FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
最近他の作品を書いたり、創作意欲が湧かなかったりと投稿してませんでしたがまた書いていこうと思います!
よろしくお願いします!
カイル・ルヴィキタスはかつてボスコで名の知れた盗賊だった。
オーガが取り仕切るラトゥータでは、オーガの脅威を良く知っており、活動は一切してこなかったが他の街、フィオーレではその悪名を広めていた。
そしてある時、彼はフィオーレの南に存在するある孤島に辿り着き、そこで仲間たちと暴虐の限りを尽くし、金品を奪おうとしたが、それは失敗に終わった。
そこの先住民たちは土地を味方に付け、屈強な盗賊をカイルを残して殺害した。
カイルは腕を後ろで縛られ、先住民の族長の前に跪かされる。
「ハッ!悪名高いカイル様もここまでかよ」
カイルは自分が死ぬとわかっていても笑みを崩さない。
「いいぜ、殺せよ?どうせロクでもねぇ人生だ。最後くらい死ぬって感覚を味わってやるよ」
カイルという男は常に貪欲だった。
欲しいものは必ず手に入れ、知りたいもの全て知り尽くした。
故にカイルまだ経験したことのない『死』を知りたかった。
しかし、族長はそんなカイルを見て殺すのを止め、カタコトな言葉で話しかける。
「オマエニハ、死ハ褒美ノヨウダ。ダカラオマエニハ死ヨリ辛イ仕打チヲヤロウ」
そう言って合図を出すと側に控えていた従者が奥に消え、台座に置かれている金貨を持ってきた。
「何だそりゃ……?」
「コレハ神器『アステカの呪貨』、オマエニ苦痛ヲ与エル」
突然、カイル後ろに控えていた男達が族長に胸をさらけ出すようにカイルを持ち上げる。
「おい!何しやがる!?」
「〜〜〜〜〜〜」
族長がブツブツと何か呟き、カイルの胸の中心に金貨を押し当てるとズブズブと中にめり込んでいく。
「がっ……!あ…ぁっ……!?」
激しい痛みと異物が体の中に入り込んでくる苦しみにカイルは叫び声すら上げられない。
やがて族長が血が付着した手を離すと、金貨がめり込んだ跡は無くなっていた。
「お、俺に何をした……!」
族長は何も答えず、ただ邪悪な笑みを浮かべるだけだった。
その後、カイルは簀巻きにされたまま荒れ狂う海に放り投げられた。
波に揉みくちゃにされ死ぬかと思ったが気付けば、どこかの港町に漂着していた。
そこからまた自分がしたいようにしようと略奪を繰り返していたが、あることに気づいた。
それは何をしても満たされないことだった。
以前は欲しいものが手に入れば満足感があったが、それは消え去り、美味い料理を食っても味はしない。
酒を飲んでも喉が潤される事は無く、女を抱いて温もりを感じない。
その時、カイルはあの先住民達にされたことを思い出した。
『死より辛い仕打ち』を与える。
確かにカイルにとって欲が満たされないのは何よりも辛いことだった。
ありとあらゆる方法でこの呪いを解こおうとしたが、全てが失敗に終わった。
やがて百数年が経ち、いよいよ追い込まれたカイルは自害しようと銃口を額に突き付け、引き金を引いた。
凄まじい痛みが一瞬襲い、すぐに意識が暗くなる。
やがて意識が途絶え、死んだが直ぐに目の前が明るくなった。
そしてカイルは気づいてしまった。
自分は死ぬことも許されないのだと。
○
倒れるナツに近づき、カイルは拳を握りってナツ目掛けて振り下ろす。
「チィッ!」
拳がぶつかる寸前にガジルがナツを救い出す。
殴られた地面は抉れて、地面が捲り上がる。
「おい!サラマンダー!しっかりしやがれ!殺されるぞ!!」
「わかって……るっての!」
長い時間、全力で戦い続けたナツとガジルの魔力は残り少ない。
しかし、カイルはどれだけ傷つけても元に戻ってしまう。
このままではジリ貧だとわかっていた。
「チッ!本当は残りの魔力が少ねぇから使いたくなかったが仕方ねぇ。おいサラマンダー、少し間でいいアイツを俺に近づけさせるな」
「あぁ?何する気なんだよ?」
「アイツを倒すのは不可能だ。なら動けなくするしかねぇ。まだいけ好かない野郎をぶっ飛ばさなきゃいけねぇんだろうが」
「………お前なんかキャラ変わったな」
「なんだとっ!?」
ガジルの仲間を思いやる言動にナツはラクサスの件と同じで呆然として、失礼なことを言い、ガジルを怒らせた。
ガジルはナツを引っ張り起こしてカイルの方に向ける。
「奴を封じる魔法を出すまで時間がかかる。それまで奴の動きを止めろ!!」
「オオオォォォッ!!!」
ナツは雄叫びを上げて、カイルに炎の拳で殴りかかる。
カイルはそれを避けるようともせずに甘んじて受け止めた。
「おいおい……火がさっきより弱くなってるぞ!!」
顔を焼かれながらもカイルは気にした様子もなく、反撃する。
常人ではあり得ない力の拳をナツはギリギリで躱すが、カイルはすかさず腹に蹴りを入れる。
「うごっ!?」
嫌な音が響き、ナツは一端距離を取り、頬を膨らませブレスを放つ。
「火竜の咆哮!!!」
灼熱の炎がカイルを襲い、体をのけぞらせることができたが、すぐに態勢を戻してナツに一歩一歩近づいてくる。
「いいねぇ!!良い熱さだ!!そのまま俺を焼き尽くしてくれよ!!!」
ナツは残り少ない魔力を根こそぎ集めて、更に強いブレスを放つ。
しかし、カイルはそれに反してナツに近づく。
(くそぅっ……!魔力が足りねぇ!!)
「サラマンダー!!離れろ!!」
ガジルの合図でナツはカイルから離れると、ガジルは地面に拳を突き立て、魔力を解放する。
「滅竜奥義!
地面から鉄柱がカイルに向かって挟むように伸び、カイルの動きを封じる。
「サラマンダー!!」
「火竜の……咆哮ォッ!!」
身動きが取れなくなったカイルにナツはありたっけの魔力で咆哮を放つ。
炎に包まれるたカイルは動かず、ただ炎に焼かれる。
「ハァ、ハァ……」
「………」
ナツは呼吸を荒くし、ガジルは黙って炎を見つめる。
やがて炎が消え去り、火傷だらけになったカイルが現れる。
鉄柱に磔にされ、ピクリとも動かない。
しかし、カイルの火傷はみるみると消えて、やがて顔をゆっくりとあげて首をゆっくりと回す。
「はぁー……飽きたな」
「「はぁ?」」
カイルの言葉に2人は訳がわからないといった表情になる。
「お前らじゃ俺を殺せないのわかったし、この状態じゃ動けないから戦いになりゃしねぇ。だから飽きた」
「「………」」
カイルの物言いに呆然としてしまう2人にカイルは気づく。
「どうした?さっさと行けよ」
「……行かせていいのか?」
ガジルが質問するとカイルは鼻で笑った。
「俺がお前らを足止めしてたのは俺を殺せるかも、って思ったからだ。それができないなら止めておく理由なんてない。それにお前らの実力で儀式を止められると思わねーし」
「何だと!?絶対に止めてやる!!」
カイルの言葉に激昂したナツは疲れを忘れ、奥の道へと進んでいった。
ガジルは何故か余裕を崩さないカイルに疑問の目を向けながら、ナツを追った。
「はぁーあ……結局俺の頼みの綱はアスラだけか」
カイルはつまらなさそうに呟いた。
○
エルザはサツキと戦っていたが、それはもう終わった。
エルザの剣は全て折られそこら中に散らばり、鎧も破壊されて破片が、その体には多くの傷がついており、地面に伏していた。
対してサツキは無傷でエルザを見下ろしている。
「ぐっ……!」
立ち上がろうとするが力が入らず、立ち上がれない。
未だ足掻こうとするエルザを見て、悲しそうに目を細めるサツキは鞘に収まった刀を持ち上げ、エルザの頭に向ける。
「………ごめんなさい」
サツキは一言、そう呟き刀を振り下ろした。