FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
ボスコ行きの船に乗って2日目、とうとう海獣が潜む海域に近づいてきたが近づくにつれ、海は荒れ、天気は悪くなってきた。
「さぁ、客人がた。ここから頼むぜ!!この海を越えないと俺たちはボスコに行けないんだからな!!!」
「わかってる!!ナツ、エルザ、レイン!お前たちは俺と一緒にマタムネたちに抱えてもらいながら海獣に近づいて攻撃だ!!」
「オウよ!!」
「承知した!!」
「はい!!」
「グレイ!お前はルーシィたちと残って船から援護してくれ!!
「わかった!」
「任せて!」
「頑張ります!」
全員がやる気を込めた返事をハルトに返し、ハルトは荒れ狂う海の先を見据えた。
「行くぞ!!」
ハルトの合図でナツ、エルザ、レイン、ハルトはそれぞれハッピー、シャルル、ミント、マタムネに抱えられ、荒れ狂う海に飛び出した。
「ハルト!!この海では海獣も出てこないのではないか!!?」
「それはない!!海獣ってのは文字通り海の化け物だ!!こんな海なんてなんともない!!」
エルザとハルトが嵐の中大声で話していると、レインが背後で何かを感じ取り振り返る。
「…………」
「どうしたレイン?」
「来ます!!」
レインが叫ぶとそれと同時にハルトたちの背後から蛸の触手が海から飛び出て、ハルトたちに襲いかかる。
「……ッ!!覇竜の剛腕!!!」
いち早く気づいたハルトは剛腕で防ぐ。
「ハァッ!!!」
エルザは剣で触手を切り落とすと、切り落とされた痛みで触手が暴れ狂い、ハルトたちを海に叩き落とした。
「ぐあっ!?」
「うっ!!」
「うげっ!?」
「うわっ!!」
「ハルト!!」
「レイン!!」
「なんだあの化け物は!!?」
「なんだ知らなかったのか!?アイツは海の化け物……」
舵を取っていた男が暴れる触手を睨む。
「クラーケンだ」
○
海に叩き落とされたハルトはマタムネを抱えて、海から顔を出した。
「マタムネ!無事か!!」
「う〜……頭がクラクラするでごじゃる………」
「飛べるな?行くぞ!!」
ハルトたちは再び飛び上がり、船を襲おうとしているクラーケンに突撃した。
「その船に手を出すな!!覇竜の咆哮!!!」
クラーケンの頭部に向かって咆哮を放つが、少し表面が火傷するだけだった。
咆哮によりクラーケンの標的はハルトに襲いかかるが、なんとか触手を掻い潜り、攻撃を与えていく。
しかし、何度も攻撃を与えても怯む様子を見せるが倒れる様子は見せない。
「くそっ!このままじゃキリがない!!」
「………なあ、マタムネ。どんなタフな奴でも内側から攻撃すれば倒せるよな?」
「ハルト?まさか……」
「そのまさかだ!」
「い、いやでごじゃる!死にに行くようなものでごじゃるよ!!?」
「死ななきゃいいだけだ!!」
「ああもう!どうなっても知らないでごじゃるよ!!」
マタムネは一旦クラーケンから距離をとった。
「お前ら!そいつを海から引っ張りだしてくれ!!」
ハルトの指示に全員が一斉に攻撃を放つと、クラーケンの全体が海から現れた。
『ギャオオオオオォォォォッ!!!!!』
「ヒィッ!何あれ!!?」
「き、気持ち悪いですぅ………」
そのおぞましい姿を見せたクラーケンにルーシィとウェンディは怯える。
姿を現したクラーケンはより一層暴れだし、ナツ達を近づけさせないが、ハルトが触手を掻い潜って近づき、クラーケンの口の中に突撃した。
「ハルト!!?」
喰われてしまったと全員が思った瞬間、クラーケンの体から凄まじい衝撃音が聞こえた。
「竜戟弾!!!」
クラーケンの頭部の一部が何かに引っ張られるように伸ばされそこからハルトがクラーケンの頭部を突き破って出てきた。
「ハルト!!」
「よかった!無事ですよ!!」
クラーケンの血が体中に付いているが、特に怪我をした様子は無いハルトはクラーケンに振り返り、息を大きく吸い込む。
「覇竜のぉ………咆哮ォッ!!!」
『グオオォォォォ……………』
ハルトのブレスがクラーケンに浴びせられ、クラーケンは断末魔をあげながら海に沈み、二度とその姿を現さなかった。
○
クラーケンとの戦闘から1日が経ち、ついにボスコの港が見えてきた。
「見えてきたぜ。あれがボスコで一番荒れている港町……ラトゥータだ」
その港町は大きく広がっており、ところどころから煙が立ち上っており、賑わっているのが遠くからでもわかった。
「よし、じゃあルールを決めるぞ」
「ルール?何でルールを決めるの?」
ハルトが振り返り、全員に聞こえるように話しだすが、何故ルールを決めなければいけないかルーシィは質問した。
「今から行くラトゥータはお前らが想像しているよりも治安が悪い。ルールを決めて自衛しなきゃいけないんだ」
「自衛って……そこまでなんですか?」
レインが少し驚いた表情でハルトに聞き返すとハルトは黙って頷いた。
「まず女性陣は俺の側から離れるな。人攫いに攫われるからな。1人でも行動するなよ。何が起こるか分からないからな」
「人攫いなどがいるのか?下劣な」
エルザは人攫いという言葉に自分の幼少期のころを思い出し、嫌悪感が露わになる。
「あそこじゃ犯罪なんてもんは日常だ。自分の身は自分で守るしかねぇよ。あと……」
「客人。頼まれたもの持ってきたぜ」
ハルトが言葉を続けようとした瞬間、船乗りの男が手に何かを持って現れた。
「ああ、ありがとよ」
「ハルト、それは?」
ルーシィがハルトが貰ったものが何かを聞くとルーシィ、エルザ、ウェンディ、レインにそれぞれ手渡した。
どうやら服のようだが、いつも皆が着ているものより貧相なデザインでボロボロの古いものだ。
「それに着替えてくれ」
「これに?もう少し可愛いのがいいのに」
「文句を言うなよ。その格好じゃ狙ってくださいって言っているもんだ」
ハルトはそう言ってルーシィ達を部屋に押し込んで着替えるように頼んだ。
「ハルトがあそこまで注意するってラトゥータって一体どんたところなの?」
「人攫いがいるって言ってましたね」
「何にせよ気を引き締めていかねばな」
女性陣はそう言いながらハルトに渡された服に着替え始めたが、レインも一緒に部屋に押し込められており、慌てて顔をルーシィたちから逸らした。
「み、みなさん!僕もいるんですよ!!」
「何か問題でもあるのか?」
「女の子でしょ?」
「僕は男です!」
○
ルーシィたちは田舎の村娘みたいな地味な格好をし、顔を布を頭から被り見えないようにして、ラトゥータの港に降りた。
一応レインは男モノの服だがどうしても女の子に見えてしまい、それを言われたレインはまた落ち込んだ。
船が港に着いた瞬間、久しぶり港に着いた船に港の者たちは驚き、船乗りたちに詰め寄られているうちに、ハルトたちは港から街に入った。
「すごい人ね。ハルジオンでもここまで賑わってないのに」
「ハルトが荒れているって言ってたけどそうでもないな」
ルーシィがそう言ったのは街に続く道には人が多くいており、露店を見ているもの、客を引き込もうとしている者など様々だ。
しかし、グレイが言う通り、殺伐ともしていないし、治安が悪いように見えないが、少しでも気をぬくと人とぶつかってしまいそうになる。
すると、前から手に花を持った子供たちが大勢やってきてハルトたちに売り始めた。
「買って!買って!」
「綺麗なお花だよ!」
「じゃあ1つ……」
「やめとけルーシィ。お前らもさっさとどっか行け!」
ルーシィが買おうとしたが、ハルトが間に入ってそれを止め、子供を追い払った。
「何もそこまでしなくても……」
「あれはスリだ。財布を出した瞬間、全部持ってかれるぞ」
「あんな子供もそんな犯罪に手を染めているのか」
ハルトの説明に全員が驚いているとさらに人混みが激しくなってきた。
「ウェンディ!離れないように手を繋ごう」
「う、うん」
レインは逸れないよう手を差し出し、ウェンディは少し顔を赤らめながらも手を取った。
「あれって狙ってやってるでごじゃるか?」
「いや、天然だねー」
「おい、マタムネ!顔出すなって言ってるだろ」
マタムネたちはハルトに言われハルトが背負うリュックの中に入っていた。
マタムネたちはあまり見られない種族のため狙われると思ったため、ハルトが提案したからだ。
「大丈夫でごじゃるよ。悪い奴なんて見かけないでごじゃるし」
「それでも中に入っとけって」
「でも体が凝ってしまったでごじゃるよ」
そう言ってマタムネはリュックの中から出てしまった。
「おい!」
「ハルトは心配しすぎでごじゃるよ。こんなに人がいれば人攫いなんて……もがっ」
マタムネが言葉を続けようとしたが、背後から手が伸び、マタムネを連れ去ってしまった。
「マタムネ!?」
「速え!魔法か!!追いかけるぞ!!」
「くそっ!人が邪魔で……!!」
即座に連れ去った男を追いかけようとしたが、人が多く追いかけることができない。
「エルザ!リュックを頼む!」
「ああ!」
ハルトはその場で跳躍し横の建物の壁に着地し、壁から落ちないように走り、男を追いかけた。
「おい!その猫は俺の仲間だ!!」
「がはっ!?」
追いついたハルトは男の真上から頭にかかと落としを放ち、気絶させた。
「ハルト〜!!」
「だから中にいとけって言っただろ?」
マタムネは泣きながらハルトに抱きつくとハルトの周りを男たちが囲んだ。
「な、なんでごじゃる?」
「おい兄ちゃん。その猫と有り金置いてどっか行きな。じゃなきゃ痛い目に合うぜ?」
そう言って男はナイフをチラつかせハルトを脅すが、ハルトは気にすることなかった。
「マタムネ、ルーシィたちのところに行っとけ」
「了解でごじゃる」
マタムネがナツたちのところに戻るとハルトがいるところが騒がしくなった。
「マタムネ!大丈夫だった!?」
「いやー危なかったでごじゃる」
「リュックの中にいとけって言われてたでしょ!」
「よかったよー」
ハッピー、シャルル、ミントから心配の言葉をかけてもらっている一方で、エルザは周りを注意深く見ていた。
「どうしたんだよエルザ?」
それに気づいたナツがエルザに話しかけるとエルザは訝しげな表情で話した。
「いや、ハルトの言っていたのはこのことなのかと思ってな」
「あ?マタムネが拐われたことか確かにな…」
「いや、そっちではない。マタムネが拐われた時、周りの人間はそれを何とも思わずスルーしたのだ。前でハルトが恐らく戦っているだろうが、それすらもスルーして商売を続けている」
「つまりどういうことだよ?」
「この街の人間はこう言った犯罪には慣れているということだ。しかもハルトのほうでは賭け事もされている」
ハルトと人攫いの集団の戦いはいつのまにか賭け事までされている。
「犯罪大国ボスコ………噂は本当だったのか」
「おう、お前ら。何ともないか?」
そこにハルトが戻ってきた。
「ハルト!ズルイぞ!!お前だけ戦って!!」
「なんだよズルイって……」
ナツが文句を言ってきたがハルトは呆れ顔で返し、先に進もうとしたときに気づいた。
「おいルーシィはどうした?」
「ルーシィさんですか?それなら私の後ろに……」
ウェンディが振り返って後ろを見たが、そこにルーシィの姿はなかった。
「あれ?ルーシィさん!?」
「ルーシィ!どこ行った!?」
「ルーシィ!!」
全員が周りに呼びかけるが返事がない。
「まさか……人攫いに攫われたのかよ!!」
「あの一瞬でですか!?」
「ナツ!ルーシィの匂いを追えないか!?」
「人の匂いが多すぎてわかんねぇ!!」
「くそっ!ルーシィ!!」
ハルトたちは道を駆け出し、ルーシィを探し出し始めた。
○
そのころ攫われたルーシィはどこかの建物の地下牢に閉じ込められ、そこに手足と口を縛られ、寝かされていた。
「んー!んー!」
「よくやったな。上玉じゃねぇか」
ルーシィは口に布を噛ませられ喋ることもできずに唸るだけで、1人の男がそう言うと何もないところからもう1人の男が突然姿を現した。
「へへっ……たまたま見かけたんだよ。あともう3人いたんだが警戒が強くてな。1人しか連れてこれなかったぜ」
「まあ、こんだけの顔だ。1人でも良しとしようぜ」
「それとこれも持っていた」
ルーシィを連れ去った男はルーシィのキーホルダーを取り出し、投げ渡した。
「星霊魔導士か!こりゃ価値が上がるな!!」
男は嬉しそうな顔になり、ルーシィの口を縛っていた布を取った。
「プハッ……。あんた達!さっさと縄を解きなさいよ!!」
「なんで解かなきゃいけねえんだよ。あんたはこれから売られるんだからな」
男はいやらしい笑みを浮かべる。
「う、売るってまた奴隷として?」
「また?ここじゃそんなのザラだぜ。あんた別の国の奴か?なら不運だったな。まっ、こんな国に来たのが間違いだったと思いな」
「アタシの仲間が必ず助けてくれるわ!!アンタ達なんて一瞬で倒されちゃうんだから!!」
ルーシィはハルト達を信じ、強気の姿勢を見せる。
しかしその瞬間、ルーシィの目の前にナイフが突き刺さった。
「へ?うっ!」
「そりゃ楽しみだな!ここがわかればの話だがな。いいこと教えてやる。ここは地元の奴でも知られていない場所だ。別の国の奴が分かるとは思えないね」
男はルーシィの前にしゃがんで顔を掴み、ナイフをチラつかせながら脅す。
するとルーシィは男の手を思いっきり噛んだ。
「痛てっ……!このアマァ!!」
「それでもハルトが来てくれるわ!」
「ハルト?どっかで……」
「………そうかい。ならそれまで楽しませもらうか!!」
その瞬間、男はルーシィの服を引きちぎり、ルーシィの柔肌が露わになった。
「きゃあっ!!」
「ほほう!いい体してんじゃねぇか!!」
「おい。商品に手を出すのは……」
「うるせぇ!!!黙ってろ!!!」
男は怒りが収まらないのか仲間の男にさえ怒鳴りつけ黙らせると、ルーシィの胸を乱暴に揉む。
「痛い!やめてぇ!!」
「ハハッ!いいぞ!!もっと泣け!!」
ルーシィは涙を浮かべ必死に抗うが、男は無理矢理にでもしようとする。
(怖いよ……!ハルト!!)
ルーシィが心の中でハルトを呼んだ瞬間、もう1人の男が異変に気付いた。
「外が騒がしいな……?」
その瞬間、地下牢の天井が爆発するように破壊された。
「な、なんだ!?何があった!!?」
ルーシィに乱暴しようとした男は突然のことに慌て、ルーシィから離れる。
ルーシィも突然のことに驚くが、煙の中から現れた姿を見て安心した。
「大丈夫か!ルーシィ!!」
「ハルト!!」
ルーシィに駆け寄り、起こして縄を解きながら、ルーシィの状態を見たハルトは目を厳しくして男を見た。
「お前ら……覚悟はできてんだろうな?」
ルーシィに上着をきせて、立ち上がり男に近づくと男は慌てながら謝った。
「ま、待ってくれ!すまなかった!!つい出来心だったんだよ!!」
(やれ!今ならお前には気付いていない!!)
男は謝りながら一緒にいた男に指示を出す。
ルーシィを連れ去った男は姿を消す魔法を使ってハルトの背後に立ち、ナイフを振り下ろす。
が、ハルトはそれより早く後ろに向かって裏拳を振り抜き、男を殴り飛ばした。
「なんだテメェは?」
「がはっ!?」
「ひぃっ!まっ、待ってくれ!わ、悪かった!!本当に悪かった!!許してくれ!!!」
仲間を倒された男はさっきとは打って変わって必死に謝り倒した。
「テメェ……昔、人攫いジャックにいた奴だな」
「な、なんでそれを……ハルト?お、お前!ラトゥータの小鬼か!!」
男はさっきよりも顔を青くし、ガクガクと震える。
「なら分かるよな?俺が仲間に手を出されるのが一番嫌いだってことはよ?」
「ひいぃぃぃっ!!!」
男はは慌てて逃げようとするがハルトは男の頭を掴み、床に叩きつけ、何度も拳を振り下ろした。
「ゆ、許しへ……はがっ!?」
「………」
男が許しを請うも、ハルトは黙って殴り続ける。
「ハルト!もうやめて!!」
そこにルーシィがハルトの背後から抱きついて止めた。
「アタシはもう大丈夫だから………」
「ああ……ごめんな、ルーシィ。俺が守るって言ったのに守れなくて……」
ハルトはルーシィの手を取って謝る。
ルーシィはハルトの手が少し震えていることに気づいた。
「でも、助けに来てくれたわ。ありがとう」
ルーシィはハルトの背中に顔を押し付けながら、ハルトを安心させるように強く抱きしめた。
落ち着いた2人はナツたちが待つ上に出た。
「ルーシィ大丈夫だったか!!」
「怪我はないか?」
「うん。みんなありがとう」
ナツたちの周りには倒れた人攫いの仲間がいており、ナツたちに倒されたのがわかった。
「ごめんなさいルーシィさん……わたしがちゃんと見てれば……」
「大丈夫よウェンディ。気にしないで!」
「さて、こんな騒ぎを起こしちまったのはまずい。流石に軍の奴らが来ちまう。急いで目的の場所に行くぞ」
「目的の場所とは追憶の谷というところか?」
「いいや、俺の実家だ」