FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第105話 彼女の言葉

絶体絶命の窮地に陥ったハルトはニルヴァーナの意識改変魔法により、過去の最も辛い記憶を掘り起こされ、洗脳されそうになったが、掘り起こされた記憶はハルトを絶望に陥れるどころか逆にその逆鱗に触れ、怒りとともにハルトを復活させた。

しかもハルトの魔力はまるで自我を持っているかのようにハルトに纏わりつき、ニルヴァーナを追い込むほどの力を与えた。

 

「ラああァッ!!!」

 

ハルトがニルヴァーナに飛びかかり、魔力でできた爪を振りかぶる。

しかし、ニルヴァーナは爪が当たる瞬間に反転の魔法陣を発動し、爪を弾き返すのと同時にハルトのはじき返された右腕に衝撃と痛みが走るがハルトはそれを気にせず、さらに左腕で追撃する。

しかしそれもニルヴァーナの反転させられる。

 

「ラアッ!!!」

 

ガンッ!!!

 

「ア"ア"ッ!!?」

 

が、ハルトはさらにニルヴァーナの顔に向かって頭突きを放ち、ニルヴァーナから痛みからの叫びが零れる。

ハルトの両腕からは血が流れるが、ハルトはそれを気にした様子はなくギラギラとした目でニルヴァーナを睨む。

その姿は少し理性をなくしているようにも見えた。

 

「アアアアアッ!!!」

 

ニルヴァーナはハルトに向かって複数の腕で襲いかかり、ハルトは避けもせずそれを受ける。

 

ドドドドドドドドッ!!!

 

ハルトに打ち付ける連打の音と地面が破壊される音が響くが、ハルトは何度も打ち付ける腕を両脇で締めて固定し、ギチギチと締め上げる音が鈍く響く。

 

「アアアッ!!」

 

痛みにもがくニルヴァーナは締められている両腕に魔法陣を発動すると、ハルトの体に締めている力が反転してハルトを襲う。

 

ガンッ!! ガンッ!!

 

「ぐっ!!ブッ!!」

 

しかしハルトは衝撃で口から血が出ても放さない。

 

「絶対二放さねエぞ……!!」

 

ハルトは血が零れる口を開くとノーモーションで咆哮を放つ。

 

「ア"ア"ア"アアアァァァ……!!!」

 

突然の攻撃に反転の魔法を出すことを遅れたニルヴァーナはモロに咆哮をくらい悲痛な叫びがあがり、ハルトはその時ニルヴァーナの力が緩んだのを見逃さず、回転して振り回す。

 

「ウオオオオォォォォッ!!!!」

 

ニルヴァーナは振り回され、体に乱立する巨大な釘が何本も打ち付けられる。

回転の力を利用して、投げられたニルヴァーナはもんどり打ちながら転がった。

 

 

ニルヴァーナ破壊の作戦決行まで残り5分。

その頃、ルーシィが向かっていた3番魔水晶ラクリマでは……

 

「ルーシィ、大丈夫?」

 

ルーシィについて来たハッピーが彼女にそう問い掛けるが、ルーシィは何も答えず震えながら、地面に座り込む。

 

「見栄とか張ってる場合じゃないのに……『できない』って言えなかった」

 

震える声でそう言いながら、ルーシィは悔し涙を流す

 

「もう…魔力がまったくないの…」

 

エンジェルと戦った際に使ったウラノ・メトリアで残り少なかった全ての魔力を使い切ったルーシィの魔力はもう空であった。

 

「それでもウェンディたちのギルドを守りたい、うつむいていたくない。だからあたしは最後まで諦めない」

 

それでも尚、ルーシィは何とかしようと諦めることなく立ち上がる。

しかし、どこかの戦いの余波の揺れでフラつき、倒れてしまう。

 

「きゃっ!!」

 

「ルーシィ!!」

 

「うぅ……」

 

再び立ち上がろうとするルーシィの背後に何かの影が現れる。

 

「「時にはその想いが力になるんだよ」」

 

後ろから声が聞こえ、ルーシィはそちらへ視線を向ける。

 

「「君の想いは僕たちを動かした」」

 

「ジェミニ!!?」

 

なんとエンジェルが契約していた星霊の一体、ジェミニが立っていた。

 

「「ピーリッピーリッ」」

 

そしてジェミニは掛け声と共に、ポンッと音を立ててルーシィに変身した。

 

「僕たちが君の意志になる。5分後にこれを壊せばいいんだね?」

 

「ありがとう……」

 

思わぬ助っ人の登場にルーシィは涙を流して喜んだ。

喜んだ瞬間、また激しい振動がルーシィたちを襲う。

 

「ひゃっ……!」

 

「すごい振動だね……」

 

「だれが戦ってるんだろう?」

 

先程から何度も襲ってくる揺れにルーシィは少しビビる様子を見せ、ルーシィに扮したジェミニはあまりの揺れに驚き、ハッピーは誰が戦っているか不思議に思った。

しかしルーシィには何故か誰がこの揺れを起こすほどの戦いを繰り広げているかわかった。

 

「ハルト……」

 

ルーシィの心配する声が響いた。

 

 

 

巨体なニルヴァーナが転がることで核の部屋全体が揺れ、天井に刺さっていた釘がニルヴァーナに降りそそぐ。

ニルヴァーナは反転の魔法で落ちてくる釘を防ごうとするが、何故か魔法陣をすり抜け、ニルヴァーナの手に突き刺さった。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!!!」

 

ニルヴァーナは叫び、のたうち回るのをハルトは見て、ニルヴァーナの反転の魔法が効かずに傷がついたことに気づいた。

 

「あの釘なら魔法が効かないのか?」

 

ハルトは足元に砕けた釘に目を向けると、砕けた表面からミイラのようにシワシワになった腕が出ていた。

 

「人柱か……!」

 

「アアアアアッ!!!」

 

ブンッ!!!

 

ハルトが人柱に目をとられているとニルヴァーナが腕を振ってきた。

 

「ガッ……!!?」

 

ハルトは隙を突かれ、殴り飛ばされた。

 

「ち……ちくしょう……!!」

 

「アアアアアッ!!!」

 

瓦礫に埋もれたハルトにトドメを刺そうとニルヴァーナが飛びかかってくる。

しかしハルトはそのままでやられる訳はなく、近くに落ちていた釘を取って構えて、飛んできたニルヴァーナに突き刺す。

 

「アアアアアッ!!!?」

 

釘が突き刺さった腹から青い液体が飛び散り、ハルトにかかる。

ニルヴァーナは苦しみながらもハルトを掴み、投げられる。

 

「ぐっ…!!うっ!!」

 

ハルトは投げられ転がるが、ニルヴァーナから目を離さない。

ニルヴァーナは突き刺さった釘を抜き、血であろう青い液体を流しながらハルトに迫る。

 

「アアアアアッ!!!」

 

迫ってくるニルヴァーナにハルトは釘を持って立ち向かう。

釘を刺すように突き出すがニルヴァーナはそれを左に移動することでかわすが、ハルトは突き出した状態で左に向かって釘を振るってニルヴァーナにぶつける。

それも反転の魔法陣で防ごうとするが釘は魔法陣をすり抜け、ニルヴァーナにぶつかった。

 

「ア"ァ!?」

 

「やっパり効くのカ!!」

 

ハルトが振り抜いた釘を今度は右に振り抜き、ニルヴァーナにぶつける。

 

「ア"ッ!?」

 

しかし、右に振り抜いた釘をニルヴァーナは二本の手で掴み、ハルトごと持ち上げる。

 

「クそ!!」

 

「アアアアアッ!!!」

 

ニルヴァーナはハルトに向かって口からビームを放つ。

 

「がはっ!!」

 

モロに受けたハルトは朦朧とする意識の中、迫る腕を見ていた。

 

「アアアアアッ!!!」

 

ニルヴァーナの振り抜いた腕は落ちてきたハルトに直撃し、ハルトは天井に叩きつけられた。

叩きつけられた天井部分はハルトがぶつかったことで亀裂が入り、ハルトは減り込んでいた。

にるはさらに追撃しようと壁に這いつくばってハルトの所まで登って行き、複数の手を一気にハルトに叩きつけた。

 

「あ"……ぁぁ……」

 

ハルトは微かな呻き声を上げて下に落ちていきながら、ハルトを包んでいた魔力は消えていき、地面に落ちると部屋が球状のため、一番下まで転がっていく。

 

「ぐ……ぅぅ………」

 

完全に魔力が消えたハルトの体はニルヴァーナの攻撃で傷と火傷だらけになり、血は服に染み付き、焦げがあっちこっちにできていた虫の息だった。

それを見たニルヴァーナはハルトにトドメを刺そうと動き出す。

背中が不自然に膨れ上がり、元からあった6本の腕よりは細いが何十本の腕が生えた。

しかもその手のひらには目がついており、それらがハルトに一斉に向けられる。

 

「アアアアアッ!!!」

 

キュアァァァァァッ!!!

 

その目がニルヴァーナの叫び声とともに輝き、魔力の高まる音が聞こえ、ハルトを殺す準備を整える。

最早ハルトに起き上がる力が残っていなかった。

 

作戦決行まで残り1分。

それぞれが準備に入るのと同時にそれぞれの魔水晶が強く光る。

 

1番魔水晶

 

「うおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!」

 

「無に落ちろオオォォォォォォォッ!!!」

 

ジェラールに力を与えてもらったナツは黄金の炎を身に纏い、滅竜魔導士の最終奥義『ドラゴンフォース』を発動させて、ゼロと激突する。

 

2番魔水晶

 

「時間だ!!!!みんな頼むぜ!!!!」

 

グレイは手を合わせ、魔法の準備に入る。

3番魔水晶

 

「開け!!!!金牛宮の扉……タウロス!!!!」

 

ルーシィに扮したジェミニがタウロスを召喚する。

4番魔水晶

 

「ぬおおおおおおおっ! 力の香り(パルファム)全開~!!!!」

 

一夜はイモムシのように這いつくばりながらも、なんとか辿り着き、力の香りによりその肉体を筋骨隆々にする。

 

5番魔水晶

 

「ハルトさん……ナツさん……信じてます!」

 

ハルトとナツを信じたレインは魔力を高め、準備にはいる。

 

6番魔水晶

 

「力をかして……グランディーネ!」

 

ジェラールに魔水晶の破壊を任されたウェンディはジェラールに言われた通りのアドバイスを信じて、集中する。

 

7番魔水晶

 

「行くでごじゃるよー!!!」

 

翼を生やしたマタムネは既に準備ができており、いつでもいけるように構える。

 

8番魔水晶

 

「ハルト……ナツ……」

 

エルザは激戦を繰り広げているであろうハルトとナツの名前を呟いた。

 

 

残り時間が僅かになり、各部屋の魔水晶が激しく光り、その魔力がハルトがいる中央の部屋に集められ部屋全体が怪しい光に包まれ、ニルヴァーナ体全体に魔法陣のような光の線が走り、ニルヴァーナの体から魔力が溢れ出て砲門の前に集まる。

しかしハルトは体に力が入らず、倒れるしかできなかった。

ほぼ失いかけている意識の中、誰かの声が聞こえてくる。

 

『……ト…!………ルト…!ハ…ルト……!!』

 

(エ…ミリア……?ははっ……エミリアの声が聞こえて…きやがった……いよいよ死ぬときがきたってことか……)

 

ハルトはエミリアであろう声に耳を傾けて、目を閉じる。

 

(いいかもな……ここで死んでも………お前の…元に行けるなら………)

 

ハルトは完全に諦めた笑みを浮かべた表情になる。

しかし………

 

『起きて!!ハルトッ!!!』

 

閉じた目に映ったのはエミリアではなく、必死に叫ぶルーシィだった。

 

(ルーシィ!!!)「ゴホッ……!ゴホッ……ぐうぅっ!!!」

 

ルーシィが頭によぎったハルトは血が溢れ出る体を無理矢理動かし、立ち上がる。

立ち上がったハルトを見たニルヴァーナは捕まっていた壁からハルトに向かって飛んだ。

 

「まだ……死んでいられるかよオォォォォォォォッ!!!!!!」

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!!!!!」

 

ハルトの叫びとともにそれに対抗するかのようにニルヴァーナの叫びとともにニルヴァーナの全ての手の目から口と同様のビームが放たれる。

 

「付加(エンチャント)ッ……!!!」

 

残り僅かな体力と魔力を右拳に貯める。

ハルトの周りにビームがいくつも着弾するがハルトはニルヴァーナを見据え、足元に落ちている釘を自分の目の前に蹴り上げ、尖っている先端の逆の方に拳を打ち付ける。

 

「竜戟弾ッ!!!!!」

 

竜戟弾の勢いを利用した釘はニルヴァーナに真っ直ぐ向かって行く。

 

「アアアアアッ!!!!!」

 

ニルヴァーナは手を前に突き出し、串刺しにして食い止めた。

 

「オオオオオオォォォォォォォッ!!!!!!」

 

ハルトの叫びとともに竜戟弾の勢いは増し、ニルヴァーナの胴体に釘が突き刺さり、そのまま貫通し、ニルヴァーナの胴体に風穴を開けた。

そしてその瞬間、各部屋の魔水晶が一斉に破壊された。

各動力源を破壊された古代都市ニルヴァーナは8本の足から崩れ、街全体が崩れ始めた。

 

風穴を開けられたニルヴァーナは声も上げずに落ちていった。

ハルトは拳を突き出した状態で固まった状態から、腕が力が抜けたように下がり、体も力が抜けて膝から崩れ落ちて倒れた。

するとその部屋も崩壊を始め、ハルトは瓦礫の中に埋もれた。

 


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