カタクチイワシは虎と踊る   作:ターキーX

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幕間
第二十五話 イワシの敬意と笑う道化師


 

 

 最初は、僅かな傾きだった。

 カールの位置する中洲の高台に打ち込まれた八九式と九五式の砲弾は、幾つもの跡を残し雨を吸った土に亀裂を作っている。

 パラパラと小さく土砂が落ち始め、それが次第に大きくなってゆき、そして崩れてゆく。

「こ、後退ぃっ!」

 カール護衛部隊の眼鏡の部隊長は慌てて操縦手に叫び、全速力で高台から降りようと後退を始めた。カールもそれに続こうとするが、自走臼砲の走行機能は位置補正などのための補助的なものだ。時速10㎞の低速では間に合わない。

「やっ……」

 砲塔から勝ち鬨を上げようとした八九式の典子だったが、自分の顔にかかる影に気付くと咄嗟に車内に戻る。

 直後、カールは崩れた土砂と共に八九式に降りかかった。

 

 

 劇場版カタクチイワシは虎と踊る  第二十五話 イワシの敬意と笑う道化師

 

 

「アヒル殿!?」

 九五式を指揮する福田が声を上げた。

 濡れた重い土が周囲にも散らばり、九五式も高台周辺から退避する。

 やがて轟音が治まると、そこには土砂に埋まり横倒しになったカールの巨体があった。小銃の発砲音めいた射出音と共に、横腹から白旗が上がる。

『アヒルチーム、大丈夫!?』

 通信機から聞こえる柚子の焦りの声。

「ぜ、全員大丈夫でーす!」

 幸い、典子の声はすぐ返ってきた。福田が目を凝らすと、カールの近くで八九式の砲塔の一部が覗いており、典子が身体を出して手を振っている。その横で突き出ている白旗。どうやら走行不能と判定されたようだ。

「ただ、ちょっと動けません。ここで回収を待ちます!」

『りょーかい。先に休んでおいて』

「アヒル殿、お見事であります!」

 典子の健闘を労う杏の声と共に、福田は八九式に向けて敬礼を行った。

「福ちゃんも頑張って、最後は根性だよ!」

「了解であります! 不肖福田! アヒル殿の根性を見習わせて頂きます!」

 大声でエールを送ってくる典子に、福田は小さな背を精一杯伸ばしつつ答えた。

 その時、九五式に日の光が当たった。空を見上げると雨は止み、薄くなった雲の隙間から光が漏れ落ちている。

『ちょっと、私たちを忘れないでよ!』

『何とか逃げ切ってきたんだから!』

 柏葉姉妹のけたたましい声。見れば、遠くからⅡ号戦車が走ってくる。

『……状況終了。チョビ子、カール自走臼砲の撃破、完了だよ』

 大きく息をつき、杏は作戦成功の通信を送った。

 

 

 カールに白旗が上がるのとほぼ同時に、観客席では大きなため息が聞こえた。大洗にとって最大の窮地をどうにか切り抜けた事への安堵の吐息だ。

 

「……随分と、らしくない事をするわね」

 

 その観客席の一角、傘も差さずに試合を見届けていた西住しほは静かに横の島田千代に言った。

「………」

 千代は答えず、無言で傘を閉じた。傍らに傘を置き、レースの扇子を取り出すとそれで口元を隠す。

「私の知っている島田流は、大火力でごり押すようなものではなかったと思うのだけど?」

 先ほどよりもしほの口調は鋭い。レギュレーション通過については彼女も立ち会っていた以上把握はしていたが、と言ってこのような運用をしてくるとは思っていなかったのだろう。

「……嫌なものですわね、“しがらみ”と言うのは。使いたくもない道具でも使って、更にそれなりの戦果を示さないといけないんですもの」

 眼を細めつつ、千代はようやくしほに視線を向けた。

 

 島田流と西住流の違いは幾つもあるが、その中でも大きな違いはそのネットワーク力だろう。戦車道連盟に限らず、文科省、戦車メーカー、影響下の学園艦など、様々な方面に島田流は強いコネクションを持っている。門下生の戦車道での強さのみを追求し、昔ながらの正面からの付き合いに徹している西住流とは正反対だ。

 だが、それは島田流へ融通を利かせる代償に相手の要望を受けなければならないという駆け引きでもある。おそらくは、文科省から何らかの代償と共に使用するよう持ち込まれたのだろう。千代の態度から、しほはそこまで推測した。

 

「もう一両もそうなの?」

 しほは視線をモニターに向けた。両陣営の戦力を示す表示の、大学側の一番下。二つあったシークレット枠の残りひとつは未だに伏せられたままだ。

「さて……どの道、大洗がこのまま試合を続けるのであればすぐに分かりますわ」

 それだけ言うと、千代もモニターに視線を向ける。カールを撃破した事で上空からの脅威が払拭された大洗勢は、ここで一度再集合して態勢の立て直しを図るようだ。

 解説席の王大河が、マイクを手に観客に向けての実況を始めた。

『さて! カールが撃破された事で大洗、大学選抜共に再結集するようです。ではここで両戦力の状況を確認してみましょう。まず大洗ですが……』

 

 

「……T-44、三式中戦車、IS-2、チハ、エレファント、BT-42、八九式中戦車。以上が撃破され、残り23台です」

 丘から距離を置く平原を進む戦車の一団。その先頭を進むⅣ号戦車のハッチから顔を出しつつ華が言った。

「随分やられてしまいましたね……」

「いや、よく持ちこたえてくれた。下手すれば半分まで削られていただろう」

 声を落とす優花里に、その横を走るCV38から身を出すアンチョビが言う。

「それにこっちもチャーフィー1両にカール、それとパーシングも6両撃破できた。相手も22両、数の上ではこちらが上だ」

「……数の上では、ね」

 Ⅳ号の砲塔から周囲を伺うエリカが、そのアンチョビの言葉に皮肉めいて返した。

 

 確かに数の上では大洗の方が勝ってはいるが、それはあくまで数だけの話だ。

 この緒戦で大洗側はエレファントとIS-2という火力面でのツートップを失った。まだ西住姉妹やエミのティーガー、レオポンのポルシェティーガー等も残ってはいるが総合的な火力の低下は避けられない。

 それに加え、相手はオーダーに載っていたT-28を投入してもいなければもう一両のシークレット車両も前線に出してこなかった。他の戦力も大半がパーシングで安定性は高い。

 逆に大洗の残存戦力にはパーシングに単騎で対抗するには脆弱なⅡ号戦車やチハ、チト、テケ車、CV38などが名を連ねる。総合力では未だ大学側有利な状況だ。

 

 ──何より一番の問題は、「流れ」である。

 

 カール自走臼砲による支援砲火という予想外の攻撃で生まれた動揺もそうだが、それ以上にこちら側が仕掛けた策が全て島田愛里寿に看破され、それを逆に利用されていたという事実。今、試合の流れをコントロールしているのは間違いなく愛里寿だ。この流れを引き戻さなければ、大洗側の勝利は難しいだろう。

 

「……すまぬ、アンチョビ殿。島田愛里寿の力量、見誤った」

 その事を誰より分かっているのだろう。テケ車から半身を出すしずかはそう言うとアンチョビに深く頭を下げた。それに対し軽く手を振るアンチョビ。

「気にするな。しずか、お前の作戦は間違っていなかった。彼女の見抜きを甘く見ていたのは私も同じだ」

「しかし……」

 尚も言い募ろうとしたしずかは、アンチョビの表情を見て言葉を止めた。

「凄いなァ、あれが島田流か!」

 そう言うアンチョビの表情には悔しさも、怒りも、苦渋も無かった。愉快そうに微笑みながら、素直に愛里寿の戦術眼に感心していた。

「……呑気ね、相変わらず」

 それを横目にエリカはため息をついた。

 

 エリカの知る他の隊長とアンチョビとの最大の違いがここなのだ。相手が自分を出し抜くような作戦を仕掛けてきたならば、彼女はそれに対し焦りこそすれ悔しがったりする事なく相手に敬意を持つ。大会準決勝、ペパロニとの読み合いの時も窮地でありながら愉快そうだったアンチョビの姿をエリカは思い出した。

 

「……この落ち度、ここからの戦で挽回させていただく」

 そのアンチョビの様子に毒気を抜かれたのか、しずかは表情を引き締めると車内に戻った。ミカとの別れ前の言葉も、彼女の気持ちを押し上げているのだろう。

「逸見さん! 我々はチハ一両を撃破されました、申し訳ありません!」

 今度はアンチョビとは反対側を並走するチハから絹代が直角の礼をしてきた。

「ま、まあ仕方ないわ。ここから頑張りましょう」

「はい! 全力を尽くさせていただきます!」

 その勢いに若干押されつつ、エリカは答えた。敬礼を返す絹代。

 知波単の面々は、この状況においても全く戦意を衰えさせてはいない。否、むしろ昂っているようにも見える。「窮地になるほど戦意を増す」のが知波単戦車道の気質だ。

 背後を振り返る。西住姉妹のティーガーやカバチームのⅢ突など20両余りが続き、砲塔から身を出している姿も見える。

 

 

『え、えーと、クラーラ?』

Да(はい)?」

「が……頑張っていきましょう! えーと、『ガンバル』分かる? と、とろーずな……だったかしら?」

 T-34/85・クラーラ車の車内。クラーラはたどたどしく話しかけてくるカチューシャの声を聴いていた。必死に自分の知っているロシア語から励ましの言葉を捻り出し、言葉の壁を越えようとしているようだ。

「……フフッ。分かりますよ、カチューシャ様」

 暫く無言だったクラーラだったが、やがて楽しそうに笑うと流暢な日本語で答えた。

『え!? ちょ、ちょっとクラーラ! 貴女、日本語できたの!?』

「はい、日本語検定は一級を取得しています」

『それを早く言いなさいよ! 私が馬鹿みたいじゃない!』

「私もそうしようかと思っていたのですが……必死な副隊長の様子に、言い出しにくかったもので」

 それに、非常に可愛かったので。その言葉は心にしまい込む。

『ま、まあ、通じるならいいわ……クラーラ、ノンナは私たちを信じてくれたからこそ、後を任せたわ。それに応えましょう』

「はい、カチューシャ様」

 クラーラはそう答えつつも、内心でそれを否定した。

 『私たち』ではない。彼女、ノンナは貴女一人を信じたのだ。カチューシャに備わる、本来プラウダの隊長になるべきだったとノンナが確信するその素質と才能を。

 そのためならば、私は喜んで彼女の犠牲となろう。クラーラはそう決めていた。

 

 

「先輩、お疲れ様!」

「ウチでやられたのは千冬のエレファントと陽子のT-44、あとバ柏葉のⅡ号か……Ⅱ号戦車はともかく、他は痛えな」

「コラー! 勝手に撃破された事にしないでよ!」

「パーシングの追撃を躱しきる私たちの姿、見せてあげたかったわ!」

 並走するティーガーとヤークトパンター、その車上でエミと音子が話しているところにⅡ号戦車の柏葉姉妹が割って入る。

「やっぱ強えなあ、大学選抜ってのは。動きも砲撃もきっちりしてやがる。ありゃ、正面から撃ち合ってたらどの道負けてたな」

 音子は頭を掻きつつ率直に言った。彼女は基本的に表裏が無い。中隊長としてチェダー中隊を指揮して、撃ち合った上でのありのままの評価だろう。

「どういう状況になるにせよ、連携は密に取ってゆきましょう」

 それにエミも素直に頷き返す。ふと、彼女は身体をひねると別方向に顔を向けた。

「……そっちもよ!」

「………」

 黒森峰のマークが施されたパンター、そこから身を覗かせるツェスカにエミは言った。

「貴女の苦労は、まあ、全部とはいかないかもだけど多少は分かるし、私を憎むのも当然だと思う」

「………」

 ツェスカは答えない。エミは更に言葉を続ける。

「でも……留学させてもらえる程度の戦車乗りなら、今の状況がそんな事言ってる場合じゃないっての位は判断できるでしょ?」

「……分かってるわ。それくらい」

 ようやく答えるツェスカ。しかし表情はまだ固いままだ。

「なら、今だけでいい。仲良く……は難しいでしょうけど、せめて呼吸は合わせて行きましょ」

「言われなくても、そのつもりよ」

 そう言うとツェスカは車内に戻っていった。その様子にエミは苦笑いを浮かべた。そう簡単に柔らかくはなってくれないか。

 まあ、仕方ない。これは過去の自分が起こした「ツケ」だ。ならば今の自分が向き合わねばならないだろう。

 この先の戦いは更に激しくなる。確信めいた予感を感じつつ、エミは前方を見据えた。

 

 

「………」

 パンター車内、ツェスカは苛つきと迷いを同時に浮かべつつ、落ち着かない風で車長席に座っていた。そこに入る通信。

『ツェスカ、聞こえるか?』

「っ!? は、はい、隊長!」

 西住まほの凛とした声に、ツェスカは思わず跳ねるように反応して背筋を伸ばした。

『今は隊長ではないが……いや、あえて黒森峰の隊長として言わせてもらおう』

「……何でしょう?」

『まだ、割り切れていないようだな』

「そ、そんな事は……」

『………』

「……は、はい、その……あります」

 内心を見通すかのような言葉。ツェスカは思わず咄嗟に否定したが、まほの無言の圧力に耐え兼ねて本心を漏らした。日本人ではあるが、まほは尊敬に値する戦車乗りだ。それに対して嘘は言えなかった。

『……そうか』

 ツェスカの返事に対し、まほは怒る風でも無く静かに言った。

『お前が居た学校で何があったかは、先方の監督からも伺っている』

「で、でしたら……!」

『……隊長時代の中須賀エミは、メンバーから嫌がらせを受けていた』

 悪いのは彼女のはず。そう言いかけたツェスカはまほの発言に動きを止めた。

「え?」

『やはり、知らなかったか』

「ちょ、ちょっと待ってください隊長! そんな事、本国の先輩たちは一言も……!?」

『後ろ暗い事は、誰であれ無口になるものだ』

「………」

 まほは淡々と言葉を続けると、そこに申し訳なさを滲ませた。

『すまない……本来ならば、お前と中須賀さんとの間で腹を割って話すべき事だとは思う。だが、今はその余裕すら無い。ならばせめて、お前が誤解しているならそれだけは解きたかった。出過ぎた真似をしたな』

「い、いえ、そんな……」

 詫びをするまほにツェスカはたどたどしく答える。

『相手は強い。ツェスカ、お前は戦車道に対して真っ直ぐだが、同時に周囲が見えなくなる時がある』

「………」

『少しずつでいい。見えるものを増やしてゆけ。そうすればお前は私より優秀になれるはずだ。力を合わせ、頑張ってゆこう』

「……ありがとうございます」

 通信が終わる。

 ツェスカは、大きく息をつき車長席に身を預けた。

「……何なのよ」

 中須賀エミ。彼女は敵意を向けてくる自分に一言も事実を明かさなかった。

 迷いはある。疑問もある。聞きたい事も沢山ある。

 だが、とりあえず今は──それ以上にすべき事がある。自分にできる事がある。

 ツェスカは迷いを振り払うように頭を振ると、顔を上げた。

 

 

『それで、この後はどうなさるおつもり?』

 先頭を進むⅣ号戦車に、最後尾のブラックプリンスに乗るダージリンからの通信が届く。エリカは喉頭マイクに手を添えつつ答えた。

「このまま正面からの勝負ではこっちに分が悪いわ。何処か迎撃できる場所で再展開してから仕切り直しましょう。総合力では確かに向こうが上だけど、個々の性能で全部がパーシングに劣っている訳ではないわ。そこを活かして勝機を探る。それが今の私達にできる最善の手だと思う」

「だったら……ここはどうだ、エリカ?」

 並走するCV38から身を出すアンチョビが地図を大きく広げた。エリカもそれを見て頷き返す。

「……そうね」

 改めてエリカは全車両に通信を送った。

「これより全車両、以下のポイントに移動。後に迎撃態勢に移行する。第2ラウンド行くわよ。パンツァー・フォー!」

 

 

「申し訳ありません、隊長!」

「気にするな。元々は使うつもりもなかった車両だ。作戦に影響はない」

 大洗の一団から大きく離れた位置を進む、センチュリオンを先頭とした戦車の一団。賑やかだった大洗と異なり静かな、そして整然と進む様は訓練された兵士の行進を思わせる。

 カール撃破を許した護衛部隊の部隊長の謝罪に対し、愛里寿は無表情に答えると手を水平に振った。恐縮しつつ車内に戻る部隊長。

 この愛里寿の言葉は別に部下を庇った訳でなく、彼女の本心だった。頭脳を使った奇襲戦法を得意とする島田流にとって、単純な砲の巨大さで圧倒するカール自走臼砲など邪道も邪道、文科省へ「一応使い、それなりの戦果を出しました」というアピールでしかない。

 

 ──まあ、もう一両の“ガラクタ”に比べればそれでもマシなのだが。

 

「ねーねー隊長?」

 愛里寿が振り向くと、乗り換えたT-34に乗るトウコが砲塔から身を出し、だらしなく腕を組みつつこちらを見ていた。

「トウコか。標的役、よく務めてくれた」

「あー、うん、まあ、それはそれでいいんだけどサ」

 労いの言葉をかける愛里寿に対し、トウコは楽しそうなニヤニヤとした笑いを浮かべたまま言った。その何処か相手を小馬鹿にしたような風情は、物語に出てくるチェシャ猫を思わせる。

「どうした?」

「何でエレファントの事、アタシに教えてくれなかったのかなーって」

 愛里寿はトウコの目を見た。その瞳は笑っていない。

 僅かの沈黙の後、愛里寿は答えた。

「……勘のいい相手だ。あそこでお前に狙撃手の存在を教えれば、敵に察知される可能性があった。悪かったとは思っている」

「……ふーん」

 そう言われたトウコは測るように愛里寿の顔を見詰めると、

「フヒヒッ。いいねっ、いいねっ。やっぱり素敵だよ、隊長はっ」

 いつもの奇妙な笑いと共に、今度は瞳にも喜びを浮かべた。そのまま車内に戻ってゆく。

 愛里寿は無言でそれを見送った後、先行して偵察を行っているチャーフィーとの通信を開いた。トウコの態度にも愛里寿の表情が動く事はない。戦車道にやや歪んだ楽しみを求める奇妙な気質の持ち主ではあるが、勘が鋭く、動きもいい。『楽しみ』を提供する限りは彼女は忠実な部下であり、優秀な戦車乗りだ。

「こちら隊長車。チャーフィー、敵部隊の動きは?」

『はい、こちらチャーフィー2号車。大洗の部隊ですが、丘を大きく離れて北へ向かっています。おそらくは……』

 偵察の報告に、愛里寿は手元のタブレットを開くとマップを縮小させた。丘周辺を映していた画面がよりマクロな視点に変わる。

 丘以外で、今の大洗が展開して迎撃できる所となると──

「……ここか」

 愛里寿の目が細まる。そこは丁度、例の“ガラクタ”を潜めさせている場所でもある。まあ、不整地を走らせると沈むからそこに残すしか無かったのだが。

 愛里寿は喉頭マイクに指を伸ばし、全車両に指示を送った。

 

「敵の展開位置が分かった。目標、巨大遊園地跡地」

 

 

劇場版カタクチイワシは虎と踊る  第二十五話 終わり

次回「悪魔再び」に続く


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