えーっと……コホン。諸君、私だ。アンチョビだ!
流石にここからいきなり読む者は居ないだろうから、「久しぶり」と言わせてもらおう。
これから「劇場版・カタクチイワシは虎と踊る」の上映が始まる訳だが、その前に本作の元となる劇場版ガールズ&パンツァーと、そこに絡んでくるスピンオフ作品について説明しようと思うので、よろしく頼む。
「わざわざ説明する必要があるの?」
「『ググれ』でいいんじゃないのか?」
───で、こっちのあまり乗り気でない二人がアシスト役の逸見エリカと冷泉麻子だ。
まあ、何だ。本作を読んでもらってる人の中には割と原作未視聴だったりする人も多いようだ。それはそれで嬉しい話ではあるんだが、今回は原作を知らないと分かりづらい部分もあるし、スピンオフ作品の単行本を全部揃えるとなると20冊以上になるからな。
さて、それでは説明を始めよう。まずは「劇場版ガールズ&パンツァー」からだ!
『劇場版ガールズ&パンツァー』
第63回戦車道全国高校生大会(TV版)の後日談。
奇跡の優勝を成し遂げ、平穏な日常を取り戻したみほ達大洗の少女達。しかし8月下旬、優勝記念エキシビジョンマッチを終えた直後の彼女らに突如「大洗女子学園の8月末での廃校の決定と学園艦の解体」が告げられる。「優勝すれば廃校は撤回」は口約束に過ぎず、学園艦管理局はそれを反故にしてきたのだ。
サンダースによる輸送機の支援で何とか戦車の回収は免れたものの、学園艦を追われ内地の寄宿先で他校の転校を待つばかりの大洗戦車道メンバー。
だがその影で、杏は文科省の認可の撤回のために奔走していた。あらゆる人脈を駆使し、西住しほを動かし、ついに「大学選抜に勝てば、大洗女子学園の優勝はまぐれでなく実力である事を認め、廃校を撤回する」という言質を取る事に成功する。
しかし、それでもなお道は険しい。天才少女・島田愛里寿に率いられた大学選抜チームは社会人チームすら破るほどの精強さと、パーシングを中心とした優秀な戦車を揃えている。更に敵チーム30両に対し、大洗側は僅か8両。
それに加え、試合会場に到着後に加えられるフラッグ戦から殲滅戦へのルール変更。
絶望的な状況の中、果たしてみほ達は大洗を取り戻せるのか───
……とまあ、ここまでが劇場版の説明だ。
「殲滅戦って何だ?」
ああ、そういえば麻子は殲滅戦は経験していなかったな。
戦車道の試合には大きく分けて2パターンある。フラッグ戦と殲滅戦だ。
大きく違うのは勝利条件について。フラッグ戦は各チームのフラッグ車を撃破した方が勝ちとなる。この場合、残り何両いたとしても撃破された側は負けだ。
殲滅戦は文字通り、相手を殲滅───全ての車両を撃破した方が勝ちとなる。
「各校の戦力に差が大きい高校戦車道の公式試合では、弱い戦力でも逆転が見込めるフラッグ戦が主に採用されているわ。逆に海外のプロリーグや社会人戦車道では、よりチームの総合力が求められる殲滅戦が採用される事が多いわね」
そして、それが劇場版の醍醐味でもある。
見どころは120分の長尺作品でありながら、その全体の8割を占める戦車戦だ!
私もペパロニ達と共にCV33で大活躍しているから、未視聴の人は是非見てくれ。大学選抜側の「秘密兵器」を撃破したのにも私の多大な貢献が……
「ひっくり返って、パスタに釣られて履帯を回していただけじゃないか?」
こ、貢献は貢献だ!
コホン。さて、続いて紹介するのは今作でも登場予定のスピンオフ作品についてだ。
ガールズ&パンツァーの漫画は原作コミカライズ、公式パロディ、スピンオフ作品等、連載中の作品を含めて合計9作品もある。その内の、今作に関わってくる2作品について説明しておこう。
そうそう。先に言っておくが、これらスピンオフ作品はあくまで本編(TV版・劇場版)のパラレル作品なので、設定の祖語がある場合は本編が優先されるから注意してくれ。
『ガールズ&パンツァー リトルアーミーⅡ』
小学生時代のみほと友人たちの交流を描いた前日譚「リトルアーミー」の続編。
かつてみほと再会を誓って別れた独系クォーターの少女、中須賀エミ。
戦車道経験者の留学オファーを受け、ドイツから再び日本に帰ってきた彼女が到着したベルウォール学園は治安は最悪の無法地帯、前隊長が後任を決めなかったため戦車道メンバーは内部抗争の真っ最中、おまけに肝心の戦車は全て売りに出されていて所有戦車ゼロという有様だった。
果たしてエミはベルウォールの戦車道を立て直し、全国戦車道優勝記念杯でみほと会う事は出来るのか?
『ガールズ&パンツァー リボンの武者』
戦車道の非公式試合「強襲戦車競技(タンカスロン)」を題材とした作品。
”軍神”西住みほが第63回大会で見せた奇跡の試合。それは今まで戦車道に触れる事すら無かった盾無高校の二人の少女を魅了した。
平凡な生活を送っていた帰宅部の少女、松風鈴。
落ち着いた風情の中に戦への渇望を秘めた令嬢、”姫”こと鶴姫しずか。
戦車道の無い盾無高校だったが、二人は鶴姫家の先代が自家用に遺した九七式軽装甲車(テケ車)を修繕し、単騎でも参戦可能な強襲戦車競技に参戦してゆく事になる。
「我らがするは戦車道などという婦女子の暇つぶしにあらず、戦也」
そう嘯くしずかはルール無用の強襲戦車競技で様々な激闘を繰り広げ、それは次第に他の名門校をも巻き込んでゆく───
……というのがこの2作品だ。リトルアーミーⅡでの私の出番は実質2コマだけだが、それでもちゃんと美味しい所は持って行っているぞ。リボンの武者では主人公であるしずかの第一話の最初の相手(時系列では後の方)としてアンツィオが登場し、その後も重要キャラの一人として活躍している。
「聞き慣れない言葉が幾つか出て来たな」
「優勝記念杯」と、「強襲戦車競技」だな。
優勝記念杯は、全国大会を優勝した学校の地元で開催されるトーナメント大会だ。全国大会ほどでは無いけどそれなりの規模の大会で、名門校と呼ばれる所も軒並み参戦している。中小校の場合は本戦出場前に出場枠を競う、練習を兼ねた試合が行われたりもする。
強襲戦車競技は戦車道連盟非公式の、言わば野試合だ。参加ルールはただ一つ「10t以下の軽戦車であること」それだけ。競技中の乱入OK。その場での即席チーム結成OK。試合中に増援を送り込む事も許されるし、おまけに観戦は自己責任だから戦車でギャラリーに突っ込んで相手をかく乱するのもOKだ。
「滅茶苦茶だな……」
まあ、最低限の線引きはお互いに決めたりする事が多いけどな。
ちなみに公式戦では戦車道連盟や戦車道保険が建物の損壊や破損の補償をするが、非公式の強襲戦車競技の場合は賭け試合が半ば公然で行われていて、その賭け金と参加チームの出資で賄っている。
「私はその辺りも含めて苦手なのよね、強襲戦車競技……アレやってるのって『戦車道はお遊戯』みたいな事を言ってくるのが多いし」
エリカらしいな……実際にやってみると面白いぞ? 普段の戦術が通用しない戦場で即座の判断を要求されるからな。アンツィオでも資金稼ぎの一環で始めようとしている所だ。
さて、これでひとまず「劇場版・カタクチイワシは虎と踊る」を見てもらう上での最低限の説明はできたと思う。ここからは戦車道の試合と同様、ノリと勢い、そしてちょっと頭を使って読んで楽しんでくれ!
それでは行くぞ、アーヴァンティ!
「「アーヴァンティ!」」