予告した通り、ほんのちょっと糖分を増やしました。
それではご覧ください。
太宰とのクリスマスデートから一日が経った。現在は25日の夕方。
『家族旅行に行ってきます!アデュー!』
再度、メモを頭の中で朗読した。家族旅行・・・ねぇ。
ついには俺を家族から外されたのか?何それ一番傷つくんだけど。冗談だろうけど。いいんだけどね、元々行かなくなったのは俺から何だし。
飯も用意されていないし。作れるからいいけど。なにこのやるせない感じ。自分の今の状況に心が痛む。
こうなったらアレだ。家族旅行したことを後悔させてやるくらい、いつも以上に豪華で美味い飯を作ってやる。俺の家事スキルをフルで活用してな。
そうと決まれば早速材料を買おう。
というわけでスーパーにやってきた。
「あ、八幡」
肉と野菜を見繕っていると、隣から聞き慣れた声が聞こえた。
「あれ?春歌?」
「もしかして、八幡も買い出し?」
「ああ。そんなところだ。春歌もか」
「そうなんだ。買い忘れがあったらしくてね。八幡の家は今から作るの?」
「ああ。家に誰もいなかったからな。俺が作るしかないんだ」
「ええ!どうして?」
「家族旅行に行っててな。俺を置いて・・・はぁ」
聞いてはいけないことを聞いたのかもしれないと、春歌が気まずそうにしている。なんか誤解してるみたいだから補足させとくか。
「別に気にしてないぞ。今まで誘いを断ったから自然になっただけだ」
「そうなんだ・・・」
俺がそう言うと、しばし考える姿勢をとった春歌。何か思いついたのか俺の袖をつまんだ。
「八幡。うちにおいで」
「え?・・いや、でも悪いだろ。家族水入らずなのに。かえって邪魔だ」
「そんなことないよ!お父さんもお母さんも喜ぶよ!私の八幡を一人にさせるもんですか!」
不覚にもこの言葉で泣きそうになってしまった。俺は袖をつまんでいる春歌の手を握った。
「抱き着いてもよかですか?」
「で、できれば人気のないところでお願いします・・・」
太宰家到着。家が見事にイルミネーションが装飾されていた。ここ通ったら絶対写真撮りたくなるよ。
「ただいまー」
「お、お邪魔します」
なんか親がいるとわかってると緊張する。一度深呼吸をし、落ち着いてリビングに入った。
「お?おかえり春歌。隣にいる人は?」
「あら、比企谷君じゃないの?どうしたの?」
「あ、ああ。どうも」
春歌が俺がいる説明をしている中、俺はただただポカーンと立ち尽くすことしかできなかった。目の前に広がっている光景に。サンタのコスプレをした春歌の母、トナカイの角をつけている、かなりカッコいい父親。ここまではしゃげる大人を見たのは初めてだから、どう反応すればいいのか分からなかった。
「どうかしたのかい?ぼ~っとして」
春歌の父親は、さっきから微動だにしない俺を心配してるのか、トナカイの恰好のまま近づいてきた。
「いや、お父さんたちの格好に驚いてるだけだよ」
「あ、そうかそうか。何、気を抜いてくれてもいいよ」
「ああ、はい」
「さあ、春歌が恋人を自慢してきたことだし、比企谷君を加えてパーティーを始めよう」
「何その始まり方!わざと?わざとなの!?」
こうして、何をしていいのか分からない、人生初、人の家でのクリスマスが始まった。
1時間後・・・・。そう、この一時間の間に、すっかり酒を飲んで酔ってしまった太宰両親は、俺と春歌に、質問という名の、罰ゲームをさせた。そして、途中から自分たちが語り始めたよ。酔った勢いで普通に禁句とか言っちゃったし。春歌と気まずくなっちまったよ。
俺達はそんな両親から逃げるように、部屋に入った。
「なんか、騒がしくてごめんね」
「折角のクリスマスだし。はしゃいだ方が楽しいだろ」
「そう。・・じゃあ、私たちもはしゃごうか!」
「おおっと・・ちょっとぉ?」
どうしたんだ?急に抱き着いてきて。この前の泊待った時も感じたが、やはり子供のような甘えん坊が出る時があるのか。
「お前、急に甘えん坊になるときあるな。なんだそれ?」
「わかんないけど、衝動的にそうなるんだ。八幡がいる時だけね。やっぱり安心できるのかな」
そう言って顔を近づけてきた。一瞬何かわからず動揺したが、すぐに理解したため、俺もそれに応えようと、同じことをする。
「あらあら~」
「成長したな。春歌」
「なっ!お父さんお母さん!何してるの!?」
あー、思いっきり見られちまったな。
「八幡、また今度ね」
春歌は両親に見られた事で一気に羞恥心が込みあがってきたのか、俺にそう言って顔を離そうとした。・・・・・・・そうはさせないぞ?
「は、八幡!?」
「俺は毎回恥ずかしい思いをさせられるからな。たまにはお返しさせろ」
「で、でも親の前で・・!」
その親の方を見ると、ニヤニヤしながらどこかへ行ってしまった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ちょっと積極的になっちゃったかな?
また明日。