カタクチイワシは虎と踊る   作:ターキーX

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第三十八話 三角海域は鮫を食らう

遊園地北部・イベントエリア付近。

 

「……ん?」

「おお、アンチョビ殿! ご無事だったか!」

 

 目当ての物を車体に載せ、イベントブースから出てきたCV38は紅いテケ車と出くわした。車上から身を出していたしずかが声をかける。

 

「鶴姫さん、ラーテゾーンに向かうのか?」

「うむ、あの辺りにはまだ福田殿がいた筈。大学側の車両が復帰したとなると、彼女が危ない」

「分かった。私も一緒に行こう」

「……豆戦車二両でオイ車の相手はできないと思うぞ」

 

 アンチョビの言葉に操縦席の麻子が冷静なツッコミを入れる。

 

「倒すつもりはないさ。復帰したのがパーシングなら話が違ってくるけど、オイ車ならさっき言った通り使い道が出てくる」

「使い道? アンチョビ殿、どういう事だ?」

「ああ、それなんだが……」

 

 並走しつつ、アンチョビは自身の策を語る。

 遠くで遠雷めいた砲声が聞こえる。

 30両対30両で始まったこの試合も、激しい戦闘を経て現在の残存戦力は大洗側13両に対し、大学側9両。

 戦いは、まだ続いている。

 

 

 

劇場版カタクチイワシは虎と踊る 第三十八話 三角海域は鮫を食らう

 

 

 

「……姐さん、来てます。パーシング一両」

「一両だけか……辺りに僚機は?」

『見当たらないねー。チャーフィーが全滅しちゃったから、一般メンバーのパーシングに哨戒役をさせてるのかも?』

『仕掛けるか?』

「当然。この距離ならアタシの間合いだ……外したら、そん時はフォロー頼むぜ」

 

 遊園地南東部・外周付近。

 カメチームのヘッツァー、音子のヤークトパンター、ペパロニのP40は南部の正門から北東の通用門へと続く大通りに展開し、迎撃の態勢を整えていた。

 先ほどのメインストリートの攻防により、南から直接中央広場を目指す事は難しくなった。北部に向かうには東西どちらかから向かうしかないが、巨大迷路が大きく敷地を取っている事で周辺の道路が整理されている南東部と異なり、ニュルンベルグの城砦や江戸ランド、西部エリアなどが混在している南西部は部隊がまとまって動くのには向いていない。それを見越した格好だ。

 

「相手はそんなに残ってねえ、確実に仕留めんぞ。装填用意」

 

 砲手と装填手に指示を出し、音子は砲塔から身を出した。季節外れのコートの襟のボアが風に大きく揺れる。

 

「……あれか」

 

 前方を見据える。パーシングの小さい姿が通りの彼方に見える。

 通常の戦車戦であれば微妙な距離ではあるが、長砲身88mmを備えたヤークトパンターにとっては十分な間合いだ。

 

「装填完了次第、攻撃。タイミングは砲手に任せるぜ」

「了解!」

 

 砲手からの張りのある返事。十数秒の静寂の後、徹甲弾の装填が完了する。

 

「装填完了!」

「発射!」

 

 激しい砲声と共に88mm砲が火を吹いた。2㎞近い距離を一瞬で飛び、パーシングに徹甲弾が届く。

 

「………」

 

 音子は無言で双眼鏡を手にとり、着弾状況を確認した。

 相手にとっては不意の攻撃だったのだろう。よろめくように少しだけ前進すると、パーシングは白旗を上げた。

 

「よしっ!」

『油断しちゃ駄目だよ、ネコちゃん?』

 

 ガッツポーズをする音子に、杏からの通信。

 

「……おい、その“ネコちゃん”って何だ?」

『どーしたの? 名前で呼んだだけだけど?』

「どうも、そうは聞こえねえんだけどな……」

 

 からかうような杏の言葉に、音子は困惑を滲ませた。

 この状況においてなお、ヘッツァーに搭乗している大洗の生徒会長は全く焦りや動揺を見せていない。大した胆力だ。

 

『それより二人とも、やっぱりさっきの、威力偵察だったみたいッスよ? 本隊のお出ましだ』

 

 間に入ってきたペパロニの声に、音子は改めてメインストリート方面を見た。三両のパーシングがこちらを伺っている。

 音子は舌で唇を湿らせると、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「……面白れえ、ここで一気に4両いただこうじゃねえか」

 

 

 

『申し訳ありません! 偵察中に敵の長距離砲撃にやられました! 敵は三両、ヤークトパンター、ヘッツァー、P40!』

「十分だ。よくやってくれた」

 

 撃破されたパーシングの後方数百m、赤・青・黄のマーキングがそれぞれ施されたパーシングがゆっくりと進んでいた。

 そのひとつの車上、大学選抜部隊長“バミューダ・トリオ”の一人であるルミは撃破されたパーシングからの報告を受け労いの言葉をかけた。

 

「どうする? 分散して迂回するって手もあるけど」

「時間が惜しい。このまま突破して、あの馬鹿がこれ以上何かする前に止める」

 

 並走するアズミの提案にルミは首を横に振った。その表情は険しい。

 自分の出身校である継続高校の後輩の暴走に、少なからずの怒りと責任を覚えているのだろう。

 

「そうね。それに、そろそろ私たちが隊長の腰巾着でないって事をあの子達にも知って貰わないと」

 

 前方を走るメグミも、車長席からそれに同意する。

 これで大学側の戦力は8両。一方的な試合と思われていた緒戦から、随分と持って行かれてしまった。

 相手の勢いは西住まほの撃破と試合の中断によって多少は治まり、試合の流れは一旦フラットに戻った。そして今、その流れをトウコがオイ車を使って乱そうとしている。

 仮にオイ車が相手だとしても、正面からの勝負であれば愛里寿は問題なく撃破できるだろう。しかし──乱戦に飛び込まれれば“万一”が起こり得るかもしれない。

 トウコ、彼女は島田愛里寿が撃破されるという事の意味を理解していない。ただ自身の、愛里寿の本気を見たいという欲求でだけで動こうとしている。

 それだけでは済まないのだ。仮に撃破を許せば、それは島田流の看板にも大きく傷をつけることになる。トウコは誤射扱いで誤魔化すつもりだろうが、それでもメンバーの管理責任が愛里寿に及ぶ事は間違いない。

 それは愛里寿を敬愛するメグミらにとって、何としても回避せねばならない事態だった。

 

「……それじゃ、久々に『アレ』をやりましょうか」

 

 メグミの言葉に、アズミが愉快そうに言う。

 

「お互い部隊長になって、すっかりやる機会が減っていたものね。腕は鈍ってない?」

「当たり前だ。そっちこそ、置いて行かれるなよ?」

 

 話を振られたルミが不敵に笑い、車内に戻る。

 アズミは大きく息を吸った。メグミ、アズミ、ルミの三人が“バミューダ・トリオ”と呼ばれるようになった由来。それは単純に彼女らが三人だからという理由ではない。

 愛里寿が隊長に就任するまで大学選抜において無敗を誇った連携技。そこに彼女らの異名の由来はある。

 

「動きはいつも通りで。撃破する順番はヤークトパンター、ヘッツァー、P40」

「了解。速度は全速ね」

「ああ、一気に蹴散らす。仕掛けるぞ、“バミューダ・アタック”!」

 

 

 

「……ンだぁ?」

 

 迎撃体勢を整えている大洗側に向かってくる三両のパーシング。その動きに音子は怪訝な表情を浮かべた。

 距離は約2000m、有効射程までもう少し。相手がこちらの突破を目指すならば、整然とした行進間射撃で牽制しつつ距離を詰め、躍進射撃で正確に狙ってくるのがセオリーだ。

 しかし、三両のパーシングはそんなセオリーが存在しないかのように全速力で、そして縦列で大きく蛇行しながら前進してきていた。

 

『……ネコちゃん、ペパちゃん、合わせていこう。嫌な感じがする』

 

 ヘッツァーの杏からの声。その声は先ほどまでの気楽そうな感じから一転して真剣な気配を音子に伝えてくる。

 

『了解ッス。山根さん、合図、頼めるッスか?』

「……おうよ」

 

 ペパロニの言葉に音子は答え、パーシングを見据えた。背筋にぞわぞわと嫌な気配が這い上がる。音子はそれを振り払うように首を振ると、搭乗員に激を飛ばした。

 

徹甲芯弾(APCR)装填! 手前ら、大物だ! 一撃で仕留めてアタシ等のベルウォール魂、見せつけてやりな!」

「はい、姐さん!」

 

 舎弟でもある搭乗員たちが威勢の良い声で返す。音子は頷き、再び双眼鏡をあてて倍率を上げた。

 

『こちらP40、装填完了。いつでも撃てるッスよ』

『同じくヘッツァー、準備できてるよ』

「りょーかい」

 

 ペパロニと杏の声が届く。音子は答えつつパーシングとの距離を測った。

 

「……!?」

 

 その時、三両の動きが変わった。速度を落とさないまま蛇行から後方の二両が外れ、各々が速度を加減しつつ、時折スラロームによる交差を加えて三両並んで向かってくる。

 

「何のつもりだ、ありゃ……」

 

 意図は読めないが、長砲身を搭載しているこちら側の方が有効射程では上だ。先手を打つには絶好のタイミングである。

 音子は通信機を手に取り、強く言った。

 

「よく狙えよ、一斉砲撃!」

 

 空気を震わせる轟音と共にヤークトパンターの長砲身88mm、ヘッツァーとP40の75mm砲が一斉に火を吹いた。

 前方に土煙が立ち上り、一瞬パーシングの姿を隠す。

 

「外したか!? 次弾装填!」

 

 吹き飛ぶ石畳を認め、命中しなかったのを音子は素早く判断した。他の二発はどうか。

 土煙を突き抜け、速度を落とさないまま三両のパーシングが再び姿を現す。損害なし。

 

「相手に反撃させるな! 装填完了次第、再砲撃!」

 

 再装填までの数十秒の時間がやけに長く感じられる。程なく、再び轟音と共にパーシングに向けて撃ち込まれる砲撃。

 今度も命中せず、砲弾は通りの左右に建ち並ぶ建物に打ち込まれた。他の二発も同様のようだ。

 

「狙いが甘いぞ、しっかりしやがれ! 掠ってもいねえじゃねえか!」

「すいません、山守さん! 距離感が……!」

 

 思わず叱咤を飛ばす音子、それに対し、砲手の坂井小春が焦りも露わに答えた。

 

「……距離感?」

 

 

 

「会長……!」

 

 ヘッツァーの砲手席は、主砲の構造上操縦席の後方に設けられている。

 桃から砲手を交代した杏が二発外した事に、柚子は驚きを隠せなかった。普段は座席で寝転がり、装填から砲撃まで桃に任せきりの杏だが、決めねばならない場面では彼女と交代して砲手を務め、桃には装填手に専念させる。

 その砲手としての技量は三年になるまで戦車に触れたことが無いとは思えない程に正確なもので、柚子も桃もそれを深く知っていた。だが──

 

「……やるねェ。河嶋、装填急いで!」

「は、はいっ!」

 

 杏は小さく呟き、桃に装填を指示した。照準を構え、再び狙いを定める。

 

「(流石は大学選抜の部隊長クラス。何気なくとんでもない事をしてくれるよ)」

 

 こちらの狙いをつけにくくするため、ジグザグに走行する。その程度であれば戦車道における操縦の基本的なものだ。 

 だが、大学選抜の三人の部隊長が今こうして仕掛けてきているそれは──戦車を“走らせる”と言うよりも“踊らせる”と言う方が近い動きだった。

 同型の戦車三両で、秒単位で速度に緩急をつけつつ、高速で交差することで相手の距離感を狂わせる。言葉で言うのは簡単だが、実践するとなると話は変わってくる。

 広い通りとはいえ、三両の戦車が自在に動くには流石に狭い。そこで砲塔から身を出さずに互いの車体を擦らせる事すらなく高速で戦車を動かす。余程パーシングに乗り慣れ、かつお互いの動きを把握できていなければできない芸当だ。

 おそらくは、彼女らは通信もしていないだろう。「こう動くからこう動いて」などの通信を交わしながらでは、どうしても動きに遅れが発生する。杏の見る限り、それも無い。

 頬に汗が流れるのを感じる。懸命に狙いをつけつつ、杏は照準を定めた。

 

「発射!」

 

 ヘッツァーの車体が砲撃の反動で揺れる。撃ち出された75mm徹甲弾は黄色いマーキングのパーシングを掠め、その後方に着弾した。

 

「くっ……!」

 

 三発目も当たらず。しかしある程度の動きのパターンは掴めてきた。次の砲撃で──

 

「!?」

 

 青いパーシングが赤いパーシングと交差し、その陰から現れた直後に砲撃を放ってきた。敵の攻撃のタイミングを読めなかったヘッツァーは回避行動もままならず正面から直撃を受け、白旗を上げる。

 連携した回避を行うだけでも卓越した技量だったというのに、これは更に滅茶苦茶な芸当だった。言わば、ローラーブレードで走りながら片手に持った拳銃で撃ってくるようなものだ。一歩間違えれば味方の背中に砲撃が当たりかねない危険な攻撃、それを躊躇なく彼女らはやってのけた。これも島田流のニンジャ戦法の一つなのだろうか。

 

「……まいったね。怪物は島田愛里寿だけじゃなかったって事か」

 

 大きく息を吐き、杏は最後のメッセージを送るために通信機を手に取った。

 

「ごめん、アンチョビ。やられちゃった。大学側の部隊長、厄介な連携を仕掛けてくるよ。注意点だけど……」

 

 

 

 互いに身を隠して砲撃のタイミングを読ませず、距離を詰めてくる赤・青・黄のパーシング。

 

「おわっ!?」

 

 傾斜装甲によってどうにか貫通を免れたP40の車内で、ペパロニは思わず悲鳴をあげた。

 

「畜生、どうなってんだ!? こっちの攻撃は当たらねえし、あっちの攻撃は読めねえし!」

『おい! アンツィオの……ええと、「サラミ」だったか?』

「ペパロニッス! 山守さん、どうしたんッスか!?」

 

 その時、通信機から音子の声が飛び込んできた。名前を修正しつつペパロニは応答する。

 

『どうやら相手の方がアタシらより上手みたいだ。ヤークトの正面装甲なら、アイツ等の足止めくらいはできる。アンタはここを抜けて隊長たちと合流して、コイツらの対策を立てろ』

「そんな……!

『急げ!』

 

 そう通信を交わす間にも、敵との距離は既に1000mを切っていた。ヤークトの正面やや上をパーシングの90mm徹甲弾が掠めて火花を散らす。

 悩んでいる余裕は無い。ペパロニは歯噛みしながらも指示を出した。

 

「撃ちながら後退! 横道が見えたところで煙幕を展開して脱出する!」

「りょ、了解!」

『中須賀によろしく言っといてくれよ!』

 

 ヤークトが迎撃の砲撃を放つ。P40を後退させつつ、少しでも支援になるようその横から砲撃を行う。しかしこれも命中せず。

 ペパロニは砲塔から身を出し、後方を見た。あと少し下がれば、ボガージュ迷路へと通じる四つ角まで行ける。そこで煙幕を展開すれば、脱出は可能。

 

「煙幕展開!」

 

 発煙弾が射出され、前方を煙が覆ってゆく。ヤークトの姿が見えなくなり、砲声のみが届く。幸いにして今は風は弱く、煙幕は滞留してくれている。

 一際大きい衝撃音が聞こえ、その後に小銃の発砲音めいた音。聞き慣れた、白旗の射出音だ。

 

「くっ……!」

 

 ペパロニは拳を握り締めた。勢いづき、彼女ら部隊長の力量を甘く見ていた部分はあっただろう。しかしここまであっさりと撃破を許すとは。

 通信機を手に取り、周囲への僚機へ警告の通信を送る。

 

「こちらペパロニ! 遊園地南東部で敵部隊長三両と交戦、突破されたッス! こっちはヤークトと……」

「ペ、ペパロニ姐さん!」

 

 操縦手からの声が、ペパロニの通信を遮った。その声に含まれているのは焦りだ。

 

「何だ……!?」

 

 ペパロニは前方に意識を向けた。煙幕を抜け、急速に距離を詰めてくるパーシング。

 

「何いっ!?」

 

 確かにカタログスペック上ではP40の最高速度が40㎞/hなのに対してパーシングは48㎞/h、しかしパーシングのエンジンはパワーに欠け、瞬間的な加速程度でしか最高速度は出せない筈だ。

 だとすれば、答えはシンプルだ。

 

「(煙幕の中でダッシュをかけてきた!?)」

 

 ペパロニは後方を見た。まだ、届かない。

 赤・青・黄の三色のマーキングが、ペパロニを包囲した。

 

「……畜生」

 

 ペパロニは呟き、咄嗟に車内に戻る。

 直後、P40は三方向からの同時砲撃で白旗を上げた。

 

 

 

「……状況終了。次に行くとしましょうか」

「ヤークトに随分と粘られたな。こいつがノロマでなかったら逃げられていたか」

「これで大洗側も残り10両ね」

 

 アズミ、ルミ、メグミが白旗を上げたP40を囲んだまま言葉を交わす。その声には高揚も焦燥も無い。

 

「……?」

「これは……」

「……隊長?」

 

 その時、通信機から愛里寿の声が届いてきた。歌っている。少女が歌うにはどこか勇ましさと哀愁が漂う、それでいて行進曲めいた歌。

 『ボコのうた』、ボコられクマのボコが何度喧嘩しても負け続け、ボコボコにされ、彼女にも見捨てられながらも戦い続ける意思を示す歌。

 その歌の詳しい由来まではメグミ達は知らなかったが、その歌を彼女が歌う事の意味は誰よりも理解していた。

 

「隊長が歌い出した」

「という事は……!」

「……私たちも、急がないといけないわね」

 

 間違いない、既に彼女も到着している。そして、既に──

 

 

 

「……ふぅ」

 

 遊園地、正門付近。

 歌を終え、愛里寿はひと息つくと改めてメグミ達に言った。

 

「待たせた。こちらも一両撃破した。このまま南西部の敵を中央に押し込みつつ中央広場に向かう。そこで合流だ」

『了解!』

 

 ルミからの勢いある応答。愛里寿は頷き、前方で白旗を上げるM3Leeを無感情に見た。センチュリオンをニュルンベルグの城砦方面へ向け、そのまま走り去る。

 

 

 

「いたた……もー、何あれ!? 全然避けられないー!」

「こっちの砲撃も、余裕で避けられてたね……」

 

 M3Lee車内、煤けた顔を横のあゆみの胸に支えられつつ桂里奈が抗議の声を上げた。そのあゆみも疲れた口調で言う。

 

「あれが島田愛里寿……!」

 

 車長席に腰を落とす梓はつい先ほどの僅かの戦闘を思い返していた。少しの応酬ではあったが、その実力差は梓にも理解できた。戦車の性能差もあったのは事実だが、仮に梓がセンチュリオンに乗り、愛里寿がM3Leeに乗っていたとしても白旗を上げていたのは梓の方だったろう。

 

「隊長、副隊長! センチュリオンが向かっています。気をつけてください!」

 

 現在、大洗側9両に対して大学選抜8両。

 戦いは、続いている。

 

 

劇場版カタクチイワシは虎と踊る 第三十八話 終わり

次回「鈴とアリス」に続く


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