FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第131話 彼奴等の望み

妖精の尻尾に立ちはだかるのはたった2人の敵だが、その雰囲気は異常だとカミナは感じ取っていた。

 

「お前たち2人に対して、こっちは千近くの軍隊だ。投降するのが賢い判断だと思うがな」

 

カミナは相手に何もさせないように投降を勧告し、2人のうちの少女が一歩前に出てくる。

 

「数なんてどうとでもなるわよ。グラウンドメイク『トルゥパー(兵士)』」

 

少女が地面を踏みしめると地面が盛り上がり、その土から兵士が造られた。

 

「造形魔法!?」

 

グレイは氷以外の造形魔法に驚きを見せる、

造り出された兵士の数は一体だけでなく、次々と造られ宝物庫を埋め尽くさんばかりだ。

 

「行って」

 

「来るぞ!!」

 

少女が指示を出すと一斉に土塊の兵士たちはカミナたちに襲いかかる。

カミナたちは兵士たちに応戦する。

兵士一体一体はさほど強くなく、魔法を使わずに倒せるが数が多く、徐々に押され始めてしまう。

 

「邪魔くせぇな!オイ!」

 

「一気に倒してやる!!火竜の……!!」

 

「真似すんじゃねぇよ!!鉄竜の……!!」

 

苛立ったナツとガジルが頬を膨らませ、ブレスで蹴散らそうとするがエルザが止めた。

 

「やめろ!この宝物庫には貴重な宝があるんだぞ!!壊したら弁償なんて出来んぞ!!」

 

「関係あるか!咆こ…へぶっ!?」

 

「ふごっ!?」

 

御構い無しにブレスを放とうとしたナツとガジルの頭をカミナは踏み台にして、兵士を作り出している少女に近づく。

 

「フッ!」

 

「させねーよ!」

 

刀を振るうが、横から男が身を盾にして少女を守った。

カミナは確かに男を切った感触はしたが、切られた男は不敵な笑みを浮かべてカミナを見る。

すると、男の切られた部分がみるみると治っていった。

 

「そんなんじゃ俺は死なねーぞ?」

 

「………」

 

カミナは刀を構えて、男を見据える。

すると今度はグレイとビックスローが前に出た。

 

「周りに被害が出ないようにすればいいんだろ!?なら、任せろ!!」

 

「お前にできんのかよグレイ!壊してる組のお前さんがよ!」

 

「言ってろ!!」

 

グレイは造形魔法を発動する構えを取り、ビックスローは人形を操る。

 

「アイスメイク『ランス』!!」

 

「行きな!ベイビー!!」

 

グレイから氷の槍がビックスローの人形からビームが発射される。

多くの兵士を破壊された少女はグレイたちに目を向ける。

 

「グラウンドメイク『ホーミングビー(追撃蜂)』」

 

次に造り出されたのは人1人の頭の大きさがある機械的な蜂だった。

その蜂はグレイたちを襲おうと向かって行くが、その前にエルザに切り捨てられる。

 

「仲間はやらせんぞ!」

 

「あなた邪魔!」

 

少女が今度はエルザに手を向けると兵士たちは一斉にエルザの方を見て襲いかかって行く。

するとエルザは天輪の鎧に換装し、剣を舞い上がらせる。

 

「剣よ!」

 

舞う剣は兵士たちに突き刺さり、倒して行く。

道ができたエルザは一気に駆け出し、少女に斬りかかる。

 

「グラウンドメイク『シールド』!!」

 

咄嗟に少女は盾を作り出し、エルザの斬撃を防ぐが斬られた盾が衝撃で吹き飛び、少女も吹き飛ばされてしまった。

 

「っ!サツキさんはまだ終わらないの!?こいつら案外強い!」

 

「あともうちょいだろ!踏ん張れ!」

 

男が少女を応援しながら曲刀でカミナと応戦するが、剣の扱いに長けているカミナに押されている。

 

「このまま押し切るぞ!」

 

『オウ!』

 

妖精の尻尾の一同が一気に押し返し始める。

 

「今度こそ!火竜の……!」

 

「ちっ!グラウンドメイク……!」

 

「やらせるかよ!アイスメイク『フロア』!!」

 

少女が魔法を発動する前にグレイが地面を凍らせた。

 

「あっ!」

 

「テメー、造形魔法を使うとき地面を媒介にしてるだろ?出どころがわかればそれを塞いじまえばいい。……ワリィな。仲間がやられてこっちも穏やかじゃねんだよ」

 

「鉄拳!!」

 

グレイの冷たい声の後にナツの拳が少女に炸裂する。

 

「キャアアァッ!!」

 

少女は吹き飛ばされ、地面に転がる。

 

「ミーシャ!?」

 

カミナと戦っていた男は倒された少女、ミーシャの方を見る。

カミナはそれを見逃さなかった。

 

「隙ができたな」

 

「しまっ……!」

 

「縛道の六十一、『六杖光牢』」

 

カミナが男に指を向け詠唱を行うと、指先から光が放たれ男の体に光の楔が6つ打ち付けられ、動けなくなる。

 

「ぐっ、ちくしょう!」

 

「これで終わりだ」

 

ミーシャはエルザに取り押さえられ、首元に剣を添えられる。

 

「うぅ……」

 

「動くな。動けば傷つくことになるぞ」

 

エルザにそう言われても身動きを取って逃げようとするミーシャの体を、エルザは少しキツく押さえつけるとミーシャの体に乾いた地面がひび割れたような僅かな亀裂が押さえつけられた腕に広がった。

 

「これは……!?」

 

「み、見るな…!」

 

ミーシャは驚くエルザを睨むが、エルザはミーシャの体に起こった異変を見てそれどころではなかった。

拘束を怪我人の手当てに当たっていた兵士に任せ、エルザはミーシャのことが気になりながらもギルドのメンバーが集まっている大きな穴の前に向かった。

 

「どうした?」

 

「いや……少し気になることがあってな」

 

「てか、アイツらこの穴開けるために爆破したのか」

 

グレイが呆れたように穴を見ながらそう呟く。

彼らが爆破したのは宝物庫の地面に穴を開けるためだったようだ。

宝物庫の地下は空洞になっており、何かを封印していたようだ。

 

「サツキさん、とあのミーシャって子は言ってましたね」

 

「ということは少なくともあと1人、彼奴等の仲間がいるということだな」

 

ジュビアが思いだしたように言い、フリードがそう付け足す。

 

「何人いようが関係ねー!全員倒してやんよ!!」

 

「そしてルーシィの居場所を聞くんだ!」

 

「はい!」

 

「がんばろー!」

 

ナツが鼓舞するように叫び、ハッピー、レイン、ミントが答える。

それを見て、全員がその通りだと笑みを浮かべて答える。

 

「恐らく、残り仲間は下に向かってエミリアの体を取りに行っているはずだ。戻ってきたところを俺とエルザが……」

 

全員に作戦を伝えていたカミナがふと取り押さえられているミーシャに目を向けると、彼女を立たせようとしていた兵士たちの背後に人1人の大きさがある布に包まれた荷物を片腕に抱え、長刀を反対に持った動きやすい着物を着た女性が立っていた。

その女性を見た瞬間、カミナの本能が『アレ』は危険だと、『アレ』を殺さねばと最大限の警告を発した。

その警告に従ってカミナは刀に手を添え、体を屈める。

 

「カミナ?」

 

突然黙ったカミナが気になったエルザが声をかけるがカミナはそんなものは聞こえず、殺気をその女性に向ける。

そして一気に駆け出し女性に斬りかかる。

 

「随分と物騒な殺気ね。離れていても感じ取ってしまったわ」

 

さっきまで視界に標的がいたはずなのに気づけばその標的は自分の真横に来ていた。

カミナはどうして真横にいるのか、いつ移動したのかと疑問が思い浮かんだが、今は迎撃するのが優先だと即座に頭を切り替え刀を振るう。

しかし、振るった瞬間に刀は粉々に砕け散った。

 

「ごめんなさいね」

 

その言葉と共にカミナの顔に鞘に収まった刀が叩きつけられ、壁に吹き飛ばされてしまった。

これが僅か数秒で起きてしまい、エルザ達は状況が理解できなかった。

 

「カミナ!?」

 

「何だ!?」

 

吹き飛ばされたカミナは壁にぶつかり、埋もれてしまって動かなくなってしまった。

突然のことに驚くエルザ達だがカミナを倒した女性を見て、臨戦態勢になる。

 

「お前が残りの仲間か」

 

「そうよ。ねぇ、私たちをこのまま逃してくれないかしら?」

 

「何?」

 

突然の申し出にエルザは訝しげな表情になる。

 

「このまま逃してくれたら、貴女達には何もしないわ。だから見逃して欲しいの」

 

「それはできない相談だ。フィオーレ王国の宝を奪い、私達の仲間を傷つけた。逃すわけにはいかない」

 

そう言ってエルザは天輪の鎧で複数の剣を操作し、構える。

 

「そう……残念だわ」

 

「剣よ!」

 

悲しそうな表情でそう呟く女性にエルザは攻撃しようと剣に命令するが、その瞬間女性の剣を持っていた腕がブレて剣は砕け散り、鎧も跡形もなく破壊された。

 

「なっ……!?」

 

鎧が破壊されただけで下の肌には一切傷はなかった。

だが、何をされたかもわからない状態で鎧と武器を破壊された。

周りの仲間は突然エルザの鎧と武器が破壊され、驚き動きを止めてしまう。

 

「ねぇ、まだやる?」

 

そう呟いた女性を見て、エルザは背筋に冷たいものが走った。

相手からは魔力を感じない。

しかし、その実力はこの中では別次元だ。

それを肌で感じ取ったエルザは動こうにも恐怖で動けない。

 

「ミーシャ、大丈夫かしら?」

 

「ごめんなさい、サツキさん。少し油断しすぎていました」

 

いつのまにかミーシャを取り押さえていた兵士たちは倒されており、ミーシャは自由になる。

立ち上がるミーシャに手を貸した女性、サツキは気にするなと言って体についた汚れを取ってあげる。

 

「おーい!こっちも助けてくれよ!」

 

「はいはい」

 

サツキはまるで母親のような表情を浮かべて、男を拘束していた魔法を鞘で突くといとも簡単に破壊した。

人数の差は大きくあるのに全く不利だと思わせない空気にナツが切り出す。

 

「今度は俺が相手だ!!」

 

「ま、待って!ナツ!!」

 

エルザが突撃しようとするナツを止める。

今、攻撃しても倒される未来しか予測できない。

それ程までにあのサツキという女にエルザは危機感を持っている。

 

「そろそろあっちも我慢できなくなってきたみたいね。ミーシャいけるかしら?」

 

「うん、問題ない」

 

ミーシャは地面に両手をついて魔法を使おうとする。

そこにグレイがすかさず邪魔をする。

 

「やらせるかよ!アイスメイク『フロア』!!」

 

今度はミーシャの腕ごと凍らせたが、ミーシャは表情を変えずグレイを見る。

 

「今度は少し本気でやるわ。グラウンドメイク……!」

 

するとミーシャの腕の表面が土に変わり、顔にまでひび割れが広がる。

 

「『ビックウェーブ』!!!」

 

凍らされた地面がミーシャを中心に大きな荒波の土砂となって、エルザたちを襲う。

 

「ナツ!」

 

「うおっ!?」

 

「全員!側にいる者を掴め!!」

 

エルザは即座に近くにいたナツを掴み仲間に指示を出すが、巨大な土砂の波に飲み込まれてしまった。

土砂は宝物庫の壁を破り、外に待機していた兵士たちも飲み込んだ。

悲鳴が上がるがすぐに土砂に埋もれてしまった。

 

 

静かになった宝物庫からサツキ、ミーシャ、そして布に包まれた何かを持った男が出てきた。

 

「また派手にやったなー」

 

男が土砂に埋め尽くされた外の光景を見て、呟いた。

 

「仕方ないでしょ?一人一人相手してたらこっちが疲れちゃう。やるなら一気にやったほうがいいわ」

 

腕は土に変わり、顔にひび割れが広かった状態のミーシャはそう言った。

サツキはその光景を見て、悲しそうにするが2人に気づかれないように表情を戻し、振り返った。

 

「じゃあ、戻りましょう。目的の物は全て揃ったわ。これで私達の望みが叶う」

 

その言葉にミーシャと男は頷き、宝物庫を後にした。

 

 


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