FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第18話 ナツ VS エルザ

ここはルーシィの家、鉄の森の一件から一夜経ちルーシィはなかなか疲れが取れないのか、もうすぐ昼だと言うのに寝ぼけた格好をしていた。

ルーシィは寝ぼけた目で歯を磨きながら昨日のことを思い出す。

 

(結局昨日の一件ではハルトの役に立たなかったぁ。 それにエルザとの関係もよく分からなかったし…なんか自信なくしちゃうなぁ…)

 

俯きネガティブなことばかり考えてしまうルーシィだが、頭を振ってその考えを消す。

 

「ダメよルーシィ! 弱気になっちゃっ!!これからも何度もチャンスはあるんだし、ハルトに近づける! そしたらハルトも私のこと見てくれるかもしれないしっ!!」

 

ルーシィのいいところはこのポジティブに考えられるところだろう。

 

「そういえばマタムネがデートに誘ってみたらどうとか言ってたわね。 ど、どうしようかしら…」

 

独り言を言っては顔を赤くしたりと朝から大変だ。

すると玄関のドアを叩く音が聞こえた。

 

「誰かしら?」

 

ドアを開けるとそこにはハルトとマタムネがいた。

 

「よぉルーシィ」

 

「こんにちはでごじゃる」

 

「ハルトにマタムネ!」

 

ルーシィはついさっきまでハルトのことを考えていたので、いきなりのことで戸惑ってしまうが、そこは恋する乙女、ここはチャンスだと言わんばかりにハルトをデートに誘ってみる。

 

「あ、あのねハルト。今日もし予定がないなら…」

 

「あ〜その前にだな…」

 

「?」

 

「着替えてきたらどうだ?」

 

今のルーシィの状態は寝起きの姿でだらし無いものだ。

それにやっと気づいたルーシィは慌てて部屋に戻った。

 

「ご、ごめん! ちょっと待ってって!!」

 

(あ〜もうっ!!私なにやってんのよー!!)

 

ルーシィはさすがにこの時は泣きたくなった。

 

 

身支度を急いで整えたルーシィを連れてギルド前に向かっているハルトたちはなんでルーシィに会いにきたかを説明した。

 

「いやな、ルーシィもしかして忘れてるんじゃないかと思ってさ」

 

「忘れてる?」

 

「ナツ殿とエルザ殿の決闘でごじゃるよ」

 

ナツはエルザと今回の件に協力する代わりに決闘の約束をしたのだ。

それを聞いて僅かにがっかりしてしまうルーシィ。

 

「あはは…そうなんだ…純粋に私に会いに来た訳じゃないんだ」

 

「なんでガッカリしてるんだ?」

 

「ハルトは鈍感でごじゃるなぁ」

 

「なんだと?」

 

マタムネはハルトの肩から降り、ルーシィに近づく。

 

「大丈夫でごじゃるよルーシィ殿。ハルトは今日、決闘が終わった後、何も予定を入れてないでごじゃる。決闘が終わったらデートに誘ってみるでごじゃるよ」

 

「本当に!?」

 

「既にリサーチ済みでごじゃる」

 

今のマタムネは侍というより忍者だ。

ルーシィはそれを聞いて俄然やる気が溢れる。

 

「よーし!やってやるわよー!!」

 

「その意気でごじゃる!」

 

「なんで決闘出る訳でもないのにあそこまで気合いが入るんだ?」

 

 

そんなこんなでギルドの前にある大通りに来た。

既に大勢の人が集まっていた。

 

「お、来たか」

 

ハルトたちに気づいたのかグレイがあいさつをしてくる。

 

「もう始まったのか?」

 

「いいや、まだだ」

 

グレイが中央に目を向けるので、そっちに向けると真剣な表情のナツと、どこか楽しそうにしているエルザが対峙していた。

 

「ちょっ、ちょっと二人とも本当に戦うの!?」

 

「何だ?冗談だと思ったのか?」

 

その声に気づいたのかミラや他のメンバーも気づいた。

 

「あらルーシィ」

 

「本気も本気。本気でやらねば漢ではない!」

 

みんなそんなことを言うがルーシィはそうではなかった。

 

「だって…最強チームの二人が激突したら…」

 

「最強チーム? 何だそりゃ?」

 

グレイがとぼけるのでルーシィは大声を出す。

 

「あんたとナツとエルザ!それにハルトだって!妖精の尻尾のトップ4でしょ!?」

 

「はぁ? くだんねぇ!だれがそんなこと言ったんだよ!」

 

それを言った瞬間ミラが手で顔を覆って泣いた。

 

「あっ…ミラちゃんだったんだ…」

 

「あー泣かしたー」

 

「最低でごじゃるー」

 

「カミナにバレたら半殺しだな」

 

「ぜってぇカミナには言うなよ!」

 

グレイは焦ってハルトの肩を掴み、揺さぶる。

そんなにカミナという者に知られるのが嫌なんだろうか。

 

「確かにナツやグレイの漢気は認めるが……〝最強〟と言われると黙っておけねえな。妖精の尻尾にはまだまだ強者つわものが大勢いるんだ。オレとか」

 

エルフマンがそう言うのに対して、ハルトが付け加える。

 

「最強の女はエルザで間違えないと思うけどな」

 

「最強の男となったら、ミストガンやラクサス、それにハルトとカミナもいるしな、それにあの男も外すわけにはいかねぇな」

 

「何にしても面白い戦いになりそうだけどな」

 

「そうか?オレ的にはエルザの圧勝なんだけどな」

 

ハルトの言葉にグレイはぶっけらぼうに返す。

そのころナツとエルザはお互いの思っていることを話した。

 

「ふふふ…お互いこうやって力をぶつけ合うのは何年ぶりだろうな」

 

「あの頃はガキだった! 今は違うぞ!今日こそ勝つ!!」

 

「私も本気でいかせてもらうぞ。久しぶりに自分の力を試したい。すべてをぶつけて来い!」

 

そう言うとエルザは鎧を換装をし、赤と黒が基調の鎧になった。

 

「あれは『炎帝の鎧』じゃねぇか!!」

 

「あれじゃナツの炎は半減されちまう!」

 

「エルザのやつ本気だな…」

 

周りが口々にそんなことを言う。

同じギルドの仲間だろうとナツとエルザは本気なのだ。

 

「炎帝の鎧かぁ……そうこなくっちゃなぁっ!!これで心置きなく全力が出せるぞ!!」

 

ナツも両手に炎を灯し、戦闘準備が整う。そして互いに睨み合い……

 

「始めいっ!!」

 

マカロフの合図で両者はどうじに駆け出した。

エルザが鋭い剣撃を放つが、ナツはギリギリかわし、足元を狙うが、

それをエルザは跳んで躱す。

距離ができたのでナツは詰め寄って攻撃するが当たらず、それにエルザも応戦する。

エルザの攻撃が勢いを増し、ナツが避け続けているとさっきナツがやったみたいに足払いをしてきた。

それに引っかかってしまったナツは転んでしまい、そこにエルザの攻撃が迫ってくるが、

 

「火竜の咆哮!!」

 

逆さまの状態からブレスを放つ。

とっさのことでもエルザはそのブレスを防いだ。

しかし、ナツは自分が放ったブレス紛れ込み、晴れた瞬間にはもうエルザの目の前にいた。

 

「っ!!」

 

さすがのエルザもこれに驚き、防御が遅れてしまう。

 

「火竜の鉄拳!!」

 

「ぐっ!!」

 

ナツの攻撃を無理矢理防いだが、少しはダメージをくらってしまった。

また距離ができてしまい、お互い睨み合うがその表情はどこか楽しそうだ。

 

「結構いい勝負してんじゃねぇか」

 

「けっ!どこが…」

 

「ナツー!ガンパレー!!

 

ハルトたちがそれぞれ感想を言ったり、応援をして、さらに場を盛り上げる。

再びナツとエルザがぶつかろうとしたときに…

 

パアァン!!

 

「そこまでだ。全員その場をうごくな。私は評議会の使者である」

 

現れた評議会の使者と名乗る二足歩行のカエルが現れたことによりギルド全員がざわつく。

 

「評議会だと!?」

 

「いったいなんなようなんだ?」

 

「みんなあのビジュアルに対してはノーコメントなのね…」

 

周りは評議会がわざわざこちらに出向いたことに驚いており、カエルが二足歩行していることにルーシィ以外誰も気にしていない。

 

「先日の鉄の森アイゼンヴァルトのテロ事件において、器物損壊罪、他11件の罪の容疑で……エルザ・スカーレット並びにハルト・アーウェングスを逮捕する」

 

「「なにぃぃぃぃぃ!!!」」

 

ナツとルーシィの叫びが響き渡った。

 

 

ここは評議会の本部があるERA。

ハルトとエルザは手錠をされて評議会のカエルに裁判所まで連行されていた。

その途中である男が壁に寄りかかっていた。

青髪に顔に刺青がある美青年だ。

 

「よぉ、エルザ、ハルト」

 

「貴様は…ジェラール……!」

 

「だから、違うって言っているだろう?ジェラールは生き別れの兄で、俺はジークレインだって」

 

「貴様が今回の件で私たちを呼んだのか?」

 

「あぁ、まぁな。何人かのじーさんたちは妖精の尻尾を潰そうとしたんだぜ?俺の助けがなければ今ごろ潰れていただろうな。感謝して欲しいくらいだぜ」

 

「貴様っ……!」

 

ジークレインの余りにも恩着せがましい発言にエルザは怒り、詰め寄ろうとするがハルトが止める。

 

 

「やめとけ…思念体だ」

 

「くっ…」

 

「その通りだ。向こうにいるじーさんたちも全員思念体さ」

 

そのままジークレインはエルザに近づいてきた。

 

「それと、向こうじゃ俺とは初対面ってことにしとけよ?

そうしたほうがお互い都合がいいだろ?」

 

「っ!!」

 

ジークレインは耳元でささやき、エルザはジークレインを睨む。

ハルトには何を言ったのか聞こえなかった。

 

「それじゃあなエルザ、ハルト。

向こうで会おう」

 

ジークレインの姿は霧のようにに消えた。

すると、ジークレインの姿を見て即座に膝まついたカエルが恐る恐るハルトたちに質問した。

 

「お…お前たち、すごい方と知り合いなんだな…」

 

「闇だ」

 

エルザがその質問に簡潔に答え、ジークレインが消えて言ったほうをじっと睨んでいた。

二人はそのあと連れられ、裁判所の大きな扉の前で待たされていた。

そこでふとエルザが質問してきた。

 

「聞かないのか? 私とジークレインの関係を」

 

「聞いて欲しいのか?」

 

「……いや」

 

「俺は待つよ。お前が話そうと思う時まで。その時はお前がスッキリするまで聞いてやる」

 

「……そうか」

 

エルザはさっきまで険しい顔をしていたが、ハルトにそう言われ穏やかな顔をした。

 

「被告人、エルザ・スカーレット並びにハルト・アーウェングス入れ」

 

中に入ると被告人が立つ証言台が2つ用意されており、そこに入るハルトとエルザ。

その前には評議会の評議員が座る席が用意されており、二人を見下ろすようになっている。

 

「被告人エルザ・スカーレット並びにハルト・アーウェングスの両名は先日の鉄の森アイゼンヴァルトによるテロ事件において、オシバナ駅損壊、リシュカ峡谷鉄橋破壊、クローバーの建物の半壊…以上の破壊行為及び市民への不用意な注意喚起、鉄道の交通停止に荷担した容疑がかかっている。」

 

「「……」」

 

議長が口を開き、そう告げるのを二人は特に何も言わず聞く。

すると、背後にあった壁が爆発を起こし破壊された。

煙が晴れるとそこには二人の人物がいた。

 

「オレがハルトだ!何の罪だか言ってみやがれ!!」

 

「わ…私がエルザよっ! ほら!髪だって赤いしっ!!」

 

口から火を吹きながらハルトと名乗る男とやたら髪が赤いことを主張してくるエルザと名乗る女が現れたことによりハルトやエルザはもちろん、評議員も驚き固まった。

 

「そこの2人もまとめて牢に連れていけ……」

 

「申し訳ございません…」

 

かろうじて議長の口から出た言葉にエルザは恥ずかしそうに顔をうつむかせ、了承した。

 

 

ハルトとエルザは二人に扮したナツとルーシィと共に、牢に入れられてしまった。

 

「全くなんで来たんだお前たち…」

 

エルザが呆れてながら聞くとルーシィは申し訳なさそうにするが、ナツは怒っていた。

 

「ごめんなさい…」

 

「別にハルト達は悪いことしてねぇーじゃねぇか!それなのに連れて行かれるとか納得いかねぇ!!」

 

ナツがそう言うとハルトは仕方がないといったため息を吐き、答えた。

 

「今回の逮捕は形式だけのものだったんだ」

 

「どういうことだよ?」

 

「本来ギルドを管理するのは評議会の役目だ。だけど、今回は俺たちが解決してしまっただろう?それじゃあ面子が立たないから俺たちを逮捕して保とうとしたんだ。わかったか?」

 

「お…おう」

 

ナツは戸惑いながら頷くが、絶対わかってない。

 

「本来なら今日中に帰れたんだ」

 

「なにっ!?」

 

「本当にごめんなさい……」

 

さらにエルザが付け足した言葉に驚愕するナツとさらに申し訳なさそうにするルーシィ。

 

「そ、そうだったのか…すまねぇ…」

 

流石のナツも申し訳なく感じたのか、しおらしく謝った。

それを見てハルトとエルザはクスッと笑った。

 

「しかし、私は助けに来てくれて嬉しかったぞ」

 

「いたっ!」

 

エルザはナツを胸に抱き寄せるが痛そうだ。

ハルトは落ち込んでるルーシィに話す。

 

「ルーシィもありがとうな。心配して来てくれたんだろ?」

 

「ハルト……」

 

そう言われルーシィは少し嬉しい表情を見せた。

それからどんどんと時間が過ぎ、夜になるとナツはいびきをかきながら寝てしまった。

すると、エルザが突然話題を振ってきた。

 

「そういえばハルトとルーシィは随分と仲がいいが、どうなんだ?」

 

「えっ!?」

 

「んー そうか?」

 

「あぁ、ハルトがここまで女性と親しくしているのを見るのは初めてだ」

 

「そういう風に見えるのか?」

 

ここでルーシィは思いきってみた。

 

「あ、あの!ハルトとエルザこそどんな関係なの?」

 

「私たちか?」

 

「どうって言われてもなぁ」

 

ルーシィはエルザが現れてからずっと気になっていることを聞いてみた。

ルーシィのよく当たる感(自称)が二人の関係は普通じゃないと告げているのだ。

 

「俺からしてみれば大切な仲間だしな」

 

「私もそうだ」

 

「えっ!恋人とかじゃなくて!?」

 

余りにも普通の答えが返ってきて思わず、そんなことを言ってしまうルーシィだが、

 

「なっ! そんなわけ無いだろう!!」

 

エルザは恋人と聞いて顔を赤くして言い返すが、ルーシィにとってはその反応が怪しく思えてしまう。

 

「エルザはこの手の話が苦手だからな。すぐに顔に出ちまう。ルーシィが考えているような関係じゃねぇよ、俺たちは。エルザがギルドに入ってきた最初の頃は俺が指導役としてよく一諸にいたんだ。それで、今でもよく一緒に仕事に行ったりするんだよ。」

 

「な、なんだ、そんなんだぁ…」

 

ハルトにそう言われ、力が抜けるルーシィ。

どうやら、考え過ぎてたようだ。

 

「ゴホンッ、そういえばルーシィとは余り話せていなかったな。これもいい機会だ。お互いよく知り合おう」

 

「うん!」

 

その晩は牢屋から場違いな楽しそうな声が聞こえ続けた。

 

 

また評議会に呼び出され評議員が並ぶ目の前に立たされる。

しかし、今回はハルト1人だ。

 

「ハルト・アーウェングス。貴殿に依頼を頼みたい」

 

「どうせ断ってもギルドの問題だとかで脅してくるんだろ?」

 

ハルトかそう皮肉を言うと評議員の何人かは顔をしかめる。

 

「詳しいことは後日ギルドに迎えに行かせる者から聞くといい。それでは解散だ」

 

 

ハルトは本部の長い廊下を歩いていると声を掛けられる。

 

「ハルト君」

 

「ナミーシャさん」

 

初老の女性で優しい雰囲気を出している彼女はナミーシャ、評議員の1人だ。

 

「毎回ごめんなさいね。あなた達ばかりに難しい依頼を任せてしまって…」

 

「いいんですよ。いつものことです。それなアンタには恩がある…」

 

そう言うハルトの香りは何処か寂しそうだった。

 

「ねぇ、ハルト君。 あの事件はあなたのせいじゃ…」

 

「それじゃ、仲間を外でまたせているので俺はこれで。また会いましょう」

 

ハルトはナミーシャの話を無理矢理遮るようにそう告げ出口に向かった。

ナミーシャはその姿を悲しそうに見つめる。

 

「やっぱり、まだ引きずってるのね…」

 

 




感想待ってまーす。

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