俺ガイルの特徴である、名字と名前を被らせるという要素を一度も使ったことがないです。
それではご覧ください。
11月の下旬。本格的に冬が始まり、肌寒くなった。そうなると、いつも外で飯を食ってる俺は、この寒さに耐えなければいけない。いや、暑さにも耐えられたんだから、厚着すれば問題ないか。
でも、おそらく太宰は来てくれないだろうなぁ。・・・別に寂しくなんかないし。
「比企谷君寒くないの?」
突然両頬に温かいもので包まれた。毛糸みたいな感触。手袋までして来てくれたのか太宰は。
「寒いぞ。ただここを離れたくないんだ」
「夏にも聞いたよそれ。・・・・はい」
太宰は首に巻いてるマフラーを少し俺に与えてきた。
「これ、結構長いから入ると思う。もう少しくっつくから」
「ああ、サンキュー」
もうこういうのにも、すっかり慣れてしまった。元々俺が意識しすぎたってのもあるんだけどね。だって最初何したらいいか全然分からなかったし。初恋人だったからね。・・あ、でも太宰もそうだったな。しかも、恋愛感情も疎かったし。・・・やっぱり俺が単純にヘタレだっただけなのか。
「さすがに外は誰もいないね」
「そうだな。冬となると、テニスの練習も控えるんだろう」
毎日、テニスボールのはじける音を聞いていたから、物足りなく感じてしまう。あの銀髪の可愛い小柄な人は、ほぼ毎日、汗を流して練習してたなぁ。そいつが男子更衣室に入った時は度肝を抜かれたけど。初めて神は意地悪だとも思った。
「・・・・2人きりだね」
「まぁ、こんな寒い中外出る奴なんて俺ら以外いないからな」
校庭や後ろの通路を見渡しても、誰一人いない。校内は暖房がガンガンに効いてるからな。
「何もしてくれないの?」
「何かされたいのか?」
「・・・・うん」
いや、うんって言われても・・。俺だってしたいと思ったこともある。でも嫌がられるかもしれないから、抵抗あるんだよ。
「ん?」
「今は、頭を撫でることくらいしかできないな。俺、ヘタレだし」
「そっか。これも悪くはないけど。・・・・じゃ、しばらくはこっちからしようかな♪」
そう言うと太宰は、俺の肩に手を置き、俺の頬にキスをしてきた。
「お、おい?」
「ふふーん。しばらくは私からこうするから」
くっ!世の彼女がいる男子はこうやって手玉に取られるのか、恐るべし。俺も男の意地を見せてやる。
今太宰の顔は間近にある。太宰の顔が俺から離れる前に、両手で優しく抑え、キスを返してやった。頬ではなく口に。
「あ、あれ?・・・え・・」
太宰は顔を真っ赤にして見事に混乱している。さっきまで自分が優勢だったから油断したな。俺だってやるときゃやる目の腐った男ですよ。
「さて、もう昼休み終わりだ。行こうぜ」
「ちょ、ちょっと待って!マフラーまだ巻き付いてるから!」
あ、完全に忘れてた。ていうか太宰今引っ張ったろ?苦しかったんだけど・・・。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この八オリシリーズは、ほんのり甘くを目標にしています。
また明日。