FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第100話 古代都市ニルヴァーナ

ニルヴァーナはその足元に多くの闇ギルドの人間がいるにもかかわらず、その重い足を進める。

 

「うぶぅ……!!」

 

「ハルト!!止まっちゃダメよ!!止まったら気持ち悪くなっちゃうわ!!」

 

「んなこと言ったって……うぷっ………!!」

 

「こうなるとナツ並みに使えねえな……」

 

動くということはそれが生き物でない限りハルトの乗り物酔いが発生してしまうということであり、案の定ハルトは顔を青くして気持ち悪そうにした。

 

「ハルト!!これはタコ!!そう思えば気持ちにならないでしょ!!」

 

「それでも……むりぃ……」

 

ハルトは捕まっていたニルヴァーナの足からズルズルと横に落ちて行く。

 

「バカ!!力を入れろ!!」

 

「ハルト!!」

 

「おおおぉぉぉぉ……?」

 

とうとうハルトの腕から力が全て抜けて落ちてしまう。

 

「きゃああぁぁぁっ!!!」

 

「ハルトー!!!」

 

そこに空からハルトを追う影が現れた。

 

「大丈夫でごじゃるか? ハルト」

 

「お?」

 

「マタムネ!!」

 

「はぁ……」

 

ルーシィは喜び、グレイは安心したように息を吐いた。

 

「おお……マタムネ……お前…かっこよすぎ……」

 

「ふふん!もっと褒めてもいいでごじゃるよ!!」

 

「だけどエンジェルの時のことは忘れねえ」

 

「………」

 

ハルトのジト目にマタムネは固まってしまう。

 

「ハルト!!お前らはそのまま上に行け!!俺たちはその穴から中に入ってみる!!」

 

「おう!!」

 

「ぎょい!!」

 

ハルトたちは上に向かうとそこには古代都市が広がっていた。

 

「こりゃぁスゲぇな……」

 

「だいぶ広いでごじゃる。六魔将軍を探すには一苦労でごじゃるよ」

 

「あの一番高い塔に行ってみないか?」

 

「ぎょい!!」

 

ハルトが都市の中央にそびえ立つ塔を指差して、そこに向かうと塔の頂上は舞台のように広がっており、そこにはコブラと何かの魔法陣を展開しているブレインの姿があった。

 

「マタムネ!!あそこに向かって降下だ!!」

 

「ぎょい!!」

 

ハルトの指示でマタムネは降下し、それと同時にハルトは魔力を振るい、その場所を破壊した。

 

「オラァッ!!!」

 

「ぐっ!!」

 

「アーウェングス!!?もうここにたどり着いたのか!!コブラ!!操作を邪魔させるな!!!」

 

「わかってる!!」

 

ハルトが再び上空に上がるとそこにハッピーに抱えられたナツがやって来た。

 

「お!ハルトじゃねえか!!」

 

「マタムネも!」

 

「ナツ!ハッピー!お前らも来てたのか」

 

「ナツ殿と合流できたでごじゃるか」

 

ナツはコブラの部下に足止めされジェラールがいたニルヴァーナの封印場所に行けなかったが、ちょうどニルヴァーナの足部分に立っており、偶然にも足にしがみついた。

しかし、ハルト同様に乗り物酔いになってしまったナツはこれまたハルト同様に足から滑り落ちたが、マタムネと一緒に解放されたハッピーがナツを掴んでここまでやって来た。

 

「ナツ、あそこにブレインが見えるだろ」

 

「おう」

 

「あいつがニルヴァーナを動かしているみてえなんだ。あいつを倒してしまえば俺たちの勝ちだ!」

 

「よっしゃあ!!さっさと倒しちまおうぜ!!」

 

「させるかよ」

 

そこに羽が生えたキュベリオスに乗ったコブラが現れる。

 

「ブレインのところには行かさねえ」

 

「ハルト、ここは俺に任せろ!!お前はブレインのところに行け!!」

 

「ああ!任せたぞ!!」

 

ナツがコブラに向かって行き、ハルトはブレインに向かうが、それより早くコブラはハルトの前に立ち塞がった。

 

「なっ!?」

 

「聞こえてんだよ!その動きはァ!!」

 

キュベリオスが尻尾を振り下ろし、ハルトたちにぶつける。

 

「がっ!!」

 

「ぎゃっ!!」

 

「ハルト!マタムネ!てめぇ!!ハッピー!!」

 

「あい!!」

 

ナツたちがコブラに向かうが、コブラはそれもヒラリとかわし、キュベリオスの攻撃を与える。

 

「がっ!!」

 

「うわっ!!」

 

ナツも吹き飛ばされてしまい、ハルトとともに並ぶ。

 

「アイツ、オイラたちの動きがわかってるみたいだ!」

 

「このままじゃブレインのところに行けないでごじゃる!」

 

「わかっているんじゃねえ。聞こえるんだよ。お前らの動きは……」

 

ハッピーとマタムネの言葉もコブラには聞こえているようで、不気味な笑みを見せる。

 

「かかってこい。滅竜魔導士ども」

 

コブラが挑発するように手招きすると、ハルトとナツは頭にカチンときた。

 

「おっしゃあっ!!」

 

「やってやるよ!!」

 

ハルトたちはコブラに一直線に向かい、拳を握るがマタムネはコブラにぶつかる瞬間に急に方向を変え、コブラを避ける。

 

「だから、聞こえてんだよ!!」

 

コブラはナツの腕を掴み、キュベリオスがハルトとマタムネを叩き落とす。

 

「くそっ!!」

 

「いたっ!!」

 

「ハルト!!」

 

「おい!よそ見なんかしてていいのか?」

 

「がはっ!」

 

叩き落とされたハルトたちにナツは声をかけた瞬間、コブラが腹にパンチをくらわす。

 

「クソォ!アイツ邪魔だな!!」

 

「考えがわかるみたいだね」

 

「考えがわかる……マタムネ」

 

「なんでごじゃる?」

 

ハルトは何かが思いついたようでマタムネに耳打ちする。

 

(別のことに集中して行動を読めなくする?無駄だ!行動するときに必ずその動きが頭で考える!!)

 

再び2人同時に突撃するとコブラはハルトを抱えるマタムネの心を聞くと……

 

(オッパイオッパイオッパイオッパイオッパイオッパイオッパイオッパイオッパイオッパイ!!!!!)

 

「はぁ!!?」

 

コブラが驚いたすきをついて、マタムネは突き抜ける。

 

「しまった!!」

 

「オラァ!!火竜の鉄拳!!!」

 

「ぐっ!!」

 

通り抜けたハルトを目で追ったすきにナツはコブラに鉄拳を放つ。

コブラは咄嗟に腕で防ぐが当たったところは少し火傷し、腕は痺れる。

 

「お前の相手は俺だろうがァ!!!」

 

「餓鬼が……!!」

 

コブラの顔に怒りが滲み出てきながらも構えた。

 

 

ハルトたちはコブラを通り抜け、ブレインがニルヴァーナを操作する玉座の間にやってきたがそこにはブレインの姿がなく、魔法陣だけが展開されてあった。

 

「アイツどこいった!!」

 

「ハルト!今はニルヴァーナを止めるのが先でごじゃる!!」

 

「わかってる!」

 

ハルトは中央の大きな魔法陣に手を向けて、操作するがハルトは苦虫を潰したような顔をした?

 

「ダメだ…….止められない」

 

「なんででごじゃる?」

 

「完全に自動操縦っぽいのになってる。俺じゃ解除できねえ。カミナがいればな……」

 

「じゃあ、どうするでごじゃる!?」

 

「ブレインを探すぞ。アイツを倒せば止められるはずだ」

 

ハルトが周りの匂いを嗅ぐが、玉座の間は都市の一番高い塔の頂上にあるので風が強く吹き、匂いが消しとばされてしまっていた。

 

「ダメだ。匂いが消されちまってる」

 

「なら上空から探すでごじゃる!まだ、そう遠くに行ってないはずでごじゃる!!」

 

マタムネがそう言って再び上空に上がるが、ハルトにはもう一つ気がかりなことがあった。

 

(この街に充満している匂いは何だ?この邪悪でどす黒い魔力の匂いは……)

 

ハルトがブレインの匂いを追えなかったのは風だけでなく、街全体に広がる邪悪な魔力の匂いがハルトの鼻を麻痺させていたのだ。

 

「嫌な予感がするな……」

 

ハルトの独り言は風に消えていった。

 

 

ハルトたちがブレインを探し始めたころ、ルーシィたちも古代都市の中に入ることができ、ジュラとホットアイに合流した。

ジュラからホットアイが改心したことを説明してもらい、ホットアイからはニルヴァーナの説明がされた。

 

「この都市の名は古代都市ニルヴァーナ。ここはかつて、古代人ニルビット族が住んでいた都市デス。今からおよそ400年前、世界中でたくさんの戦争がありました。中立を守っていたニルビット族はそんな世界を嘆き、世界のバランスをとる為の魔法を作り出したのです。光と闇をも入れ替える超魔法。その魔法は〝平和の国ニルヴァーナ〟の名が付けられましたデスネ」

 

「皮肉なモンだな……平和の名をもつニルヴァーナが今…邪悪な目的の為に使われようとしているなんてよォ」

 

「でも…最初から〝光を闇に〟する要素をつけなきゃ、いい魔法だったのにね」

 

「仕方あるまい…古代人もそこまで計算していなかったのかもしれん。強い魔法には強い副作用があるものだしな」

 

「とにかく、これが動いてしまった事は大変な事デス。一刻も早く止めねばなりませんデスネ」

 

「当たり前だ」

 

「うん!」

 

「ブレインは中央の『王の間』からこの都市を動かしているのでしょう。その間、ブレインは魔法を使えません。たたくチャンスデス」

 

「動かすって、どこかに向かってんのか?」

 

「おそらくは……しかし私は目的地を知りませんデス」

 

グレイの問い掛けにホットアイが首を横に振って答える。すると……

 

「そうさ、父上とボクしか知らない」

 

「「「!!!」」」

 

「ミッドナイト!!?」

 

現れたミッドナイトに全員が驚く。

 

「ホットアイ、父上を裏切ったのかい?」

 

「違いマスネ!! ブレインは間違っていると気がついたのデス」

 

「父上が間違っている……だと?」

 

ホットアイの言葉を聞いたミッドナイトはギロリと睨みつける。

 

「人々の心は魔法で捻じ曲げるものではないのデス。弱き心も、私たちは強く育てられるのデスヨ」

 

ホットアイがミッドナイトに諭すようにそう言った瞬間、ミッドナイトは腕を振るうと、周りの建物が水平に真っ二つに切られる。

 

「!!!」

 

周りの建物は崩され、倒壊していくなかルーシィたちは陥没した地面に倒れていた。

 

「な…何が起きたんだ?」

 

「ひえー」

 

「ホットアイ殿が地面を陥没させ、我々を助けたのだ」

 

「あなた方は王の間に行ってくださいデス!!!六魔同士の力は互角!!!ミッドナイトは私に任せてくださいデス!!!」

 

そう言ってホットアイは柔らかくした地面をミッドナイトにぶつける。

 

「君がボクと勝負を?」

 

しかし、ミッドナイトに目立ったダメージはなかった。

 

「六魔将軍オラシオンセイス同士で潰し合いだと?」

 

「なんか、すごい展開になってきたわね」

 

「ホットアイ殿…」

 

まさかの六魔同士が戦い合う事態になるとは誰も予想してなかった為、困惑の声が上がる。

 

「さあ!!早く行くデスネ!!!そして、私の本当の名は『リチャード』デス」

 

そう言ってホットアイ、リチャードは優しい笑顔を向けて、自身の本当の名を明かした。

 

「真の名を敵に明かすとは……本当に堕ちたんだね、ホットアイ」

 

こうして、誰も予想しなかった六魔VS六魔の戦いが始まったのであった。

 

 

それと同じころレインたち化猫の宿のメンバーはニルヴァーナの端に到着していた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「疲れた〜…」

 

「ごめんね。シャルル無理させちゃって」

 

「ミントもお疲れ様」

 

「私のことはいいのよ」

 

「レイン〜おんぶして〜」

 

「アンタはシャッキとしなさいよ!!」

 

シャルルは少し疲れた顔で立ち上がり、ウェンディとレインを見る。

 

「それよりアンタたち、ここに来てどうするのよ?」

 

シャルルの問いかけに2人とも少し悩む表情をする。

 

「まだジェラールってのを追って……」

 

「違っ!!!あ…えと……それも、ちょっとはあるけど……私…なんとかしてこれを止めなきゃって!!」

 

「うん。僕たちにできることをやろうと思ってるんだ」

 

ウェンディとレインの言葉にシャルルは少し息を吐くが、その考えには賛成だった。

 

「そうね。私たちにできることをやりましょう」

 

そう言ってシャルルはこれからどうするか考え、まずニルヴァーナはどこに向かっているのか確かめるために森を見るとあることに気づいてしまった。

 

「ま…まさか偶然よね!? そんな事あるハズ…この方角…このまままっすぐ進めば…」

 

シャルルは信じられないと言いたげな表情をし、ニルヴァーナの進む方向を見据えながら、声を震わせて言い放つ。

 

「私たちのギルドがあるわ」

 

「「「え?」」」

 

 

それからハルトたちはしばらく飛び続けブレインの姿を探し回るが一向に見つからず、無駄な時間が過ぎていった。

 

「ハルト〜まだ見つからないでごじゃるか〜」

 

「こっちも必死に探してんだが、一向に見つからねえ。それどころか全員の匂いすらわからなくなっちまった」

 

「そんな〜、もうせっしゃ疲れたでごじゃるよ」

 

「おいおい落とさないでくれよ?ニルヴァーナに落ちたら、俺動けねえからな」

 

すると突然、ナツの竜の咆哮と聞き間違うかのような叫びが古代都市中に響き渡った。

 

「なんだこの叫び!?ナツか!!?」

 

「うるさいでごじゃる〜!!」

 

その瞬間、マタムネはあまりの煩さに手を離して耳を塞いでしまい、ハルトは落とされてしまう。

 

「あっ」

 

「アホー!!!」

 

ハルトは地面に叩きつけられる前に地面に向かって咆哮を放ち衝撃を弱くしたが、体はニルヴァーナに落下し即座に乗り物酔いが発動した。

 

「うぶ……」

 

「ごめんでごじゃるハルト」

 

マタムネはさっさとハルトを抱えようとした瞬間、2人の背後に足音が聞こえた。

 

「ここで会うなんて偶然だね」

 

「お、お前は…….!!」

 

マタムネは振り向くとそこにはミッドナイトが立っていた。

 

「ボクは幸運だね。君は父上から率先して殺すように言われてたんだ。安心して、すぐに楽にしてあげるよ」

 

ミッドナイトはリチャードと戦っていたはずだがその体には一切の傷もない。

淡々と表情を変えずにただその瞳には殺意があふれていた。

緊張した空気が流れるなか、マタムネが口を開いた。

 

「誰でごじゃる?」

 

「…………え?」

 

「あっ、連合の人でごじゃるか?すまないでごじゃる。女性以外はどうでもよかったでごじゃるから、あまり覚えてないごじゃる。それはそうと少し手伝って欲しいでごじゃる。ハルトを運ばなければいけないでごじゃるからな」

 

マタムネはミッドナイトにそう言ってハルトを抱えようとする。

どうやらマタムネはミッドナイトのことを一切覚えていないみたいでフランクに話しかける。

ミッドナイトも流石に頭にきたのか無言でマタムネに向かって腕を振るうと不可視の力がマタムネに襲いかかるが、当たる瞬間にハルトがマタムネの頭を掴み、地面に押さえつけてそれを避ける。

 

「あぶっ!何をするでごじゃる!!」

 

「バカ……あれは、敵だ……!!」

 

「え、そうでごじゃったか?」

 

「そうだよ。そしてさようなら」

 

ミッドナイトが再び腕を振るうがそれより早くマタムネはハルトを抱えて、飛び上がる。

 

「せっしゃを油断させるとはやるでごじゃるな!!!ここからが本番でごじゃる!!!」

 

「お前が単純に覚えていなかっただけだろうが……あ〜、まだ気持ち悪い」

 

「来なよ。本当の絶望を味あわせてあげる」

 


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