FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第11話 DEAR KABY

ルーシィが星霊の鍵を構え、叫ぶ。

 

「開け! 巨蟹宮の扉! キャンサー!!」

 

現れたの背中に蟹の足が生え、ハサミを両手に持つ美容師のような男だった。

 

「「蟹キターーーーー!」」

 

何故かマタムネとハッピーのテンションはが上がっている。

その興奮した状態でルーシィに話しかける。

 

「絶対に語尾に“カニ”ってつけるでごじゃる!」

 

「お約束だよね!」

 

「静かにしないと肉球つねるわよ?」

 

余りのテンションの高さに流石にイラッとしたのか脅した。

 

「ルーシィ…」

 

キャンサーは静かに声をかける。

マタムネとハッピーは期待した目で見つめている。

 

「今日の髪型はどうする“エビ”?」

 

「「エビーーーーー!?」」

 

「今はそんな状況じゃないの! 戦闘よ、戦闘! あのヒゲオヤジをやっつけちゃって!!」

 

「了解エビ」

 

まさかの語尾に驚き戸惑ってしまうマタムネとハッピー、しかし、もう一人戸惑う人がいた。

 

(秘密じゃと!?まさか…我輩の事業の裏側を書いたのか!? マズイ、アレが評議院に渡ったら、我輩は終わりだ!!)

 

「ぐおぉぉ! おのれぇぇぇぇ!」

 

自分で考えた結果、最早なりふり構わないといった様子で懐ろからあるものを取り出した。

 

「開け! 処女宮の扉!」

 

「えっ!?」

 

「ルーシィ殿と同じ星霊魔法でごじゃる!?」

 

「バルゴ!!」

 

現れたのは、あのゴリラメイドだった。

 

「お呼びでしょうか? ご主人様」

 

「こいつ星霊だったの!?」

 

ゴリラメイドが星霊だったことに驚くルーシィだが、あることに気づき、驚きが増した。

 

「え!」

 

「え!?」

 

「えぇ!?」

 

「ハルト!ナツ!」

 

ハルトとナツはバルゴの肩の服を掴んでおり、それで一緒に星霊界を経由して、ルーシィがいる下水道に飛ばされてきたのだ。

 

「何故貴様等がバルゴと!?」

 

「いや、なんかこいつと追いかけっこしてたらここに…」

 

「うぷ…」

 

「星霊界を通過してきたってこと!? っていうかナツ、また酔ってるし!」

 

驚きを隠せないルーシィだが、ハルトが声をかける。

 

「ルーシィ!こいつ、どうしたらいい!?」

 

「…!そいつやっつけちゃって!」

 

「オーケー!ハッピー、ナツを連れてけ!」

 

「あい!」

 

「うぷ…」

 

「覇竜の剛拳!!」

 

ハルトは上から、バルゴの顎に拳を叩き込んだ。

それにより、バルゴは地面に陥没し、動かなくなった。

 

「何だと!? バルゴがやられた!?」

 

バルゴがやられ、動揺している隙にルーシィが自分の鞭でエバルーを引っ張りあげる。

 

「これで地面に逃げられないわよ!」

 

「しまった!」

 

空中に出されてしまったエバルーにキャンサーは跳んで近づく。

 

「アンタみたいな奴は…」

 

キャンサーとエバルーが交差する。

その瞬間、目にも止まらない早さでキャンサーのハサミがエバルーを切り刻む。

 

「脇役で十分なのよ!!」

 

「ぽぎょお!?」

 

鞭から解放されたエバルーは気絶しながら地面に落ちるが、落ちる瞬間に頭と顔の毛が全て綺麗に切り落ちてしまった。

 

「お客様こんな感じでいかがでしょうか?…エビ」

 

「うん、結構いいんじゃないかしら」

 

エバルーのツルツルになった頭を見て、本をそっと抱きしめた。

 

 

ハルトたちはエバルー屋敷での一戦を終え、依頼の本は破棄ではなく

回収し、カービィの元に戻った。

 

「これは一体…どういうことですか? 私はこの本の破棄を依頼したはずです」

 

カービィは本をルーシィから手渡され困惑した。

 

「本を破棄するのは簡単です。カービィさんにだって出来る」

 

「だ、だったら私が焼却します。こんな本・・・見たくもない!」

 

カービィは大声を出し、棚からマッチを取り出す。

 

「あなたが何故その本を破棄したがっていたのか分かりました」

 

「!?」

 

「父親の誇りを守る為。あなたはケム・ザレオンの息子ですね?」

 

「「「なにーーー!?」」」

 

「なるほどな…」

 

ルーシィが告げた事実にマタムネ、ナツ、ハッピーは驚き、ハルトはこの不可解な依頼に合点がいった。

 

「何故それを・・・?」

 

「カービィさん、この本を読んだことは?」

 

「?いえ、父から話を聞いただけです。しかし読むまでもありません。・・・駄作だ。父がそう言っていました」

 

それを聞いたナツは激しく怒った。

 

「だからって燃やすことはねーだろ!父ちゃんの書いた本だろ!」

 

「ナツ!お前が言いたいことはわかるが落ち着け」

 

「ちっ」

 

ナツは自分の首に巻いてあるマフラーを握りながら悔しそうにした。

ナツは幼い頃に火のドラゴン、イグニールに育てられていたがある日突然何も言わずに何処かに姿を消してしまったのだ。

それ故にナツは家族にたいしてのことは大切にしているのだ。

 

「父はこれを書いたことを恥じていました」

 

カービィの口から語られるのは31年前のことだ。

カービィの父、ケム・ザレオンは3年間も音信不通だったが、ある日突然大金を持って帰ってきたのだ。

しかし、帰るなり小説家は引退すると言って腕を自分で切り落とした。

カービィは父が金に目がくらみ、家族を捨てたと思い、それで親子との間に亀裂が入ってしまった。

結局、和解もしないまま、ケム・ザレオンは息を引き取った。

しかし、カービィは父が死んだ後も、父を恨み続けた。

 

「ですが、年月が経つにつれ憎しみは後悔に変わっていった。もしかしたら私の一言が父を殺してしまったのかもしれない、とね。だからせめてもの償いに父が駄作と言ったこの本を、父の名誉の為にこの世から消し去りたいと思ったのです・・・」

 

その顔は全てをやりきったという表情をしていたが、何処か悲しそうだった。

カービィはマッチに火をつけ、燃やそうとするが、

 

「待って!」

 

カッ!

 

「「「!!!」」」

 

 

ルーシィが止めようとした瞬間、本は光を放ち空中に浮いた。

すると本の表紙に書いてあるDAY BREAKの文字が移動し始めた。

 

「ケム・ザレオン…本名ゼクア・メロン。彼はこの本に魔法をかけました」

 

移動が終わりできた文字は、

 

「DEAR KABY(カービィへ)…」

 

「そう、彼のかけた魔法は文字が入れ替わる魔法です。

表紙だけでなく、中身も全部」

 

表紙の文字の移動が終わると、勝手に本が開き一斉に文字が浮き出て、入れ替わりが始まった。

その光景はとても美しいものだった。

 

「文字が踊っているみたいだ!」

 

「ケム・ザレオンが作家を辞めてしまった理由は、最低な本を書いてしまったのと同時に、最高の本を書いてしまったからもしれません」

 

ルーシィがそう言い終わるのと同時に文字の入れ替わりも終わった。

そこにはDAY BREAKとは全く違ったほんができていた。

 

「それがケム・ザレオンが本当に残したかった本です」

 

カービィは震える手でページをめくっていき、新たな物語を読む。

 

「私は…私は父のことを理解できていなかったようですね」

 

カービィの目からは涙が溢れ出て、止まらなかった。

その言葉を聞いてルーシィは嬉しそうに返す。

 

「作家の考えていることが分かってしまったら、本を読む楽しみがなくなっちゃいますから」

 

「本当にありがとう…この本は燃やせませんね…」

 

「だったら俺たちは報酬いらねぇよ」

 

カービィが涙を流しながら感謝を述べると、ナツがそう返事をする。

 

「え?」

 

「ちょっとナツ! 何言ってんのよ!?」

 

「だって俺らの依頼って本の破棄だろ? それなら失敗したじゃねぇか

だから、報酬はいらねぇよ」

 

「うぐぐぐ…ハルトも何とか言ってよ!」

 

「ナツが今回の仕事を持って来たんだ。

ナツに従おうぜ?」

 

「ハルトまで…そんな〜」

 

こうして本と親子の絆をめぐる事件は終わった。

 

 

仕事を終え、ギルドに戻るハルトたちはナツの希望で徒歩で移動していた。

 

「はぁ〜せっかくの200万Jがパーかぁ…」

 

「そう落ち込むなって、それにカービィさんが払えたかはわからないしさ」

 

「そうだけどさぁ…」

 

ルーシィが報酬を貰えなかったことに不満を言っているをハルトが慰めていた。

すると、ナツがふっと思い出したように話し出した。

 

「あのケムとかいう魔導士って本当すげーよな」

 

「あい、魔法の効果か30年以上残っているなんてすごい魔力だよ」

 

「若いころは魔導士ギルドにいたみたいよ。

そこで冒険したことを小説にしたみたいよ。あこがれちゃうな〜」

 

ルーシィがそう言うとハルトはあることを思い出した。

 

「なぁ、ルーシィ」

 

「なに、ハルト?」

 

「もしかして、あの時隠した紙の束ってルーシィが書いた小説なのか?」

 

「!」

 

「その様子だと当たりみたいだな」

 

「絶対みんなには内緒にしといてよ!」

 

「えーどうしよかっなー」

 

「何が内緒でごじゃる?」

 

するとマタムネたちが会話に入ってきた。

 

「お?何の話しだ?」

 

「どうしたのー?」

 

「いやなルーシィがさ…」

 

ルーシィは顔を赤くして、怒鳴った。

 

「言っちゃダメーー!!」

 

そんな騒ぐ5人の様子を夕日が優しく照らしていた。

 




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