FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第98話 星霊合戦

ルーシィに圧倒的な実力を見せたエンジェル。

ルーシィの切り札、星霊からの魔力の譲渡も簡単に攻略されてしまった。

 

「震えているだけならこっちから行っちゃうゾ?」

 

ルーシィはエンジェルの言葉でハッと意識が恐怖から戻った。

 

(何震えてんのよ!ハルトを助けなきゃいけないでしょ!!)

 

ルーシィは立ち上がり、エンジェルと対峙する。

 

「そうじゃなきゃ面白くないゾ。簡単に鍵が手に入ってもつまらないゾ」

 

「何でそんなに鍵が欲しいの?アンタだって黄道十二門の鍵持ってるじゃない」

 

ルーシィはエンジェルがやたらと鍵を欲しがっているのが気になった。

 

「黄道十二門は星霊の鍵の中でもレア中のレア。星霊魔導士なら欲しがってもおかしくないゾ。まっ、私は欲しがるのは別の理由だけど」

 

「別の理由って何よ……」

 

エンジェルは少し勿体ぶりながらもルーシィにその理由を教えた。

 

「オリオンの鍵を手に入れるためだゾ」

 

「オリオンの……鍵?」

 

「話せるのはここまでだゾ。惨めに死んで欲しいゾ」

 

「っ!(幸いここは川……水がある!!ついてるわ)」

 

ルーシィはある鍵を手に取り川に入る。

 

「開け!宝瓶宮の扉!!アクエリアス!!」

 

「ジェミニ閉門」

 

ルーシィは自身が持つ最強の星霊、アクエリアスを召喚した。

 

「やっちゃって!!アタシも一緒で構わないから!!!」

 

「最初からそのつもりだ」

 

「ちょっとぉっ!!」

 

「全員まとめて吹っ飛びなぁっ!!!!」

 

ルーシィが何か言いたげだがアクエリアスは自分が持つ水瓶を振り上げ、波を起こそうとするが、それより早くエンジェルが鍵を取り出した。

 

「開け。天蠍宮の扉……」

 

「えっ!もう一つの黄道十二門!?」

 

「え?」

 

「スコーピオン!!!」

 

「ウィーアー!!!イェーイ!!!」

 

現れたのはスコーピオン。

すると水瓶を持っていたアクエリアスはゆっくりと水瓶を下ろした。

 

「アクエリアス?」

 

「スコーピォぉぉん♡」

 

「はいいっ!!?」

 

すると、そんなスコーピオンを見た途端、先ほどの恐ろしい形相が一変し、ネコ撫で声になるアクエリアス。

 

「ウィーアー、元気かい? アクエリアス」

 

「私……さみしかったわ。ぐすぐす」

 

「…………!!!」

 

今までに見た事のないアクエリアスの姿に、言葉を失い絶句するルーシィ。

 

「ま…まさか……」

 

「私の彼氏♡」

 

「ウィーアー、初めましてアクエリアスのオーナー」

 

「キターーーー!!!!」

 

以前から話題に上がっていたアクエリアスの彼氏を見て、思わずルーシィはそう叫んでしまう。

 

「スコーピオンの前で余計な事言ってみろテメェ…お? 水死体にしてやるからな…」

 

「はい……」

 

恐ろしい形相でそう脅迫され、頷くルーシィ。どうやらアクエリアスはスコーピオンの前だと猫を被っているようだ。

 

「ねぇん♪お食事に行かない?」

 

「オーロラの見えるレストランがあるんだ。ウィーアー、そう言うわけで帰ってもいいかい? エンジェル」

 

「どうぞ」

 

「ちょ……ちょっと!!!アクエリアス!! 待って!!! いやーーー!!!」

 

ルーシィの静止の言葉も虚しく、アクエリアスはスコーピオンと共に星霊界へと帰ってしまった。

 

「星霊同士の相関図も知らない小娘は、私には勝てないゾ」

 

「きゃっ!」

 

エンジェルの平手打ちを喰らい、川の中へと倒れるルーシィ。

 

(どうしよう…最強の星霊が封じられた…いや……もう一人いるじゃない!!!最強の星霊)

 

そう思い立ったルーシィはすぐさま立ち上がり、次の鍵を構える。

 

「開け!! 獅子宮の扉!!! ロキ!!!」

 

「王子様参上!!!」

 

現れたのはルーシィの星霊であり、妖精の尻尾フェアリーテイルの魔導士でもある星霊、獅子宮のレオこと、ロキであった。

 

「レ…レオ……」

 

ヒビキはロキと面識があるのか、彼の姿を見て少々驚愕していた。

 

「お願い!! あいつを倒さないとハルトとギルドが……!!!」

  

「お安い御用さ」

 

黄道十二門の中でも最強のレオを見たエンジェルは驚いた様子もなく、ほくそ笑むだけだった。

 

「言わなかったかしら? 大切なのは相関図」

  

「「!!」」

 

そう言ってエンジェルは更にもう一本の金色の鍵を構える。

 

「開け、白羊宮の扉。アリエス!!!!」

 

そして現れたのは…羊の角を生やし、モコモコとした服を着た少女の星霊アリエスであった。

かつては青い天馬ブルーペガサスの星霊魔導士カレン・リリカと契約していた星霊の1体で、彼女から手酷い扱いを受けていた星霊。ロキが星霊界を追放される切っ掛けとなった者と言っても過言ではない星霊であった。

 

「ごめんなさい、レオ」

 

「アリエス…」

 

「カレンの星霊」

 

「そ……そんな…これじゃロキまで戦えないじゃない」

 

ロキにとって戦い辛い相手であろうアリエスの登場に、ルーシィは声を震わせる。

 

「何でアンタがカレンの星霊を!?」

 

「私が殺したんだもの。これはその時の戦利品だゾ」

 

「あう」

 

まるで物を扱うかのようにポンポンとアリエスの頭を叩くエンジェルを見て、ロキは険しい表情を浮かべる。

しかし、険しい表情をしているのはヒビキも一緒であった。

 

(カレンを殺した……? この女が……僕の…恋人を……殺した? 星霊魔導士が…カレンの命を……)

 

体を震わせ、虚ろな目でそう考えるヒビキ。

しかし、ふと正気に戻る。

 

(いけない!!何を考えているんだ!!こんなことを考えたらニルヴァーナに心を奪われてしまう!ダメだ……考えちゃ……)

 

ヒビキはいけないとわかってもどうしても思考かそっちに行ってしまう。

一方ルーシィは、ロキとアリエスの予想外の再会に、複雑そうな表情を見せる。

 

「せっかく会えたのにこんなのって……閉じ…」

 

ロキを戻そうとするルーシィだが、その行動はロキ自身に止められた。

  

「見くびらないでくれ、ルーシィ。たとえかつての友だとしても……所有者が違えば敵同士、主の為に戦うのが星霊」

 

「たとえ恩のある相手だとしても、主の為なら敵を討つ」

 

「それが僕たちの……」

 

「私たちの……」

 

「「誇りだ(なの)!!!!」

  

そう言うと、ロキは両手に獅子の光…アリエスはモコモコとした羊毛を纏い、戦いを始めた。

 

「あっれ~? やるんだぁ? ま…これはこれで面白いからよしとするゾ」

  

(違う……こんなの、間違ってる……)

  

そんなロキとアリエスの戦いを、エンジェルは面白そうに眺め、対照的にルーシィは辛そうな表情を浮かべている。

しかしやはり、黄道十二門の中で最強のロキが優勢になり始める。

 

「う~ん…さすがに戦闘用星霊のレオじゃ部が悪いか…よーし」

 

エンジェルはそう言うと、カエルムに指示を出す。

 

「カエルム」

 

カエルムから発射されたレーザーは味方のアリエスもろとも、ロキを貫いた。

 

「がっ!」

 

「いぎっ!」

 

「あははっ!! うまくいったゾー♡」

 

(味方の星霊ごと…)

 

エンジェルの非道な行いに、呆然とするルーシィ。

 

「アリエス…」

 

「レオ…」

 

「すまないルーシィ」

 

(いい所有者オーナーに会えたんだね。よかった……)

 

「ぐっ!」

 

「ああっ!」

 

そして大きなダメージを負ったロキとアリエスは星霊界へと戻っていった。

 

「見たかしら? これが二体同時開門。んー♡強力なレオはこれでしばらく使えないゾ」

 

「信じらんない……」

 

「なにが~? どうせ星霊なんて死なないんだし、いーじゃない」

 

「でも痛みはあるんだ…感情だってあるんだ。あんた、それでも星霊魔導士なのっ!!!?」

 

ルーシィは涙を浮かべながらそう叫ぶが、足元がふらつき膝から崩れ落ちた。

 

「あ、あれ……?体に力が……」

 

「たいした魔力もないくせに星霊を召喚しまくるからだゾ。ジェミニ」

 

ジェミニが現れ、ルーシィに変身して刀剣になったカエルムを持ち、動けないルーシィに近づき、ルーシィを何度も蹴り、殴った。

 

「あぐっ!!ううっ……!!!」

 

「自分に殺される気分ってどう?」

 

「がはっ……ゲホッ、ゲホッ」

 

「あははははっ!!!!いい気味ー!!!!」

 

「いいきみ………」

 

ルーシィは苦しそうにもがく姿を面白そうに見ていると、ヒビキは闇に飲み込まれそうになっている。

しかし。ルーシィは蹴られながらもエンジェルを睨む。

 

「な~に? その目、ムカツクゾ」

 

「アリエスを解放して」

 

「は?」

 

「あのコ……前の所有者にいじめられてて……」

 

偽ルーシィはルーシィの言葉が続いていようと構い無しにカエルムで腕を切り裂いた。

 

「きゃああああああっ!!!!」

 

「人にものを頼む時は何て言うのかな?」

 

「お…お願い…します…レオ、ロキと一緒にいさせてあげたいの…それができるのは、あたしたち星霊魔導士だけなんだ……」

 

涙を流しながら必死でそう懇願するルーシィ。

 

「ただで?」

 

「何でもあげる…鍵以外なら、あたしの何でもあげる!!!」

 

「じゃあ命ね」

 

だがルーシィの必死の頼みを、エンジェルは無慈悲に切り捨てた。

 

「ジェミニ、やりなさい!」

 

エンジェルの命令に従い、ゆっくりとカエルムを振り上げる偽ルーシィ。

しかし偽ルーシィ……ジェミニはぷるぷると体を震わせて、その動きを止めた。

 

「ジェミニ!?」

 

「きれいな声が……頭の中に響くんだ」

 

そう言うジェミニの脳裏には……自身が変身しているルーシィ本人の記憶が浮かび上がっていた。

 

『ママ……あたし、星霊大好き』

 

『星霊は盾じゃないの!!!』

 

『目の前で消えていく仲間を放っておける訳ないでしょ!』

 

 

そしてその記憶は全てルーシィがどれほど星霊の事を想っているかを物語っていた。

 

「できないよ……ルーシィは心から愛してるんだ……ぼくたちを」

 

ルーシィの優しい心に触れて、ジェミニは涙を流しながらそう言い放った。

そしてそれを聞いたエンジェルは表情が驚愕へと変わる。

 

「ジェミニ…」

 

「消えろォ!!!この役立たずがっ!!!!」

 

そんなジェミニに激昂したエンジェルは、強制閉門でジェミニを消した。

すると突然ヒビキがゆっくりと立ち上がり、ルーシィのもとへと歩み寄っていく。

そして彼女の背後に立つと、何とヒビキはルーシィの首を締めるかのように手を置いた。

 

「え?」

 

「まさか…!! 闇に落ちたのかこの男!!!あは…あははは!!!」

 

そんなヒビキを見て、動揺するルーシィ、そしてまたもや大笑いを上げるエンジェル。

 

「ヒビ…キ…」

 

「じっとして」

  

しかし、ヒビキの両手はルーシィの首から離れ、そのまま両手をゆっくりと彼女の頭に置く。

 

「古文書(アーカイブ)が君に、一度だけ超魔法の知識を与える」

 

そう言うと、ヒビキは古文書アーカイブの力を使って、ルーシィの頭に魔法の知識を流し込む。

 

「うぁっ!」

 

「な…」

 

そんなヒビキの行動にルーシィは戸惑い、エンジェルは驚愕する。

 

「こ…これ…なに……!? 頭の中に知らない図形が……」

 

次々と流れ込んでくる魔法の知識にルーシィは戸惑う。

  

「すまない…だけど危なかった…もう少しで僕は闇に落ちる所だった。だけど彼女と星霊との絆が、僕を光で包んだ……君ならこの魔法を使えるはずだ……」

 

ヒビキはルーシィにそう語りながら頭に知識を流し続ける。

 

「おのれェ~っ!!! カエルム!!!やるよォーー!!!!」

 

それを見たエンジェルは、カエルムを構えてルーシィへと駆け出す。

 

「くっ…!あともう少しなのに……!!」

 

ヒビキの魔法が間に合わず、エンジェルが腕を振り上げた瞬間、エンジェルのルーシィたちの間を黄金の魔力のレーザーが遮った。

 

「なっ!!」

 

「え?」

 

「や、やらせるか……」

 

「ハルト!」

 

エンジェルは突然のことに驚き、ルーシィも呆然としてしまう。

魔法が飛んで来た方向を見ると苦しそうなハルトが口を開いていた。

ハルトがなんとか力を振り絞り、咆哮を放ったのだ。

 

「ハルト…!!こんな時に邪魔を……!!!」

 

「終わった……」

 

「っ!しまった!!!」

 

ヒビキは魔力を使いきったのか川の中に倒れる。

 

「頼んだ…ルーシィ……」

 

「天を測り、天を開き、あまねく全ての星々。その輝きをもって我に姿を示せ……テトラビブロスよ…我は星々の支配者…アスペクトは完全なり。荒ぶる門を開放せよ」

 

ルーシィがぶつぶつと呪文のようなものを唱え始めると、同時にエンジェルの周囲にいくつも小さな光の球体が出現する。

 

「全天88星」

 

「な…何よこれぇ! ちょっ…」

 

周囲に次々と出現する星のような球体に動揺するエンジェル。

 

「光る……ウラノ・メトリア!!!!!」

 

「きゃあああああああ!!!!!!」

 

まるで星空のような輝きがエンジェルを包み込み、一瞬で彼女をボロボロにして吹き飛ばした。

 

「!?」

 

そして光が消えると、ルーシィはハッと正気に戻る。

 

「きゃふん!!」

 

「ひっ!」

 

ルーシィはボロボロになって川に落ちてきたエンジェルにビクッと体を震わせて驚く。

 

「……!?あれ? あたし…何が起こったの?」

 

キョトンとした表情で辺りを見回すルーシィ。どうやら先ほどまでの事をまったく覚えていないようだ。

 

「ヒビキ!!マタムネ!!ハッピー!!」

 

ルーシィはとりあえず倒れている仲間を看病することにし、ヒビキを川から上げて、氷漬けにされたマタムネとハッピーは並んで置いておいた。

 

「ルーシィ、僕は大丈夫だからハルト君を……」

 

「うん!ハルト!!」

 

ルーシィがイカダの上でまた気絶しているハルトに近づくと背後からボロボロになったエンジェルがカエルムを持ちながら水の中から現れた。

 

「負け…な…い…ゾ……六魔将軍は…負け…ない……」

 

 

(なに…コレ…全然力が入らない…てか……なんでコイツ、こんなにボロボロなの!?

 

 

ウラノ・メトリアの影響で完全に魔力を使い果たしたルーシィは、その場から動く事が出来なかった。

 

「一人一殺…朽ち果てろォ!!!!」

 

カエルムを砲台へと変形させて、ルーシィに向かって砲撃を放つエンジェルだが、その砲撃は不自然にルーシィだけを外し、イカダをせき止めていた木を破壊してしまった。

 

「え?」

 

「は、外した……!?カエルム!!お前もか……!!」

 

カエルムもジェミニと同様にルーシィの星霊に対する愛を感じとり、わざとルーシィへの攻撃を外した。

 

「ハルト!!ハルトー!!!」

 

イカダをせき止めていた木が破壊されたのでハルトを乗せたイカダは川に流されていった。

ルーシィが必死にハルトを呼ぶが返事がなく、気絶しているようだ。

 

「ハルト!!ちょっと待って……よっ!!!」

 

ルーシィは残り少ない体力を使ってなんとかハルトのイカダに飛び乗ることができたが、それと同時に突然イカダは急流に乗りだしてしまった。

 

「ひっ〜〜〜!!!」

 

ルーシィは悲鳴を上げながらもハルトにしっかりと抱きつき、離れようしない。

イカダのスピードはどんどん上がっていき、なんと目の前には滝がみえていた。

 

「うそ!!?滝!!!!?」

 

今からではハルトを降ろすのも無理だと考えたルーシィはハルトを抱きしめ、2人は滝に落ちていった。

 

「きゃあああぁぉぉぁぁっ!!!!!」

 

 

その頃.封印が解かれたニルヴァーナへと向かっていたブレインは、顔に走った痛みに表情を歪める。

 

「バ…バカな……エンジェルまでが……」

 

ブレインがそう言うと同時に、彼の顔に刻まれた模様がまた一つ消えていく。

レーサーと戦ったグレイはリオンとのコンビネーションでレーサーの魔法を見破り、見事倒した。

その時もブレインの模様が一つ消えた。

 

「うぬらの死、無駄にはせんぞ」

 

そう呟くと、ブレインは再びニルヴァーナの黒い光へと向かって歩き出す。

 

「光崩しは直に始まるのだ!!!!!」

 

 

 


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