FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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お久しぶりです。
他の作品やら、私生活が忙しく放ったらかしにしていました。
これからもちょいちょいやっていきます。


第132話 覇竜の頼れる仲間

また寝かされてしまったルーシィは目を覚まし、どうにか逃げ出せないかと小窓から手を伸ばしたりしているが一向に出られる気配がなかった。

 

「うっーー……!あともうちょっとで……!」

 

とにかく何もしていないのは気持ちが負けてしまうと思い、椅子に立って小窓の鉄格子から見える棒を取ろうとするが僅かに届かない。

 

「何をしているんだ?」

 

「きゃっ!?」

 

当然背後から声をかけられたルーシィは驚き、バランスを崩して倒れてしまう。

地面にぶつかりそうになった瞬間、声をかけたエリオがルーシィを受け止めた。

 

「あ、ありがとう……」

 

「………」

 

礼を言われたエリオは気まずそうにしながら、ルーシィから離れ部屋を出ようとする。

 

「アタシとエミリアさんを被せて見てる?」

 

「……何故そう思った?」

 

顔だけをルーシィに向けて睨むエリオにルーシィは言いにくそうにするが口を開く。

 

「ハルトと同じ目をしてたから……」

 

「………」

 

ハルトの名前が出た瞬間、エリオは目つきをより厳しくさせる。

 

「ハルトはエミリアさんを大切に思ってた」

 

「俺もだ」

 

過去でもエリオはエミリアのことを気にかけていた。

 

「2人とも良く似てるよ」

 

「俺とハルトがか?」

 

「2人ともエミリアさんを大切に思っている。そしてエミリアさんのことで囚われている」

 

ハルトはエミリアを手にかけ、人と深く関わるのが怖くなっていた。

エリオはエミリアを蘇らせるために犯罪に手を出している。

 

「何が貴方をそこまでさせるの?」

 

ルーシィはエリオの目を見て訴えるが、エリオは険しい目のまま黙って背を向ける。

 

「食事を取れ」

 

「あっ……」

 

エリオとすれ違いで部下が食事が持ってきた。

ルーシィはエリオに言葉を続けようとするがその前にエリオは出て行ってしまった。

エリオは歩きながら、ルーシィの言葉が頭の中で思い返されていた。

 

『何が貴方をそこまでさせるの?』

 

「何もなかったからここまでしているんだ……」

 

エリオは立ち止まり、エミリアが死んだ時のことを思い出した。

ハルトの腕の中で死んだように眠ったエミリア。

唯一の家族だったのに何もできず、その人生を終わらせてしまった。

エリオの胸の中にあるのはただ1人の家族に何もできなかった後悔だった。

それ故にエリオはエミリアを蘇らせそうとしているのだ。

例え何を敵に回しても、エリオは止まることはない。

 

 

エリオの仲間と思わしき者たちと戦い負けたカミナたちは一端ギルドに戻っていた。

全員が土砂に巻き込まれたため、大なり小なり怪我を負っておりウェンディが忙しく駆け回っていた。

 

「クッソー!!せっかく手がかりを掴んだのによ!!」

 

ナツは負けたこととせっかくのルーシィの情報を逃したことに腹を立てていた。

そんなナツをグレイが落ち着かせる。

 

「落ち着けよ、ナツ」

 

「落ち着いてられるかよ!テメーはムカつかねえのかよ!?同じ造形魔法の奴に負けてよ!!」

 

そう言われたグレイは土属性の造形魔法を使っていたミーシャを思い出した。

少しの間だが、有利だと思っていたが実は本気を出さずに戦っていた。

彼女が少し力を出せば、グレイの造形魔法は簡単に押し負けた。

手を抜いていた相手に負けたのはグレイに悔しさを残した。

 

「次は勝つ……」

 

拳を握りしめ、奥歯を噛みしめる。

カミナは頬に大きな湿布をミラに貼ってもらっていた。

 

「カミナがこんな傷を負うなんて……油断したの?」

 

「俺が油断することなんてない………だが、あの女は異常だ」

 

「ああ、底が知れない実力の持ち主だ」

 

カミナとエルザは思いつめた顔になる。

ギルドでトップクラスの実力を持つ2人がここまでになるほどの敵がいることにミラは戦慄する。

 

「また振り出しに戻っちゃいましたね………」

 

レインが残念そうに言うとカミナが立ち上がる。

 

「奴らの居場所ならわかっている」

 

その言葉に全員が驚く。

 

「奴らの仲間だった男に魔法をかけた時についでに居場所がわかるようにした」

 

「マジでか!?」

 

「これで反撃ができるな!」

 

カミナはフィオーレ全土が描かれている地図を広げ、詠唱を行う。

 

「南の心臓 北の瞳 西の指先 東の踵 風持ちて集い 雨払いて散れ。『掴趾追雀』」

 

地図の面に漢数字が羅列し、敵の座標を知らせる。

 

「ここだ」

 

カミナは地図のある場所を指した。

 

「ここは………」

 

「フラスタだ」

 

全員が声がした方を向くと、顔色を悪くしたハルトが壁にもたれかかりながら立っていた。

腹には包帯を巻いており、手で押さえていた。

 

『ハルト!』

 

「ハルトさん!まだ立っちゃダメですよ!!」

 

「ハルト〜、まだベッドにいてないといけないでごじゃる!」

 

ウェンディと後ろからついて来たマタムネがハルトをベットに戻そうと引っ張るがハルトはそれでも前に進んでいく。

 

「俺が行く……お前らはここで待ってろ……」

 

皆が止めるのを振り切って進もうとするハルトの前にカミナが立ちはだかる。

 

「……どけ」

 

「行かせない」

 

カミナを避けて進もうとするハルトの肩をカミナは掴み、軽く引っ張るとハルトはバランスを崩し、尻餅をつくように倒れてしまう。

 

「いってぇ……」

 

「ハルトさん!?カミナさん何やっているんですか!!」

 

周りの仲間たちがハルトを助け起こすが、ハルトはそれを気にせず進もうとする。

カミナの横を通り過ぎた時、声をかけられた。

 

「今ので簡単に倒れる程弱っているんだぞ?今度こそエリオに殺される」

 

「………それでも行かないといけなんだよ。これは……俺の罪の清算だ。お前ならわかるだろ」

 

振り返って虚ろな目でカミナを見るハルトの姿はどう見ても死にに行くようにしか見えなかった。

 

「『過去の罪は消えはしない』、こうも言ってくれたよな。本当にそうだよ」

 

ハルトはそれだけを言って、足を進める。

しかし、またカミナはハルトに声をかける。

 

「だが、お前はこうも言った。『罪を背負っているなら少しは俺にも背負わせろ』とな。ハルト、俺たちは仲間だ。俺たちに頼ってくれ。罪が1人で背負うのが辛いなら俺たちも背負おう」

 

「それでも俺は……」

 

「お前を死なせたくないんだ。仲間だから」

 

その言葉にギルドメンバー全員がうなづく。

それを目の当たりにしたハルトは驚きながら、周りを見渡す。

 

自分がしたことが仲間に知られるのが嫌だった。

嫌われたくなかった。

それにエリオに恨まれるのは正当だと思っている。

これは自分への罰だ。

自分が清算しなければいけないと思い込み、命をかけて償おうと考えていた。

だが、仲間たちは自分の過去を知ってもなお、助けると言ってくれる。

『仲間だから』、カミナのその言葉に、全員が一緒に罪を背負ってくれることにハルトの心は動かされる。

 

「……頼む。一緒にエリオを止めてくれ」

 

ハルトは頭を下げて頼む。

 

「頭なんか下げんなよ。らしくねぇ」

 

「アイツらに借りを返してぇしな!」

 

「無論だ」

 

「ルーシィを助けるぞー!!」

 

全員が当然だと言わんばかりにハルトの頼み聞く。

そこにマカロフも現れた。

 

「ハルトや、お前はこのギルドの……家族の一員なんじゃ。お主が何を背負うともワシ等はそれを背負う覚悟がある。お主が間違った道に進もうと言うのならワシ等が拳骨してでも止めてやる。だから、頼りなさい」

 

マカロフが優しく語りかけてくれる言葉にハルトの心は軽くなり、温かいものが広がっていく。

 

「ハルト、良い仲間を持ったな」

 

「ああ」

 

オリオンが優しく微笑んでそう言ってくれることにハルトは誇らしく答える。

皆でルーシィを助けための作戦を考える。

 

「それでどうする?」

 

「フラスタに行くのは決定だ。もう時間が無いんだろ?だけど戦力が少し不安だな……」

 

「それなら任せろ」

 

カミナは1人離れて、誰かに連絡を取る。

 

「今回は総力戦になる。怪我人も多く出るだろう。じゃが、仲間のためにワシ等は立ち向かう!!皆、気を引き締めて行け!!」

 

『オウ!!!』

 

マカロフの号令に全員が威勢良く答える。

ルーシィを助けるために、ハルトの過去に決着をつけるための決戦は近い。

 


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