FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
妖精の尻尾のギルドでは皆が慌ただしくしていた。
「痛て…」
「あーくそっ!!!」
「まさか俺たちが撤退するハメになるとは!!」
「ギルドやレビィたちの仇もとれてねぇ!」
「ちくしょぉ!!」
悔しがる者もいれば、
「奴らの本部はここだ」
「南西の高台から遠距離魔法で攻撃すれば…」
「今度は爆弾魔水晶をありったけ持って行くんだ!!」
「所持系魔導士の強力な魔法書を倉庫から持ってこい!!!」
次の戦いに備える者もいた。そんな様子をルーシィは浮かない表情で見ていた。
「どーした? まだ不安か?」
そこにグレイとエルフマンがやってくる。
「ううん…そういうのじゃないの…なんか…ごめんね…」
「まあ金持ちのお嬢様は狙われる運命よ。そして、それを守るのが漢の務め」
「そんなことを言うなよ」
エルフマンは自分なりにルーシィを励まそうとするが空ぶってしまい、グレイに注意される。
「でも驚いたよ。ルーシィがあのハートフィリア家のお嬢様だったなんて。何で黙ってたの?」
一緒に座っていたハルト、マタムネ、ナツ、ハッピーの中でハッピーがルーシィに質問すると、ルーシィは少し困ったように苦笑いしながら答えた。
「隠してたわけじゃないんだけど…家出中だからね…あまり話す気にもなれなくて……一年間も家出した娘に関心なかったクセに…急に連れ戻そうとするんだもんな……パパがあたしを連れ戻すためにこんな事したんだ…最低だよ。でも…元を正せばあたしが家出なんかしたせいなんだよね……」
ルーシィは悔しくなり膝の上で拳を握る。
「それは違うだろ! 悪いのはルーシィのパパで……!」
「おいバカ!」
「あ…いや……」
ルーシィは落ち込んだ顔したがすぐに取り繕った顔をした。
「あたしの身勝手な行動で……まさかみんなにこんなに迷惑かけちゃうなんて…本当にゴメンね…あたしが家に戻れば済む話なんだよね」
「そうか?」
ハルトはすかさずルーシィに聞き返す。
「別に帰りたくないなら帰らなくてもいいんだぜ。ルーシィはここで笑って冒険してたほうが似合ってると思うしな」
「それにお嬢様ってのも似合わねえよな」
「だね」
「ごじゃる」
「ハルト…みんな…」
ハルトたちがそう言うとルーシィはまた涙ぐむ。
「あーまた泣かせたでごじゃる」
「俺かよ!? …いや、まあ俺なんだけどさぁ」
そんなやり取りもあり、みんなが笑う。いつもの日常が帰ってきたようだ。その頃、カナとミラは依頼でどこかにいる他のS級魔導士と連絡を取っていた。
「ダメ!!! ミストガンの居場所はわからないっ!そっちはどう?」
タロットカードでミストガンの居場所を探していたカナはお手上げの状態でミラに聞く。
「そう…残念ね。こっちもカミナとは連絡が取れなかったわ」
「ルーシィが目的だとすると奴らはまた攻めてくるよ。怪我人も多いし…… ちょっとマズイわね」
「マスターは重傷。ミストガンは行方不明。カミナとは連絡が取れない。 頼れるのはあなたしかいないのよ…… ラクサス」
「あ?」
ミラが話しかける通信用魔水晶には、ふてぶてしい表情のラクサスか写し出されていた。
「お願い…… 戻ってきて。妖精の尻尾のピンチなの」
「あのクソジジィもザマァねえなぁ!!! はははっ!!!」
ミラは真剣に頼んでいるのにも関わらず、ラクサスはふざけたように笑う。
「俺には関係ねえ話だ。勝手にやっててちょうだいよ。だってそうだろ? ジジイの始めた戦争だ。何で俺たちがケツを拭くんだ?」
「ルーシィが…仲間が狙われているの」
「あ? 誰だそいつ? ああ…あのやたらハルトにくっついてた奴か。それにハルトに媚び売っとけは助けてもらえんだろ」
「そんな言い方……」
「それでも助けてほしいならジジイにさっさと引退して、おれにマスターの座をよこせって伝えな」
「あんたって人は……」
カナは余りの発言にラクサスを睨む。
「オイオイ…それが人にものを頼む態度かよ。とりあえず脱いでみたら? おれはお色気には……」
ラクサスの言葉は魔水晶が割れたことで中断された。
「ミラ……」
ミラは怒りに震えていた。
「信じられない…こんな人が… 本当に妖精の尻尾の一員なの…?」
ミラは涙を流す。
「こうなったら次は私も戦う!!!」
「何言ってんのよ!!」
「だって…私がいたのにルーシィはさらわれちゃって……!!」
悲痛な叫びをあげるがカナは落ち着かせるようにミラの肩に手を置く。
「ダメよ。今のアンタじゃ足手まといになる。 たとえ、元・S級魔導士でもね」
その時、突然大きなゆれが襲った。
「な、なんだ?」
「地震か!?」
「いや、違う。外だ!」
全員が慌てて外に出るとそこには信じられないものがあった。なんとファントムの本部に6本の足が生え、妖精の尻尾のギルドの後ろにある巨大な湖を渡ってきたのだ。
「な…何だあれ」
「ギルドが歩いて…」
「ファントム…なのか」
みんなが余りの光景に絶句する。
「そ…想定外だ……こんな方法で攻めてくるなんて……!」
みんなが唖然とするのをファントムのギルドにある高台から見ていたジョゼは命令した。
「魔導集束砲『ジュピター』用意」
すると、ファントムのギルドの前部分が開き、砲台が出てきて魔力を集め始めた。
「消せ」
「砲台!!?」
「あれって魔導集束砲か!!?」
「ギルドごと私たちを吹き飛ばすつもり!?」
みんなが戸惑っている間にどんどん魔力は充填されていく。
「クソッ!!」
「ハルト!?」
「お前ら全員退がれ!!」
ハルトはみんなの前に出て、魔力を全力で練りあげる。すると全身に金色の魔力がみなぎる。
「滅竜奥義……!!」
ハルトは腕を顔の前で交差し叫ぶ。
「剛覇竜凱甲!!!!!」
ハルトの前に分厚い鱗に覆われた半透明の巨大な竜の腕がクロスした状態で現れた。
「あれって……!」
「ハルトの1番の防御魔法でごじゃる!!」
「受け止めるつもりかよ……」
「ハルト!!」
「ナツ!! ここはハルトを信じるしかねえんだ!!」
「うぁ…」
「ふせろォオ!!!!」
エルザが叫ぶのと同時に放たれたジュピターはハルトの魔法とぶつかる。
「ぐうぅっ!!」
ぶつかった瞬間、凄まじい風が巻き起こる。ハルトの魔法とジュピターは拮抗していると思われたが、ハルトの魔法にひびがはいり始めた。ひびは全体に行き渡り、ついには閃光が走り、ハルトを巻き込んで大爆発が起きた。
「うわあぁぁっ!!」
「きゃあぁぁぁっ!!」
爆風がやむとそこには全身がボロボロの状態のハルトが倒れていた。
「ハルト!!!」
「しっかりしろ!!!」
みんなが駆け寄りハルトを見るが、辛うじて意識はあるが全身にひどい怪我を負っていた。もう戦える状態ではない。
『マカロフ……そしてハルトも倒れた。いくらエルザがいようとも貴様らに凱歌はあがらねぇ。ルーシィ・ハートフィリアを渡せ。今すぐにだ』
その言葉にギルドメンバーは憤慨する。
「ふざけんな!」
「仲間を敵に差し出すギルドがどこにある!!」
「ルーシィは仲間なんだ!!」
「そーだそーだ!!」
「ルーシィは渡さねえ!!」
ギルドのみんながジョゼに対して反発する。それを聞いてルーシィは罪悪感に押し潰されそうになる。
「あたし……」
ルーシィが耐えられなくなり名乗り出ようとするが、仲間がそれを止めた。
「仲間を売るくらいなら死んだ方がマシだっ!!!!!」
「俺たちの答えは何があってもかわらねえっ!!! お前らをぶっ潰してやる!!!」
「ルーシィは俺たちの大切な仲間だ……。お前らに渡すわけねえだろ!!!!」
エルザたちの強い叫びに妖精の尻尾は全員雄叫びを上げる。ルーシィはそれに涙が流れてしまう。
『ほう……。 ならばさらに特大のジュピターをくらわせてやる!!!装填までの15分、恐怖の中であがけ!!!!』
しかし、それはジョゼの怒りに火に油を注ぐだけだった。
「何!?」
「ジュピター……また撃つのか…!?」
「ぐぅっ……」
みんなが戦々恐々としていると、とうとうハルトは意識を失ってしまった。
「ハルト!!」
それと同時にファントムのギルドから無数の兵士が現れた。
「な…兵士が出やがった!!」
「バカな!! ジュピターを撃つんじゃねえのかよ!!」
「容赦ねぇ……」
『地獄を見ろ妖精の尻尾。 貴様らに残された選択肢は二つだけだ。我が兵に殺されるか。ジュピターで死ぬかだ』
ジョゼの声は怒りに染まっていた。
「あ、ありえねぇ…仲間ごとジュピターで殺す気なのか」
「お…脅しさ…撃つハズがねぇ……」
1人は気丈に振る舞うがカナは否定する。
「いや…撃つよ。あれはジョゼの魔法『幽兵』(シェイド)……人間じゃないのさ。ジョゼの作り出した幽鬼の兵士。ジュピターをなんとかしないとね……」
そこにナツが立ち上がった。
「俺がぶっ壊してくる!!! 15分だろ? やってやる。ハッピー!」
「あいさー!!!」
ナツはハッピーに抱えられ、いち早くファントムに乗り込んだ。
「私も行くぞ!」
「ナツばっかにいいとか取られてたまるかよ!」
「漢ーー!!」
ナツに続き、エルザ、グレイ、エルフマンが乗り込んで行った。
「頼んだよ、みんな。あたしたちはここで食い止めるよ!」
『オオォォォォォっ!!!』
カナの号令で妖精の尻尾は雄叫びを上げた。
○
一方ミラたちは負傷したハルトをギルド内に運んで、治療していた。
「ひどい怪我でごじゃる……」
「そうね……ここにある救急セットで足りるかしら……」
傷ついたハルトを見てルーシィはこぶしを痛いほど握りしめ、ミラを見た。
「ミラさん! 私も戦う!!」
「何を言ってるの!? ルーシィが出て行ったらダメだわ!! そんなことより、ルーシィはどこかに隠れないと……」
「でも!!……みんなが戦っているのにあたしだけ隠れるなんてできません!! レビィちゃんやマスター、みんなも傷ついて……それにハルトも……」
ルーシィはハルトに目を向ける。
「全部あたしのせいなのに……」
目に涙を貯めるルーシィを見て、ミラは優しく微笑む。
「それは違うわルーシィ。誰もそんなこと思ってないわ。やられた仲間のため、ギルドのため、そしてあなたを守るためにみんな誇りを持って戦っているの」
「ミラさん……」
「だから言うことを聞いてね」
ミラはルーシィに手をかざすとルーシィは眠ってしまった。
「リーダス!ルーシィを連れて隠れ家にいって!!」
「ウィ!!」
リーダスは魔法で作った馬車にルーシィを乗せ隠れ家に向かった。
「ミラ殿は隠れ家に行かなくてもよかったでごじゃるか?」
「うん……私も私なりにルーシィを守るために戦いたいの」
「そうでごじゃるか」
「マタムネはルーシィについて行かなくていいの?」
「せっしゃはハルトの相棒でごじゃる! ハルトが目を覚ました時に側にいてやらないとハルトが困るでごじゃるからな」
「そっか……」
みんなそれぞれに決心し、この戦いに挑んでいる。
(私は…私にできることを……!!)
ミラはルーシィに変身し、この戦況を見守った。
ジュピター発射まであと14分。