カタクチイワシは虎と踊る   作:ターキーX

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第三十話 高速戦車は迷宮を駆ける

 

 部隊長の証である黄色いマーキングが施されたパーシングの砲塔から身を覗かせ、周囲を双眼鏡で確認する豊満な女性。

 破壊したお化け屋敷跡。長い首が柱めいて残るろくろ首の模型と目が合い、彼女は顔を僅かにしかめさせた。

 

「……敵影なし。綺麗に逃げ出したものね」

 

 大学選抜部隊長三人衆、通称“バミューダ・トリオ”の一角のアズミはそう言うと双眼鏡を外した。

 

「追撃を行っていた二両が敵自走砲の奇襲を受け大破。功を焦った勇み足……と言ったところかしら」

 

 アズミの車両の右に停まる、赤いマーキングの車両から同部隊長・メグミが淡々と言う。

 

「隊長、敵は通用門から撤退し散開。局地戦を仕掛けるつもりのようです。どう動きますか?」

 

 同じく左に停まる青いマーキングのパーシング。小柄な身体と眼鏡が特徴的な同部隊長・ルミが愛里寿に指示を仰いだ。

 

『総合力でこちらが勝る以上、大洗側はこれ以上の結集はしてこない。小規模に集まれば逆に包囲殲滅される事くらいは大洗のアンチョビも分かっている』

 

 遊園地を俯瞰して見下ろす高地から指揮を執る愛里寿の落ち着いた声。

 先ほどの観覧車の暴走を目の当たりにして、ルミ等部隊長も少なからず動揺していた。しかし彼女はそれすらも想定内だったかのような口調で指示を続ける。

『基本ツーマンセル以上で散開しつつ索敵、各個撃破を行う。最優先目標は相手の実質的指揮官であるアンチョビのCV38、次いで逸見エリカのⅣ号戦車』

「西住姉妹への対応は?」

 アズミが問いかける。戦車の火力的にも、戦車乗りの技量的にも大学選抜側にとって最も警戒すべき存在だ。

『おそらくは二両で一緒に行動している。黒森峰の校章付きのティーガーを発見した際は無理をせず後退。T-28を向かわせて盾とし、側面から狙え』

「了解。メグミ中隊、中央広場を中心として遊園地北東部の索敵を行います」

「アズミ中隊、遊園地南西部を中心に展開するわ」

「それじゃ私が南東部だな。トウコ、北西部はお前に任せられるか?」

 

『……あー、ごめん先輩、無理』

 

 当然ながら「了解」と返ってくると思っていたトウコの歯切れの悪い応答に、ルミは拍子抜けしたように尋ねた。

「ど、どうした?」

『さっきの観覧車の暴走、そっちからも見えてたよね? 直撃はしなかったんだけど観覧車が跳ね飛ばした瓦礫の直撃を受けちゃって、今修繕中! 通信機も今さっき直ったところ。白旗は上がってないから、直り次第動くよ』

「……トウコ、本当か?」

 声を落としてルミは更に尋ねた。

 

 ルミが継続高校で現役だった頃から、このトウコという後輩は“戦車道を楽しみたい”という理由で時として周囲が全く予想しない行動に出る事があった。それでなお彼女が次期隊長に就任したのは、その無茶苦茶な行動が結果として常に勝利に繋がったからだ。

 しかし、愛里寿の采配下でそんな行動を取れば不確定要素が増えるだけに過ぎない。ルミは部隊の誰よりそれを警戒していたし、だからこそ彼女がそういった行動に出るであろう事を知っていた。

 

『やだなー、先輩。同じ継続高校の先輩後輩なんだし、もうちょっと信用してよ』

「だから信用できないんだろうが!」

『まあ……正直、大洗はこっちにはもう来ないと思うよ。辺り一面瓦礫だらけで、まともに走れないからね』

「……分かった、修繕完了次第、お前も動け」

『了解』 

 真面目な口調でトウコは言った。

 少なくとも、こちらにいきなり砲身を向けたりはしないようだ。頼りない確信ではあったが、ルミはそれで自身を納得させると通信を終えた。

「やんちゃな後輩を持つと大変ね」

 苦笑混じりに言葉をかけるメグミにルミはため息と共に答え、改めて僚機に指示を出した。

「全くだ……ルミ中隊、前進するぞ!」 

 

 ───残念ながら、この時の彼女の危惧は的中する事になる。

 

 

 劇場版カタクチイワシは虎と踊る 第三十話 高速戦車は迷宮を駆ける

 

 

 遊園地南西部、なつかし横丁ストリート。昭和の街並みを再現したレトロな通りをティーガーとパンターが進む。蚊取り線香のブリキの広告板が戦車の震動で地面に落ちた。

 

「……何であんたと一緒なのよ?」

「別に変じゃないでしょ。今、パーシングを相手に互角に戦えるのは正門に展開していた私たちの部隊くらい。だから正門から東西と中央に分かれて、散開している味方の援護に回る。まほさんの判断は妥当だと思うけど?」

「………」

 

 それぞれの戦車から身を出しつつ、言葉を交わす少女が二人。

 露骨に不満を顔に出しているパンターのツェスカの問いかけにエミは涼しい顔で答えた。まほの名を出されると弱いのか、ツェスカは黙り込む。

「……ねえ、ツェスカ」

 その様子を見て、エミは改めて彼女に言った。戸惑いつつも反応するツェスカ。

「な、何?」

「貴女、この試合が始まる前に『私を見定める』って言ってたよね。どう? やっぱり私には、戦車に乗る資格が無いかな?」

「……うぅ」

 隊長たちの作戦会議を終えた直後、ツェスカから言われた言葉。

 エミから尋ねられると、ツェスカは言葉につまりつつも答えた。

 

「……しょ、正直、アレは言いすぎたと思うわ。中須賀エミ、アンタは確かに周りと連携も取れているし、勝手なこともしていない」

「……!」

 

 その返事はエミにとって予想外だったようだ。少しの驚きを浮かべ、やがて微笑みに変わる。

「……そう、ありがとう」

「だ、だからってアンタがドイツでやった事が帳消しになる訳じゃないわ! 『一緒に戦える程度の相手だと分かった』って程度の話なんだから、誤解しないようにね!」

 素直に礼を言われたのが意外だったのか、ツェスカは顔を赤面させると慌てるように言い、車内へと戻った。

 エミは苦笑しつつ思った。まずは一歩前進といったところか。

 

『こ、こちらCV38のアンチョビ! 現在、ええと、巨大迷路の中で敵に追われてる! 支援に回れる車両は無いか!?』

 

 突然、通信が割り込んできた。

「!?」

 エミは即座に臨戦態勢へと自分を戻し、喉頭マイクに指を添えた。

「こちらティーガーの中須賀エミ! 現在、なつかし横丁をパンターと共に移動中。ボガージュ迷路ならここから数分で着けます! 詳しい位置は分かりますか?」

『そ、それが……』

 アンチョビの声には焦りと、それ以上の困窮が込められていた。

『何処にいるのか、私にも分からない! 迷子なんだー!』

 

 

「……おい、この袋小路にはさっき来たぞ」

 

 通信機に叫ぶアンチョビの横で、操縦手の麻子はうんざりした口調で言った。

「な、何!? やっぱりさっきのところを右に行くべきだったか!?」

「地図に線を引いていなかったのか?」

「途中までは引いていたんだが……」

「敵と遭遇して急ターンしてから逃げ回ったからな。お前の指示任せで動かしたから、私にも現在位置が分からない」

 アンチョビと麻子がそう言い合う中、別の音が聞こえてきた。こちらに近づいてくる履帯の音。CV38を追撃してきているパーシングだ。

「と、とにかくここから抜けよう!」

 

 大人数で楽しめるよう設計されている巨大迷路は人間には十分な広さの幅の通路を確保できているが、戦車が通るには文字通りギリギリの車幅である。袋小路の入り口を押さえられたらCV38でも抜ける事は不可能だ。

 パーシングを発見した時点で、アンチョビは素早くこの縦横1㎞以上の広さの巨大迷路に逃げ込んだ。通路の狭いこの巨大迷路で、CV38一両を追い回すために戦力を投入する事はないだろうと踏んだのだ。

 しかし、相手の部隊長はアンチョビが思った以上に大胆で、かつ執念深いようだった。アンチョビが確認しただけでも3~4両のパーシングをこの迷宮に送り込み、逃げ回るCV38を探している。挟まれれば勿論、長い通路で遭遇してもパーシングの90mm砲の餌食となるのは間違いない。

 結果、アンチョビと麻子は細かく曲がりつつ逃げ回り──迷子となっていた。

 

 閉園後もなお生い茂る壁代わりの木々が風に揺れる。しっかりと幹は根を張っており、戦車が突破するのも難しい厚さだ。

 CV38の前方に十字路が見えてきた。迷路だけに、見えるものは全て緑の木々による壁だ。

「どっちへ行く?」

「今度は左……い、いや、やっぱり右だ!」

 その時、正面の角からパーシングが姿を見せた。こちらに気付き、向かってくる。

「い、急げ麻子!」

「口を閉じろ、舌を噛むぞ」

 麻子が言い終わる前に、アンチョビの身体を強烈なGが襲った。内角ギリギリで曲がったCV38の背後を、轟音と共に90mm徹甲弾が過ぎてゆく。

「うわぁっ!?」

 思わず悲鳴をあげるアンチョビに、エミからの通信が届く。

『こちらエミ。ティーガーとパンター、到着しました!』

 

 

「と、言っても……」

 入口に用意されていた迷路の図面を携帯で撮影しつつ、エミは困ったように呟いた。

 着いたのは着いたが、アンチョビの正確な位置が分からないとあっては支援のしようもない。彼女の話では、何両かのパーシングが既に侵入している。下手をすれば逆に自分たちまで撃破されかねない状況だ。

「………」

 悩むエミを他所に、ツェスカは図面を見つつ何かを考えていた。

 視線の先にあるのは───

「ねえ、中須賀……さん」

 今までの呼び捨てから、言いにくそうにツェスカは呼び方を変えてエミに声をかけた。

 

 

『副隊長! あの、何か目印を作れませんか!?』

「め、目印?」

『何か旗みたいな……遠くからでも分かるような』

 通信機からのエミの声に、アンチョビは咄嗟に車内を見回した。

 旗の竿になる部分は、その辺の長い枝を使えば代用できるだろう。あとは布の部分をどうにかできれば──

「……ええい、これだ!」

 アンチョビは弾薬槽の隅に降り畳んでおいた、アンツィオの統帥の証であるマントを取り出した。

「何故そんなものを車内に……」

「この大勝負だ。常に手元に置いておこうと思ってな。まあ、こんな形で使うとは思ってなかったけど……」

 思わずツッコミを入れる麻子に、アンチョビは当然のように答えた。

「次は枝だな。麻子、そこの休憩スペースに停車を」

「急げよ」

 CV38は周囲を警戒しつつ停車した。素早くアンチョビは降車し、周囲の茂みから丁度良い長さの太い枝を探す。幸い、すぐに枝は見つかった。再度乗車し、走るCV38の中で即席の旗を作る。

「中須賀さん、旗は出来たぞ!」

『ありがとうございます。あと10分……いえ、5分したら、その旗を掲げてください!』

 

 

「まったく、豆戦車の癖によく逃げる。流石は全国大会で西住姉妹を倒しただけはある……か」

 青いマーキングのパーシングの車上、ルミは僚機と共にアンチョビへの包囲を狭めていた。

 機敏に逃げ回ってこそいるが、どうやら相手は道に迷っているらしい。出口へ向かおうとしているかと思えば同じところを行き来したりと迷走している。

 実際、この巨大迷路にはルミ達3両のパーシングも少なからず苦戦していた。複雑に結ばれた通路と高い樹木の壁は相互の視認を困難にし、うっかり衝突しそうになった事もある。

 しかしそれでもルミ達はアンチョビの位置をほぼ把握し、三方から距離を縮めつつあった。挟撃が成功しさえすれば、紙装甲のCV38は一撃で白旗が上がる。今は詰将棋の三手前といったところ。あと数手で終わる。

「ん?」

 その時、何かがルミの視界に入った。幾つかの垣根を越えた先に見える、黒い物体。

 

「……旗?」

 

 ぱたぱたと、風に黒い布地がはためく。

『部隊長、あれは?』

 僚機からの指示を求める通信が届く。ルミは腕を組み、暫し考えた。

 

 白旗の射出装置が壊れて手作りで降伏の旗を作った?

 否、今の大洗が追い詰めた程度で降伏する事は無い。

 では何だ? 目印? だとすれば何のために? こちらをおびき寄せる陽動か?

 もしアンチョビが通信などでこの迷路に味方の増援を呼んだとしたら──

 

「……敵の増援が侵入してきた可能性がある。急ぐぞ、後背に注意しつつCV38を追い詰めろ。陽動だとしても、旗を立てた周辺に奴らはいるはずだ」

 ルミは落ち着いた口調でそう指示を出すと、砲塔から完全に身を出して爪先を伸ばし、旗をよりはっきりと視界に収めようとした。

 ふと、その旗が動き出した。CV38に直接括りつけられていたようだ。

「旗はCV38に差さっている! 旗を追え!」

 ルミの指示に合わせてパーシングが動く。相互の姿は見当たらないが、僚機も別方向から向かっているはずだ。

「……何だ?」

 旗の動きが急に変わった。転進したかと思うと機敏に別方向へと向かい、更にそこから細かな動きを見せる。

「ルミ車より各機、11時方向に敵は転進した。迎え撃て!」

『ちょっと待ってください、次の角まで進まないと回り込めません』

 僚機からの声。迷路の作りは複雑で、大回りしなければ入り込めない区画もある。そこに逃げ込んだか。

 

 直後、ルミの背後から砲声が響いた。

 

「何!?」

 距離が近い。遠方での戦闘音ではない。果たして数秒後、僚機からの通信。

『こ、こちら20号車! CV38を追撃中、壁を抜けた砲撃で背面をやられました!』

 ルミのパーシングが十字路に出る。即座に砲撃のあった方向を見ると、木々の壁を貫通した跡が残っていた。

「何故だ……どうやって、壁越しの狙い撃ちなんて……」

 勘の良さだけでは説明できない。ルミは周囲を見回し、巨大迷路の中央を見た。

「……あれは!」

 

 

 往々にして巨大迷路には、一際高いところから迷路を一望できる「見晴らし台」というものがある。迷路のルートを探ったり、あるいはそこで行き来する人々を眺めたりするためのものだ。無論、この遊園地にも同様の見晴らし台が設置されている。

 とはいえその見晴らし台はあくまで人間用のもの。戦車が乗り付けられる程の強度も大きさもない。

 

「敵パーシング一両撃破! 残り二両、CV38の9時方向と2時方向からそれぞれ接近中! 副隊長、次の三差路を右前方、そこから左に行けば距離を稼げるわ!」

『了解だ!』

『了解! ねえツェスカ。もう一両くらい、狙える場所に来そう?』

「中須賀さんから見て4時方向、ええと、アンチョビさんからは8時方向に長い通路があるわ。そこに誘い込めれば……」

『こっちでやってみる! お陰で大体の位置は分かってきた!』

 

 ならば、人だけを送り込めばいい。

 見晴らし台の上で双眼鏡と通信機を手にしたツェスカは、偵察を行いつつアンチョビとエミの双方に通信を送っていた。

 

 戦車道ルールにおいて、搭乗員が降車して修繕や偵察などを行う事は禁じられていない(車両への直接攻撃を除く)。

 被偵察側は「人間への直接攻撃を行わない」というルール上、偵察者への攻撃は行えないが、接触した場合は試合終了まで拘束可能となるという点でバランスを取っている。

 無論、これはデメリット面も多い行為である。増員ができる戦場と違い、戦車道での偵察は戦車の搭乗員が行う事になる。当然ながら人が減る分戦力も落ちる。偵察者が未熟であれば、偵察も失敗して戻る戦車も無くなるというケースも起きる訳だ。

 そのため、現在のツェスカは自身のパンターには迷路外の別の場所に隠れてもらい、単身でこの見晴らし台に立っている。

 

 CV38が機敏に迷路を走る。通常であればもう少しは速度を落とすところだが、優秀な操縦者なのだろう。ほぼブレーキをかける事も無く連続する角を曲がり、長い通路にパーシングを誘い込もうとしている。

 やがて、その通路に先にCV38が入った。通路の先にある曲がり角にCV38が曲がった瞬間が狙い撃てるポイントだ。

『こちらアンチョビ、あと少しで敵が射線に入るぞ!』

「……ちょっと待って、敵の動きが早い!」

『な、何!?』

 大学側もこちらの意図を察したのだろうか。パーシングの動きはツェスカの予想以上に速かった。Cv38が曲がり切る前に通路に入り、後ろからCV38を狙う。入り口を塞がれ、Uターンは不可能だ。

「まずい、このままだと!」

 ツェスカの脳裏に、数日前の西住姉妹としほの対決の時の様子が浮かぶ。あの時も、自分が偵察を行い負けた。

 しかし、返ってきたアンチョビの声に焦りは無かった。

 

『……いや、中須賀さん! 方向そのまま、やや上向けで撃ってくれ!』

『ちょ、今撃ったら副隊長に命中するわよ!?』

『CV38は全高1.4m、パーシングは3.5mだ! 下ぶれしなければ、その、多分……だ、大丈夫だ!』

『まあ、駄目でもともとだ。やってみてくれ』

 

 少し遠い、淡々とした声。Cv38の操縦手の麻子の声だ。

 

『……分かった、やってみる!』

 

 ツェスカの視界に映る、何枚かの緑の壁を隔てて砲身を向けるエミのティーガー、その砲口に向かって走るCV38と、更にその背後から狙いをつけるパーシング。

『撃て!』

 ティーガーの88mmが火を吹いた。木々を紙のように貫通し──CV38の屋根を掠め──パーシングの正面を直撃する。

 パーシングの正面装甲は102mm。ティーガーの88mm砲でも簡単には抜けない装甲だが、今回は良い所に当たってくれたようだ。大きく揺れた後、白旗が上がった。

 

 

「……ふぅ」

 ティーガーの車長席で、エミは大きく息をついた。弾着を確認したが、CV38の屋根が少し焦げていた。あと数十㎝下に行っていたら、白旗を上げていたのはCV38の方だったろう。

 

『青いパーシング、この見晴らし台に向かってきてる。気付かれたわね』

「了解。増援が来る前に迷路を脱出しましょ。ツェスカも撤収を」

『こちらアンチョビ、こっちも出口が見えてきた。合流はせず、このまま別方面へ向かう』

「了解」

 

 何だかんだでパーシングを二両撃破できたのは大きな戦果だ。エミは微笑みつつ、ツェスカへの通信を開いた。

「ありがとうツェスカ、貴女のアイデアのお陰で助かったわ」

『べ、別にアンタの為じゃないって言ってるでしょ!』

 露骨に動揺が伺えるツェスカの声に、装填手の瞳は思わず言った。

 

「ねえ、エミちゃん」

「何、瞳?」

「あのツェスカさんって人、怖い人かと思ってたんだけど……ツンデレキャラっぽくない?」

「……よく分かんないわ、そういうの」

 

 

劇場版カタクチイワシは虎と踊る  第三十話 終わり

次回「鮫と猛犬は水辺で吼える」に続く


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