小町はあまり出さないと思います。個人的に小町の八幡を振り回す策略が、あまり好きではないので。
太宰に渡したはずのプールのチケットで、何故か俺まで行くことになった今日この金曜日。絶好のプール日和だというくらいに、クソ暑い。
そんな俺は、男だからすぐに着替え終え、今は太宰を待っている。ああ、このジリジリと皮膚が焼ける感覚は好きではない。テレビでよく見る日焼けしたい人の気持ちが全然分からない。焼いて何かあるの?それ。
「お待たせ~」
「やっとか・・・。そんじゃ、行こうぜ」
「え、ちょっと。何で顔逸らすの?」
お願いだ、察してくれ。太宰のそのビキニタイプの水着を見ると、緊張で俺が恥ずかしい思いをする。
「それで、どうかな?この水着?」
そんな願いは届かず、太宰は水着を俺の眼前にもってきた。クッソ、似合ってる。けど慣れてないせいで、口が上手く回らない。
「もしかして、変?」
太宰は眉を下げて、シュンと肩を下げた。
「あい、いや、そんなことない。似合ってるぞ?」
「本当?」
「おう・・・」
「そっかぁ・・・。ありがとう♪」
太宰は笑顔になり、遊ぼう!、と俺の手を掴んでプールサイドへと向かった。
※ここから太宰視点
ここのプールは、遊具の種類が豊富で有名な場所だ。それ故に、いつ来ても飽きないと評判なのだ。
定番のウォータースライダーは4種類あり、高さは6Mほどのロッククライミングまである。
流れるプールは、流れるだけで何したらいいか、お互い分からないため、遊具だけで遊ぼうと決めた。
「どこにするんだ?」
「やっぱりウォータースライダーかな」
ここのウォータースライダーは2人乗りが2種類あり、それぞれ違うコースとなっている。
「はい。では、次の方ー」
私たちの番になり、係員さんが2人乗り用の浮き輪を渡してきた。
「どっちに座るんだ?」
どうしようかな・・。やっぱり前の方がいいかな?・・・・・・あ、でも、私が後ろになれば自然に比企谷君にくっついていられる。でも、比企谷君そういうの嫌いそうだし。一体どうしたら!
「彼女さんが前で、彼氏さんが後ろの方が安全だと思いますよ~」
にこやかな営業スマイルの係員さんが、手招きでささっ!と、誘導している。
か、彼女か・・・。やっぱり周りからはそう見えてるのかな?
「いや、彼女じゃないんですが・・・」
「ほらほら、彼氏なんだからリードしないと!」
比企谷君が一度否定したけど、全く意に返さず言葉のマシンガンを浴びせている係員さん。
「太宰、俺が後ろでいいか?」
さすがの比企谷君も参ったらしく、係員さんの言う通りにしようと提案してきた。もちろんOK。
私が前、比企谷君が後ろに座り、準備万端となった。
「それでは、いってらっしゃーい!」
係員さんに押し出され、スタートした。そして、思いのほか、押し出す力が強かったため、その衝撃で比企谷君に背中を預ける状態になってしまった。
今すぐ態勢を立て直そうと試みたが、滑る勢いがやはり凄いため、着地までこの状態でい続けなければいけなかった。
「大丈夫か?太宰」
「うん。結構勢いあったね。でも楽しい!」
比企谷君の様子を見ると、勢いのせいで滑ってる途中の事は頭から離れているらしい。よかったのか悪かったのか、よくわからない心境です。
※ここから八幡視点
その後も、数あるウォータースライダーに乗り、楽しんだ太宰。時間も忘れ、遊んでいたため、もう夕方になっていた。遊び疲れたから、お互い結構ヘトヘト。
今は、太宰を家まで送っている。
「楽しかったね♪」
太宰は顔を覗き込む形で、そう言った。
「・・・・ま、たまにはこんなのも悪くないな」
「素直じゃないなぁ・・・」
「いや、本心なんだけどな」
まぁ、人と遊ぶことなんて全くしてこなかったから、どう楽しもうか結構探り探りなところもあったけど。・・あ、そういや小町から家を出る時何か渡されたな。でも、かなり小さく折りたたまれているため、中は何かわからない、何かのポスターっぽいけど・・。
開いてみると、それは毎年行われている夏祭りの宣伝ポスターだ。
・・・・・・これを俺にどうしろと?
「何見てるの?」
小町に渡されたポスターを呆然と見ていたら、横から太宰が覗き込んできた。
「なんか、小町が俺にこれを渡してきてな。今は小町の真意を推理中だ」
ポスターを見せながらそう言うと、太宰も腕を組みながら考えている。そして、数十秒後、突然ハッと目を見開き、顔を赤くしながら、笑顔で拝み始めた。
この謎の行動に、困惑するしかない俺。
「夏祭り、一緒に行こう」
「ええ・・・」
自分でも分かるほど、俺は面倒くさい顔をした。その態度に、太宰もご立腹。
「折角小町ちゃんが教えてくれたんだし」
「・・・でも、俺とでいいのか?」
「私は、比企谷君と行きたいな」
風に揺れるポニーテール、ほんの少し首を傾けながらの笑顔、バックには朱い夕日。今の太宰は、とても絵になっていて、思わず見惚れてしまった。
「・・・しょうがない。行くか」
「本当!楽しみだな~♪」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
迷走中
また明日。