ちょっと進展する。
それではご覧ください。
先週で中間テストが終わり、今の授業はテスト返却となっている。一日で全教科返ってくるのは、正直嬉しい。文系は2位になり、理系も40点台に抑えて見せた。そんな俺は今日も外でパンを食べています。
「比企谷君比企谷君!」
今までだったら驚いてむせていたが、さすがにもう慣れてしまった。俺は声のした方へ顔を向ける。
「どうした?」
「見て見て!」
何やら上機嫌な太宰は、手に持っていた紙を俺の目の前で開いた。現国の解答用紙で、右下端には80という高得点が書かれていた。
「やったよ!」
「おおー、すげぇじゃん。頑張ったな」
「うん!比企谷君のおかげだよ、ありがとう♪」
「いや、俺はアドバイスをしただけに過ぎん。これは太宰の実力だ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、比企谷君が教えてくれたから、私は頑張れたの。ありがとね」
「それは、どういたしまして」
何だろう、このむず痒さは・・。普段人にお礼なんて言われるようなことしてないから、慣れないな。でも、いい気分にはなる。
「それでさ、もしよかったらなんだけど、お礼も兼ねて、日曜日に2人でお出かけしない?」
「え?」
こいつ今なんて言った?お出かけ?2人で?日曜日か・・・。
「え、いや、それは・・・」
「あ、もしかして、予定入ってた?」
突然の誘いに戸惑ってしまい、それを見た彼女は俺に予定があると思ったのか、シュンと肩を下げ、悲しげな表情をした。う~、ここで断ると俺の良心が傷つきそうだ。
「い、いや、予定はないけど」
「じゃあ、どうかな?お出かけ」
でも、太宰と2人で出掛けるという事は、その、所謂デートってことになるのか?本人はそんな気ではないのだろうけど、男子からしたら、こんなん意識しまくってしまうよ。
かと言ってボッチの俺には予定なんてあるはずもなく、断る理由も見つからないため、太宰と出掛けることになった。
「じゃあ、集合場所と時間はメールするね!」
彼女は上機嫌で、この場を去った。
その日の夜、太宰から『11時に駅前の時計下にきて。楽しみにしてるよ』とメールが届き、今は自分の財布と服を顧みている。
う~ん、何とも言えない。服は普段家から出ていないから、あまりおしゃれなのはもっていないし、財布の中は樋口さんが一枚。・・・・親に相談でもするかな。それらしい理由はあるから、多少はくれるだろう。
「どうしたのお兄ちゃん?そんな思い詰めた顔して」
「ん?小町か」
妹の小町が、開いていたドアから、入ってきた。
「どうしたの?財布と服とにらめっこなんかして」
「ああ、実は日曜に出かけることになってな。その準備だ」
「・・・へ?1人で?」
「いや、2人だけど」
俺がそう言うと、小町は俺を憐れんだ目で近づき、俺の肩をポンと置いた。
「お兄ちゃん、病院行こう」
「いやいやいや、病気でも妄想でもないから!失礼だぞ」
「小町は真剣だよ!」
ひ、ひでぇ・・・。冗談だと思っていたのに、ガチだったとは・・・。お兄ちゃん悲しい。
「ほら。こいつと行くんだ」
証拠を見せるため、太宰から先程送られたメールを小町に見せた。
「太宰春歌・・・。凄い名字だね。ていうか、女子!」
「そうだが・・・」
俺が妄想ではないと知った途端、小町はわなわなと震えだし、何かブツブツ言った後、勢いよく俺の部屋を飛び出した。途中階段から転げ落ちる凄い音が聞こえたんだが・・・。ちょっとは落ち着こうよ。
数分後、頭に包帯を巻いた小町が戻ってきた。そして手に握られていたのは、諭吉さんが5枚という夢のような光景だ。
「お兄ちゃん!はい!」
「お、おう」
その諭吉さん5枚を俺の胸板に押し付けてきた。この5万は、おそらく親父からねだってもらったのだろう。ご愁傷さま、親父。
「お兄ちゃん!デート頑張ってね!それと、服は小町が見繕ってあげる!」
おい、デートっていうなよ。折角意識しないよう、頭から離れさせていたのに・・。でも、服を見繕ってくれるのは正直嬉しいので、快くお願いした。
気合入りすぎて気持ち悪いと思われるかもしれないが、考えてもみろ。これを見ている女子の諸君、隣にいる男子が地味な服装だったら嫌でしょ?それこそ太宰の面目が危うくなってしまうかもしれないからな。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
また明日。