FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第101話 六魔の闇

対峙する気持ち悪そうなハルトとミッドナイト。

ミッドナイトが先手を打つ。

 

「スパイラルシュート」

 

ミッドナイトの手のひらから力の波動が回転しながらハルトたちに向かうが、それをハルトたちは上空に向かうことで避ける。

 

「覇竜の……!!うえっ……!」

 

「ちょっ!ハルト!!吐くんじゃなくて魔法を出すでごじゃる!!」

 

「わかってるけど気持ち悪くて……」

 

「なんで乗り物酔いなんてなったでごじゃるか!!」

 

「誰のせいだと思ってんだ……!!」

 

ハルトはマタムネを殴りたくて仕方なかったが、そんなことをしている場合ではない。

するとミッドナイトはハルトに向かって手を向けて何かを握るような仕草をする。

 

「ッ!マタムネ!!上がれ!!!」

 

「ぎょい!!」

 

ハルトたちが上がるとそこにミッドナイトの魔力が一箇所に集まるように収縮する。

 

「チッ」

 

「危ねえ」

 

「よく気づいたでごじゃるな」

 

ハルトはあの魔法はレインの服を縛り上げた魔法だと直感で感じ、あれを受けたら一発で終わりだと考えた。

 

「マタムネ、ヒットアンドアウェイで攻撃するぞ。ただしアイツの真正面に出るなよ!」

 

「ぎょい!!」

 

マタムネはミッドナイトを中心に旋回しながら近づく。

そしてタイミングを見合わせたマタムネはミッドナイトの背後を取ると一気に近づく。

 

「スパイラルペイン」

 

「ぐああぁぁぁっ!!!」

 

「うわあああぁぁぁっ!!!」

 

しかし、ミッドナイトは自分を中心に竜巻を発生させてハルトたちを近づけさせない。

 

「近づけないでごじゃる〜!!」

 

「あと1回だ!!あと1回だけでいい!!もう一回突っ込んでくれ!!」

 

マタムネはハルトの頼みを聞いてもう一度旋回しながら近づき、そして死角のところで一気に近づくが、ミッドナイトはそれを予測していたようでマタムネが近づいた瞬間、2人の方を振り向いた。

 

「2回も引っかかると思ったの?これで終わりだよ」

 

「ま、マズイでごじゃる!!」

 

「いいや!このまま突っ込め!!」

 

「本気でごじゃるか!!?」

 

「本気だ!!」

 

「う〜…どうなっても知らないでごじゃるよ!!」

 

マタムネは減速していたところをもう一度加速して、ミッドナイトに突撃する。

 

「スパイラルペイン」

 

再びミッドナイトは力の竜巻をハルトたちに向けるが、ハルトはそれを見据えていた。

 

「覇竜の……」

 

ハルトは腰に拳を溜めて構え、ミッドナイトの魔法が眼前に迫った瞬間、それに向けて拳を振るった。

 

「剛拳!!!」

 

するとハルトの拳はいとも簡単にミッドナイトの魔法を打ち破った。

 

「何!?」

 

「オラァッ!!!」

 

「がはっ!!!」

 

ミッドナイトは簡単に魔法が破られたことに驚き、そのまま攻撃して来たハルトに反応ができずに殴り飛ばされてしまう。

ミッドナイトは起き上がるがその目は信じられないと言った表情だった。

 

「な、何が……」

 

「何が起こったかわからねえか。俺の魔法がお前の魔法を吸収したんだよ」

 

ハルトの魔法『覇の滅竜魔法』の特性『統合』は相手の魔法を自分にとって最も相性のいい属性に変えて吸収するといったものだが、その最も相性のいい属性というのが無属性なのだ。

付け加えるとそれぞれの属性により変換効率は異なり、複数の属性が混ざった魔法などはほぼ吸収できない。

しかし同じ無属性の魔法ならほぼ吸収できるのだ。

ミッドナイトの魔法『屈折』は無属性の魔法。

それに対してハルトの魔法『覇の滅竜魔法』も無属性の魔法。

ハルトは『屈折』の魔法しか使えないミッドナイトにとってはまさに天敵と言ってもいい相手だった。

 

「まだだ……僕は父上に託されたんだ。六つの祈りを……」

 

ミッドナイトはふらつきながらもたちあがる。

 

「そうか。なら俺も……」

 

ハルトは左手の拳を右手の手のひらと胸の前で合わせて、構える。

 

「仲間の想いを背負ってんだ」

 

両者は再びぶつかり合った。

 

 

その頃ルーシィたちはコブラを打ち倒したナツがブレインによって新たな六魔将軍にされそうなところをルーシィ、グレイ、ジュラに発見された。

そしてブレインの口からニルヴァーナの第一の標的がウェンディたちが所属する化猫の宿だと言われ、何故だと問いかけるもブレインがルーシィたちを殺そうとするが聖十のジュラが圧倒的な力で打ち倒した。

驚愕するルーシィたちのところにウェンディたちが慌てた様子で空からやって来た。

 

「みなさーん!!」

 

「大変でーす!!」

 

「やっぱりこの騒ぎはアンタたちだったのね」

 

「なんでナツ君そんなに伸びてるのー?」

 

「ウェンディ!レイン!」

 

「この都市……私たちのギルドに向かってるかもしれません!!!」

 

「らしいが、もう大丈夫だ」

 

「え? ひゃっ」

 

「わっ!」 

 

足元に倒れているブレインは見て小さく悲鳴を上げるウェンディとレイン。

 

「あのコブラってヘビ使いも向こうで倒れているし」

 

「じゃあ…」

 

「ニルヴァーナを操っていたのがブレインだとすると、こいつを倒した今、この都市も止まるはずよ」

 

「よ…よかったぁ……」

 

ルーシィの説明にウェンディとレインは安心した表情になる。

 

「気に入らないわね、結局化猫の宿ケット・シェルターが狙われる理由はわからないの?」

 

「まぁ深い意味はねえんじゃねーのか?」

 

「たまたまだよ、きっと」

 

「気になる事は多少あるが、これで終わるのだ」

 

「お…終わってねえよ……早くこれ…止め……うぷ」

 

「ナツさん!!!まさか毒に…」

 

 

「ウェンディ、早く解毒を!!!」

 

 

「オスネコもよ!! だらしないわね!」

 

「大丈夫ー?」

 

「あい」

 

乗り物酔いと毒で苦しんでいるナツとハッピーを発見したウェンディは、大急ぎで2人の治療にあたった。

 

「デカブツが言ってたな、制御してるのは王の間だとか」

 

「リチャードさんだね」

 

「中央だって言ってたから……あの建物ね」

 

「あそこに行けば、ニルヴァーナを止められるんだ」

 

そう言うと、その場にいた一同はニルヴァーナを止める為、王の間へと向かって行ったが……

 

「どうなってやがる……」

 

「何これ…」

 

「む…」

 

その頃、王の間へとやって来たグレイたちは、困惑の表情を見せていた。

 

「王の間ってここよね? なのにそれらしきモノが何一つないじゃない!!!」

 

王の間にやって来たはいいがそこには操作するものなどはなく、ただ少し荒れた地面があるだけだった。

 

「ぬうぅ…」

 

「くそっ……ブレインを倒せば止められるモンかと思ってたけど……」

 

どうすればいいかと頭をひねるグレイたちのよそではウェンディがナツとハッピーの解毒を行なっており、すでに解毒は終わっているのだがナツの顔色は優れない。

 

「どうしよう? 解毒の魔法をかけたのにナツさんが…」

 

「おおお…」

 

「こんなに苦しんでる……」

 

「ナツは乗り物に弱いんだよ」

 

「情けないわね」

 

「乗り物酔い? だったら、バランス感覚をやしなう魔法が効くかも」

 

そう言うとウェンディは、手に淡い光を集め、ナツにその光をゆっくりと流し込む。

 

「トロイア」

 

「! おお!?」

 

すると、目をパチッと開いたナツはゆっくりと起き上がり、その場で何やら確認するように飛び跳ねたりなどする。

 

「おおおおおっ!!!平気だっ、平気だぞっ!!!!」

 

先ほどまでの乗り物酔いがウソのように元気になったのである。

 

「よかったです、効き目があって」

 

「すげーなウェンディ!! その魔法教えてくれ!!!」

 

「天空魔法だし、ムリですよ」

 

「これ…乗り物って実感ねーのがアレだな。よし!! ルーシィ、船とか列車の星霊呼んでくれ!!!」

 

「そんなことをしてる場合じゃないでしょーが!!!」

 

はしゃぐナツにルーシィが叱咤するがナツはなおそれでもはしゃぐ。

 

「止め方がわからねえんだ。見ての通り、この部屋には何もねえ」

 

グレイの言葉を聞いて、ナツは真剣な顔をして一旦止まる。

 

「でもニルヴァーナの制御が出来るのはここだって、リチャードさんが言ってたし」

 

「リチャード殿がウソをつくとも思えん」

 

「止めるとかどうとか言う前に、もっと不自然な事に誰も気づかない訳!?」

 

シャルルの言葉を聞いて、全員の視線がシャルルに集中する。

 

「操縦席はない、王の間には誰もいない、ブレインは倒れた。なのに何でこいつはまだ動いてるのかって事よ」

 

シャルルの言う通り、思いつく限りのニルヴァーナを止める方法は全てクリアしているにも関わらず、変わらずニルヴァーナは目的地へと向かって動き続けている。

 

「まさか自動操縦!?」

 

 

「もしかしたらニルヴァーナ発射までセットされてる可能性もあるかも〜」

 

「そ…そんな……」

 

「僕たちの…ギルドが……」

 

ミントの言葉にウェンディとレインは目に涙を落ち込む。

ふと、その時ウェンディの頭にジェラールがよぎった。

 

「もしかしたらジェラールなら……!」

 

「ウェンディ?」

 

「皆さん!私心当たりがあるので探してきます!!レインも行こう!!」

 

「う、うん!」

 

「ちょっとウェンディ!待ちなさい!!」

 

「待ってよ〜」

 

ウェンディたちは飛び出して行ってしまった。

 

「アタシたちはどうしよう?」

 

「ウェンディたちが失敗したときのために何か探そうぜ」

 

「おう!!」

 

「あいさ!」

 

「うむ」

 

その時5人の頭の中に声が響いた。

 

『みなさん、聞こえますか?』

 

「「「!!」」」

 

突然誰からの声が全員の頭に響いてきた。

 

『私デス、ホットアイデス』

 

 

「リチャード殿!?無事なのか!?」

 

念話越しにリチャードがミッドナイトに敗れ、皆で協力してミッドナイトを倒してくれと頼んだ。

ミッドナイトがニルヴァーナの操縦を操っているらしい。

そして今、ミッドナイトは王の間の真下にいるとも伝えられた。

 

「リチャード殿……」

 

「王の間の真下って……この下だよね!?」

 

「おし!! 希望が見えてきたぞ」

 

「強い奴か……燃えてきたぞ」

 

ニルヴァーナを止める希望が見えて全員に気合が入る。

 

「行くぞ!!!」

 

そして、ミッドナイトが待つ王の間の真下を目指しだした。

 

 

 

それがブレインの最後の罠だと知らずに……。

 

 

場所は小さな村にある魔導士ギルド、化猫の宿

 

「みんなー大変だァー!!!ニルヴァーナがここ向かってるぞ!!!」

 

「何!?」

 

その村の中央にあるネコを模したテント型のギルドに一人の男が駆け込んできて、その報告にギルドの面々は騒然としていた。

 

「マスター!!!」

 

「なぶら」

 

化猫の宿のマスターローバウルは一言そう言うと、目の前のグラスに酒を注ぎ、そのまま注いだ酒を飲まず、ビンに入った酒をラッパ飲みした。

 

「えーーーっ! ラッパ飲みすんなら注ぐなよ!!」

 

「なぶら」

 

「てか、ニルヴァーナが向かって……」

 

「何!?誠か!!?」

 

「飲み干してからしゃべってくれ!!!」

 

ローバウルは口に入れた酒を吐き出しながら驚愕の言葉を口にした。

 

「ニルヴァーナがここに向かって……これは運命か偶然か、なぶら……」

 

「ウェンディとレイン、無事だといいんだが…」

 

「ああ……いざって時は、オレらじゃ役に立てねえし……」

 

「ごきゅごきゅ……安心せい」

 

「飲めってちゃんとー!」

 

ラッパ飲みした酒を再び吐き出しながらしゃべるローバウルにギルドメンバーがツッコミを入れる。

 

「光の魔力は生きておる。なぶら大きく輝いておる」

 

ローバウルのその言葉に歓声を上げるギルドメンバーたち。

 

「けど、これは偶然じゃないよな」

 

「オレたちの正体を知ってる奴がいたんだ」

 

「だからここを狙って」

 

それでもなお、不安の声を上げるメンバーたち。

 

「なぶら…」

 

「長ェ付き合いだが、未だに『なぶら』の意味がわからん」

 

「マスター、避難しようぜ!」

 

「ニルヴァーナは結界じゃ防ぎきれねえ!!」

 

「バカタレがァ!!!!」

 

逃げようと提案するメンバーたちを、ローバウルが一喝する。

 

「アレを止めようと、なぶら戦っている者たちがいる。勝利を信じる者は動く必要などない」

 

ローバウルの言葉に、静まり返るギルドメンバー。

 

「なんてな…」

 

そう言って酒瓶をテーブルの上に置くローバウル。

 

「時が来たのかもしれん。ワシらが禁忌に手を出した罪を清算する時がな」

 

そう呟くローバウルの表情はどこか寂しげであった。

 

 

その頃、ハルトとミッドナイトの戦いは佳境に入っていた。

 

「覇竜の旋尾!!!」

 

「ぐはっ!!」

 

ハルトの回し蹴りがミッドナイトの鳩尾に深く入る。

 

「ハルト!!一気に追い込むでごじゃる!!!」

 

「わかった!!覇竜の……咆哮ォッ!!!」

 

「くっ!!」

 

ハルトのブレスはまっすぐミッドナイトに向かうがミッドナイトが腕を振るうとブレスは不自然に曲がり、ミッドナイトの横にあった建物に当たった。

 

「ハァ……ハァ……僕は…まだ負けるわけには……」

 

「案外しぶてぇな……何回も攻撃が当たってんのに倒れやしねぇ」

 

「僕は最後の祈りだ。負けるわけにはいかない」

 

「その祈りってのは何だ?……お前らの目的は?戦って感じるんだよ。お前……何を怖がってんだ?」

 

ハルトの言葉にミッドナイトの肩がピクリと動いたのをハルトは見逃さなかった。

ハルトはミッドナイトが何かから逃げているような印象を持っていた。

 

「怖がっている………か、そうだね……僕たちはあの日々から逃げている」

 

ミッドナイトは顔を上げて上空にいるハルトを見る。

 

「僕たち六魔将軍は『楽園の塔』を建設するために連れ去られた子供達さ」

 

「なんと!?」

 

「エルザと同じなのか!!?」

 

マタムネとハルトはミッドナイトの言葉に驚く。

 

「エルザ、僕たちを裏切った女……っていう設定だったよね。そのほうが都合がいいってジェラールも言っていたよ」

 

「お前、ジェラールも知ってるのか」

 

「今、そのジェラールがエルザと一緒にこのニルヴァーナにいるって言ったら、君はさらに驚くかな?」

 

「なんだと!?ジェラール生きてたのか!!」

 

ハルトが動揺するが、ミッドナイトはそれを流す。

 

「まぁ、いいや。あとでどうせエルザは殺すし、ジェラールは闇に落ちてこちら側に戻るさ」

 

ミッドナイトがニヒルな笑みを浮かべてそう言うが、ハルトはそれを鼻で笑った。

 

「わかってねぇな。お前ら」

 

「何?」

 

「俺もそんなにジェラールを知らねぇけどよ。少なくともジェラールはもう闇に落ちねえよ。エルザが一緒にいるんだからな」

 

ハルトは自信がある表情で言い切る。

それはジェラールの光を、そしてエルザを信用しているから言えるのだ。

それを聞いたミッドナイトの体が震える。

 

「そんなもので……あの地獄が振り払えるか……あの闇は消えたりしない」

 

ミッドナイトの呟きが終わるのと同時にどこからか真夜中を知らせる鐘の音が鳴り響く。

 

「なんでごじゃる?」

 

「真夜中に僕の歪みは極限状態になる」

 

突然ミッドナイトの体が黒く染まり、膨れ上がる。

そして漆黒の化け物になった。

 

「味あわせてあげるよ……僕たちの闇を!!!」

 

ハルトは再び構え直し、体から魔力を放出させ、自身を強化させる覇王モードになる。

 

「やってみろ……お前の歪みも!!闇も!!ぶっ飛ばしてやるよ!!!」

 


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