FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
第38話 最強チーム結成!
評議院の総本部ERAでは妖精の尻尾と幽鬼の支配者の間で起こった抗争の裁判が行われていたが……
「ぐがーぐごごごご………」
召喚されたマカロフは評議員の目の前で鼻提灯を膨らませ、イビキをかきながら寝ていた。
立ちながら寝ていて器用だ。
多くの評議員は怒りで震えたり、信じられないと言った顔をしていた。
「あ…あのマカロフさん?」
「はい!!!」
流石に見かねたカエル(?)の院員がマカロフを呼び起こすと、ピンッと起きた。
「裁判中なのですが………まさか寝てたりしてませんよね?」
「!!! 滅相もない!! ふぉほほほっ!!」
○
「幽鬼の支配者の解散……ジョゼの聖十の称号剥奪……そこまでは予想通りじゃ。しかし妖精の尻尾が“無罪”とは思いきった判決じゃのう……」
裁判が終わり、マカロフともう1人は評議院の廊下で話をしていた。
「感謝せぇよマー坊。ワスも弁護スたけぇねぇ」
「恩にきるわいヤン坊。ギルドが直ったら一度遊びに来なさいよ。ラーメンおごっちゃる」
マカロフと話をしていたのはマカロフと昔からの友人であり、評議院の議員の1人であるヤジマだ。
今回の件では彼は妖精の尻尾を弁護してくれたこちらの味方だ。
「……マー坊もう無茶はスるな」
「ん?」
ヤジマの突然の注告に疑問を浮かべるマカロフ。
「最近の妖精の尻尾の狼藉ぶりは目にあまる。現にミケロやオーグは解散請求までスとるんヨ。このままではハルト君やカミナ君が評議院のクエストをこなスて罰を軽くスているからと言って、いずれマー坊が重い罰を受ける事になる。……とっと引退せンと身がもたねーヨ」
「………」
マカロフは真剣な表情になるが、そうもいかない理由がある。
「ヤン坊よぉ……ワシのガキ共も頑張ってんだ。しばらくはそうもできねぇよ」
ハルトとカミナは体を張って頑張っているのに、親である自分は引退なんてできるわけがない。
「そうでもないですよ?」
そこにハルトと関係が深いナミーシャがやってきた。
「ナミーシャか……」
「お久しぶりです。マカロフさん」
「さっきのはどういうことじゃ?」
ナミーシャは抱えていた資料をマカロフに渡して話始めた。
「最近あっちこっちで事件が起きてそれどころじゃないんですよ。今回の抗争もそうですけど、アカネビーチ近海で謎の建造物と謎の都市の目撃があったり、魔道士襲撃事件がおこったりと忙しいんですよ」
「ナミーシャ君。スれは公開禁止にしている情報じゃないンかね?」
「これはもうすぐ公開予定ですから変わらないでしょう? そんなことより今の評議院は忙しすぎて、ハルト君やカミナ君に仕事を回すことができないかもしれないんです。これを機にマカロフさんもそろそろ後継ぎを考えたらどうですか?」
「後継ぎ……か」
○
そのころ今だ骨組みしかできていない妖精の尻尾のギルドでは待ちに待ったものが始まった。
「みんなー!!!今日から仕事の受注を再開するわよー!!仮設の受付カウンターだけどガンガン仕事やろーね♪」
「うおぉおおぉっ!!!! 仕事だ仕事ー!!!」
いつもより三割増しに綺麗さに磨きがかかったミラがそう宣言するとメンバーは我先とクエストボードに走っていく。
それを見ていたルーシィはミラの近くのカウンターで座って呆れていた。
「なにアレェ?普段はお酒呑んでダラダラしてるだけなのにぃ」
「あはは」
「そういやロキいないのかなぁ」
「あら?ハルトからロキに乗り換えちゃった?」
「そんなわけないです!!」
ルーシィはミラの冗談に本気で反論した。
それに気づいたルーシィは慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい。ついカッとなっちゃって……」
「うふふ、いいのよ。相変わらずハルトに夢中なのね♪」
ミラの言葉に顔を赤くしてしまうルーシィ。
「む、夢中って……うぅ……はい……」
「あら?あっさり認めたわね。やっぱりこの前のことがあったからかしら?」
「この前?」
「ほら、ルーシィが実家に帰ってお父さんにハルトのことを恋人として紹介したって話よ」
ミラの話はルーシィが実家に帰って父親との決別をしっかりとしようとした時に勘違いしたハルトが乗り込んだときにハルトを紹介した時の話だ。
「なっ!なんでそのことを!というか恋人ととして紹介してません!!」
「あら?そうなの?でもマタムネはそう話してくれたけど……」
それを聞いたルーシィは怒りの表情を浮かべる。
「あ、あのネコー!!!」
ギリギリと歯ぎしりをするルーシィだが、話をそれたことを思い出した。
「それよりロキですよ!なんか鍵を見つけてくれたみたいで……一言お礼したいなって」
「うん……それより星霊に怒られなかった?鍵落としちゃって」
「はは……」
ルーシィから乾いた笑い出て、その時のことを思い出し、冷や汗が流れる。
「思い出しただけでお尻が痛く……」
「あらら……」
「どうしたんだルーシィ?どこか痛いのか?」
そこに現れたのがハルトだった。
「ハルト! ううん、何でもないの」
「そうか、なんかあったら言えよ?」
「うん……ありがとう」
明らかに以前よりハルトは
そのやりとりを見ていたミラは微笑ましい気持ちだった。
(なんだ……結構うまくいってるじゃない♪)
そこに鼻息を荒くしたマタムネが忍び寄る。
「胸が痛むならせっしゃにまかさるでごじゃる……癒してしんぜよう……ハァハァ……」
手をワキワキしながら近づいてくるマタムネは明らかに不審者、いや不審猫である。
「絶対に嫌よ。それよりあんた! 勝手にこの前の話を捏造してんじゃ……」
ルーシィがマタムネに文句を言おうとした瞬間、マタムネにテーブルが転がってきて押しつぶされた。
「むぎゃー!!?」
「マタムネー!?」
押しつぶされたマタムネを助けようとするルーシィの耳に怒号が飛んでくる。
「もういっぺん言ってみろ!!!!」
その怒号に辺りのみんなもザワザワと騒ぎだす。
「エルザ?」
ルーシィがエルザのほうを見ると、エルザはある男を睨んでいた。
「この際だ。ハッキリ言ってやるよ。弱ェ奴はこのギルドに必要ねぇんだよ」
ある男とは妖精の尻尾の最強の男の一人に数えられているラクサスだ。
「貴様……」
「ファントム如きに舐められやがって……恥ずかしくて外も歩けねーよ」
するとラクサスはガジルに襲撃されたレビィたちシャドウギアを指差す。
「オメーだよ。オメー。元はと言えァオメーラがガジルにやられたんだって?つーかオメーら名前知らねえや誰だよ? 情けねえなぁ、オイィ!!」
ラクサスの高笑いが響く中、レビィたちは悔しそうにしている。
それに耐えかねたルーシィは身を乗り出す。
「ひどい事を……」
それに気づいたラクサスはルーシィを見る。
「これはこれは……さらに元凶のねーちゃんじねーか」
「ラクサス。もうそのぐらいにしとけ。今回参加しなかったお前にもお咎め無しってことになったんだからな」
ハルトが止めに入るとラクサスは睨む。
「ハルトよぉ……テメェとカミナもだ。何であんな奴ら手こずる?あれか?そこのねーちゃんとミラの色気で文字通り骨抜きにされたか?」
「ラクサス……いい加減にしとけよ……」
「ああ? やんのか?」
ハルトはその言葉に怒りを覚えたのか、ラクサスを睨み、全身に黄金の魔力を滾らせる。ラクサスも全身から雷をほとばしらせる。
まさに一触即発の雰囲気だ。
「何の騒ぎだ……」
そこにカミナの若干細くなった声が届いた。
「カミナも来やがったか……テメェの……ッ!?」
ラクサスは振り返り、カミナのほうを向くとそこには頬が痩せこけ、何故か全身の色素が薄くなって、刀を杖代わりにしてやってきたカミナがいた。
流石のラクサスもその姿に驚いて魔力を散らせてしまう。
「ええっ!? あれってカミナさん!?なんか前会った時より色々変わってない!?」
ルーシィも驚き、ツッコンでしまう。
「ラクサス……俺が……どうし……」
ラクサスに近づこうとするが石に足を取られ転びそうになってしまう。
そこにすかさず滑り込み受け止めたのはミラだった。
「もう! 疲れているなら休まないとダメじゃない!!」
「いや…これは……お前が寝かせてくれなかったから……」
「疲れているなら家に帰りましょう?私が看病してあげるから!」
「……っ!!?い、いや!大丈夫だ!!一人で帰れ……」
「ダメよ。また転んだら危ないでしょ?じゃあみんな私たち先に帰るから、クエストの受注は代わりの人にやって貰ってね。エルフマン、私帰るの夜になるから。ご飯お願いね?」
「お…おう」
「じゃあみんな、またね!」
ミラの有無も合わせない勢いにカミナは連れ去られ、みんなは圧倒していた。
カミナがミラに引きづられながら、必死に助けの手を伸ばす姿はとても見ていられなかった。
「ね、ねぇマタムネ?」
「な、何でごじゃるか?」
「今日ミラさんが一段と綺麗だったのって……」
ルーシィの質問にマタムネは無言で頷いた。
さっきまでの剣呑な雰囲気は何処かに消え、しらけてしまった。
「チッ……白けちまった」
ラクサスは踵を返し何処かに行こうとするが、顔だけ振り向き、ギルドにいる全員宣言した。
「俺がギルドを継いだら弱ェモンは全て削除する!!!そして歯向かう奴も全てだ!!! 最強のギルドをつくる!!!誰にも舐められねぇ史上最強のギルドだっ!!!!」
ラクサスはそう言い残し去って行った。
○
ラクサスが去ってみんながそれぞれのことをしているが不満はあるようだ。
「継ぐって……何ぶっ飛んだ事言ってんのよ」
ルーシィもその一人で不満そうに言うが、ハルトは隣に座りながら、ため息をつく。
「そうでもないんだ。ラクサスはじいさんの実の孫なんだよ」
「えーーーっ!!!?」
ハルトの言葉にひどく驚くルーシィ。
「じゃ、じゃあマスターが引退したら次のマスターはラクサスなの!?」
「そんな事マスターも言ってないからあくまで噂でごじゃる」
「それにしてもあの野郎……あんな事言いやがって……」
ハルトはさっきの怒りが収まらないのか拳を握り締める。
その拳をルーシィは両手で優しく包み込む。
「あたしは大丈夫だから……ありがとう、ハルト」
「ルーシィ……」
2人の周りにピンク色のオーラが溢れているように見える。
「「でぇきぃてぇるぅ」」
マタムネとハッピーが揃えて言う。
「う、うるさい!」
そこにエルザも現れ、ルーシィに話しかける。
「あんな奴に関わると疲れるだけだ。放っておけ。それよりどうだろう?仕事にでも行かないか?」
「え?」
「もちろんハルト、ナツにグレイも一緒だ」
「「「え!?」」」
「鉄の森の件から常に一緒にいる気がするしな。この際チームを組まないか? 私たち5人で。マタムネとハッピーいれて6人か」
「わぁ!」
「「「マジで?」」」
ルーシィ、マタムネ、ハッピーは嬉しそうに騒ぐがハルト、ナツ、グレイは顔色を悪くする。
それと同時にギルドのメンバーも騒ぐ。
「妖精の尻尾最強チーム正式結成だー!!!」
「いいぞー!!!」
「お前らが最強だー!!!」
しかし犬猿の仲であるナツとグレイは不服そうで、互いを睨み合う。
「「こ、こいつと……」」
「不満か?」
「「いえ嬉しいです」」
しかしエルザの一声でコロっと意見を変えてしまう。
ハルトは別の意味で不服だった。
「はぁ……チームの責任は俺に来るのか? また評議院からめんどくさいことが……」
ハルトはこれからのことを考え、顔を引きつかせる。
「早速仕事に行くぞ!」
○
その夜、ギルドの骨組みの上でマカロフは月見酒をしていた。
「引退……か」
ヤジマとナミーシャに言われたことを思い返し、下に見える建設現場を見渡す。
「ギルドも新しくなる。ならばマスターも次の世代へ……」
そして頭に浮かべるのは妖精の尻尾のトップクラスの実力者たち。
「ラクサス……あやつは心に大きな問題がある。ギルダーツは無理だしのう……。ミストガンは……ディスコミュニケーションの見本みたいな奴じゃ……だとするとまだ若いが……ハルト、カミナ、エルザのいずれか……」
「マスターこんな所にいたんですかぁ〜」
「ん?」
そこにカミナの看病(意味深)から帰ってきたミラがマカロフを呼び、ある書類を見せる。
「またやっちゃったみたいです」
「は?」
「エルザたちが仕事先で街を半壊させちゃったみたい」
「はっ!!!?」
その瞬間、マカロフは真っ白になり、涙を流す。
さらにミラは追い討ちをかける。
「評議院から早々に始末書の提出を求められてますよー。あれ?マスターどうしました?」
「引退なんかしてられるかーーー!!!」
マカロフの苦悩は続く。
感想待ってまーす。