FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第27話 戦争開始!!

フィオーレ王国の北東にある街、オーク。そのはずれに幽鬼の支配者のギルドがあった。

 

「だっはーー! 最高だぜー!!」

 

「妖精の尻尾(ケツ)はボロボロだってよ!」

 

「ガジルの奴、その上3人もやったんだってよ」

 

「ヒューーー!!」

 

「そういや、マスターが言ってた“奴”って誰だよ?」

 

「さぁ?」

 

「手を出すなとか言ってたな」

 

「どうでもいいさ。みじめな妖精に乾杯だ!」

 

「今頃羽をすり合わせて震えてるぜ!」

 

ファントムは妖精の尻尾を襲った悲劇を肴に酒を飲む。

 

「あ! いけね、もうこんな時間だ」

 

「なんだ?女か?」

 

1人の男が何かを思い出し、立ち上がった。

 

「まあまあいい女だ。依頼人だけどな。脅したら報酬を2倍にしてくれてよぉ」

 

「俺なら3倍はいけるよ」

 

「言ってろタコ」

 

男たちは下衆な表情を浮かべながら話をする。荷物を持った男は扉に向かい手をかけるが、突然扉をぶち抜き、男の顔に拳が叩きこまれ、男は吹っ飛んでいき壁にぶつかった。ファントムのメンバーは突然のことに驚き、破壊された扉のほうを向いた。

 

「妖精の尻尾じゃあぁぁぁっ!!!」

 

マスターマカロフを筆頭とした妖精の尻尾の魔導士が怒りの表情で立っていた。

 

 

「おおおらぁっ!!」

 

ナツは先駆けて敵の中に突撃し、炎を立ち上げ敵を倒していく。

 

「誰でもいい!かかって来いやぁ!!!」

 

「調子にのるんじゃねえぞコラ!!!」

 

「やっちまえーー!!!」

 

ファントムも突然のことで驚いたが武器を取り、応戦してくる。

 

「ア?」

 

グレイは敵を次々と凍らしていく。

 

「ぬぉおおおっ!」

 

エルフマンは片腕をテイクオーバーして、なぎ倒していく。

 

「オォッ!!!」

 

ハルトは一瞬のうちに敵を倒していく。カナやロキなど他のメンバーもファントムに対して優位に立ち向かっていく。

 

「マスターマカロフを狙え!!!」

 

数人のファントムの魔導士がマカロフを狙うが、

 

「かぁーーーーーっ!!!!!」

 

マカロフは一瞬で巨大化し敵を叩き潰す。

 

「ぐあぁあっ……!」

 

「ばっ……バケモノ!!!」

 

「貴様等はそのバケモノのガキに手ェ出したんだ。人間の法律で自分を守れるなどと夢ゆめ思うなよ」

 

「ひっ…ひぎ……」

 

マカロフの凄まじい迫力にファントムの魔導士は戦慄する。

 

「つ……強ぇ!!」

 

「兵隊どももハンパじゃねえ!!」

 

「こいつらメチャクチャだよ!!」

 

次第にファントムの魔導士は不利な状況になっていき混乱し始める。

 

「ジョゼーー!! 出てこんかぁっ!!!」

 

「指揮者はどこだ!!」

 

「どこだ!! ガジル、エレメント4はどこにいる!?」

 

マカロフはジョゼを探し、ハルト、エルザはファントムと主戦力を探す。それを上から眺めている影が複数あった。

 

「あれが覇王のハルト、ティターニアのエルザ……。凄まじいな。どの兵隊よりも頭1つ2つ抜けているな」

 

「ギルダーツ、ラクサス、ミストガン、カミナは参戦せず……か、なめやがって」

 

ルシェドはハルトとエルザが戦う様を見て感想を言い、ガジルは大きい戦力であるラクサスたちが参加していないのに対して悪態を吐く。

 

「しかし、これほどまでマスター・ジョゼの計画通りに事が進むとはな……せいぜい暴れ回れ、クズどもが…」

 

その言葉と共にガジルは不気味な笑みを浮かべる。

 

 

時間は少し遡り、ハルトたちがファントムと戦うためにオークの街を目指しているときルーシィはレビィたちの見舞いに来ていた。ルーシィもファントム戦に参加したいと思っていたがハルトに強く言われ参加することができなかった。

 

「ハルトもなんで連れて行ってくれなかったのかしら?」

 

少し不満気な顔をしながら独り言を言いながら、自宅に帰っていると突然雨が降り出した。

 

「何もう!? 通り雨?」

 

「しんしんと……」

 

するとルーシィの目の前に傘をさした女が現れた。その女はルーシィを見つめて動かず、ルーシィもその視線で動けなかった。

 

「それではご機嫌よう。しんしんと……」

 

「え!? 何なの!!?」

 

突然、振り返り帰ろうとしルーシィは戸惑ってしまう。すると男の声が響いてきた。

 

「ノンノンノン。ノンノンノン。ノンノンノンノンノンノンノン。3・3・7のNOでボンジュール」

 

次は地面から奇妙な男がニョキっと現れた。

 

「また変なの出たっ!!」

 

ルーシィは変なのがまた現れ、対応できなくなってきた。

 

「ジュビア様、ダメですなぁ仕事放棄は」

 

「ムッシュ・ソル」

 

「私の眼鏡がささやいておりますぞ。そのお嬢さん(マドモアゼル)こそが愛しの標的(シブル)だとね〜〜え」

 

「あら……この娘だったの?」

 

「え?」

 

ルーシィは2人の会話から何を言ってるかわからなかった。

 

「申し遅れました。私の名はソル。ムッシュ・ソルとお呼びください。偉大なる幽鬼の支配者よりお呼びにあがりました」

 

「ジュビアはエレメント4の1人にして雨女」

 

2人はファントムの魔導士と知るとルーシィは臨戦態勢に入る。

 

「ファントム!? あ……あんたたちがレビィちゃんたちを!!」

 

「ノンノンノン。3つのNOで誤解を解きたい。ギルドを壊したのもレビィ様を襲ったのも全てガジル様」

 

ソルがそう言った瞬間、ルーシィは突然湧き出てきた水に包まれ、その拍子に鍵をおとしてしまった。

 

「!!!」

 

「まぁ、我々のギルドの総意である事にはかわりませんがね」

 

「んっ、ふ、ぷはっ! な……何……これ!!!」

 

ルーシィはどうにかして水面から顔を出すが水は意志を持ったかのように動き、ルーシィを逃さない。

 

「ジュビアの水流拘束(ウォーターロック)は決して破れない」

 

ジュビアが手を動かすと水球は大きさを増し、ルーシィを拘束した。ついにルーシィは空気がなくなり気絶してしまい、囚われてしまった。

 

「大丈夫……ジュビアはあなたを殺さない。あなたを連れて帰る事がジュビアの任務だから、ルーシィ・ハートフィリア様」

 

 

「ハルト、エルザ!! ここはお前たちに任せる!! ワシはジョゼの息の根を止めてくる!!!」

 

「気をつけろよ。じーさん!」

 

「お気をつけて」

 

マカロフは上の階に繋がる階段を登っていった。それをガジルは見ていた。

 

「へへっ… 1番厄介なのが消えたとこで… ひと暴れしようかね?

ルシェドはどうすんだ?」

 

「俺はここで見ている」

 

「チッ… ビビりが… まあ、いいか」

 

ガジルは不気味な笑みを浮かべ飛び降り、着地と同時に腕を鉄に変え、自分の仲間ごと巻き込み攻撃した。

 

「来いい!! クズども!! 鉄の滅竜魔導士、ガジル様が相手だ!!」

 

そこにエルフマンが片腕をテイクオーバーしながら突撃してくる。

 

「漢はァーー!!! クズでも漢だぁっ!!!」

 

エルフマンは殴りかかるがガジルが腕を鉄に変え容易に防ぐ。

 

「ギヒッ」

 

ガジルは反撃でもう片方の腕を鉄柱に変え、エルフマンに襲いかかる。次々と手や足を鉄柱に変えて攻撃していくがエルフマンは躱し、受け止めて対応していく。

 

「ほう……なかなかやる。 じゃあこんなのはどうだ?」

 

エルフマンが受け止めた足の鉄柱から多くの鉄柱を出して攻撃する。エルフマンはかわすが周囲にいたファントムの魔導士や妖精の尻尾の魔導士に当たってしまう。

 

「貴様!! 自分の仲間を!!」

 

「何よそ見してやがる」

 

エルフマンがよそ見しているすきにガジルは一撃を加える。吹き飛ばされたエルフマンの体を利用しガジルに近づく人影が、

 

「ガジルーー!!!」

 

ナツが火竜の鉄拳でガジルを殴り吹き飛ばした。

 

「オレが妖精の尻尾の滅竜魔導士だぁ!!!」

 

「ああ!! 知ってるよ!!!」

 

ガジルは態勢を整えすかさずナツの体に攻撃を加えるが、ナツは受け止める。

 

「こいつがギルドやレビィたちを……!」

 

鉄柱を掴み持ち上げ、ガジルを投げ飛ばした。

 

「くだばれぇっ!!!」

 

「何!!?」

 

ガジルは態勢を整えるが目の前にナツが詰め寄ってきて、炎を纏った拳で殴りつける。またも吹き飛ばされたガジルだが効いてないとばかり、また態勢を整え足裏から刃を出し天井にある支柱の裏側に引っ掛け、立ちながらナツと睨み合う。

 

「で?それが本気か? 火竜」

 

「安心しろよ。ただの挨拶だ。竜のケンカの前のな」

 

ナツも腕から炎を出しながら睨む。両者が睨み合っていると突然ギルドが揺れ始めた。

 

「な……何だ?」

 

「地震!!?」

 

ファントムの魔導士たちは戸惑うが妖精の尻尾の魔導士は笑みを浮かべるがそれはどこか恐怖に似た表情を見せる。

 

「これはマスターマカロフの“怒り”だ。 巨人の逆鱗……もはや誰にも止められんぞ」

 

エルザがそう言うとファントムの魔導士はさらに焦り始める。

 

「ひ……ひぃ!!」

 

「ウソだろ!? ギルド全体が震えて……」

 

「それがウチのマスター・マカロフだ。 覚悟しろよマスターがいる限り俺たちに負けはない」

 

ハルトがそう言うと上の階から爆発音がし、何かが落ちてきた。

 

「な……何だ?」

 

「何かが落ちて……」

 

煙が晴れるとそこにはマカロフがいた。ボロボロの姿で体が震えていた。

 

「わ……わしの魔力が……」

 

「ま、マスター?」

 

呆然とするマカロフからは魔力が感じらなかった。

 

「じーさんどうした!?」

 

「じっちゃん!!」

 

「マスター!!」

 

「ちぇっ…お楽しみは終わりかよ」

 

妖精の尻尾の魔導士たちは最強のマカロフが倒されたことに動揺士気が下がり始め、逆にファントムの魔導士たちはマカロフが倒れたことに士気が上がってきた。

 

「今だ!!ぶっ潰せ!!」

 

一気に形成逆転されてしまった。

 

(いかん……!! 戦力だけではない…… 士気の低下の方が深刻だ)

 

「撤退だーー!!!! 全員ギルドに戻れーーー!!!!」

 

エルザの号令に全員が反論するが明らかに不利になっている。

 

「オレはまだやれるぞ!」

 

「私も!!」

 

「じーさん無しじゃジョゼには勝てねえ!! 俺が殿を務めるからそのうちに戻れ!!!」

 

ハルトが反論する仲間を黙らせる。それを見ていたガジルが皮肉気に笑う。

 

「あらあら、もう帰っちゃうのかい? ギヒヒ」

 

するとガジルの近くにマカロフの魔力を奪った男が空気のように現れる。

 

「アリアか……相変わらず不気味なヤローだ。 よくあのジジイをやれたな」

 

「全てはマスター・ジョゼの作戦。素晴らしい!!!」

 

何故かアリアは号泣する。

 

「いちいち泣くな。で……ルーシィとやらは捕まえたのか?」

 

「!!」

 

ガジルがアリアに聞いたことは殿を務めていたハルトの耳に入ってきた。そこに今まで静観していたルシェドもやってきて、答える。

 

「“本部”に幽閉しているらしい」

 

「何!!? 」

 

「どうしたでごじゃる。ハルト!?」

 

「どういうことだ!!!?」

 

ハルトが叫びを聞いたルシェドは振り向き冷たい目でハルトを見下ろした。

 

「またな覇王」

 

アリアが腕を広げるとアリアたちは消えていった。

 

「ルーシィが捕まった?」

 

「え!!?」

 

ハルトは怒りをにじませ手に魔力を貯める。それを他所に妖精の尻尾の魔導士たちは撤退を始め、ファントムは追撃を始めた。

 

「撤退だ!!!! 退けぇ!!!!」

 

「逃がすかぁ!!! 妖精の尻尾!!!!」

 

ハルトは追いかけてきたファントムの魔導士を1人捕まえると、その手に竜牙弾を作り、迫り来るファントムの軍勢に向かって投げつけた。竜牙弾は軍勢にぶつかると凄まじい衝撃波を放ち、一気に敵を減らした。ハルトは捕まえたファントムの魔導士を引きずりながら出口を目指した。

 

「来い!」

 

「へっ?」

 

「ハルトどうするでごじゃるか!?」

 

「ルーシィを助けにいく!!」

 

ハルトのおかげでファントムの敵を一気に減らしたとはいえ、それでも追ってくる敵は多い。撤退を始めた妖精の尻尾だが、グレイは立ち向かおうとした。

 

「こんな所で退けるかよ!!! レビィたちの仇をとるんだ!!!」

 

グレイは立ち向かおうとするがエルザがそれを止める。

 

「頼む……」

 

「エルザ……」

 

エルザの肩は震えていた。

 

「今は退くしかないんだ…… マスターの抜けた穴は大きすぎる……」

 

そのころハルトとマタムネはみんなと違う方向に向かっていた。

 

「言え。ルーシィはどこだ?」

 

「し…知らねえよ…誰だそれ……」

 

その瞬間、ハルトはファントムの男を地面に力任せに叩きつけた。

 

「ぐはっ!!」

 

ハルトは怒りを露わにし、男を睨みつける。

 

「言え…… これ以上仲間を傷つけられたら、お前を殺してしまいそうだ」

 

男はそれに恐怖を感じてしまう。

 

「ひっ… し…知らねえ!! そんな奴は本当に知らねえ!! けど…俺たちの“本部”はこの先の丘にある!! そ…そこかも!!」

 

 

オークの外れにある幽鬼の支配者の本部。その中にある牢屋の一室にルーシィは幽閉されていた。

 

「ん? え? え!!? 何これ!!? どこぉ!!?」

 

目を覚ましたルーシィは突然の事態に驚き、状況が飲み込めない。

 

「お目覚めですかな? ルーシィ・ハートフィリア様」

 

「誰!!?」

 

すると鉄の扉越しから声が聞こえてくる。

 

「初めまして、幽鬼の支配者のギルドマスター。ジョゼと申します」

 

入ってきた男は今回の黒幕、ジョゼ・ポーラだった。

 

「ファントム……!? (そうだ…私、エレメント4に捕まって…)」

 

「このような不潔な牢と拘束具……大変失礼だとは思いましたが、今はまだ捕虜の身であられる。理解のほどをお願いしたい」

 

ジョゼは紳士のような振る舞いを見せる。

 

「これを解きなさい!! 何が捕虜よ!! よくもレビィちゃんたちを!!」

 

ルーシィは相手がギルドマスターだからといって、傷つけられた仲間を思うと臆せず反抗する

 

「あなたの態度次第では捕虜ではなく〝最高の客人〟としてもてなす用意も出来ているんですよ」

 

「何それ……」

 

一瞬ジョゼの言っている意味がわからなかった。呆けていると足元からムカデが這い上がってくる。

 

「ひゃあっ!!」

 

「ね? こんな部屋は嫌でしょう? 大人しくしていればスイートルームに移してあげますからね?」

 

ジョゼの言っている意味がますますわからなくなってきたのでルーシィは話題を変える。

 

「な…何で私たちを襲うのよ?」

 

「私たち? ああ、妖精の尻尾ですか…ついでですよ、ついで」

 

ジョゼはルーシィの疑問に意地の悪い笑みを浮かべながら答える。

 

「私たちの本当の目的はある人物を手に入れる事です。その人物がたまたま妖精の尻尾フェアリーテイルにいたので、ついでに潰してしまおう……とね」

 

「ある…人物?」

 

ジョゼはバカにするような笑みを浮かべた。

 

「あのハートフィリア家のお嬢さんとは思えない鈍さですねぇ。あなたのことに決まっているでしょう? ハートフィリア財閥令嬢……ルーシィ様」

 

それを聞いたルーシィは顔を赤くし、恥ずかしそうにする。

 

「な…なんでそれを知ってるの?」

 

「あなた、ギルド内では身分を隠していたそうですね? この国を代表する資産家の令嬢がなぜ安く危険な仕事するかは知りませんがね」

 

「誘拐ってこと?」

 

「いえいえ滅相も無い。貴女を連れてくるように依頼されたのは他ならぬ貴女の父上なのです」

 

それを聞いたルーシィら驚いた。

 

「そんな…ウソ…なんであの人が…」

 

「それはもちろん可愛い娘が家出をしたら捜すでしょう?」

 

「しない!! あの人はそんな事を気にする人じゃない!! 私は絶対に帰らないから!! あんな家には帰らない!!!」

 

ルーシィの頭の中では幼い頃のつらい記憶が呼び起こされる。ジョゼはそれを聞いて少し困った表情をした。

 

「おやおや困ったお嬢さんだ」

 

「今すぐ私を解放して!」

 

「それはできません」

 

ルーシィの申し出をきっぱりと却下する。するとルーシィはもじもじと恥ずかしそうにした。

 

「てか…トイレ行きたいんだけど……」

 

「これはまた古典的な手ですな」

 

「いや…まじで……うぅ……助けて〜」

 

「それでは、これをどうぞ」

 

ジョゼはルーシィが逃げる手段だと思い、ボロいバケツをよこした。

 

「えーっ!?」

 

「ほほほ……古典的ゆえに対処も多いのですよ」

 

「バケツかぁ…」

 

「って、するんかい!!?」

 

ジョゼは余裕の表情だったが、ルーシィが予想より斜め上の行動をしだしたので驚く。見張っておかないといけないが紳士として、それを許せなかった。

 

「な…なんてはしたないお嬢様なんでしょう!! そして私はジェントルメン!!」

 

顔を赤くしたジョゼはルーシィに背を向ける。ルーシィは下着を下ろすフリをしてニヤリと笑い、すかさずジョゼの背後に近づく。

 

「えいっ」

 

「ネパァーーーーー!!!!」

 

ルーシィは男の最大の弱点を思いっきり蹴り上げた。いくら聖十大魔導士の1人であろうと抗えない痛さだったのだろう。ジョゼは床に倒れこみ、ルーシィは出口に向かう。

 

「古典的な手もまだまだ捨てたもんじゃないわね。今度小説で使おうっと!」

 

「ぬぽぽぽぽぽ!!!」

 

「それじゃあ、お大事に♪」

 

ルーシィは苦しむジョゼにウィンクをし、勢いよく扉を開けるがそこに広がるのは道ではなく、地面が遠くに見える空中の光景だった。

 

「え?」

 

ルーシィがいたのは1番高く孤立する塔の中だったのだ。とても飛び降りれる高さではない。

 

「残念だったねぇ……ここは空の牢獄……逃げられるはずがない…」

 

ジョゼは腰を叩きながら立ち上がり、ルーシィに詰め寄ってくるがその姿は情け無いものだった。

 

「よくも…やってくれましたねぇ…」

 

「う……」

 

目の前にはジョゼ、後ろは断崖絶壁、もはや逃げられる道は無い。

 

「さあ……こっちへ来なさい…お仕置きですよ…ファントムの怖さを教えてやらねばなりませぬ」

 

ゆっくりと歩み寄ってくるジョゼ。ルーシィは焦ってしまうが何かを決心し、何と後ろに飛び降りたのだ。

 

「な!!?」

 

突然の凶行に驚くジョゼ。

 

(声が聞こえたんだ! 絶対……いる!!)

 

ルーシィは落下しながら、聞こえた声の人物の名前を叫んだ。

 

「ハルトーーー!!!!!」

 

「ルーシィーーー!!!!」

 

地面ギリギリのところで滑り込んできたハルトにルーシィは受け止められた。ルーシィがゆっくりと目を開けると息を切らせて心配そうな顔をしたハルトが見えた。

 

「ハァ……ハァ……大丈夫か、ルーシィ?」

 

「やっぱり……いると思った!」

 

ルーシィは今頃になって幽閉されていた恐怖とハルトに助けられた嬉しさにより、ハルトに抱きついた。

 

「おうっ!? る、ルーシィ? ど、どうした?」

 

ハルトが聞いてもルーシィはハルトに抱きついたまま離れない。

 

「あーあ、イチャついてるでごじゃる。場所を考えて欲しいでごじゃるな」

 

「ま、マタムネ! ち、ちが、これは、そういうことじゃなくてだな…

ルーシィもいい加減離れろって……」

 

後からやってきたマタムネに茶化されて慌てるハルト。

 

「それでこれからどうするでごじゃるか?マスターも倒れて、みんなもケガをしてるでごじゃる」

 

「!」

 

「とりあえず、ここから離れるぞ。 敵の本拠地だからな。ルーシィ行くぞ」

 

ハルトがルーシィを立たせようとするが、ルーシィは俯いた状態で立たない。ルーシィは今回の事件は自分が原因だと今更に実感と罪悪感湧いてきたのだ。すると、小さな声を出した。

 

「ごめんなさい……」

 

「何でルーシィが謝んだよ? 悪いのは全部ファントムだろ?」

 

「違うの……私が……全部悪いんだ……」

 

ルーシィの目には涙がたまっている。

 

「それでも…私……ギルドにいたいよ……妖精の尻尾が大好き…」

 

とうとうルーシィの目から涙がこぼれ出した。

 

「あ〜あ、今度は泣かしたでごじゃる」

 

「俺のせいかよ!?」

 

ハルトは頭をかいて困った表情をしたがルーシィに目を合わせ、優しくルーシィの頭に手を置き、撫でた。

 

「何があったかわからねぇけど、お前がいたいならいればいいじゃねぇか。それにお前が困ってるなら俺たち、仲間が助ける。それが俺たち妖精の尻尾だろ」

 

「ハルト……」

 

それを聞いたルーシィは少し元気になり、立ち上がった。

 

「よし、それじゃあ戻るぞ!」

 

「ぎょい!」

 

ハルトたちはルーシィを連れ、ギルドに戻った。

 

 

そのころルーシィがいた牢屋ではジョゼがルーシィを追おうとするが痛みが走り崩れ落ちてしまう。ジョゼはコケにされた怒りが沸き起こり、牢屋の壁や床がひび割れ、欠片が宙に浮くほど魔力が膨れ上がる。

 

「よくもやってくれたなぁ……小娘ぇ……」

 




メリークリスマス!

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