさせて貰えませんか? 先日の依頼のお礼も兼ねて」

 

「ありがとうございます」

 

「ここのおすすめのカクテルがあるんですよ。君、例の物を……」

 

カルバートは控えていたバーテンダーに注文するとすぐに赤いカクテルを出した。

 

「うっ…結構強い香りですね」

 

「ええ、香りは強いのですが味は抜群ですよ」

 

カルバートがカクテルを美味しそうに飲むのを見て、ハルトがグラスを傾け、口に含もうとした瞬間ハルトの動きが止まる。

 

「どうしました?」

 

「バーテンダーさん……このカクテルには薬が入ってるのか?カクテルの匂いに紛れて薬の匂いがするぜ?」

 

褐色の肌のバーテンダーは汗を流し、緊張した表情になる。

 

「それに魔法を使おうとしてるのもだ。後ろの3人もな」

 

その言葉にビクリと肩を動かすバーテンダーとハルトの背後の3人。

ハルトはバーテンダーを睨む。

 

「何が目的だ。なんでこんなことをする?」

 

その瞬間ハルトの足元からプシュッと機械から軽い空気が抜ける音が聞こえた。

ハルトが足元を見ると、太ももに近代的な注射がハルトの太ももに刺さっており、カルバートがスイッチを押しているのが目に入った。

 

「カクテルの匂いでこっちの匂いがわからなかったか?」

 

ハルトは体が麻痺する感覚と頭がうまく働かなくなり、カウンターにうつ伏せに倒れてしまう。

 

「もうちょっと手がかかると思ったんだが」

 

苦しそうな表情でこちらを睨むハルトを見たカルバートは興味をなくしたかのようにそっぽを向き、席から立つ。

 

「ショウ。そいつをカードに入れておけよ」

 

「あ、ああ」

 

褐色の肌の青年、ショウはそう答えるとトランプのカードを取り出し、ハルトに向けるとハルトはその中に入ってしまった。

 

「あとの奴らはお前たちだけでやれるな?」

 

「それは任せてくれ。あとは上手くやる」

 

ハルトの背後にいた大柄な男の答えを聞くとカルバートは人混みの中に消えていった。

 

 

「お…お客様こまります!!」

 

「だって17に入ってたのにカタンずれたんだって!!何だよコレ」

 

「あい!」

 

「そんな事ある訳ないでしょ〜」

 

ナツの無茶な言い振りにディーラーは困ってしまう。

 

「見たんだって!!オレの目は誤魔化せねーぞ!!!」

 

「ボーイ、大人の遊び場はダンディにたしなむものだぜ」

 

「か……かくかく!!?」

 

やたら体の至る所と顔が角ばっている男がダンディにナツをたしなめる。

 

「ボーイ一ついい事を教えてやるぜ。男には2つの道しかねえのさ。ダンディに生きるか……」

 

男はイスに座りながら妙なターンをして、いきなり飛び出しナツの胸ぐらを掴んで、懐から取り出したマグナムをナツの口に突っ込んだ。

 

「止まって死ぬか……だゼ」

 

「な…何するんだー!!!」

 

「が…!!がんがごいぐ…!!!?」

 

「エルザはどこにいる?だゼ」

 

その頃グレイは突然現れた元ファントムのジュビアの近況を聞いていた。

 

「聞いたよ。ファントムは解散したんだって?」

 

「はい。ジュビアはフリーの魔導士になったのです」

 

そうは言いながら胸元の大きな妖精の尻尾のネックレスを見せつけている。

 

「うわぁ……それで妖精の尻尾に入りてえっての?」

 

「ジュビア入りたい!」

 

「しっかし、あんな事の後だからなぁ。オレはかまわねーがマスターが何て言うか」

 

ジュビアはファントム戦でグレイに惚れてしまい同じギルドに入りたいのだ。

グレイとジュビアが話しているとその後ろに大男が歩み寄ってきた。

するとジュビアに強烈な平手打ちをくらわし、吹き飛ばした。

 

「ジュビア!何だテメェ!!」

 

「グレイ・フルバスターだな。エルザはどこにいる?」

 

またエルザとルーシィのところにも魔の手は迫っていた。

エルザはハルトとのゲームの後も勝ちに勝ちまくっていた。

 

「すごーい!!エルザー!!!」

 

「勝ちまくっているでごじゃるな!!!」

 

「ふふ……今日はついてるな」

 

エルザの勝ち越しに慌て始めたディーラーに別のディーラーが声をかける。

 

「ディーラーチェンジだ」

 

「今なら誰が相手でも負ける気がせんぞ」

 

「だね」

 

「だったら特別なゲームを楽しまないか?賭けるものはコインじゃない」

 

ディーラーは他のプレイヤーに配るのではなく、エルザの前にカードを投げる。

そのカードには一枚ずつイニシャルが描かれており、『DEATH』と並べられていた。

エルザは顏をあげ、ディーラーの顏を見て驚きに染まる。

 

「……命、賭けて遊ぼ……エルザ姉さん」

 

「ショウ……」

 

「え?え?」

 

「誰でごじゃる?」

 

エルザとなんらかの関係があるショウの会話に戸惑ってしまうルーシィ。

 

「無事……だったんだな」

 

「無事?」

 

「あ…いや……」

 

エルザはショウに話かけるがショウの返しに申し訳なさそうに、何かに怯えるように体を震わす。

こんな弱々しいエルザをルーシィは見たことがなかった。

その頃グレイは突然襲ってきた男と対峙し、何者か聞いてもエルザはどこにいるとしか言ってこない。

するとグレイと男の間に復活したジュビアが割り込んでグレイを守るように立つ。

 

「ジュビア!」

 

「グレイ様には指一本も触れさせない。ジュビアが相手になります。エルザさんの元へ。危険が迫っています」

 

ジュビアがそう言うと男は耳に手を当て何かを描くようなそぶりをする。

 

「なに?もう見つけたのか?ほう……そうか、じゃあもう片付けてもいいんだな?了解」

 

男がブツブツと呟くと、突然辺り一面が暗くなった。

 

「え!?」

 

「なんだ!?」

 

「闇の系譜の魔法……闇刹那」

 

「ぐはっ!!」

 

「きゃあ!!」

 

すると痛々しい音と共にグレイととジュビアの叫びが響き渡った。

 

「が…がんが!?こんごわ!!!」

 

「グッナイボーイ」

 

「ナツー!!!」

 

次の瞬間、ナツの口に銃弾が放たれる。

 

「な…なにコレ!?暗っ!!!」

 

「何が起きた!!?」

 

すると段々光が戻ってきた。

完全に光が戻り、ショウのほうを見るがその姿は消えていた。

 

「ショウ!?」

 

「こっちだよ姉さん」

 

声のする方を向くと、ショウはエルザたちの背後に立っており、ショウの周辺には多くのカードが落ちていた。

そのカードには人が描かれており、その絵は動いており、声も出しており、カードに人が閉じ込められていた。

 

「ええ!!? 人がカードの中に!?」

 

ショウがエルザにカードを見せつけるように持つ。

 

「不思議?オレも魔法が使えるようになったんだよ」

 

「魔法!?お前一体……」

 

「ククク……」

 

驚くエルザにほくそ笑むショウ……。

 

「みゃあ」

 

「きゃあ!!」

 

「ルーシィ!!」

 

間の抜けた声と共にルーシィに縄が勝手に巻きつき、どこかに引き寄せてしまう。

 

「うっ!」

 

「みゃあ。元気最強?」

 

ルーシィに縄が巻きつき、引き寄せられた先には猫のような風貌の少女がいた。

 

「ミリアーナ!?お前も魔法…を!?」

 

ミリアーナという少女は照れ臭そうにしながらもエルザに元気に挨拶をする。

 

「久しぶり〜エルちゃん」

 

「何をしている!?ルーシィは私の仲間だ!!」

 

エルザの言葉に不思議そうにするミリアーナとショウ。

 

「みゃあ?仲間?」

 

「僕たちだって仲間だったでしょ?姉さん」

 

(仲間……だった?)

 

縄に締め付けられながらもショウの言葉にルーシィは苦しみに耐えながら疑問を覚える。

 

「う……ああ……」

 

「姉さんがオレたちを裏切るまではね」

 

「………!!」

 

ショウの言葉に耐えられず、エルザは自分の体を抱きしめる。

 

「そうエルザをいじめてやるなショウ。ダンディな男は感情をおさえるモンだぜ?」

 

何もないところから声が聞こえ、徐々に姿を現したのはナツを撃った四角い男だ。

 

「すっかり色っぽくなっちまいやがってヨ」

 

「ひっ!」

 

「そ…その声はウォーリー?」

 

「気づかねえのも無理はねえ……狂犬ウォーリーと呼ばれてたあの頃ひ比べて、オレも丸くなったしな」

 

「お前も……魔法を……」

 

「驚く事はない」

 

地面に光の輪が現れ、そこにグレイとジュビアを襲った大男が現れた。

 

「コツさえ掴めば誰にでも魔法が使える。なあ、エルザ」

 

「シモン!?」

 

どうやら全員、エルザと関係がある人物らしく、ルーシィがたまらず狼狽えるエルザに問いただした。

 

「うっ……!エルザ……こいつら何なの!?姉さんてどういう事!?」

 

「本当の弟じゃない。かつての仲間たちだ」

 

「仲間って……エルザは幼い頃から妖精の尻尾にいたんでしょ!!」

 

「それ…以前という事だ……お前たちがなぜここに……ルーシィを解放したくれ」

 

エルザが困惑しながらもショウたちに頼むが、ショウたちは全く意に返さない。

 

「みゃあ」

 

「帰ろう姉さん」

 

「お前を連れ戻しに来た」

 

「言うことを聞いてくれねえとヨォ」

 

「ひぃいっ!!」

 

ウォーリーはルーシィに銃口を向けて脅す。

 

「よ……よせ!!頼む!!やめてくれ!!」

 

エルザが頼んだ瞬間にできた隙をついて、ウォーリーは魔法でえるに睡眠弾を撃ち込み、寝かした。

 

「エルザーー!!!」

 

「睡眠弾だゼ」

 

「目標確保。帰還しよう」

 

「ちょっと!!エルザをどこに連れてくの!!?返しなさいよ!!」

 

「みゃあ」

 

ルーシィが暴れるとミリアーナが縄を操作し、さらにルーシィを締め付ける。

 

「うぐ……!ああああっ!!!」

 

「君あとでも5分くらいで死んじゃうよ〜」

 

「そうだ。1人で死ぬのはかわいそうだからコイツも殺しておこう。念入りに排除しとくようにジェラールに言われてたし」

 

「ジェラール?」

 

ショウはルーシィに近づき、懐からカードを取り出す。

 

「これ。ハルト・アーウェングスってやつが入ってるカード」

 

「何ですって!?」

 

「このカードに入っている限り、魔法の使用者、つまりオレが解除しない限り出られないんだ。だから、こうやって……」

 

ショウはどこからか取り出したライターでカードに火をつける。

 

「このまま燃やしてしまえば死んじゃうってこと」

 

「そんな!?ハルト!!」

 

ルーシィは慌てて身をよじるがより縄が締まる。

 

「そういやミリアーナ。君にプレゼントだゼ」

 

「みゃあ!!ネコネコ〜♪もらっていいの〜!?」

 

ウォーリーは空間から気絶したマタムネとハッピーを取り出し、ミリアーナに渡した。

 

「姉さん…帰ってきてくれるんだね。『楽園の塔』へきっとジェラールも喜ぶよ」

 

ショウが目に涙を浮かべながら歓喜に打ちひしがれた表情をする。

エルザは朧げな意識の中、確かにある言葉が耳に届いた。

 

(楽園の塔!!!?か…完成していたのか!!!?)

 

 

ショウが言っていた海洋に聳える楽園の塔の玉座の間では1人の男が邪悪な笑みを浮かべていた。

 




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