FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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悪魔の島 篇
第19話 S級魔導士


「自由だぁーーっ!!」

 

解放され、ギルドに返ってきたナツははしゃぎまくっていた。

周りのみんなが鬱陶しそうな顔をするぐらいだ。

 

「あー鬱陶しいなぁ。もう少し牢屋に入っておけばよかったんだよ」

 

グレイは隠しもせずに悪態をつくのがナツに聞こえた。

 

「あぁ?何だよグレイやんのか?」

 

「騒がしいって言ってんだよバカ炎」

 

睨み合う2人だが、ナツが突然思い出した。

 

「あっ、そういえば!おい!エルザ!!」

 

「おい…こっちはスルーか…」

 

置いてけぼりにされたグレイは何処か哀愁が漂っている。

 

「なんだ?」

 

「前の勝負の続きをするぞ!!」

 

「よせ、疲れているんだ」

 

流石のエルザも連日の働きに少し参っているようだ。

 

「その後はハルトな!」

 

「なんで俺まで戦うんだよ…」

 

カウンターでコーヒーを飲んでいたハルトに振り、困惑してしまう。

 

「よっしゃあぁぁぁっ!!行くぞぉっ!!」

 

「やれやれ仕方ないな…」

 

ナツが両手に火を灯し、エルザに突進する。

しかし、近づいたのと同時にエルザは換装したハンマーを振り上げナツの顎に一撃を与え、気絶させてしまった。

 

「さて、始めようか」

 

「終了ーー!!」

 

ハッピーの終了宣言が響き渡るとナツのあっさりした負けにみんなに大笑いが起こった。

 

「あっはっはっ! ダセェぞナツ!」

 

「瞬殺かよ!」

 

すると、カウンターにいたマカロフの様子が変なことに受付をしていたミラが気づいた。

 

「どうしたんですか、マスター?」

 

「いや…眠い」

 

ハルトもそれに気づき、視線を入り口に向ける。

 

「あいつか…」

 

「え?…あっ……」

 

「すぴーー」

 

「おっと」

 

ハルトが呟いたのをルーシィが聞き返そうとするが突然の眠気に襲われ、気絶するように眠ってしまう。

ハルトは眠ってしまったルーシィとマタムネを倒れる前に受け止め、ギルドの入り口を見る。

周りは全員気絶するように眠っており、その中をゆっくりと歩く男がいる。

顔を布で隠し見えないようにしている男、彼の名はミストガン、妖精の尻尾の最強の男候補に入っている1人である。

ミストガンはクエストボードの貼ってある依頼書を一枚とり、眠そうにしているマカロフに渡す。

 

「この仕事を受ける」

 

「こりゃっ! 眠りの魔法を解いていかんかっ!」

 

「じきに解ける」

 

「落っこちて怪我するやつもいるかもしんねぇから、次から気をつけろよ」

 

「……あぁ、次からは注意する」

 

ミストガンは入り口に向かって歩く。

 

「5…4…3…2…1……0」

 

ミストガンは数を数え終えると同時に姿が消え、眠っていたみんなが

目を覚ます。

 

「今の魔法…ミストガンか!?」

 

「相変わらずスゲェ眠りの魔法だな…」

 

ハルトに支えられていたルーシィも目を覚ます。

 

「ん〜なに…何があったの?」

 

「ミストガンよ…」

 

「ミストガン?」

 

「最強の候補の1人でごじゃる」

 

「そうなの!?」

 

「でも誰も顔を見たことがないの」

 

「いいや俺は見たことがあるぜ」

 

ミラが言った言葉に返すように言ったのは上の方から聞こえた。

その声はみんなに響くように聞こえたのか、一斉にそっちを向く。

ギルドの二階から見下ろすように見ている男、名前はラクサス、彼も妖精の尻尾の最強候補の1人だ。

 

「ミストガンはシャイなんだ。あんまり詮索をしてやんなよ」

 

「ラクサスー!! 俺と勝負しろー!!」

 

復活したナツがラクサスを見て嬉々として勝負を仕掛けるがカウンターに座っていたマカロフが拳を巨大化させ、ナツに振り下ろし、行かせないようにする。

 

「二階には行ってはならん。まだな…」

 

「ハハッ!止められてやんの!」

 

「ラクサスも挑発すんのはやめとけよ」

 

ハルトがラクサスにそう言うとハルトを睨む。

 

「はっ! お利口さんになったつもりかよ、暴れん坊… 似合わねえんだよ」

 

「あぁ? やんのか」

 

ハルトもラクサスを睨みつける。

一触即発の空気が流れ始めた。

隣にいるルーシィはびびって縮みあがってしまう。

 

「やめんか二人共!」

 

「フンッ」

 

「ちっ」

 

マカロフに言われ、二人は視線を外す。

 

「これだけは言っておくぜ。妖精の尻尾最強候補だがなんだが知らねぇが、最強の座は誰にも渡さねぇよ。エルザにも、ミストガンにも、カミナにも、あのオヤジにも…… もちろんハルト、お前にもな! 俺が最強だ!!」

 

ギルド全体に聞こえるように言い放ち、ラクサスは奥へと消えていった。

 

 

一悶着があったがみんな各々の時間を過ごしていた。

ルーシィはふと疑問に思ったことを聞いた。

 

「上には何があるんですか?」

 

「二階には一階に貼られてある依頼とは比べものにならないくらい難しい依頼書があるの。私たちはそれをS級クエストって呼んでいるの。でも、その依頼に行けるのはギルドの中でもマスターに認められた実力のある人しか行けない。認められた人たちはS級魔導士と呼ばれているわ。カミナにエルザ、ミストガンやラクサス、ハルトも入ってるわね」

 

「S級魔導士!? 」

 

ルーシィはミラに教えられ驚いてしまう。

そして横にいるハルトに目を向ける。

 

(あんなハルト見たことなかったな…)

 

思い返してみれば、ハルトはルーシィに対していっつも優しくてラクサスに向けた表情は見たことがなかった。

 

(ちょっと格好良かったかも…)

 

ハルトの見たことのない表情を見れて顔がにやけてしまう。

側から見ると不気味だ。

 

「おーいルーシィどうしたー」

 

「なっ、なんでもないわよ!? そっ、そういえばミラさん!気になってことがあるんですけど!!」

 

ルーシィはハルトにニヤケ顔を見られたのが恥ずかしく、誤魔化す様に話しかける。

 

「何かしら?」

 

「カミナっていう人は誰なんですか?時々名前は出るけど私見たことないんです」

 

「そういえばルーシィは会ったことがなかったわね。本名はカミナ・ハクシロって言う名前で妖精の尻尾のS級魔導士の 一人で最強候補の1人なの。今は依頼を掛け持ちしてて帰ってきていないのだけれど…。忙しいのはわかるけど偶には帰ってきてもいいんじゃないかしら? こっちだって心配してるし、せめて連絡ぐらい寄越してもいいのにカミナったら何も連絡を寄越さないのよ? 強いのは知ってるけどもし万が一のことがあったら……」

 

ミラは後半から目が座り、ブツブツと言い始めた。

若干怒りが滲み出ており、ルーシィは突然の変わり様に戸惑ってしまう。

 

「あ、あの…ミラさん?」

 

「あ〜ぁ、また始まっちまった」

 

「ハルト、ミラさんどうしちゃったの?」

 

ハルトは面倒くさそうな顔をしながら、ルーシィに言った。

 

「カミナとミラは恋人同士なんだけど、あいつが長期の仕事に行っているときは会えなくなって、カミナの話をするといっつもこんな風に不機嫌になっちまうんだ」

 

「へーそうなんだ……って恋人ぉぉぉぉぉ!!?」

 

まさかの事実に驚きの声を上げるルーシィ。

 

「なんだ知らなかったのか? うちでは結構有名なんだぜ?」

 

「初耳よ……」

 

ハルトとルーシィがそんなことを話している間もミラはずっとブツブツとカミナに対する不満を言っている。

 

「まずいな、このままじゃ一週間この状態だぞ」

 

「そんなに!?」

 

2人でなんとかしてミラの機嫌を戻したが、ルーシィは疲れてしまい、

心の中でこの話題をするときは気をつけようと決めた。

すると、ギルドに評議会のマークが入った制服を着た女性が入ってくる。

 

「評議会から参りました。クルシェ・エモンドです。依頼の件でハルト・アーウェングス様を迎えに参りました」

 

それを聞くとギルド全体がまたざわめき出し、ハルトは側に置いてあった鞄を持ち、席を立つ。

 

「じゃっ、行ってくるわ」

 

「すまんな毎回…」

 

「いいって気にすんなよ」

 

ハルトは済まなそうな顔をしているマカロフにそう言うと、出口に向う。

 

「ハルト、仕事なら私も…」

 

「ダメだ」

 

「えっ?」

 

ルーシィはいつも通り誘ってみるがハルトはすかさず却下する。

その表情は真剣そのものだ。

 

「今回の依頼は評議会が他のギルドで失敗した依頼を回してきたものだ。もしかしたら、S級クエスト以上かもしれない…。ルーシィを連れて行くのは危険すぎる」

 

それを言われたルーシィはハルトに追いつきたい一心でお願いした。

 

「そんな……私頑張るから!お願い!連れて行って!」

 

ルーシィがそう言うもハルトは首を横に振る。

 

「ルーシィ我儘を言っちゃいけないわ…」

 

「ミラさん…」

 

ミラにそう言われ、ルーシィはしぶしぶイスに戻った。

その顔は悲しそうだった。

 

「ありがとうな、ミラ」

 

「ううん、気をつけてね」

 

ハルトが今度こそ行こうとするが、止まり、鞄の中をあさると中からマタムネが出てきた。

 

「マタムネは今回も留守番だ」

 

「いやでごじゃる!一緒に行くでごじゃる!!」

 

「危険なのはお前が1番わかってるだろ?」

 

「それでも付いて行くでごじゃる!」

 

頑なに付いて行こうとするマタムネに困ったハルトはルーシィにマタムネを渡した。

 

「ルーシィ俺がクエストに行っている間、マタムネを頼まれてくれねぇか?」

 

「え、うん…わかった」

 

ハルトは今度こそ出発しようと、出口に向う。

ルーシィは立ち上がり、背中を向けているハルトに向かって言った。

 

「ハルト!……… 行ってらっしゃい」

 

ハルトは振り向き笑顔を浮かべて返事をした。

 

「行ってくる!」

 

 

ハルトが出発した後、ルーシィとマタムネは落ち込んでいた。

それを見かねたミラが話かける。

 

「元気を出してルーシィ、マタムネ」

 

声をかけられたルーシィはゆっくりと顔を上げる。

 

「ミラさん……私ってやっぱりハルトの迷惑になっているのかな」

 

「ルーシィ……そんなことはないわよ」

 

「えっ?」

 

「ハルトが受けた仕事ってね、とても危険なの。死人が出るくらいだわ。ハルトはそんな危険なところにルーシィとマタムネを連れて行きたくないのよ」

 

「そうなのかな…」

 

「……カミナもね。評議会から同じくらいの依頼を受けたことがあるの私もついて行こうとしたわ」

 

「ミラさんも?」

 

「だけど、頑なに連れて行ってくれなかった。私も落ち込んだわ。好きな人の役に立てない、隣に立てないってね。だけど、それは私を守るためだったの」

 

ミラがそう言うがルーシィは複雑な表情だった。

 

「頭ではわかってるけど、心じゃ納得いかないのよね?」

 

ルーシィは首を小さく縦に振る。

 

「ゆっくりでいいの……その人を思う気持ちさえあればいつか必ず、追いつけるわ」

 

ルーシィはその言葉に少し元気が出た。

時間はすっかり夜になり、ルーシィはマタムネを連れて自宅に向かっていた。

 

「ハルトは毎回、評議会の仕事には1人で行っているでごじゃる」

 

「?」

 

突然マタムネが独り言のように話始めた。

 

「せっしゃは毎回留守番させられているでごじゃる。それが悔しくて仕方ないでごじゃる。自分でパートナーと名乗ってはいるでごじゃるが、実際はお荷物になっているでごじゃる……」

 

「マタムネ……」

 

ルーシィの胸にマタムネの言葉が突き刺さる。

マタムネをフォローしようにも自分も思っていたことなので何も言えなかった。

 

「だからルーシィ殿…」

 

マタムネは振り向きルーシィを見る。

 

「一緒に強くなってハルトの後ろに立つのではなく、隣に立てるように頑張ろうでごじゃる!」

 

「マタムネ……うん!そうね!!頑張ろう!!」

 

「それじゃあ明日は一緒に仕事にいって実力をつけるでごじゃる!」

 

「よーしっ!やる気がみなぎってきたわ!!」

 

ルーシィは明日の準備をしようと勢い良く玄関を開けると、

 

「フンッフンッ!」

 

「あ、おかえりー」

 

「私の部屋ーーー!!」

 

「あっ、ナツ殿とハッピーでごじゃる」

 

何故かナツとハッピーが部屋にいて、筋トレをしていた。

ルーシィは慣れたかのようにナツに回し蹴りをぶつける。

 

「何してんのよ!!」

 

「いや、何って……筋トレだ」

 

平然と言うナツにこめかみがピクピクと痙攣してしまう。

 

「だからって、なんで私の家でするのよ!!もう早く帰ってよ。明日は早くから仕事に行く予定なんだから」

 

それを聞いてナツとハッピーは嬉しそうな顔をする。

マタムネはこの時のナツとハッピーの笑顔を見て、また良からぬことを考えてるなと思った。

 

「なら丁度いいや! この仕事行こうぜ!」

 

ナツは取り出した依頼書を見せた。

ルーシィの目に入ってきたのは依頼の内容ではなく、大きく『S』と書かれた文字だった。

 

「えっ…これって…」

 

「そうだ!S級クエストだ!!S級クエストを成功させりゃあじっちゃんだって、オレらのことS級って認めてくれるだろ?」

 

「オイラが取って来たんだよ!」

 

ルーシィは依頼書を手に取って見る。

ナツの言うように認められるかどうかは考えればわかることだが、その時のルーシィの心の中では再びハルトに置いていかれたくないという思いが強くなっており、正常な判断を鈍らせていた。

マタムネもどうやらその気らしく、ルーシィと目を合わせ、うなづく。

 

「いいわ。一緒に行く」

 

「せっしゃもでごじゃる!」

 

「よっしゃぁ!!なら明日の朝には出発だ!!」

 

こうしてナツたちは掟を破り、S級クエストに向かった。

 

 

時間は戻って、ハルトは評議会からの使者、クルシェ・エモンドと今回の依頼のことで話していた。

クルシェ・エモンドはまだルーシィより1つ2つ年上に見えるのに仕事ができる女性と思える印象を与える雰囲気を出している。

「今回の依頼はある村の調査と行方不明者の捜索を行って欲しいのです」

 

「調査?と捜索? 調査や捜索くらいなら俺みたいな武闘派じゃなくて、もっと適任な魔道士がいるだろう?」

 

ハルトはあくまで戦闘

 

「ええ、評議会も最初は自分たちのほうで謎の魔力の調査のため、調査員を派遣をしましたが連絡がつかなくなってしまいました。不審に思った評議会はギルドに調査と共に、消息を絶った調査員の捜索を依頼しましたが、その依頼を受けた魔導士も消息を絶ってしまいました。色々なギルドに頼みましたが、次々と消息を絶ってしまい、とうとう依頼を受けてくれるギルドがなくなってしまいました。この事態を危険に思った評議会はアーウェングス様に今回の依頼を頼んだわけです」

 

「なるほどな…何人が行方不明になってるんだ?」

 

「約100名以上です」

 

「そんなにか!」

 

ハルトは今回の依頼もややこしいものだなと思った。

すると、クルシェが少し顔を赤らめ、モジモジとしだし、控えめに声を出した。

 

「それで……あと……お願いがあるのですが……」

 

「なんだ? まだ他に依頼があるのか?」

 

「いえ…その……」

 

クルシェはどこからか色紙とペンを出した。

 

「あの…ファンなんです! サイン頂けませんか?」

 

「お、おう」

 

「あと、できればクルシェへ、と書いて頂ければ…」

 

ハルトはサインを書いたことがなかったのでとりあえず適当に書いとけと思い、適当に書き、渡した。

 

「ありがとうございます! あの…よろしければ握手も…」

 

「いいけど…」

 

ハルトは戸惑いながらも手を出すと、クルシェはすかさず握手する。

 

「キャー!! ありがとうございます!! 一生手を洗いません!!」

 

さっきまでの様子とはギャップが激しすぎてハルトは顔が引きつってしまう。

こうして別々のところでそれぞれの冒険が始まった。

 




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