カタクチイワシは虎と踊る   作:ターキーX

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第十話 迎えるはムカデ、挑むは母虎

 

 アンツィオ学園中央部、コロッセオ内。中央に白旗を上げた赤いテケ車。そこにCV38が接近する。

「……見事なり」

 ハッチから顔を出すアンチョビに、テケ車から身を出したまましずかは頭を下げた。

 

 

 アンツィオ側の車両数を伏せるという提案も、1両のCV33のワッペンを貼り換えて複数の車両があるように見せかけたのも全てダミー。アンチョビは最初から、しずかの「目」を狙っていたのだ。

 おそらくはペパロニから聞いた試合の様子から、彼女はしずかの反応の早さと観察力について把握していたのだろう。最初にあえてCV38に慣れていない操縦手を乗せ、真意を悟らせる事無くしずかに動きを観察させ、予測射撃が出来るようになるまで目を慣れさせる。

 そして頃合いを見計らい、足止めさせている間にコロッセオ内で待機していた本来の操縦手と交代。動きにこちらの目が慣れる前に一気に仕留める。

 振り返ってみれば、しずかはアンチョビの策から一歩も枠を出る事なく負けた事になる。

 

 

「いや、それはこっちの台詞だ」

 首を振り、アンチョビは感心するように言った。

「正直ここまでよく動く上に正確に狙ってくるとは思ってなかった! 楯無高校には戦車道が無いと聞いていたが、独学か?」

「え? う、うむ、弓道と、流鏑馬の応用だ」

「大したもんだ! 今度、それも見せてもらっていいか?」

「あ、ああ……」

 屈託なく笑い、興味を持って尋ねてくるアンチョビにしずかはたじろぎつつ答えた。姿勢を改め、正面からアンチョビに向かって言う。

「……とはいえ勝ったのは貴殿らだ。約束通り我ら楯無高校百足組、煮るなり焼くなり春を売らせるなり、好きに使うが良かろう」

「ちょ、姫! また意味分からないで言ってるでしょ!?」

 車内から鈴が抗議の声をあげる。

「いい覚悟だ。それでは……」

 その言葉にアンチョビは腕を組み、少し目を閉じた。

「………」

 無意識にしずかの喉が鳴る。アンチョビの目が開かれた。

 

「楯無高校百足組。お前たちを夏季休暇の暫しの間、我らアンツィオ高校戦車道の客将として迎え入れる! 当面、我々と行動を共にするように!」

 

「……何?」

 アンチョビからの提案にしずかは聞き返した。それに返ってくるゆっくりとした答え。

「私達は今、大洗女子学園復活のために動いている。今はまだ机上での応酬だが……そこで必ず戦車道の存在が絡んでくる筈だ。そこにお前の力を借りたい」

「公式戦車道の試合経験の無い、我々をか?」

「だからこそ、だ。戦車道の枠に縛られないからこそ見える物もある」

 そう語るアンチョビの目はまっすぐにしずかに向けられている。しずかは最後の質問を行った。

「あと一つだけ伺いたい」

「何だ?」

「来度の試合、何故最初からあの操縦手を乗せなかった? 彼女であれば、此方の態勢が整う前に一気呵成に撃破できたのではないか?」

 

 確かに操縦手の乗り換えという奇策によって動きが読めなくなり負けたしずか達ではあるが、それを割り引いても麻子の操縦スキルはテケ車の鈴のそれを大きく上回っていた。正面から戦っても勝率は低かったろう。

 

 その問いに、アンチョビは悪戯めいた笑みで返した。

「ペパロニ達を倒した実力を甘く見るつもりは無かったよ。それに……」

「それに?」

「驚かせたかったんだよ。鶴姫しずか、お前をな」

「………」

 しずかは無言でアンチョビを見た。頭を掻きつつアンチョビが言葉を続ける。

「あとこれ、戦車数がギリギリの大洗では公式戦では無理な戦法なんだ。前から一回試してみたかったんだが、機会が無くてなぁ……」

「……ははっ」

 しずかは笑った。どうやら「将」の器が違ったか。

「承知。我ら一両と二名、食客として世話になるとしよう」

 そう言うとしずかは再度、深々と頭を下げた。

 

 

「……笑ってるね」

 オペラグラスでコロッセオの様子を観察していた杏が言った。

「呑気なものね、全く」

 エリカが呟く。とはいえ、とりあえず面倒のひとつは片付いた事になる。大洗の戦車を載せた継続高校の輸送船も今夕には到着の見込みだ。そうすれば本格的に大洗メンバーも戦車道の訓練を行う事も出来るだろう。

「あとは……」

 そう言いつつエリカは空を見上げた。夏の暑さを含んだ潮風が頬にそよぐ。

 

 西住流家元とその二人の娘の観客なき試合が、明日の早朝に行われる。

 戦車はひとりでは動かない。果たして家元との勝負に臆さず挑める黒森峰の戦車乗りが何人いるか。蛮勇ではない、本当の意味での勇気を持つ者が。

 そこまで考え、エリカは無意識に指を組もうとしていた事に気付き、その指を解いた。

 祈るな、ただ信じろ。彼女らの勝利を。

 空を眺めつつ、エリカはそれだけを自身に言い聞かせた。

 

 

劇場版 カタクチイワシは虎と踊る  第十話 迎えるはムカデ、挑むは母虎

 

 

 深く茂る木々の隙間に朝日が差し、早朝の澄んだ空気が熱を帯びてゆく。

 ここは熊本港に接舷された黒森峰学園艦、その上部中央付近に位置する戦車道演習場である。戦車道において国内最強を誇る黒森峰だけに、その注力ぶりは他校とは格段に違う。

 もともと学園艦としては大型な黒森峰学園艦だが、その広大な敷地をしてなお広大な演習場が作られ、森林、丘陵、砂漠、市街戦、果ては学園艦を北上させる事で雪原戦すら可能となっている。ここはその中で言う丘陵──小高い丘を中心として林が点在するフィールドだ。

 

 そのフィールドのやや開けた場所、丁度広場になっているような場所に二両の戦車が停まっていた。どちらも黒森峰の校章がマーキングされたティーガーⅠである。更にそのティーガーの前に整然と並ぶ黒いパンツァージャケット姿の数名の少女と、彼女らの前に立つ二人の少女。

「……改めて、急な頼みにも関わらず協力してくれた事に感謝する」

 二人の少女の右、黒森峰のパンツァージャケット姿の西住まほが言った。

「この勝負は言わば私達二人の身勝手からの試合だ。だが、ここで家元の意見を変えられなければ来年の大会で大洗に雪辱を晴らす事も出来なくなる。どうか、全員が十全の働きをしてくれるよう期待する」

 やがてまほの視線は並ぶ少女の中でもひときわ緊張している一人に向けられた。全国大会後にドイツから交換留学で戦車道を学びに来た、長髪碧眼の少女。細い眉と切れ長の瞳はその気の強さを伺わせる。

「ツェスカ、大丈夫か?」

「え!? あ、は、はい! 大丈夫です!」

「今日は私の方のティーガーの砲手だったな。よろしく頼む」

「任せてください!」

 ツェスカと呼ばれた少女は背筋を伸ばすとはっきりと答える。その様子にまほは頷き、傍らの西住みほに言葉を促した。

 

「………」

 

 副隊長という立場ながら、みほはこういった大勢の前で何かを言うのに慣れていない。ツェスカ以上に緊張した表情で顔を上げ、呼吸を整える。

 

「えっと……」

 

 もう一度深呼吸。

「みんな、今日は本当にありがとう。今お姉ちゃ……隊長が言った通りなんだけど、私達に勝った大洗女子学園が大変な事になっていて……」

 たどたどしく語る姿、しかしその顔には確かな決意が浮かんでいる。今までの、西住流や黒森峰の為という自身の意思を横に置いていたみほとは明らかに違う姿。

「大洗とまた試合をしたいって気持ちもあるけど、私が見た大洗の戦車道のメンバーは、廃校が決まってみんな辛そうで、悲しんでいて……それを、少しでも助けたいんです」

 ぺこりと頭を下げる。

「お願いします、みんな。力を貸してください」

 暫しの静寂。並ぶ少女たちのひとり、赤星小梅が一歩前に出た。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「赤星さん……」

「大会からずっと、何か副隊長の助けになれないかと考えていました。それは皆も同じです」

 みほのティーガーに乗る予定の少女たちは小梅の言葉に強く頷いた。昨日の午後、二人がしほとの勝負を説明して搭乗員を募集した際にその場で名乗り出た者たちだ。

「……ありがとう」 

 みほは微笑みを返した。

 

 

 ───突然、その場の全員が殺気に貫かれた。

 

 

「な、何!?」

 ツェスカは思わず身を竦ませた。

「……お姉ちゃん」

「来たか」

 緊張しつつみほはまほを見た。まほは表情を変えぬまま呟き、殺気が放たれた方向に視線を向ける。

「……!?」

 そこで初めてまほの顔に驚きが浮かんだ。こちらに向かってくる、小さな戦車。

「Ⅱ号戦車……?」

 

 Ⅱ号戦車F型。独戦車の開発史においてⅢ号戦車、Ⅳ号戦車開発までの繋ぎとして開発されたⅡ号戦車の後期生産型である。前身のA型~C型に比べ全体的に装甲強化が施され、主兵装も20mm機関砲kwk30から20mm機関砲kwk38に換装されている。

 とはいえ、独戦車の最終形であるティーガーに比べればその火力や装甲は比べるべくもない。少なくとも正面から勝負を仕掛けられる車両ではない──普通ならば。

 

 そこから身を覗かせる、黒髪の女性。西住流家元・西住しほ。

 次第に接近してくるⅡ号戦車から目を離せないまま、ツェスカは寒気と滲む汗を同時に感じていた。

「家元……!」

 ツェスカがしほと会うのは初めてではない。幾度か演習で指導を受けた事もあるし、実際に戦車に乗った上で手ほどきをしてもらった事もある。その時の指導も実際厳しく、緊張感あるものだったのを覚えている。

 しかし今こうして強風のように叩き付けられる殺気を受け、あの時のしほがまだ全然本気でない事を悟らざるを得なかった。

 

 やがて、Ⅱ号戦車は彼女らの近くまで来ると停車した。素早く降車する黒スーツ姿のしほと、それに続く和服姿の女性。

「え? き、菊代さん?」

 みほが驚く。西住家の使用人である菊代が戦車道経験者である事はみほも知っていたが、その格好はまるで庭掃除の途中から来たかのような簡素な着物姿である。とてもここまで操縦して来たとは思えない。

「………」

 一方、まほの表情には険しさが増す。菊代はしほが屋敷で最も信用を置く女性である。今でこそ戦車に乗る頻度は減っているものの、かつてはしほが車長を務めた戦車の搭乗員として歴戦のパートナーを務めたという。

 では、西住流の門下生でなく菊代を操縦手として起用した理由は何か。

「みほ……お母様は本気だ」

 本気で、二人の娘を叩き潰すつもりだ。

 まほはそれを理解し、覚悟として受け止める事で自身に沸きかけた畏怖を抑え込んだ。

 

 そう思う間にもしほ達の歩みは進み、みほとまほ、そしてその背後に並ぶ少女達と向き合った。

「メンバーは揃っているみたいね」

 素早く目を走らせ、ティーガー二両を運用するに足る人数がいる事を確認してしほは言った。

「このような格好で失礼します。試合の後も奥方様の予定が詰まっていまして、ジャケットに着替える間も無いもので……」

 穏やかな微笑みを保ちつつ菊代が言う。

「早速始めましょう。開始は20分後。ルールは殲滅戦。また、戦意が無くなった時点での降伏もありとしましょう」

 機械めいた淡々とした口調でしほがルール確認を行う。それに対し、まほが尋ねた。

「……お母様、ひとつお聞きしたいのですが」

「何かしら?」

「何のおつもりでⅡ号戦車で来られたのか、教えて頂けないでしょうか」

 

 ドイツの電撃戦めいた強襲戦法を得意とする西住流にとって、高火力と重装甲を兼ね備えたティーガーは流派の顔とも言える戦車である。当然ながらみほもまほも、前日の試合対策で想定したのは対ティーガー戦だった。

 

 その質問に対し、しほは無表情に答えた。

「今の貴女達の相手をするのであれば、この戦車が最適と判断しただけです」

「Ⅱ号戦車で十分と?」

「『飛車・角落ち』ですよ」

 横から菊代が言葉を添える。飛車・角落ちとは将棋で格上が格下と打つ際に行うハンディキャップで、強力な駒である飛車と角を持たず打つ事だ。

「失礼ながら、お嬢様がたと奥方様で同じティーガーに乗っては勝負に……」

「菊代」

 温和な表情のまま容赦ない言葉を放つ菊代に、しほが静かに言う。菊代は沈黙すると一歩下がった。

「……お母さん」

 みほが一歩前に進み出た。震える拳を強く握り、しほの前に立つ。

 

「………」

「………」

「どうしたの、みほ」

「勝ちます」

 

 しほの刺すような視線を正面から受けつつ、みほはそう言い切る。

「“家元”、よろしくお願いします」

『よろしくお願いします!』

 まほの言葉と共に、並ぶ少女達が一斉に頭を下げる。しほと菊代も礼を返し、Ⅱ号戦車へと戻ってゆく。

 その背を見送ると、まほはメンバーの方に振り返った。

「……では、行くぞ」

『はい!』

 

 

「………」

「嬉しそうですね、奥方様」

 Ⅱ号戦車の操縦席から菊代が言った。

「そう見える?」

「はい。お嬢様方があそこまで戦意を向けてくるのは私も初めて見ました」

「………」

 しほは答えない。菊代は微笑みを浮かべたまま操縦桿を動かす。

「では、参りましょうか」

「お願いするわ」

 短く答え、しほは銃座に構えた。Ⅱ号戦車は車長兼砲手、通信手、操縦手の三人乗りである。単騎であるしほ側に通信手は不要のため二名で搭乗している。

「開始地点到着後、簡易の擬装を施します」

「はい、奥方様」

 しほの表情は平時と変わらない。だがその身体から放たれる、車内の気温を押し上げるかのような錯覚を覚える程の熱量、それが何より今の彼女が臨戦態勢である事を物語っていた。

 

 

「お姉ちゃん、どう動けばいいかな?」

『想定とは異なるが、基本の方針は変えずに行こう』

 西住姉妹側スタート地点、みほの問いかけに通信機越しのまほは冷静に答えた。

 

 この試合場である丘陵の形状は、繰り返し演習を重ねている事もあり二人とも大凡把握している。無論、それはしほも同様ではあるのだが。

 現在みほ達は二つの面で優位に立っている。すなわち戦車の性能的な面と、数的な面だ。

 Ⅱ号戦車の火力ではティーガーの正面を抜くのは難しい。少なくとも一撃で仕留める事は不可能だろう。

 二人らが最初に立てた作戦は一両がしほの攻撃を引き付け、もう一両が丘を押さえて上部から狙撃できる状況を形作り、そのまま挟撃して撃破するというものだった。元々はティーガーを想定していた作戦ではあったが、相手がⅡ号戦車であればその成功率はより高い筈だ。

 攻撃を引き付ける役は素早い判断力と状況把握に長けるまほが、丘を押さえ狙撃する役は長距離戦での正確な指示に長けるみほが担当する。

 

 丘の麓に広がる林の中、みほ車は木々の間に隠れるようにして静かに前進していた。

 この演習場のスタート地点は幾つか設定されており、それの何処から開始しているかは双方とも分からないようになっている。互いの位置の把握から試合は始まっているのだ。

「このまま丘へ向けて進みます。樹や枝に当たらないよう、注意しつつ前進してください」

「了解」

 みほの指示に答え、操縦手が丁寧に操縦桿に触れる。

「………」

 キューポラを押し開け、みほは砲塔から身を出した。耳を澄まし、周囲を警戒する。

「お姉ちゃん、こっちは現在南西側から回り込んで丘に向けて前進中。そっちはどう?」

『こちらは予定通り北西に向かって前進中。Ⅱ号戦車は確認できず』

 まほとの通信を行いつつ、みほは辺りを見回した。走行音は聞こえない。

「……警戒してるのかな、お母さん」

『そう思いたいが、すぐに仕掛けてくるだろう』

 みほの言葉に、まほは珍しく感傷的な言葉を返した。

 

 撃てば必中 守りは堅く 進む姿に迷い無し 鉄の掟 鋼の心

 

 西住流を示す最も代表的な言葉であるこの心得は、ただそう努めれば良いというものではない。文字通りの実践を要求されるものだ。

 すなわち一切の無駄弾を撃たず、一切の敵の攻撃を受け付けず、相手が態勢を整える事すら許さぬ速度で圧倒し、味方の犠牲も厭わず、例え敵が予想外の窮状に陥っていようと容赦なく撃滅する。

 常人がそれを口にすれば只の理想論にしか聞こえないような内容である。しかし、それを現実のものとして実践し得る者が──西住しほなのだ。

 

『こちらは隠密行動を取るように見せつつお母様の攻撃を誘う。みほはそのまま進んでくれ』

「うん、分かっ……」

 その時、みほの後方から砲声が聞こえた。

「!?」

 咄嗟にみほは振り向いた。直後に付近で破砕音。

「榴弾!?」

 そう思う間に次の砲声。やはりティーガーには直撃せず、付近に破砕音。土が跳ね上がり、折れた枝が飛び散る。

「回避行動! 砲塔120度回転!」

 素早く指示を出しつつ、みほは攻撃の先を探った。数百m後方、木々の隙間より僅かに見えるⅡ号戦車のシルエット。

「そんな、何時の間にこっちまで!?」

 みほは思い出す。確かに走行音はしていなかった。

 

「(こっちの行動を読んで、先に伏せていた!?)」

 

 みほは更に考える。この榴弾の攻撃の意味は? こちらの速度を落として何の意味がある? 自分がⅡ号戦車に乗っていたとして、次に打つ手は……

 考える内に砲身が後方を向いた。

「撃て!」

 88mm砲が火を放つ。だが攻撃のタイミングを読んでいたのか、その攻撃の直前にⅡ号戦車は走り出していた。

「全速前進、このまま林を抜けてください!」

 攻撃の失敗を確認し、みほは指示を出しつつⅡ号戦車の攻撃の早さに驚いていた。榴弾の高速装填と、その正確さに。この榴弾は無駄に撃っている訳ではない。それは──

「副隊長! 前方に障害物!」

 操縦手からの声にみほは前を見た。前方に柱めいた、一際大きな枝が転がっている。左右を見るが、ティーガーの広い幅で通れる程の木々の隙間は無い。

「このまま進みます、乗り越えて!」

 後方からの攻撃が僅かに止んだ。再装填を行っているか。

 ティーガーが枝を乗り越える。僅かに速度が落ち、履帯の回転がごく僅かに遅くなる。

 普通ならば警戒する必要すらない僅かの緩み。そう、普通ならば。

「………!」

 

 瞬間、20mm機関砲の徹甲弾はみほのティーガーの履帯の接合部を的確に破壊した。 

 

 

劇場版カタクチイワシは虎と踊る 第十話 終わり

次回「尚も虎は顔を伏せず」に続く


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