FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第103話 禁忌の名

ニルヴァーナの発射を邪魔し、化猫の宿を救ったクリスティーナ。

それを見ていたエルザたちは歓喜した。

すると頭の中で声が聞こえてきた。

 

『き…きこ……聞こえ…る……聞こえるかい!!誰か!!僕の声を聞こえていないか!!?』

 

「この声は……!」

 

「ヒビキさんだ!!」

 

頭の中の声はレインが言った通りヒビキの声であり、彼の魔法『古文書』による念話だった。

 

『その声は…!!エルザさんとレインちゃんだね!!!よかった!!無事だった!!!』

 

「ウェンディたちもいますよ!!!」

 

「俺もいるぞ」

 

「せっしゃもでごじゃる」

 

『ハルト君も……!!よかった…闇に堕ちていないみたいだね』

 

「そう簡単に堕ちるかよ」

 

『私も一応無事だぞ』

 

『先輩!!よかった!!』

 

一夜も無事だったらしく、頭に声が響く。

 

「どうなっている? クリスティーナは確か撃墜されて……」

 

『壊れた翼をリオン君の魔法で補い…シェリーさんの人形撃とレンの空気魔法エアマジックで浮かしているんだ。さっきの一撃は、イヴの雪魔法にクリスティーナに積んである爆弾を加えたものなんだ』

 

『それに…今のでもう……魔力が………』

 

『イヴ!!!』

 

今のでどうやらイヴは魔力を使い切ったらしく、気絶してしまい、念話が途切れた。

 

「ありがとう…みんな」

 

「僕たちのギルドを守ってくれて……!」

 

ウェンディとレインがクリスティーナに乗っているボロボロになってまで守ってくれたヒビキたちに礼を言う。

 

『聞いての通り、僕たちはすでに魔力の限界だ。もう船からの攻撃はできない』

 

ヒビキがそう言うと同時に、クリスティーナの一部が爆発を起こし、ガクンッと高度を落とし始める。

 

「クリスティーナが落ちちゃうよー!!!」

 

『僕たちのことはいい!! 最後にこれだけ聞いてくれ!!!!時間がかかったけど、ようやく古文書の中から見つけたんだ!!!! ニルヴァーナを止める方法を!!!!』

 

ヒビキのその報せに、全員が目を見開いて驚く。

 

「本当か!!?」

 

『ニルヴァーナの足のようなものが8本あるだろう? その足…実は大地から魔力を吸収しているパイプのようになっているんだ。その魔力供給を制御する魔水晶が各足の付け根付近にある。その八つを同時に破壊する事で、ニルヴァーナの全機能が停止する。一つずつではダメだ!他の魔水晶が破損部分を修復してしまう』

 

「八つの魔水晶を同時に!!? どうやってタイミングを合わせるんですか!!?」

 

『僕がタイミングを計ってあげたいけど、もう……念話がもちそうにない。くう……!!』

 

「ヒビキさん!!」

 

「ヒビキ!!!」

 

クリスティーナが地面に叩きつけられたことによって、ヒビキの悲鳴がエルザたちの頭に響く。

 

『君たちの頭に、タイミングをアップロードした。君たちならきっとできる!!信じてるよ』

 

すると、その場にいる全員の頭に、ヒビキからの情報がアップロードされる。

 

「20分!?」

 

『次のニルヴァーナが装填完了する時間だよ』

 

つまり20分後にニルヴァーナが発射される直前に八つの魔水晶ラクリマを破壊する事。

裏を返せば、失敗すれば2度目はないという事である。

 

『無駄な事を……』

 

すると、ヒビキのものとは違う別の声が念話を通して頭に響く。

 

「!!!」

 

『誰だ!!?』

 

「この声…」

 

「あのブレインって奴の声でごじゃる!!!」

 

『僕の念話をジャックしたのか!!?』

 

『オレはゼロ。六魔将軍のマスターゼロだ』

 

その声の主は正体はゼロであった。

 

『六魔将軍のマスターだと!?』

 

『まずは褒めてやろう。まさかブレインと同じ〝古文書アーカイブ〟を使える者がいたとはな……だが、少し間違いがある。八つの魔水晶を同時に破壊してもニルヴァーナは止まらん!!!』

 

『なんだって!!?』

 

ゼロの口から衝撃的な言葉が発せられる。

 

『知らんのも当然だ。このことは古文書にも載っていない。ニルビット族がその存在を隠したくて仕方無かったものだからな……』

 

「どういうことだ!?」

 

『ニルビット族が滅んだのはニルヴァーナの所為だと言われているが、それは違う……全てはその存在のせいだからだ!!!』

 

衝撃の事実に全員が驚く。

 

『今は気分がいいから特別に話してやる。ニルヴァーナの核となるのはある存在だ。だがそれは魔法ではない。もっと特別なものだ。八つの魔水晶とそれを破壊すればニルヴァーナは崩壊する』

 

念話を聞いている全員が驚くが、それと同時に疑問に思った。

何故ゼロはこんなにもニルヴァーナの弱点を教えるのか? と。

言わなければ有利のはずなのにだ。

 

「なんでそのことを俺らに教えるんだ?言わなきゃいいだろうが」

 

ハルトが代表してそのことを聞くと、ゼロは突然笑い出した。

 

『ハッハッハッハッハッ!!!!お前ら如きがどうしようと無意味だからだ!!!!このオレが手出しもできないものだからなっ!!!!』

 

ゼロが答えたことに全員がさらに驚愕する。

今までのどの六魔よりも強いゼロが手出しができないと言ったからだ。

 

「そんな……」

 

「そんなものどうすれば……」

 

「…………」

 

絶望的な表情をするウェンディたちの中でハルトはただニルヴァーナの砲身を見ていた。

 

『聞くがいい!!光の魔導士たちよ!!!オレはこれより、全てのものを破壊する!!!!手始めに仲間を3人破壊した。滅竜魔導士に氷の造形魔導士、星霊魔導士、それと猫もか』

 

『ナツ君たちが…!?』

 

「そんなのウソよ!!!」

 

「そうだっ!!!あのナツさんたちがお前なんかに……!!!」

 

ゼロの話を聞いてヒビキは驚愕し、ウェンディとレインは否定の言葉を口にするが、ゼロは構わず話を続ける。

 

『テメェらは魔水晶を同時に破壊するとか言ったなァ? オレは今その八つの魔水晶のどれか一つの前にいる。ワハハハハ!!!!オレがいる限り、同時に壊すのは不可能だ!!!!』

 

そう言い残すと同時に、ゼロからの念話が途切れる。

 

『ゼロとの念話が切れた…』

 

 

(ゼロに当たる確立は1/8……しかもエルザとハルト以外では勝負にならんと見た方がいいか……それにゼロが言っていた存在のことをある

……)

 

頭の中でそう分析するジェラール。すると、突然シャルルが叫ぶように言葉を発した。

 

「待って!!! 8人も……いない…!? 魔水晶ラクリマ壊せる魔導士が8人もいないわ!!!!」

 

「わ…私……破壊の魔法は使えません……ごめんなさい…」

 

ウェンディが気まずそうに謝る。

ウェンディは補助の魔法は多く使えるが戦闘系の魔法は一切使えないそうだ。

魔水晶を破壊できるのはハルト、マタムネ、エルザ、ジェラール、レインの5人だ。

八つの魔水晶とゼロが言っていた存在を合わせた九つを破壊するにはあと4人足りない。

 

「こっちは5人だ、誰か他に動けるものはいないのか!!?」

 

エルザが念話を通してそう呼びかける。

 

『私がいるではないか』

 

『一夜さん!!!これで6人!!!』

 

これで動けるのは6人になった。

 

『まずい……もう…僕の魔力が……念話が…切れ……』

 

「あと4人だ!!誰か返事をしろーーー!!?」

 

エルザはそう叫ぶが、念話から帰ってくる返事はなかった。

すると……

 

 

『グレイ……立ち上がれ……お前は誇り高きウルの弟子だ。こんな奴等に負けるんじゃない』

 

リオンが念話を通してグレイに語りかける。

 

『私……ルーシィなんて大嫌い……ちょっと可愛いからって調子に乗っちゃってさ、バカでドジで弱っちいくせに……いつも…いつも一生懸命になっちゃってさ……死んだら嫌いになれませんわ、後味悪いから返事しなさいよ』

 

シェリーはルーシィに向けてそれぞれ念話を通して語りかける。

 

「ナツさん……」

 

「オスネコ」

 

「ナツさん……」

 

「ハッピーくん」

 

「ナツ……」

 

ウェンディたちが呼びかける。

 

「ルーシィ殿……」

 

「聞こえるだろ。ナツ……さっさと返事をしろ」

 

『オウ!!』

 

ハルトたちの言葉にナツが力強く答える。

 

『聞こえてる!』

 

『八つの魔水晶とよくわかんねーものを同時にぶっ壊す』

 

『運がいい奴はついでにゼロを殴れる……だよね?』

 

『あと18分。急がなきゃ…シャルルとウェンディたちのギルドを守るんだ』

 

上からナツ、グレイ、ルーシィ、ハッピーの順番で答える。

ヒビキの念話による仲間たちの呼び掛けにより、息を切らしながらもキズだらけになりながらも、しっかりとナツたちは起き上がった。

 

『も…もうすぐ念話が…切れる……頭の中に僕が送った地図がある……各…魔水晶に番号を…つけた……全員がバラけるように…決めて……』

 

『1だ!!!』

 

真っ先にナツが答える。

それを皮切りに皆が次々と番号を答えていく。

 

『2』

 

『3に行く!!ゼロがいませんように……』

 

『私は4へ行こう!!! ここから一番近いと香りパルファムが教えている』

 

『教えているのは地図だ』

 

『そんなマジでつっこまなくても……』

 

『僕は5へ行きます!!』

 

『ではオレは…!?』

 

『お前は6だ』

 

言いかけたジェラールの言葉を制し、代わりにエルザが言う。

 

『他の誰かいんのか?』

 

『今の誰だ!?てかエルザ元気になったのか!!』

 

『ああ、おかげ様でな……』

 

ナツたちはジェラールが記憶喪失だという事を知らず、未だに彼を敵と認識している。故にエルザはジェラールに声を出させまいと気を回したのである。

 

「マタムネ、お前は7だ。MAXスピードでぶつかったらいけるよな?」

 

「任せるでごじゃる!!!」

 

「俺は中央のやつに行く」

 

『大丈夫かハルト?ミッドナイトとの戦いで消耗しているはずだ。私が行ったほうがいい』

 

エルザから心配する声がかけられるがハルトは笑って返す。

 

「大丈夫だって、ミッドナイトからのダメージは魔力を食ってだいぶ回復してんだよ。それに……」

 

ハルトの顔が真剣なものになる。

 

「少し気になることもあるんでな」

 

ハルトの声色も真剣なものになったのを感じ取ったエルザはそれ以上何も言わなかった。

 

『わかった……なら私は8に行こう』

 

『おい!!!さっきの誰だったんだっ……』

 

ヒビキの念話が途切れてハルトとマタムネには全員の声が聞こえなくなった。

 

「さて、行くか。マタムネ、砲門のとこまで運んでくれ」

 

「ぎょい」

 

ハルトはマタムネに砲門のとこに運んでもらった。

砲門の大きさはちょうど人1人通れるくらいの大きさであった。

 

「俺はここから中心に向かう」

 

「ここから行けるでごじゃるか?」

 

「ああ、ここから嫌な匂いが流れてくる」

 

ハルトは暗闇で見えない先を睨む。

 

「わかったでごじゃる!ハルト気をつけるでごじゃるよ」

 

「お前もな」

 

マタムネは自分が担当する魔水晶に飛んで行った。

それを見届けたハルト砲身の中を踏み出す。

 

(この匂い……あの時のヤツに似ている……4年前のヤツに……!!)

 

ハルトは暗闇の中を進みながら、拳を握りしめた。

 

 

化猫の宿のギルドではマスターローバウル以外のメンバーが不安そうな表情をしてざわついていた。

 

「なぶら落ち着かんか!!!連合の者たちを信じて待っておれ!!!!」

 

「そうは言うけどよマスター!!!!ニルヴァーナが復活しちまったんだ!!!もうアレを止めることなんてできやしねえ!!!」

 

ローバウルが全員に向かって一喝するが、その中の1人がそれに反撃するかのように大声で答える。

 

「前はニルヴァーナを封印するのにニルビット族の凄腕の魔導士が何十人って死んだんだ!!!ウェンディたち連合軍はたったの十数人なんだろ!!?」

 

その男の必死な表情の言葉を聞いたローバウルは苦虫を潰した表情になる。

 

「なぶら……確かにな我々人間ではアレを完全に止めることはできん………」

 

 

ハルトは暗闇の中を匂いを頼りに進んで行くと光が見えた。

光に向かって行くと次第にその光は大きくなっていく。

そして、広く、高く開けた場所に出るとそこは他の石造りではなく黒い鉄板のようなもので覆われた場所だった。

そして人1人分はある釘みたいのが何本もそこら中に刺さっている。

 

「ここが……ニルヴァーナの中枢……」

 

ハルトがその光景を眺めていると上で何かが動く音が聞こえ、そちらを見るとそこには異様なモノがいた。

 

体全体が古代文字が書かれた古い包帯で巻かれ、顔は骸骨のようなモノで目の窪みは存在しなかった。牙のようなモノもある。

何より気味が悪いのがその背中から伸びている6本の巨大で長い腕だ。

それらは部屋の壁、釘と同様に黒い何かで出来た鎖で固定されていた。

その大きさはハルトの約3倍もある。

 

ハルトはその異様な存在を見て、動揺を隠せず後ずさりすると足に小石が当たり、下の方に音を立てながら転がって行く。

その瞬間、その音に気づいたソレは巨大な手のひらが開き、そこにある目も開き、ギョロギョロと動き、ハルトを見据えた。

その瞬間、ソレ自身がゆっくりと動き出す。

 

「………ァァァァ……ァァァアアアアアァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!」

 

耳が張り裂けそうになる叫びを上げてソレは動き出す。

ソレの名は………

 

 

ローバウルは額に汗を流しながら、ソレの存在を思い出す。

その汗は緊張からではなく、恐怖からくるものであるのは表情でわかった。

 

「ワシらをなぶら苦しめ、絶滅まで追い込んだ化け物………『超魔獣ニルヴァーナ』」

 


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