FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
妖精の尻尾一同はフラスタにたどり着き、アスラが封印されている古代遺跡に向かっていた。
ハルトとカミナは実際に来たことがあり、ナツたちはハルトの記憶で過去のフラスタに来たことはあるがその様子は一変していた。
「これは……」
「ヒデェ……」
家屋は全てが朽ち果て、戦争の跡が濃く残っていた。
空はアスラの強大な魔力のせいで荒れており、雷鳴が轟いていた。
ハルトはこの先にいるであろうエリオたち、そしてルーシィを見据えて足を進める。
「行くぞ」
○
その頃、ルーシィを捕らえている独房では最後の晩餐ということで豪勢な料理を用意されたが監視のためかエリオがずっと同じ部屋にいるため落ち着かなかった。
「………」
「………(き、気まずいなぁ…)」
敵であることは間違いないがルーシィにはどうしてもエリオが悪い奴には見えなくて、必死に何かに縋ろうとしているようにしか見えなかった。
すると、そこに組織の構成員であろう者が入ってきてエリオに耳打ちする。
「………わかった。ミーシャに迎撃の準備をさせろ」
部下にそれだけを告げるとエリオは立ち上がる。
「どうしたの?」
「予定が早まった。これから儀式の準備をする」
「そうなんだ」
「………怖くないのか?これから死ぬって言うのに」
態度が変わらないルーシィにエリオは不思議に思うが、ルーシィは真っ直ぐエリオを見つめて自信を込めて答えた。
「ハルトが助けてくれるもん。怖くなんてないよ」
「…………そうか」
ルーシィのその言葉にエリオはどこか悲しそうな表情で答えた。
○
遺跡が見える丘にたどり着いたハルトたちに信じられない光景が目に飛び込んできた。
遺跡の前には何千もの土くれの兵士たちが隊列を組んで待ち構えていた。
「なんだ、あの数……?」
「恐らくミーシャという少女が作ったのだろう。恐ろしい才能だな」
一体を作るのにそこまで魔力はいらないだろうが数の規模が違いすぎる。
これだけでもミーシャの実力が伺える。
「あの数を相手するとなると骨が折れるな」
カミナが刀を抜きながら、そう呟く。
「仲間のためだ。進むしかあるまい」
エルザも剣を構えてそう答える。
「シャァッ!燃えてきたぞ!」
「アイサー!」
ナツは両拳に炎を灯し、気合いを込める。
「次は負けねぇぞ」
(ハッ!グレイ様が相手を睨んでいる!?まさかあの少女が恋敵!?)
グレイは先の戦いで負けた雪辱を晴らすためにこの軍勢を作り上げたミーシャを見据え、ジュビアは案の定勘違いをしていた。
「ハルトさん。大丈夫ですか?」
「怪我は一応治りましたけど、体力までは治っていません………ごめんなさい。私がもっと魔法を上手だったら完璧に治せるのに……」
ギリギリまで傷を癒していたハルトをレインは心配し、ウェンディは申し訳なさそうに謝る。
そのウェンディの頭をハルトは優しく撫でる。
「ありがとよ。これでルーシィを助けに行ける。だから気にすんな」
今だに痛む傷に耐えながら、笑顔で礼を言うハルトにウェンディは笑顔になる。
ハルトは先頭に立ち、待ち構える軍勢、そしてその先にいるであろうルーシィを見据える。
「ハルト、大丈夫でごじゃるか?」
「おう、傷も癒えたしもう大丈夫だ」
「そっちじゃなくて気持ちの問題でごじゃる。エリオと戦えるでごじゃるか?」
マタムネは心配そうにハルトを見る。
仲間を倒さなければいけない、しかも相手はエリオだ。
償いと言って、自分の命を投げ出すかもしれないとマタムネは思っていた。
ハルトはマタムネの頭を撫でながら、答えた。
「あぁ、戦える。ルーシィを助けて、またみんなで冒険に行こう」
ハルトの覚悟を決めた顔を見て、マタムネは一抹の不安がよぎった。
「もちろんみんなの中にはハルトもいるでごじゃる!」
ハルトを無理にでも繋げておかないとどこかに言ってしまうような雰囲気を感じ取ったマタムネはそう叫ぶ。
「そうだな……」
その言葉に力無く答えるハルトにマタムネの不安は消えなかった。
ハルトは囚われているルーシィを見据えて、静かに呟く。
「行こう」
○
妖精の尻尾は崖を滑り降りて、土の兵士達に向かっていく。
数が圧倒的に差があるがそんなこと仲間のために構っていられない。
両者がぶつかり、激しい攻防が始まる。
最初は仲間のためにと妖精の尻尾は優勢だったが、何十倍も数がいる土の兵士たちが徐々に戦いで優勢になってきていた。
ハルトも仲間を助けながら戦うが数に圧倒されそうになっている。
一瞬仲間の方に気を取られ隙ができ兵士たちに襲われそうになった瞬間、妖精の尻尾達の目の前で土の兵士達が押しつぶされた。
「この魔法‥…まさか!?」
ハルトは強い魔法の匂いがする上空を向くとそこには手を兵士たちに向けるラナの姿があった。
「ラナ!?何でお前がここに?」
「偶々ここの近くを通って、どうせならエミリアの墓参りでもしようと思っただけよ。そうしたら目の前に邪魔な泥人形が広がっているじゃない。墓参りの前に掃除してあげるわ!!」
ラナが腕を横に振るうと兵士たちは魔法の直方体に押しつぶされていった。
しかし、粉々になった土は再び集まり始め、兵士を形作っていく。
「キリがないわね」
ラナは何度潰しても復活する兵士達にウンザリしながら、手をハルト達の進行方向に向けた。
すると遺跡までの道を作り出した。
「先に行ってなさい。私もエリオに文句を言ってやりたいし」
「……助かる」
ハルトを始め、妖精の尻尾達はできた道を通って行く。
土の兵士達はハルト達を攻撃しようとするが全てラナに阻止され、破壊される。
「機械兵より骨が無いわね。行くわよ」
ラナは全身に魔力を滾らせ、土の軍団に向かって行った。
○
土の軍団を抜けて遺跡に辿り着き、深部を目指そうとするがハルトは突然足を止め、飛んできた魔力弾を弾け飛ばした。
「誰だ!?いるのはわかっているぞ!!」
ハルトが叫ぶと遺跡の陰から次々とフェアニヒターの黒ローブを着た人間が現れた。
「我々はアスラに救済を求める者達なり!!儀式の邪魔はさせんぞ!!やれ!!!」
その合図と共に信者達は杖で魔法を放ち、魔水晶爆弾を投げてハルト達の進行を邪魔する。
「カミナ!」
「白雷」
ハルトがカミナの名前を呼ぶとカミナは爆発の中に飛び出し、今まさに投げようとした爆弾を白雷で撃ち抜いた。
撃ち抜かれた爆弾は誤爆し、信者達を巻き込む。
隙ができ、すかさずハルトとカミナは信者達に突撃し、蹴散らしていく。
他の皆も2人に続き、攻撃を再開した。
「クソッ!コイツら一体何人いるんだ!?キリがないぞ!!」
「今は道を切り開くために戦うしかあるまい!気張れ!!」
グレイがウンザリしたように叫んだ。
いくら倒しても信者の数が減ったように見えないからだ。
しかも、1人1人の質が妖精の尻尾より低くても際限なく現れ、徐々にハルト達は押され始めた。
妖精の尻尾は約百人強、それに対してフェアニヒターは約五千人の大規模なものだ。
幽鬼の支配者との戦いの時とは比べものにならない数の差だ。
「皆!!下がっておれェッ!!!」
怒号と共に信者達に向かって凄まじい衝撃波が襲った。
マカロフが巨大化し、信者の数を大きく減らした。
「ここはワシに任せて先に進めィッ!!」
マカロフの言葉に全員が従おうとしたがマカロフの背後から巨大な土の兵士が襲いかかってきた。
「ぬおっ!?」
「じいさん!!」
マカロフは押し返そうとするがさらに何体もの巨兵が覆い被さり、その巨体に力負けしてしまう。
「もう追いついたのか!?」
エルザはラナが土軍団の対処に手が回っておらず、追いつかれてしまったと考えた。
「ぐうぅ……!この土くれめ……!!」
「今助けに行くぞ!」
ハルト達が率先して助けに行こうとした時、マカロフと掴み合いになっていた土の巨兵が縦に両断された。
「何だ?」
突然のことに全員が呆然としていると次にマカロフに覆い被さっていた土の巨兵に黒い鞭なようなものが巻き付き、巻き付いたところを切断してバラバラにしていった。
体が自由になったマカロフが土の巨兵を薙ぎ倒し、踏み潰すと奥から現れる人影に気づき、目を凝らす。
「やあ、ハルト。助けに来たよ」
「クスコ!!」
現れたのは黒の戦闘服を着たクスコ・ガーデンだった。
「マカロフ・ドレアーさん。信者達と背後からの追撃は僕も手伝います。一緒に食い止めましょう」
「助かるわい」
クスコが朗らかな笑顔で言う。
「クスコも何で……」
「エリオに思っているのは君だけじゃないんだ。それに僕たちは仲間だろ?」
クスコのその言葉にハルトは頼もしく思う。
すると散らされた信者達がまた数を集めハルト達に襲いかかってきた。
「僕が道を切り開こう。『ジェノサイド・リーパー』」
クスコは手から魔力を滾らせ、鎌の形にすると素早く二回振るい、黒い波状の魔力が信者達を襲い、気絶させた。
「さぁ!今だよ!」
「行くぞ!!」
ハルト達はとうとう遺跡への道にたどり着いた。